米騒動(中日ドラゴンズ)とは、2023年8月3日から日本プロ野球の中日ドラゴンズにて発生したとされる騒動である。[1] [2]
本記事で説明される一連の騒動は、なんjなどで「令和の米騒動」として知られているが、この名称は2020年11月に発売されたアクションゲーム「天穂のサクナヒメ」にまつわる出来事を指して先行して使用され、かつ、現在も広く用いられているため、SNS等の場で使用する際は注意されたい。
また、本来の意味での歴史上の事件や、本記事以外の米(コメ、※)に因んだ騒動については、記事「米騒動」を参照されたい。
2023年中日の「米騒動」
中日ドラゴンズに於ける米騒動は、要約すると2023年シーズン中に立浪和義監督の方針の結果、1軍の野手陣には白米が提供されなくなった事件のことをいう。
事の発端は、8月23日のzakzak(夕刊フジ電子版)による報道であった。記事によれば、きっかけは夏になってから細川成也が調子を落としたものの、その原因を食べすぎだと考えた立浪監督が白米を制限するなど細川に食事制限を課し、その結果復調したことであった。このことから立浪監督はチーム全員に一律に白米禁止令を出したのだという。
それまでは、管理栄養士の指導の下、選手たちは食堂でカレーや牛丼など好きな食べ方で白米を食べていたが、8月3日にいきなり白米禁止の張り紙がされ、炊飯器が撤去された。選手たちは当然驚いたが、立浪監督の方針だと聞き絶句。
しかし、この8月上旬まで30試合以上に亘り自責点0という絶対的な抑え投手として奮戦していた助っ人ライデル・マルティネスは怒り(彼の出身国キューバでは米食が一般的である)、「白米を食べさせて欲しい」と抗議した結果さすがの立浪監督もジャリエル・ロドリゲスのように亡命されちゃ困ると思ったのか投手陣にだけは炊飯器で白米が提供されることになった。
プロ野球選手は、週に6試合のペースで試合をこなす上、球を投げ込んだりするのに大変な消耗をするため、一般的な成人男性に比べ遥かに多くのカロリー摂取を要する。もちろん、太りすぎは良くないがある程度ガタイの良さを通常求められるにも関わらず、炭水化物ダイエットをする女子高生や女子大生じゃあるまいしそんなことをするはずがないだろう……そう考えられ、当初は夕刊紙がでっちあげた信憑性の薄い事件であると考えられた。
……のだが、選手の声出しで、この事件を揶揄するような声出しを行っているシーンが球団公式の動画でYoutubeにアップされ、どうやら本当に起きたことのようだと中日ファンのみならず全球団のファンに衝撃を与えた。
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https://twitter.com/bakusai_com/status/1694220421606912285
その結果、Twitterのトレンドになったり、なんGで話題になったり、中日戦でもないのにニコニコ生放送の野球中継で🌾のコメントがされるなど話題になった。
また、8月30日には文春オンラインも同様の内容の記事を掲載し、布が被せられた炊飯器の横に「しばらくお米はありません!」と貼り紙がされた写真などを紹介(アーカイブ)。徐々に騒動の内容が信憑性をもって受け止められるようになった。
正確には野手陣に対しても完全に米が断たれたわけではなく、料理のひとつとして小さなおにぎりの提供は続けられたらしいが、戦時下の配給米でもあるまいし、身体が資本のプロ野球選手が米の飯を思う存分食べられないストレスは想像に難くない。しかもこの食事制度は試合に出る訳でもない裏方のスタッフにまで及んだという。
この結果「令和の米騒動」と呼ばれることになったのだが、別に米が他球団に売り飛ばされているわけではないので、「セルフ兵糧攻め」「欠食児童」などと揶揄されることもある。なお、兵糧攻め攻めが得意な豊臣秀吉のおひざ元名古屋なだけに、三木の干殺し鳥取の渇え殺しをされるという因果。
平田の証言
この報道内容に対し、2023年シーズン中基本的にチーム関係者は沈黙を保っていたが、シーズン終了後にメ~テレにて開催されたイベントに出演した元中日の平田良介が、概ね事実であるとの証言を行った。但し、平田は2022年限りで現役を引退し、2023年はコーチやスタッフ等としても中日には所属していないため、以下の証言も現場に居合わせたわけではない伝聞の可能性が高い点は注意を要する。
平田によれば、細川成也と福永裕基の2名が試合開始の2時間前にバンテリンドームの食堂で山盛りの飯を食べているところに立浪監督が通りがかり「そんなに食って試合で動けるんか?」と注意したものの、2人が「動けます」と答えたため、立浪監督は「もしアカンかったら分かってるな?」と奮起を促した。
ところが、その日の試合で細川と福永は揃って結果を残せなかった。平田は具体的にどの試合と語っていないが、最初に白米禁止の通知が出された8月3日の前夜である、2日の中日-阪神戦〔バンテリンドームナゴヤ〕とすると、試合は3-1で中日が勝利したものの、細川は4打数無安打1三振、福永は3打数無安打・1犠打という内容で、話の辻褄は合う。
結果、翌日の食事会場では炊飯器の飯が用意されなかったのだという。
大島の闇うな丼!?
以上の米騒動の流れとは関係なしに、ベテランの大島洋平は以前から月に一度ほど、練習後に選手・スタッフ皆に自腹でうな丼弁当を配布して体力回復とモチベーション向上を図る、という活動をしていた。
ところが、偶然か否か白米禁止令が出された(とされる)直後の8月4日・5日にうな丼配布を行ったため「(立浪監督の意に反してチームメイトの腹を満たすために)うな丼を密輸した」「闇米」などと中日ファンに囁かれることになった。
この8月4・5日と連勝し、ゲンが良いので大島は6日も手配しようとしたが、日曜日でうなぎ屋が休み。案の定(?)6日は敗れた。
1日限りの解禁(?)とビジター連敗記録更新
結局8月中も中日打線の調子は上向かない中、8月22日にはたった1日だけチーム全員にカレーライスが提供されたという。この日からの阪神-中日2連戦は、高校野球の開催期間中のために甲子園球場ではなく京セラドーム大阪で開催されたが、普段中日が使わない球場のためケータリング業者に食事に関する指示がうまく伝達できておらず、通例通りに米飯が提供されたのだとか。
ただしこのカレーライスの件、ソースが夕刊フジおよびzakzak(夕刊フジ電子版)しかなく、これだけでは信憑性に疑問符がつくことには注意したい。しかし、現実のプロスポーツにおいて「えっ 今日は全員カレーライス食っていいのか!!」が実際に発生したという記事の内容はインパクト抜群で、話が広まることとなった。
この話が真実かはともかく、8月22日の中日打線は阪神先発の西勇輝から3点を奪うも終盤にかけて沈黙し、延長の末に3-4と逆転負け。翌23日も大竹耕太郎から幸先よく2点を先制するもその後が続かず2-7と逆転負け。実に1959年の記録を更新する球団ワーストの「ビジター14連敗」を喫してしまったことは、カレーライスの話に関係なく動かぬ事実である。
2023年(令和5年)8月25日 中日 VS DeNA18回戦(バンテリンドーム)
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 10 | 18 |
中日 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
そして、記事掲載後初のホームゲームとなった対DeNA戦は、一連の「令和の米騒動」を代表する試合……いや、惨劇となった。
中日松葉貴大、DeNAトレバー・バウアーの両先発で始まった試合だが、8回までに2-8という大差がついてしまう。これだけならばごく普通の一方的試合展開でしかなかったのだが、9回表に育成出身でシーズン一軍初登板となる近藤廉がマウンドに上がると状況が一変する。
まず、先頭の佐野恵太がセンターへのヒットを放つと、続く牧秀悟もヒットを放つ。この打球をセンターの岡林勇希が後逸してしまい、佐野の代走関根大気が一気に本塁帰還して1点目、さらにネフタリ・ソトも二塁打を打ち、牧の代走林琢真が帰還して2点目を失う。
近藤は、続く打者大和をセカンドゴロ、次の伊藤光は空振り三振に打ち取って2アウトまで漕ぎ付けるが、柴田竜拓に四球を与えると、代打山本祐大にタイムリーヒットを打たれて3点目、打順が一番に帰って大田泰示にツーベースヒットを打たれて4点目と5点目を失うと、制球が定まらなくなり球威も無くなってしまう。
桑原将志、代走に出て打席が回ってきた関根に連続四球を与えて満塁とすると、やはり代走後の打席となった林に走者一掃のタイムリー二塁打を打たれ、さらにソトの代走で出ていた西浦直亨にもタイムリーヒットを浴び、大和の代打京田陽太にも四球を与えてからこの回二回目の打席となった伊藤にもタイムリーを打たれて10点目を失う。
監督やコーチはベンチから出てこず、声を掛けるのも捕手の宇佐見真吾ぐらいという、完全に晒し投げ状態で放置された近藤は、柴田に死球を与えて深々と頭を下げて謝罪するという明らかにまともな精神状態ではない様子が窺えたが、次の打者山本をショートゴロに打ち取って、漸くマウンドから降りることができた。
この結果、近藤は失点10、自責点8の防御率72.00、NPB歴代2位となる1回の投球数62を記録することとなったが、DeNA側も代走出場者が全員出塁したことで、投手以外の出場野手全員出塁も記録し、また代走全員が一回に2度の得点(本塁生還)を果たすという珍記録[3]が残ることになった。
この試合は、長打を打つたびにJAあいち経済連から「あいち米 愛ひとつぶ」が贈呈されることになっており、中日は2人分に対してDeNAは10人分獲得という結果となった。このため、「米国人選手であるバウアーを擁する鬼畜米帝の米スターズに、勝ち星だけでなく大量の米を奪われる」という、馬鹿試合に花を添えた試合でもあったのだが、それ以上に、近藤への仕打ちで中日首脳陣の異様な側面を周囲に知らしめることとなり、「令和の米騒動」それ自体に暗い影を落としている。
脱浪の乱
その後、週刊誌に「一部の選手が、立浪監督を嫌がってトレードを志願していたり、トレードに出された選手をつてに自分を獲得しようとしている球団がないか探している」「そもそもおかずも少ないし活躍しても他球団にあるような褒賞もなく、選手に不満が溜まっている」などとチームが混乱、内紛状態にあることが報道され、「脱浪の乱」などと呼ばれた。
また、立浪監督が選手に「こんにちはおばかさん」などとフリーザ様で脳内再生されかねないようなとんでもない言葉を投げかけているという話もあったり、9月10日の東京ドームに於ける巨人戦では、試合後、チームのバスに乗り込む立浪監督に対し、大敗やチームの低迷に激高したファンが「おい立浪!!」「やめろー!!」「責任取れよ!」「選手はおもちゃじゃねーぞ!!」と罵声を浴びせるなど、ネタが提供され混迷が続いた。
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https://twitter.com/kota04091/status/1700784256904200262
関係者からの説明・証言
結局、2023年の中日ドラゴンズは56勝82敗5分、勝率.406のセ・リーグ最下位でシーズンを終え、立浪監督は2024年も3年契約の3年目でチームの指揮を執ることが発表された。
そして、シーズン中は報道やネット上の批評に対しても沈黙を保っていた球団関係者からも、オフシーズンに入ってちらほらとこの「米騒動」に関する説明や証言が出始めた。(上記の「平田の証言」も参照のこと。)
立浪監督の意図に関する稲村亜美の代弁
11月4日、YBS(山梨放送)ラジオの特番「プチ鹿島と櫻井和明のどこまでもプロ野球愛2023反省会」内で、『プロ野球ニュース』への出演などで立浪監督と以前から面識のあったタレントの稲村亜美が、米騒動の真相について立浪監督に直接聞いたという内容を語った。
それによれば、監督指示で試合前に白米の提供をやめたのは事実であるが、そのきっかけはある野手が試合の1時間前に大盛りの飯を牛丼にして食べているのを見かけ「それでは体が動かない」と注意したがその後も改めなかったため、強制的に炊飯器の飯を取り上げた、とのこと。しかし投手陣から要望があり、リリーフであれば実際に試合に入るまでに時間はあるということで先発投手以外には容認。スタメン野手はおにぎりで我慢するように通達した、との説明であったという。
また、この措置には立浪自身の現役中、身体が重くならないよう試合直前の食事はバナナのみで済ませていた経験も一因になっているという。加えて「独身の選手が多いことも踏まえ、試合後には栄養が取れるよう監督の意向で十分な食事が用意されていた、食べるなら試合後にしろ、という意図だった」と稲村は証言した。
大西コーチの説明
12月12日、東海ラジオの特番「Dra fes 4DAYS」に大西崇之一軍外野守備走塁コーチが出演し、「令和の米騒動」という評され方に苦言を呈した上で説明を行った。
大西によれば、ナイターの日であれば16~17時の間に各自が食堂で摂る試合前食事において、丼山盛りの飯に具をかけた牛丼など、あまりに食べ過ぎる選手がいたことが原因であるという。炊飯器の剥奪は栄養士を交えた相談の上で行われた、試合前の食事量に制限をかけるコンディション管理のための措置であり、またその分試合後には希望する選手に対し白米を含めた十分な食事を提供していた、と説明した。
ちなみに、同番組に出演していた清原和博は自身の現役中の体験談として、試合前は焼いた餅を3個ほど食べるのが基本で、現役後年に代打が中心となり試合出場が遅くなってからは試合前の食事量を増やした、と語った。
選手側の証言
年が明けて2024年1月13日、CBCテレビの公式YouTubeチャンネル「燃えドラch」に、木下拓哉・祖父江大輔が出演し、現役選手側の生の証言が得られた。
木下は「僕、『米騒動』の時はファームにいたんですが、ニュースになる前に阪神のコーチから『一軍、米ないらしいやん?』て言われて『僕らも今日の朝知ったんですけど』って(答えた)」と、報道より先に他球団関係者にも話が広まっていたことを示唆し、祖父江は「話が大きくなっている所はあって、米はあるんですよ。試合前にガッツリ食べるのはなしにしよう、ということで。試合後にもご飯を用意してくれてるんで、食事の面はしっかりしています」と、上記大西コーチとほぼ同等の説明を行った。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
- *【「令和の米騒動」「近藤の62球」で選手から総スカン】なぜ立浪監督は広島・新井監督のようになれなかったのか 両者の「決定的な違い」とは (Yahooニュース 8/31(木) 7:15)
- *中日・立浪監督の「令和の米騒動」、江川卓氏が狙いを推測 選手とすれ違いも? (モデルプレス 2023.08.29 09:45)
- *代走者が出塁を記録できる機会を得るには、打者一巡になって打席に立つ必要がある。
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