バスとは、
- bus…オムニバス(omnibus: 乗り合い)の略。
- Bass…音楽で、低音。男声の最低音域。→ベース(英語読み)
- bass…魚の種類。ブラックバスなど。
- bat風呂。
- 「バスケットボール」の略。「女バス(女子バスケットボール)」などのように用いられる。
- アダム・バス…2007年にプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスに所属していた外国人選手。
バス (bus) とは、大量の旅客輸送を目的とした自動車である。日本語訳は「乗合自動車」。
派生して慣用的に「バス路線」「バス事業者」のことも指す。以下、基本的に日本におけるバスについて述べる。
概要
定義としては「乗車定員11人以上」の車両で、法令上は「中型自動車」「大型自動車」にカテゴライズされる。長い箱状の車体を持ち、車内には座席が多数設置されている。同じ中・大型車両でも貨物自動車(トラック)の駆動システムはFR(フロントエンジンリアドライブ)であるが、バスの場合は大きさ・車種によって異なる。割合としてはRR(リアエンジンリアドライブ)が多い。ただエンジンはトラックとも共通であるし、シャーシ・ブレーキなど共有できる部品・機構はトラックと共有している。
用途としてはほとんどは法人名義であり、送迎用(教育施設、福祉施設、旅館・料亭、企業等)や公共交通機関(路線バス)、チャーター(観光貸切、ツアーバス)など多数の乗客を輸送するために使用される。個人名義で保有・使用する事例はごくまれ。
大きさ・用途による分類
- マイクロバス
- 個別記事参照。小型のバスでトラック(バン)をベースとしている。FR駆動で全長5~7m×全幅1.8~2m程度、乗車定員12~29名。国内で最も販売台数の多いカテゴリ。
- 中型バス
- 大型バスを一回り小さくした車両。RR駆動で全長8~9m×全幅2~2.3m程度。近年は一般路線用と自家用・貸切用でさらに外見・設計が分けられる。このカテゴリからは大型自動車メーカーが製造する。
- 大型ショート
- RR駆動で全長9m×全幅2.5m程度。現行車両は小グループ向け貸切用車両のみ存在し、中型バスとエンジンを共有する。
- 大型路線バス
- RR駆動で全長10.5~11.5m×全幅2.5m程度。現行車両はバリアフリー対応のため床の低いノンステップバスが圧倒的に多い。
- 大型貸切高速バス
- RR駆動で全長11~12m×全幅2.5m程度。大型路線バスと異なり床が高めでエンジンも大型。標準的な高さの「ハイデッカー」とさらに床が高い「スーパーハイデッカー」がある。
- ダブルデッカー
- RR駆動で全長12m×全幅2.5m×全高3.8mの2階建てバス。当初はドイツなどから輸入したが、その後国産車の製造・販売も行われた。現在は輸入車のみの導入に留まっている。全高が低めで居住性があまり良くなく、運行時に乗務員が複数必要であるなど高コスト運行となってしまい普及は一時的であった。但し利用者の多い短距離の昼行高速バスや、廉価が売りの夜行高速バスでは収容力の高さゆえに割と重宝される。
- 連節バス
- 国内では全長18m×全幅2.5m程度。収容力は高いが運行ルートは限定される。
- トレーラーバス
- 全長14m×全幅2.5m程度。トラクタトラックが客室トレーラーをけん引する車両。運転手が運転に専念せざるを得ずワンマン運行は不可能であり、国内では1路線のみ。
※過去にはもう少し細かい分類になっていたが、国内バス市場の縮小のため統合や製造終了が生じ、現状の分類になっている。
かつて導入されていた分類
- シティコミューター
- 小型セミボンネットバンをベースとして座席を増やした車両。FFもしくはFR駆動で全長6~7m×全幅2m程度、乗車定員18~28人程度。国産は少数でおもにヨーロッパから輸入され、コミュニティバスに使用された。床は低く扉が大きいなどの利点の反面、価格が高く整備に不安があり、大きな普及とはならなかった。
- マイクロバスワイド
- FR駆動で全長7m×全幅2.3m程度。マイクロバス(b)の幅広車。定員が多く余裕があるが、車体最前部に扉を設置するのが難しい。次項の7m中型バスにとってかわられ消滅。
- 7m中型バス
- RRもしくはミドシップ駆動で全長7m×全幅2~2.3m程度。中型バスより更に各種コストが下げられるという期待があったが、サイズの小ささから事業者の要求を満たすための専用設計の部分が多くなり、価格が下がらなかった。更にランニングコストも中型と大差なく、予定外の需要増に対応しにくいなどの難点もあって需要が減少、消滅した。
動力による分類
- ディーゼルエンジン車
- バスでは最もポピュラー。高トルクを低回転域で得られ、燃料費も抑えられるが、排ガス・二酸化炭素排出という構造上の問題を抱え、将来の継続使用が危ぶまれている。
- 圧縮天然ガス(CNG)車
- 高圧の天然ガスを燃料とする。クリーンな排ガス・二酸化炭素排出削減という利点があるものの、補給施設の少なさ、走行距離の短さなどが課題。
- ハイブリッド車
- 小型のエンジンと大出力モーターを併載した車両。エンジンを発電用のみに使う「シリーズハイブリッド」、エンジンとモーターを状況により併用する「パラレルハイブリッド」などがある。
- 電気バス(EV)
- モーター駆動の電力を大容量バッテリーで供給する車両。環境負荷は小さく騒音・振動も少ないが、CNG車同様走行距離が短めで、充電ステーションの充実が課題。
- 燃料電池バス(FCV)
- モーター駆動の電力を水素燃料電池で供給する車両。環境負荷は小さく騒音・振動も少ない上、走行距離は長くできるが、水素調達が高価で環境負荷が高く、かつ水素ステーションの不備など更に克服すべき問題が多い。
※マイクロバスにはかつてガソリンエンジン搭載車も存在していた。
バスのメーカー
エンジン・シャーシ
- 国内でバスのメーカーとは、バスの「エンジン・シャーシ」を作るメーカーのことで、ボディを架装するメーカーは「バスボディメーカー≒コーチビルダー」として区別されている。販売・アフターサービスもエンジンメーカーが行う。
- もっともマイクロバスはシャーシからボディまで一括して製造される。
- いすゞ・日野・三菱とも普通乗用車の製造経験がある。逆にトヨタ・日産には大型バスの製造経験がある。
- 海外、特にヨーロッパのコーチビルダーは、ボディだけではなくシャーシまで手掛ける(エンジンは外注する)のが一般的で、大型トラック(エンジン)メーカーと一線を画していたが、近年は日本同様トラックメーカーによる系列化が進んでいる。
- いすゞ自動車/日野自動車
- 中型以上のバスを製造する。両社の合弁で設立された「ジェイ・バス」が商品企画・ボディ架装を行うが、エンジン・シャーシなどのエンジニアリング面は両社が車種ごとに分担し、相互に供給し合っている。
- 三菱ふそうトラック・バス
- かつて大型バスの業界1位だったが不祥事によりシェアを下げ、ラインナップを縮小。現在はマイクロバス(ローザ)と大型バスを製造する。ボディは子会社の「三菱ふそうバス製造」が架装する。
- トヨタ自動車
- マイクロバス(ハイエース、コースター)のみ製造する。
- 日産自動車
- マイクロバス(キャラバン)のみ製造する。2021年まではマイクロバスのシビリアンも製造していた。
※その他マツダ(マイクロバスのみ)、日産ディーゼル工業(現・UDトラックス。中型以上)などもバス製造をおこなっていた。
バスボディ
- ボディメーカーは戦前から別に存在していたが、戦後の混乱期に多数の参入があった。
- のちにある程度絞られたが、当時はボディメーカーが運行事業者と直接取引する事例が多く、エンジンメーカーとは対等に近い関係であった。
- 三菱ふそうは自社商品のシェアを上げるため、ボディメーカーに代わって運行事業者と直接取引を行う一方、ボディメーカー経由の受注を取りやめる。三菱ふそうは当時自社でボディ架装ができたためである。
- 他社も運行事業者との直接取引に移行するとともに、特定のボディメーカーと共同で新車開発に乗り出すなど関係を変化させていく。そのためエンジンメーカーとの対等な関係を維持しようとするボディメーカーは、次第に受注減に悩まされるようになる。
- 業界全体の受注減が顕在化した2000年代に至り、系列となった2社にほぼ統合されることになった。
- ジェイ・バス
- いすゞ・日野のボディメーカー。日野車体工業といすゞバス製造が合併して誕生。
- 三菱ふそうバス製造
- 三菱ふそうのボディメーカー。かつては日清紡の系列だった呉羽自動車工業を前身とする。
- 東京特殊車体
- 特注ボディを少数受注するメーカー。上記2社が対応できない発注の駆け込み寺。
バスの車種
バス車種の一覧 ←こちらを参照されたし。
バスの運行事業者
バス事業者の一覧 ←こちらを参照されたし。
バスの運転
バスの運転免許
運転するだけなら大型自動車運転免許を所持していればよい(マイクロバスまでなら中型免許8t限定なしでも可)。しかし上記用途で運行する以上は二種免許が必須である。後述のトレーラーバスの運転ではけん引免許も必要。
大型二種免許に対するハードルの高さ、勤務時間の不規則さ、過酷な労働環境、ネガティブキャンペーンなどが原因で多くのバス会社が運転手不足に悩まされている。運転手不足を解消するため、普通免許取得3年以上の人であれば会社で大型二種免許取得費用を負担する制度が多くの会社で実施されている。また鉄道系の会社では高卒でバス運転手候補を採用し、大型二種が取得できるようになるまでは鉄道業に携わせるところもある。
運転手の業務
運転手は出勤と退勤時に点呼を行うことが義務付けられている。点呼は運行管理者(補助者)の前でアルコールチェック、健康状態の確認、その日の運行で注意するべき点の伝達、ダイヤ表の受け渡しなどを行う。
担当車両に赴き各種点検を行った後出庫する。後述のように途中で入庫する勤務もあるが、多くは勤務終了まで入庫しない。営業所によっては運行業務中に運転手のみが乗り替わることもある。そうした路線は途中で営業所を経由する系統に多い。入庫後には車内確認・点検を行う。
同じバス会社・グループ会社のバス同士が離合する場合、運転手同士が手を挙げて挨拶する場合がある。これはお互いに異常が起きていないことを確認する意味合いなどが込められているが、中には事故防止を理由に挨拶をしない会社もある他、長距離高速バスなどでは異なる会社同士でも挨拶することがある。
運転手の勤務形態:路線バス
一般的な路線バスの運転手は日勤が基本で、休日はシフト制である。
勤務時間は様々で朝の始発からラッシュの終了まで乗務した後、昼間は休憩し夕方の帰宅ラッシュから終バスまで乗務する中休勤務、朝出勤して夜退勤する通し勤務、始発から昼まで乗務する早番、逆に昼から終バスまで乗務する遅番などがある。
高速バスの場合も日勤が基本だが、距離の長い路線だと宿泊を伴う事もある他、JRバス関東・西日本JRバスの新東名新城インターやWILLER EXPRESSの新清水インターなど路線の途中で交代して運転手だけ出発地に戻るという形態もある。
近年はかなり少なくなったが、現地出退勤というものもある。多くの場合、運転手は自分が所属する営業所で出勤・退勤の点呼を行うが、中長距離路線だと終バス到着後に営業所へ帰ること、始発に間に合うように営業所を出庫する事が現実的でない場合もある。
そういった場合、路線の終点近くに現地出退勤用車庫が確保され、そこで滞泊する行路を担当する運転手は車庫の近隣に住んでいる人から選ばれ、出勤・退勤を営業所ではなく現地の車庫で行う。
現地出退勤を行わない場合、宿泊勤務を設定して対応していることもある。
その他 ※個別記事の無い語句
- アイドリングストップバス
- 信号やバス停での停車時にエンジンを止める機構を持った車両。排ガス対策や燃料費節約などを目的に各地で導入された。
- ラッピングバス
- 車体の大部分に広告デザインを施した車両。デザインがプリントされた「ラップ」を車両に貼り付けて表現しており、契約期間が終わるとラップをはがして元の車体色に戻る。
- リフト付きバス
- 車いす使用者の乗降のため専用リフトを装備した車両。一般路線用車両はノンステップ化・スロープ板対応が増え、リフトは装備しなくなっているが、逆に貸切車には乗降扉とは別にリフト乗降口を設けた車両が設定できるようになっている。
- レトロバス
- レトロイメージの特注車体を持つ車両。るーぷる仙台や横浜あかいくつなどが代表例。
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関連項目
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