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概要
正式には「アトピー性皮膚炎」と呼ばれているが、日常ではアトピーと略すことが多い。大きな特徴としては、かゆみのある湿疹が発生するというもので、症状や患者の個人差、また年間の時期にもよるが、体のどこかにアズキ大サイズのしつこい皮膚病ができるところから、顔や首、また手足の関節のくぼみなどの部分に見られる場合が多く、様態はさまざまである。中にはほぼ全身の皮膚が侵され、それまで送ってきた社会生活を断念せざるを得ない重症患者もいる。一度発症してしまうと、根本的・短時間の治療は難しい場合が、過半数以上の症例を占める。遺伝性の疾患とみられ、空気感染、肌着など衣服の共用および、洗濯機・入浴場所・水泳プールなど、施設の共用などで罹患することは明確に否定されている。
「クオリティ・オブ・ライフ」という概念があるが、健康で五体満足な人とアトピーの患者を比較すると、ここでは数値こそ算定しないもののガタ落ちしているはずである。日常生活はもちろん、皮膚の手入れに関する時間的損失、皮膚の落屑(端的に記せば「フケ」)などに起因する対人印象・外見、おしゃれや恋愛をあきらめる、学校・組織内などにおける「いじめ」の原因、果ては仲間内との温泉旅行など、交友関係に関係することは言わずもがなである。精神疾患(アトピーからこの病を併発する患者も多い)や、各種の運動器などに障害を抱えた人、そして内臓系疾患並みに、著しく生活の質を奪っている疾病であることは疑いようがないが、それだからといって直接死に至るような疾患でもないので、健常者から軽く見られるフシは否定できないが、赤ちゃんではアトピーから皮膚感染症や哺乳不良を起こして死亡したケースが日本でも報告されている恐ろしさもある。
患者自身を含めた家系内に発症する人が集中することから、発症には体質など遺伝的な素因が関わるとされているが、その他にもダニやハウスダスト、ストレスなど症状を増悪させる因子が刺激として加わり、発症していると考えられている。
最近の医学研究では、汗により症状が増悪すること、カビの一種の感染が原因となるケースがあることなどが報告されている。また、アトピーの細胞内の発症機序をターゲットとした治療法が検討されるなど進歩しているが、やはり根本的な治癒は難しいのが現状といえる。
難病やアレルギー、HIVなどと並び「2ちゃんねる」では独立した板が立てられており、情報交換が行われている。
いくつか俗説はあるが、楽しんできた俗世間、数々の情報、食生活、お世話になった幾多の人々からある程度離れなければ(温泉地などへ永住する「転地療法」)、根本的な解決にはならない…ともいわれる。成人の場合はストレスが発症のファクターとなるケースがそれ相応にあるので、「環境を変える」というのは確かに治療としては望みはあると考えられる。
ほぼ「現代病」に近いので、「歴史上の人物」にアトピーである所見を見つけることは難しいが、現代日本の芸能人の中には、アトピーと闘いつつ芸能活動を行う人物もいないわけではない。というか増加傾向にある。詳解しないし列挙も割愛するが、知りたい人は「アトピー 芸能人」あたりでググってみれば、複数名見つけられるはずである。
症状
アトピーの痒みの原因は炎症である。皮膚は角質というバリアが異物を排除し、水分量を調整しているのであるが、アトピー患者はこの角質の構造や組成に何らかの理由で問題が生じているため、特に空気の乾燥する秋口から春先にかけては、まず皮膚本来のこの機能を果たすことができない。更に、初夏から残暑にかけての多湿時には、逆に発汗によって皮膚表面に発露した塩分や脂分などの老廃物に加え、雑菌が繁殖しやすい環境となり「黄色ブドウ球菌」など健常者にとってはありふれた、ささいもない細菌によって汗腺が簡単に炎症(いわゆる「あせも」)を起こし、その痒みに耐え切れずに皮膚を掻きむしって更に悪化させてしまう症例が多い。また皮膚の無毛部はもちろん、頭髪などの下の皮膚の一部、もしくは広範にわたってフケやかさぶた、腫れ、リンパ液の滲出などを発症している場合も多い。
つまり、体外からの刺激で容易に皮膚炎を起こし、主に冬期は水分が保持できずに皮膚が乾燥してしまい、夏期は皮膚が塩分・雑菌などへの耐性を失うため発生するのである。
対処方法としては、まずは肌や頭皮を清潔に保つことが重要で、また保湿とステロイド軟膏・プロトピック軟膏による炎症抑制が重要である。かといって過度に洗浄・入浴を繰り返したり、念入りにゴシゴシ洗えばアトピーも綺麗になるというわけではないので(入浴時にタオルなどを使わないことを公言している著名人に、五木寛之・タモリ・福山雅治などがいる)、かかりつけの医師とよく相談しよう。
この病気の発現の多くは幼少期から見られるが、幼少期発症のケースでは成長とともに改善するケースが多い。特に幼少期では食物アレルギーや気管支喘息との関連性も指摘されており、食物アレルギーを治療したらアトピーが治った、という症例が多々見られている。その一方、成人になっても治癒されない例や、大人になってから発症するケースも見られる。が、環境要因など以外にも遺伝的な素因が関わっているため、根本的な治療が難しく慢性化してしまうことが多い。またアトピーでは痒みから掻いてしまうことが避けられず(寝ている間や、仕事・勉学が詰んだ時に、無意識のまま患部を掻いてしまうことも)、これもアトピーの難治化、慢性化を引き起こす。特に新生児や育ち盛りの子供の場合、将来的に知能低下を引き起こしたり、ADHDのリスクが上がる、背が伸びにくくなるなどのトラブルが報告されている。
また、アトピー患者は概して「傷の治りが遅い」ことも挙げられる。普通の人が3~4日で治癒する、意図しない切り傷、擦り傷が、治癒までに痒みを伴いしつこく1~2週間続くことも、珍しいことではない。外科手術も同様で、本来の健常者であれば抜糸不要の溶ける糸(吸収糸)を使用したのにその機能を果たさず、結局抜糸するハメに陥る、という例もある。
また、アトピー患者がヘルペスを発症した場合、まるでHIV末期患者のカポジ肉腫のような症状を呈することがある(カポジ水痘様発疹症)。
年間を通じて「アレルギーマーチ」と呼ばれる、他のアレルギーを年間周期的に繰り返す患者が多いことについては、エビデンスが得られている。たとえば元日から大晦日に至るまでは
乾燥肌で年越し→春を告げるスギ・ヒノキの花粉症→汗をかいてあせも→肌が真っ赤で、涼を求めるにも外出して公衆の面前で素肌を晒すことができない→秋は雑草類由来の花粉症→虫の音が小さくなる頃には皮膚が粉を吹き、そのまま除夜の鐘→の無限ループである。※個人差があります
さまざまな原因説・弊害
原因は様々であるとみられるが、2014年現在のところ「これだ!」というエビデンスは得られていない。むしろ「簡単に根治できる特効薬やそれに類するものが発見できればノーベル医学賞級」とされる。特に少なくとも、現代日本の都市部では、時間に追われながらも、学業や仕事・家事などから完全に縁を切ることは難しいというかほぼ無理。上手に付き合っていくしかなさそうだ。
ただ、間違いないのは
- 20世紀にはいって爆発的に罹患者が増えた疾患
- 各種の「食物アレルギー」も、大なり小なり併発している場合が多い。特に小児
- 「喘息」を併発している患者は少ない(喘息患者はアトピー患者を「外(体外)に出ている(発露している)だけマシ」と言う)が、小児では併発例も多い
- 「先進国」諸国が「途上国と呼ぶ地域」には、ほとんど罹患者はいない(まぁ、ストレスも少ないだろう)
- 良質な天然温泉が大量湧出し、手軽かつ安価に享受できる場所にも患者が少ない(上に同じ)
- 似通った時期や地域では、イヌ・ネコ・ニホンザルなどにも発現している
根本原因については、諸説が入り交じっている(上述のとおりエビデンスは得られていない)。ここでは日本におけるアトピー患者の激増について論議されている内容を列記する。ほかの動物にもあてはまり、「これは」と納得できる内容から、それは「メンタルヘルス」「資本主義」だろうが…なもの、そして眉唾ものまで様々。
- 第二次世界大戦後、インフラ整備が整い清潔な環境が確立した(寄生虫や雑菌の排除で「免疫」が薄れた)
- 家の敷地内など身近な場所から、家畜・家禽類(ほかの動物)が減った
- 加工食品・食品添加物・農薬類の普及
- 栄養過多(過剰・飽食)
- 大気汚染
- 冷却系の家電製品(特にエアコン・冷凍冷蔵庫)の普及(「冷たいものをより冷たく」が「体を冷やす」ためという)
- いわゆる「いじめ(アトピー肌の既往の外見から原因とされるもの、あるいは精神的ないじめ自体からアトピーの症状を発生・悪化させるパターンもある)」
- 過度な競争・ストレス・成果主義・格差社会・高度情報化
- 育児において、過激な自然派育児などを謳う書籍、助産師などの存在
また「アトピービジネス」と呼ばれる、うさんくさい商売もある。アトピーが難治性の疾患であることに目をつけた、人の弱みに付け込むような、一種の新興宗教的とも捉えられる(高額)商品やサービスが多い。もちろん、宗教そのものへの入信勧奨もある。心を穏やかな方向に持って行くことが患者にとって良いだろうことは否定しないが。とても残念なことは、知識がある医者でさえも、アトピービジネスに加担しているケースが有るということだろう。正直に書くと、日本の皮膚科学会は、アトピーに対してステロイドを勧める大多数の医者と、アトピーにステロイドはアカン!と言い張るごく一部の医師とで戦争になってたりするんですよね…。そこに難治性アトピーで悩む患者が後者にくっついて、標準治療はイケナイ的な宣伝が行われてるのが日本です。
※すべてを否定するわけではないので予め申し述べる
例:
- 水にまつわるビジネス(深井戸水・鉱水・温泉水・冷泉水・加工水・浄水器など)
- 入浴剤
- オリジナルの軟膏
- 健康食品・(健保適用外の)漢方薬
- 機器類(大がかりな空気清浄機など)
- 転地療法・温泉療法のあっせん
- アトピー脱ステロイド療法(脱ステには医学的には明確なエビデンスがない)
覚えておきたいのは、
- アトピーの標準治療(保湿、ステロイド軟膏orプロトピック軟膏を軸とした治療)を否定する
- ひたすらステロイド軟膏や保湿剤の副作用を持ち上げて叩く
- 海外では常識に~日本は時代遅れ~
- 標準治療よりも○○が良い
- 論文などまともな医学的根拠に触れていない
- 脱ステ派の医師のお墨付きがある(脱ステをやる医師は各自調べて欲しい)
- リンクで推奨商品の通販サイトに繋がっている
で引っかかる項目が多ければ多いほど、それはアトピービジネス目的だということです。
治療
もうかかないって何度も誓うよ
このひと塗りに思いを託す
これが、おいらの体だから。
現段階では、残念ながら対症療法しかない。薬を使用する治療としてはステロイド外用剤(軟膏)が有効とされている。ステロイドは単体で用いた場合の作用が強いため、他の疾患では段階的に強くすることが多いが、アトピーでは湿疹の程度に応じた強さのステロイドを選択ないし、濃度を調節した上で処方する(そのような選択をする医師が「まともな皮膚科医」であるとされているが、ただ処方するだけっていう医者もいる。塗り方まで指導してくれる医師こそが良医です)。
特に目の周りはステロイドをダラダラ使ってると緑内障のリスクも上がるし、アトピーを放置すると無意識にいじって白内障を引き起こすリスクも有る。顔に塗るときは専門医の指示を仰ごう。
適切な強さのステロイドがどうにも効かない場合は、関節リウマチなどにも用いられる免疫抑制剤である「タクロリムス」を外用で使用することがある。こちらはステロイドと違い小児にも使用できる反面、刺激性があるのが難点。
痒みを抑えるための抗ヒスタミン薬、水分を保持する保湿クリーム、それらと同時に抗アレルギー薬の内服剤を併用(塗布する薬剤については混和・ブレンド)して処方されることもある。
最近ではプロアクティブ療法という治療法が主流になりつつある。これは、症状を抑えきったあとも、週1回程度のステロイド軟膏使用を継続するというもので、症状無増悪期間を延ばしQOLを高めることに成功している。その一方、症状が出なくなったとは言え、いつステロイド軟膏を辞めるのか、という新しい問題も出てきている。
また、眠っている間などに皮膚を掻きむしり、爪に垢や体液、雑菌類が入り込むことに起因するトラブルを防止するため、手指の爪は生活に支障のない程度に短く切りそろえておく。ネイルをしたり爪を伸ばしたい人もいるだろうが、それがアトピーの一因とあらば、おしゃれはあきらめるしかない。
前述したとおり、頭皮にアトピーが発露することも少なくない。その場合、明らかに効果があるのは短髪にすること、ぶっちゃけいえば坊主頭、それも一度スキンヘッドにさえすれば施術直後のカミソリ負けを除いて、1ヶ月位は腫れやフケ、毛根の膿や皮脂、雑菌などともオサラバできて清潔に過ごせるはずであるが、まず女性は尼僧でも目指さない限りムリ。おまけに日本で置かれたスキンヘッドの社会的地位を考えれば、実行可能な患者は限られてくる。事業所の就業規則や事業内容などで、明文化の有無はともかくとして「ハゲでもない限りダメ」などとされている例も少なくないようだ。
施設内の法定掲示効能に「慢性皮膚病」などと記載のある温泉もあるが、この場合はそこの近隣に移住して、毎晩通いつめたり、引湯が可能で任意の時間に入浴可能な物件に移住するくらいの時間・根気・財力・そして縁などに恵まれたうえで、はじめて期待できる内容である。宿泊施設や立ち寄り湯、そして長さにもよるが逗留程度の入浴内容では、一時しのぎ的な効果は期待できるかもしれないが、宿で用いられる布団が羽毛で、患者が動物アレルギーなどを隠し持っていたとすれば、すべては水の泡…いや、温泉の泡に帰すだけである。
「これが効いた」という特効薬的な理論ではないが、職を辞した/転職した、転校した、暮らすに至便な都市部からそれなりに不便を覚悟して、温泉場や田園地帯・海浜部・山間部に移住したらほどなく快癒した、というのはよく聞く話である。しかし、手に入れた地位などを放棄してまでも、これらを実行できるさまざまな力やそれらの運を持つ人は、ある程度限られている。やはり「現状」を耐えつつ、医学の進歩を地味に待ち続けるほかになさそうである。
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