アイアース級大型戦艦(Aias class)とは、アニメ「銀河英雄伝説」(石黒監督版)とその関連商品に登場する架空の艦級である。原作である小説版では艦級の設定がなされていないため、この名称は登場しない。
また、資料媒体によってはアキレウス級(Achilleus class)ないしパトロクロス級(Patroclus class)という名称に設定されている場合もあり、それぞれの設定で各艦についての記述が違ったりする。おおむね、アニメ制作開始当時の設定が「パトロクロス級」、ムック本『銀河英雄伝説DATA BOOK メカニック&声優大事典』での設定が「アキレウス級」、そして「銀河英雄伝説 フリート・ファイル・コレクション」シリーズでの設定が最終的な「アイアース級」と考えてよい。
概要
| アイアース級戦艦 Aias class battleship (アキレウス級/パトロクロス級) (Achilleus class/Patroclus class) |
|
|---|---|
| 所属 | 自由惑星同盟 |
| 艦種 | 旗艦級大型戦艦 |
| 就役時期 | 同盟後期 ~イ共和政府 |
| 全長 | 1159m(標準) |
| 全高 | 358m(標準) |
| 全幅 | 72m(標準) |
| 乗員 | 1226名(標準) |
アイアース級戦艦は、自由惑星同盟軍の末期において運用された旗艦級大型戦艦群である。1万数千隻という膨大な数の主力艦によって構成される一個艦隊を抜かりなく統率するため、艦隊指揮コンピュータや大型通信アンテナ群といった充実した指揮能力を備えている。加えて、量産艦艇である標準型戦艦をはるかに上回る数の主砲や対空砲、艦載機を搭載するなど、艦隊の要たる旗艦に相応しい高性能艦である。
もっとも、数万隻前後の艦隊同士が衝突する大規模な会戦においては、旗艦と言えども単艦の戦闘能力が戦局にもたらす影響は殆ど無いとも言えるため、やはり本質は通信指揮能力と言うべきだろう。
同盟軍の建艦思想のご多分に洩れず、銀河帝国軍との戦闘を第一に建造されている実用一辺倒な艦であり、ブロック式、モジュール工法の採用による量産性の高さも、多数を占める主力艦と変わらない。このため、目的によって装備や形状を容易に変更して建造することが可能であり、同じアイアース級であっても全く同一の形状を持つ艦はほぼ無いと言って良い。大気圏降下能力を持たずシャトルによって乗員や物資を運ぶのも共通項であるが、他の艦艇との違いとして、アイアース級はその規模ゆえにシャトル自体を収容できる格納庫を持っていることが多い。
全体的なデザインは標準型戦艦と同じような長方形で、縦に長く横に薄いのが特徴。これは前面投影面積を減じて被弾を少しでも避けるためと思われ、上下に伸びたアンテナも相まって前面から見ると非常にスリムな印象を受ける。上述のように各艦によって形状に大きな差があるが、基本的なフォルムとしては、40門ほどの主砲を収めた艦首ブロックが特徴的な「くびれ」を挟んで船体中央部と繋がり、その付け根部分の両舷には赤く塗装された大型の星間物質取り込み口が配置されている。艦尾に向かって伸びるテールフィンは標準型戦艦ほど複雑な形状ではないが、それに劣らぬ機動性を保証している。ちなみに、アイアース級の全長はこのテールフィンがそれなりの割合を占めており、それを除いた実質的な全長は900m台と意外にコンパクト。
側面対空砲座や対艦ミサイル、単座式戦闘艇スパルタニアンといった基本的な武装に加え、設定上ではレールガンや熱線砲といった変わり種も搭載されている模様。主砲は帝国軍の旗艦群に比べ、威力に若干劣る代わりに門数は大きく勝っており、他の同盟軍艦艇と同じく手数で勝負するという設計思想を反映している。
アイアース級の実戦配備は780年代に進められ、本編の時代においてはそれぞれの正規艦隊に旗艦として配備されていた他、その配下の分艦隊(おそらく艦隊副司令官クラスの率いる部隊)や、地方におけるそれなりの規模の警備艦隊の旗艦としても使用されるなど、主力旗艦級戦艦として広く普及していた。とは言え、配備から十数年が経過し、戦訓や技術の進歩を反映する上で設計の限界も見え始めており、新たな旗艦級戦艦の開発も進められていた。また、アムリッツァの大敗をはじめとする戦況と国内情勢の著しい悪化から、以前のように分艦隊や辺境部隊にアイアース級を配備することがままならなくなり、より規模の小さい標準型戦艦をベースとした旗艦群や、武装など各部分を簡略化した簡易量産タイプのアイアース級も登場するようになった。
本編での活躍
同盟軍艦隊の旗艦として多く登場するアイアース級だが、作中においての扱いはどうも恵まれないところがある。
ヤンが初めて艦隊指揮を執ることになるパトロクロス、ビュコック提督の旗艦として壮絶な戦いを続けたリオ・グランデなどクローズアップされる艦も決して少なくないのだが、いかんせん物語の大筋として同盟が負け続けっぱなしなので、奮戦するも哀れ撃沈、という役回りに甘んじることがどうしても多い。
加えて、作中同盟側で最も縦横無尽に活躍するヤン艦隊は、総旗艦がアイアース級以前の旧式艦とされるヒューベリオンであり、他に配備された旗艦も旧式艦や試作艦、標準型の改装艦が殆どで、アイアース級が目立って活躍する場面はどうしても少なくなってしまっている。
とは言え、これらはどれもメタ的な都合であり、決して設定としてアイアース級に非や欠陥があるということでは無い。アイアース級が好きな諸氏は胸を張って生きよう。
アイアース級の一覧
作中で登場した艦のほか、一部設定においてのみ言及される艦なども含む。
パトロクロス
パエッタ中将率いる第2艦隊旗艦。パトロクロス級の設定では同級のネームシップとされる。
アイアース級でも初期の建造艦で、同級の中でも最も標準的な仕様である。
宇宙歴783年に竣工し、第四次ティアマト会戦などに参加。アスターテ会戦において艦橋部付近に被弾し、負傷したパエッタ以下艦隊司令部要員がほぼ機能不全となったため、健在な中で最も階級の高かった次席幕僚のヤンに指揮権が委譲され、何とか全滅を免れて帰還した。
その後の去就については設定によってバラツキがある。パトロクロス級の設定ではアスターテでの損傷が大きく廃艦、アキレウス級及びアイアース級の設定では修復されたのちに、パエッタが第1艦隊司令官に就任したのに合わせて同艦隊の旗艦となり、ランテマリオ星域会戦に参加したとされる。
ちなみに、石黒版アニメの一作目である『わが往くは星の大海』制作にあたり、加藤直之(メカニックデザイン)から振られた石津泰志の手で一番初めにデザインされた同盟艦であり、本艦から加藤が同盟艦のバリエーションを広げていったことを考えれば、アイアース級のみならず戦艦、巡航艦、駆逐艦などほぼ全ての同盟軍艦艇のデザインはパトロクロスがその源流となっていると言える。
アイアース
アイアース級のネームシップで、同盟軍総旗艦。パトロクロス級の設定においても、ネームシップに先んじて建造された試作艦とされる。
宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥が座乗し、同盟軍総旗艦としてヴァンフリート星域会戦や第四次ティアマト会戦に参加。帝国領侵攻作戦ではロボスが前線に出なかったためか姿を見せず、彼の辞任と共に退役したと思われる。パトロクロス級の設定では第1艦隊旗艦を兼ねていたとされ、廃艦になったパトロクロスに代わってパエッタが座乗し、ランテマリオ星域会戦を戦っている。
形状においてはパトロクロスとほぼ同一だが、主砲の内最上部両端の2門が射撃管制装置に置き換わっており、艦首側面に機械類の露出した非装甲の部分があるなどの違いがある。また、同盟軍の標準的な緑色ではなく後に建造されたアガートラムのような茶褐色に塗装されているが、これは試作艦として建造された名残であると思われる。また、総旗艦という立場のためか乗員数も他より100名ほど多い。
なお、OVAオリジナルの艦名としては本艦が唯一、田中芳樹による命名とのこと(フリート・ファイル・コレクションVOL.2参照)。
ク・ホリン
アムリッツァ前哨戦において制御を失った友軍艦艇に衝突され、小惑星と挟まれて轟沈した。
主砲を標準の40門から30門に減じるなど火力や装甲を削り、代わりに速力・機動力を向上させた高速艦とされる。
レオニダス
アスターテ会戦において、ラインハルト率いる帝国軍艦隊の最初の標的となり、対応もままならぬうちに轟沈してしまう。
基本的な形状はパトロクロスと同一だが、側面の対空砲塔が半分の数に減らされているほか、上部の通信アンテナ3本が先端を三叉にした1本に置き換えられ、後部のシャトル格納庫の上部が1段せりあがっているなどの違いがあるほか、下部には索敵機能を向上させる副センサ・モジュールが新設されている。
また、艦橋ブロック付近に他の艦に見られない大きな白い塗装部分(劇場版では黄色)があるが、これの意味するところは不明。
劇場版でも外見にほとんど違いはないが、上部分のくびれが埋まって小さくなっていることと、前述の通り塗装部分の色が黄色に変わっているという小さな差異が見られる。
リオ・グランデ
原作におけるリオグランデ。『呼吸する軍事博物館』こと老将アレクサンドル・ビュコック提督の座乗艦で、第5艦隊旗艦を務めたのち、ビュコックが宇宙艦隊司令長官に就任した際に同盟軍総旗艦となる。ランテマリオ星域会戦時の艦長はエマーソン中佐。
自由惑星同盟軍最後の出撃となったマル・アデッタ会戦において、一時はラインハルトの座乗するブリュンヒルトに迫るほどギリギリまで奮戦するも一歩及ばず、降伏勧告を固辞した老将の壮絶ながら穏やかな最期を彩るかのように轟沈する。交戦したラインハルトは敵将への敬意として全軍に敬礼を命令した。
全体的なデザインはパトロクロスとほぼ変わらないが、艦首部分が他の艦に比べても目に見えて長く、アイアース級特有の艦首部分のくびれも無くなってほぼ一直線になっている。これは長距離戦用の長射程砲を主砲として搭載しているためであり、全長もアイアース級の中では最長となっている。
ペルガモン
ムーア中将率いる第6艦隊旗艦。幕僚としてジャン・ロベール・ラップが乗り込んでいた。
アスターテ会戦で第4艦隊を壊滅せしめた帝国軍に背後へ回り込まれ、ラップの忠告を撥ねつけたムーアが敵前回頭を行った隙を突かれ艦隊は壊滅、降伏勧告を拒絶したペルガモンも撃沈された。
OVAと劇場版『新たなる戦いの序曲』では艦容が大きく異なる。OVA版ではパトロクロスとほぼ同じ形状で、後部側面の対空砲塔が減っている代わりに艦橋の埋め込まれているブロック周辺の砲塔が増強されている。劇場版では上記の姿にさらにアレンジが加えられており、艦首のくびれ上部に大型のミサイルポッドが据え付けられているほか、後部砲塔群からシャトル格納庫にかけて上部が大きく引き伸ばされており、大型アンテナも2セット6本が追加されている。また、スパルタニアンの搭載数が他の艦に比べて増強されており、対空戦闘を補っているとされる。
ケツアルコアトル
帝国領侵攻作戦に参加するも、他の艦隊同様補給物資の欠乏に悩まされ、帝国軍の反撃のを受け数に勝るキルヒアイス艦隊に降伏、その後帝国軍に接収の後解体されたと思われる。
リオ・グランデのような長射程砲に加えて長距離センサーを備え、同盟軍でも屈指の砲戦距離を誇る艦とされる。艦首ブロックは完全な一直線で、側面から見ると中央線よりやや下側に下がる形でつながっている。
本編においては進出したドヴェルグ星系に駐留するシーンがわずかに描かれたのみで、アムリッツァ前哨戦では全く映ることも無いままで砲火を交えたのかも不明。司令官共々不遇な艦である。
クリシュナ
同級の中でも特に際立った特異な形状を持つ艦。アイアース級は基本的に20門セットの主砲ブロックを2段の合計40門の主砲を備えるが、クリシュナはさらにもう一段追加した60門の主砲を備えており、そのために艦首ブロックが上下へ極端に拡大している。艦中央部も艦首に合わせて拡大されており、その部分に他の艦に比して3倍ほどの側面対空砲塔を備えたアイアース級きっての大火力艦である。ただし、搭載する機関は通常のものと変わらず、火力の維持や機動性には難を抱えると言われる。
パラミデュース
帝国領侵攻作戦に参加し、アムリッツァ前哨戦ではミッターマイヤー艦隊に蹂躙されつつ辛くも戦場を脱するが、秘儀神速機動を発揮したミッターマイヤーに並ばれる位置にまで追いつかれてしまい、追撃を受けて被弾。アル・サレムも重傷を負い、別の艦に座乗していた副司令官ライオネル・モートン少将が指揮権を引き継ぐこととなった。
ケツアルコアトルと同じく長距離砲戦を主眼に置いており、設計自体も同艦に酷似している。一番の差異は、ケツアルコアトルでは下向きにオフセットされていた艦首ブロックが逆に上側に寄っている点である。
ちなみにこの艦こそ、同盟名物艦橋殺人ワイヤーを視聴者に知らしめた元凶。
盤古(バン・グゥ)
帝国領侵攻作戦に参加し、アムリッツァ前哨戦では惑星リューゲンの軌道上において黒色槍騎兵艦隊と対峙。折からの物資不足から不利は免れず、殿として残った味方艦を逃がしつつビッテンフェルトを一瞬たじろがせるほどの奮戦を見せたが、自らの脱出寸前に艦首ブロック下部のミサイルランチャーに被弾し轟沈した。
クリシュナの姉妹艦であり、艦中央から後部にかけてはかなり似通った艦容を誇る。ただし、こちらは艦首ブロックが他のアイアース級と同じ40門主砲のタイプであり、艦中央部の上下への膨らみも相まってより際立ったくびれ形状を持っている。いわばクリシュナの火力偏重をやわらげた設計であり、攻守のバランスに優れた良艦として定評があった。
エピメテウス
ウィレム・ホーランド中将が司令官を務めた頃の第11艦隊旗艦。
正規艦隊司令としてのホーランドの初陣である第三次ティアマト会戦に参加し、彼が言うところの「芸術的艦隊運動」をもって帝国軍艦隊に突撃、少なからぬ混乱と損害をもたらすことに成功する。だが、味方艦隊との連携も度外視した攻勢は長続きせず、敵中において行動限界点に達してしまう。それを見越していたラインハルト艦隊がそのタイミングを突いて一斉射撃を命じ、エピメテウスは瞬く間に撃沈、第11艦隊も潰走の憂き目を見た。
艦首から中央部にかけてはパトロクロスとほぼ同一のデザインだが、後部からエンジンにかけてはかなりの改装が加えられている。側面砲塔部分からシャトル格納庫までの構造物がテールフィンの後端ぎりぎりまで延長され、後部両舷には同盟軍巡航艦を思わせる張り出しがエンジン後端まで続いており、他の艦と比べるとかなり末広がりな印象を受ける。この張り出しは推進機関の増強のためのものと推測され、エピメテウスが高速機動を突き詰めた艦であることがうかがえる。また、張り出しの追加された部分は標準のアイアース級ではスパルタニアンの発進口が位置しており、そこを塞いだエピメテウスは艦載機の運用能力がオミットされているとされ、代わりに対空網を厚くするためか、側面砲塔群も延長に合わせて増強されている。
なお、アキレウス級の設定においては、第三次ティアマト会戦で沈んだ第11艦隊旗艦の艦名はヘクトルとされている(設定当時、OVA外伝「第三次ティアマト会戦」は未制作)。これは原作の第五次イゼルローン要塞攻防戦におけるシドニー・シトレの旗艦と同じ名前だが、同一の艦とされるのかは不明。
レオニダスII
前述のエピメテウスに代わる第11艦隊旗艦で、ルグランジュ中将が指揮官として座乗した。
救国軍事会議のクーデターに参加し、ドーリア星域の会戦で第13艦隊と対峙。情報戦を制し奇襲をかけたヤンに完敗し、ルグランジュは自決、降伏を拒否した残存艦と共に撃沈されたと思われる。
前述のレオニダスとは艦名だけでなく形状も全く瓜二つであり、特徴的な塗装部分も白く塗られてはいないものの形状は完全に一致する。アイアース級の設定では、全く同じ設計の艦を別々の建造方法で作ることによるコスト比較実験が行われたためとされている(アキレウス級当時の設定では、レオニダスの建造10年後に設計を合理化した同型艦として建造されたものとされる)。
ペルーン
アムリッツァ前哨戦においてルッツ艦隊と対峙し、僚艦が8隻残るのみという壊滅的被害を受ける。ボロディンは自決し、副司令官のコナリー少将の命令で機関を停止したうえで投降した。
長射程砲を搭載した長距離砲戦型で、艦首のくびれは完全に取り払われて一直線になっている。似通った形状のケツアルコアトルやパラミデュースと比べると、艦首ブロックが上下いずれにもオフセットされておらず、艦橋部付近からまっすぐ伸びているのが特徴。
アキレウス
ライオネル・モートン中将が指揮する第14艦隊旗艦。
帝国による“神々の黄昏”作戦を受け、辺境警備戦力や新造艦老朽艦をかき集めて急遽編成された第14艦隊を率いてランテマリオ星域会戦に参加。かなりの消耗を強いられたものの、ワーレン艦隊による分断の試みを防ぐなどの活躍を見せた。その後は艦隊の残存戦力と共にヤン艦隊に帯同し、帝国軍に対する各所でのゲリラ作戦に参加したのち、バーミリオン星域会戦を迎える。戦闘後半では主力部隊と切り離された帝国軍大本営に迫るものの、間一髪駆け付けたミュラー艦隊がこれを阻止、防御を食い破らんとする勢いの攻勢の中で艦橋に被弾し、撃沈された。
リオ・グランデの設計をベースに新技術を盛り込んだ再設計艦とされる。全体のフォルムは標準的なアイアース級のものであるが、くびれの先の艦首ブロックがリオ・グランデのように長いのが特徴で、艦首下部には外付けのミサイルランチャーも装備している。
アキレウス級の設定では、先代の第4艦隊旗艦であった初代アキレウスの撃沈後に艦名を引き継いだ2代目アキレウスであるとされている。
ディオメデス
上述の第14艦隊と同じく、新編成された第15艦隊と共にランテマリオ星域会戦に参加の後、ヤン艦隊と合流してバーミリオン星域会戦までを戦った(はずだが、バーミリオン星域会戦での登場はない)。
同盟の降伏後も同盟軍に残された数少ない戦艦であったが、帝国による再侵攻を受けて現役に復帰したビュコック提督に従い「大人の宴会」ことマル・アデッタ星域会戦に参加する。別動隊を指揮して、ファーレンハイト艦隊への奇襲やミュラー艦隊の突破など幾多の勇戦ぶりを発揮し、ラインハルトの本隊にまで肉薄するも、アイゼナッハ艦隊の防戦や最終局面に合流したビッテンフェルト艦隊の攻勢の前についに力尽き、撃沈された。
アキレウスと同じくリオ・グランデをベースとして設計された姉妹艦であり、かなり似通った外見を持つ。違いとしては先述の艦首下部のミサイルランチャーがディオメデスには装備されていない点が挙げられる。
ロスタム
ランテマリオ星域会戦に参加し、前面に迫ったミッターマイヤー艦隊の圧力に耐えきれず総攻撃を強行。自滅も辞さない狂奔状態で帝国軍に少なからず動揺を与えたものの、総司令部からの交代命令を受け我に返って後退しようとしたところにミッターマイヤーからの反撃を受けて大きな損害を被る。
その後の戦闘での動向は描かれておらず、去就は不明。OVA作中では少なくともマリネッティ自身はランテマリオ星域会戦から生還し、その後のマル・アデッタ星域会戦にも参戦しているため、おそらくロスタムもランテマリオでの撃沈を免れ、マル・アデッタで最後の戦いに散ったと推測される。
ロスタムに関する詳しい設定は今のところなされていないが、アキレウスやディオメデスに近い形状でありながら、主砲が30門に減らされ側面砲塔もほとんど見当たらない妙にすっきりした外見をしている。国力の疲弊しきった同盟において同艦をフル装備で完成させる余裕が無かったか、あるいは完成させても指揮する戦力が枯渇しているために無駄だと判断されて機能を減じられたか、どちらにせよ同盟末期の厳しい状況が反映された結果だと推測される。
デュドネイ艦
デュドネイ少将かどうか分からない率いる分艦隊の旗艦かも知れない。
第1次ランテマリオ会戦において、同盟軍艦隊の右翼として840隻を指揮するが、ワーレン艦隊の猛攻で130隻にまで撃ち減らされてしまう。
このシーンにおいて遠景でデュドネイ分艦隊の旗艦らしきアイアース級が映るのが唯一の登場だが、アキレウス系列の長い艦首を持っているらしいことがかろうじて分かるのみでその他の詳細は一切不明である。設定上でもこの艦に触れているのはパトロクロス級の設定のみで、他の設定では言及されていない。
シヴァ
バーミリオン星域会戦後戦死を装って潜伏したウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督率いる「動くシャーウッドの森」の旗艦。後の回廊の戦いの際にはエドウィン・フィッシャー中将の旗艦となる。
もともと工作艦隊の旗艦として運用されており、バーミリオン会戦までにヤン艦隊に合流して戦闘に参加、終戦時にヤンの意向を受けたメルカッツと共に戦場を離脱している。その後レサヴィク星域での解体予定艦強奪やイゼルローン再奪取作戦を指揮し、回廊の戦いではフィッシャーの乗艦として前哨戦及び本戦を戦い抜くも、物量戦に持ち込んだ帝国軍の猛攻の中でついに通信途絶、戦艦アエリアからの報告で撃沈が確認された。
最大の特徴は、自艦も工作任務に従事するために艦中央部から数十本も伸びた工作用クレーンであろう。このクレーンは通信アンテナも兼ねており、ヤン艦隊の中でも特に通信性能に優れていた故にフィッシャーの旗艦として抜擢されたと思われる。また、一部設定ではこのクレーンはスパルタニアンの運用に用いられていたとする説も存在する。
もう一つの特徴は艦首主砲ブロックで、工作指揮艦ゆえに機動性に劣る点を補うため本来主砲が配置される部分に四角いブロックを設置し、そこに通常の実に2倍となる80門の主砲を積んでいる。これは同級のクリシュナやアガートラムをも上回り次世代艦のトリグラフに並ぶものであるが、搭載する機関は増強されていないため火力を維持できるのはかなりの短時間と言われる。また、クレーン設置の影響か側面の砲塔群は他よりも少なくなっており、あくまでも前線ではなく後方任務に従事する艦として設計されていることがうかがえる。
マウリア
グエン・バン・ヒュー少将が指揮するイゼルローン要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)分艦隊旗艦。原作におけるマウリヤ。
アムリッツァ会戦後にヤン艦隊の所属となり、ドーリア星域の会戦や第八次イゼルローン要塞攻防戦で活躍するも、同要塞戦後に敗走する敵部隊を深追いした結果、帝国軍増援部隊の待ち伏せを受けて轟沈、分艦隊も全滅した。
アイアース級の中では珍しく初めから分艦隊クラスの指揮艦として建造された艦であり、他の艦と比べてよりコンパクトな外見となっている。同級の中でも攻守に優れた盤古を設計のベースとして、側面対空砲塔群をほぼ全て艦中央部に集約配置するなどの新機軸を取り入れている。また、一部設定では側面攻撃力の強化によって艦隊指揮コンピュータの搭載スペースが圧迫されたために一個艦隊を指揮する能力を持たせられず、結果として分艦隊旗艦に分類されたという記述がされている。性能は申し分ない物だったが、最終的にアムリッツァの大敗を受けて量産が見送られたために、マウリアに続く艦はこの世に出ることなく終わった。
ちなみに、ヤン艦隊編入前の動向は語られていないが、それ以前のアムリッツァ前哨戦から撤退する第8艦隊のシーンにマウリアによく似たアイアース級らしき戦艦が映っている。マウリアの同型艦が存在しないと設定されていることを考えると、元々マウリアとグエンは第8艦隊の分艦隊を率いており、第8艦隊壊滅の後に残存戦力と共に第13艦隊に合流したのではないかという推測もできる。
また、作中では珍しい艦全体の塗装が途中でガラッと変わった艦でもある。第11艦隊との戦闘時にはヒューベリオンと同じ青色の塗装だったが、翌年の第八次イゼルローン攻防戦時にはなんと真っ黄色と黒の鮮やかな虎柄という物凄い迷彩塗装が施されている。このことから、グエンが遥かな西暦の時代に活躍したある球団のファンであったという俗説を唱える者もいるが、真相は分からずじまいである。
ちなみにメタ的には、OVA本伝2期の制作時にスタッフがマウリアを虎柄にしたいと言い出し、プロデューサーからも「沈むからいいよ」(=今後の作画の手間がないから良し)とOKが出た……という逸話がある。フリート・ファイル・コレクションやガレージキットを手掛けるアルバクリエイツの大塚社長がスタッフから聞いた話とのこと。
アキレウス級設定上のみの艦艇
ペロプス
アキレウス級の設定でのみ言及される、第3艦隊分艦隊旗艦。作中には登場しない。
第2辺境星域分艦隊旗艦から帝国領侵攻作戦にあわせて第3艦隊に編入され、アムリッツァ前哨戦で撃沈された。
ペンテシレイア
アキレウス級の設定でのみ言及される、第7艦隊分艦隊旗艦。作中には登場しない。
第4辺境星域分艦隊旗艦から帝国領侵攻作戦にあわせて第7艦隊に編入され、アムリッツァ前哨戦で撃沈。
プロテシラオス
アキレウス級の設定でのみ言及される、第8艦隊分艦隊旗艦。作中には登場しない。
第8辺境星域分艦隊旗艦から帝国領侵攻作戦にあわせて第8艦隊に編入され、アムリッツァ会戦本戦で黒色槍騎兵艦隊の攻撃により撃沈された。
メムノーン
アキレウス級の設定でのみ言及される、第10艦隊分艦隊旗艦。作中には登場しない。
第1辺境星域分艦隊旗艦から帝国領侵攻作戦にあわせて第10艦隊に編入され、アムリッツァ前哨戦では本隊旗艦盤古が沈むなか中破、本国帰還を遂げ第1辺境星域分艦隊に復帰したとされる。
ちなみにアムリッツァ会戦当時、第10艦隊に所属していたダスティ・アッテンボロー(当時准将)が前哨戦からの撤退に貢献したと言われており、それと照らし合わせるとメムノーンに乗艦していた可能性もある。
グラウコス
アキレウス級の設定でのみ言及される、第12艦隊分艦隊旗艦。作中には登場しない。
第7辺境星域分艦隊旗艦から帝国領侵攻作戦にあわせて第12艦隊に編入され、アムリッツァ前哨戦で本隊共々ルッツ艦隊から壊滅的な被害を受け、旗艦ペルーンと共に投降したとされる。
将来の旗艦級戦艦
ブリュンヒルトに代表される新機軸の戦艦を開発していた帝国軍に対し、同盟軍においても限界の見え始めたアイアース級に代わる新たな旗艦級戦艦の開発が進められていた。幾つかの試作艦の中にはアイアース級をベースに大胆な改装を加えた艦などもあったが、最終的には新鋭艦のトリグラフが次期旗艦級戦艦の雛形として内定する。だが結局、アムリッツァでの大敗による国力の著しい衰退によってそれらは日の目を見ることなく終わり、残された試作艦の殆どは半ば厄介払いも兼ねてイゼルローン駐留艦隊に配備されることになった。その後戦乱を生き延びた艦もバーラトの和約によって解体の対象となり、その生涯を終えることになる。
アガートラム
アイアース級をベースとした次期旗艦級戦艦の試作艦で、アムリッツァ会戦後に第13艦隊配備となり、バーミリオン会戦までフィッシャーの旗艦として活躍した。同盟の降伏後、バーラトの和約によって解体される。
横から見たアイアース級の船体を、中央部から前方にかけて斜め下に向かい大きく削って二つに分け、間の空いた艦首とエンジンを大きな主砲ブロックで下側から接続する、という同盟艦の中でもかなり特異な形状を持つ。主砲は従来の40門に加えて追加されたブロックの両舷に12門ずつの合計64門が搭載されており、次期主力旗艦の競合相手であったトリグラフと同じく主砲の増強を主眼に置いていたようだ。
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