国連に加盟していない国とは、国連加盟国193ヶ国(2017年10月時点)以外の、国際社会の表層から見えにくくなっている現存の国々、またはそれに準ずる地域についてまとめてみる記事である。
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- 日本政府が国家承認している国
- 国連加盟国以外では、ヴァチカン市国、クック諸島、ニウエ、コソボ共和国の4か国がある。
逆に、国連加盟国193カ国のうち国家承認していない国が現在1国だけあって、それが北朝鮮である。 - 国連への加盟資格
- 国連に加盟するためには、①安保理の勧告に基づき②総会の承認が必要である。
- 安保理の常任理事国(米英仏ロ中)には拒否権があるため、常任理事国のうち1ヶ国とでも緊張関係にある国が新規に国連加盟を申請する場合、常任理事国に拒否権を行使され、①安保理の勧告が得られず加盟を果たせないケースがある。パレスチナがまさにそれである。
- 日本が戦後、国連に加盟しようとした際も当初はソ連に拒否権を行使され、加盟を阻まれ、日ソ国交正常化を経てようやく加盟を果たせた。
- 一方、例えばユネスコに加盟する際は①執行委員会の勧告に基づき②総会の投票で加盟が承認されるが、ユネスコの執行委員会には国連安保理のような拒否権制度はないため、国連安保理の常任理事国と緊張関係にあるような国でも加盟することができる。このように、国連への加盟は、「安保理の常任理事国の拒否権」の存在が、他の国際組織への加盟と比べて国連の加盟のハードルを高くしている。
(case.1)国連のオブザーバー認定国
国名 | |
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![]() ヴァチカン市国 |
ご存知、イタリアのローマ市の一角にある国。人口約800人の超ミニ国家だが、国連加盟国以外では現在唯一、独立国としてほぼ全面的な国際承認を得ている。世界中に何億人もの信者がいるカトリックのトップであり、発言の一つ一つが極めて大きな影響力と権威を誇るローマ教皇を元首とすることから、その強すぎる影響力を行使しないために国連加盟をいわば「自粛」している。 |
パレスチナ |
イスラエルとの紛争は日本の国際ニュースでも報道され、国際的にも同情の目をもって見られてきた。ガザ地区とヨルダン川西岸地区を実効支配している。合計人口は400万人に及ぶとも言うがイスラエル支配地域からの難民を多く含み、問題化している。 国連加盟は常任理事国のアメリカが壁となって実現できていないが、ユネスコへの加盟は果たしている。(当然、アメリカはユネスコ加盟にも反対票を投じたが、反対票を入れることはできても、国連安保理のように拒否権があるわけではないので、加盟申請は問題なく賛成多数で可決された) |
(case.2)ニュージーランドと自由連合の関係にある国
ニュージーランドに防衛や政治の一部を委託した2つの小国。委託しているだけであってニュージーランド領ではないが、島民はニュージーランド国籍を持っている。
個別にはそれぞれ外交関係を結んでいる国も多数あり、日本も国家承認して国交を結んでいる。
国名 | |
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クック諸島 |
サモアとかトンガのあたりにある島国。人口1万4000人程度。 国連には加盟していないが、ユネスコ、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際民間航空機関(ICAO)、世界気象機関(WMO)には加盟をしている。 |
![]() ニウエ |
サモアとかトンガのあたりにある島国。人口1500人程度とみられる。 |
(case.3)国連加盟国からの主権分立を明白に主張し、事実上そこから独立状態にある国
国名 | どこからの主権分立を主張しているか | |
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![]() コソボ共和国 |
セルビア |
1999年のコソボ紛争後はセルビアの実効支配が及ばず独立状態にある。独自の憲法を擁し、2008年に議会が独立を採択し、セルビアからの独立宣言をする。人口約180万人。
コソボの独立宣言は国際法上、合法か違法かという問題について、国連総会が国際司法裁判所に勧告的意見を求めたところ、国際司法裁判所は「コソボの独立宣言は、国際法に違反していない」という判断を下した |
![]() 台湾(中華民国) |
中華人民共和国 | 人口2300万人(オーストラリアより多い)。世界最大にして最も政治的に安定した国連非加盟国。 独立について争っている相手の中華人民共和国が常任理事国であるため、加盟は絶望的。台湾を国家承認し国交を結んでいる国は20ヶ国以上(小国ばかりだが)あるが、いずれもその代償として中国とは国交を結んでいない。 それだけ経済的にも十分な存在感があり、各国との民間レベルの交流は非常に盛ん。たぶん、日系資本の進出がどこよりも進んでいる。 |
サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ) | モロッコ | 便宜的にモロッコから分立を主張と記してあるが、元々モロッコ領であったことなどなくかつてスペイン領だった地域。西サハラ(の少なくとも南部)のモロッコによる支配の正統性は、国際的にほとんど認められていない(詳しい歴史的経緯はwikipediaでも見よう)。 だが多くの地域をモロッコに不当占拠されており実効支配できている地域はわずか。元々独立国として確立していたわけでなく、国土はほとんど砂漠というだけあって基盤の弱い政府である。それでも、AU(アフリカ連合)に加盟し、アフリカと中南米を中心に90ヶ国くらいから国家承認を受けている。 世界地図で見るとそこそこ広く見えるが、人口は約27万人しかいない。街といえる街は少なく、ほとんど砂漠なのである。 |
ソマリランド | ソマリア | ソマリアと言えば、アフリカで最も単民族に近い構成の国なのに、紛争もテロも起こり放題とアフリカで最も統治の崩壊している国である。そんな戦国ソマリアの中で、1991年から北部で勝手に国家を立ち上げて比較的うまくやっている地域がソマリランド。ソマリアの他の地域に比べればだいぶ安全とのこと。現地の車の99%が日本車(NHK報道)。 実効統治地域の人口は350万人ほど。ひどく内弁慶な国家で、未だに他国から国際承認を受けていない。 |
北キプロス・トルコ共和国 | キプロス | キプロス(キプロス島の南部~北西部を支配)とは30年以上分裂状態にあるが、中国と台湾のような関係で、一方しか国家として認めてはいけない感じらしい。しかし事実上完全な独立国である台湾とは違い、こちらはお隣のトルコの傀儡国家である。 民族的・政治的にトルコとの繋がりが強く、キプロスではなく北キプロスのほうを承認しているのはトルコただ一国。国防は駐留トルコ軍に頼っている。人口27万人くらい。 |
沿ドニエストル・モルドバ共和国(トランスニストリア) | モルドバ | 日本では「沿ドニエストル共和国」とも呼ぶ。ソ連分裂後、モルドバのモルドバ人主義に反対するドニエストル川沿岸のロシア系住民が反発したことに端を発して独立宣言が出された。 現在ロシアの内政干渉を受けて傀儡国家化している。ここも国際的な国家承認はほぼ受けていない。支配地域の人口50~60万人と見られる。 |
![]() 南オセチア共和国 |
ジョージア | ジョージアの北東部に当たる地域。ここもジョージアの民族主義への反発が独立主張の背景にある。 沿ドニエストル・モルドバ共和国と同じく、ロシアの干渉が見られる。国家承認しているのはロシアやベネズエラなどの数ヶ国。人口約7万人と小さい国である。 |
アブハジア共和国 | ジョージア | ジョージアの北西部に当たる地域。古くから他民族が交わる土地で、90年代には独立運動がジョージアの激しい弾圧を受けた。 人口約25万人。南オセチアと同じく、国家承認しているのはロシアやベネズエラなど数ヶ国。 |
アルツァフ共和国 | アゼルバイジャン | アゼルバイジャンの西部を実効支配している。アルメニアの傀儡国家として結構有名ではないだろうか。旧称ナゴルノ・カラバフ共和国。 アゼルバイジャンのみならず、周りのイスラム国家(特にトルコやパキスタン)から凄まじく白い目で見られている。人口15万人程度。国際的な承認は皆無。 |
(国?)半独立的な地域、独立運動の盛んな地域、ミクロネーションetc.
既存国から完全に独立した統治実態がない、事実上独立していても主権の独立を掲げていない、などの理由で国際的に国家と見なすのは難しい地域。
挙げていくときりがないので(言わずもがな、ソマリアでは何十もの地域を基盤とした独立勢力がある)、われわれに多少はなじみのありそうな主なものをいくつか。
国名/地域名 | 属する主権国家 | |
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クルディスタン | イラク | 日本では「クルド人自治区」とも呼ばれ、その名の通りクルド人が自治している地域。独自の国旗や国歌、省庁、軍隊を持つなど、半ば独立した状態であると言える。 ただ、イラク側も新政府成立後は自治区として静観しており、クルド側も現在国際的な独立は主張していない。 |
チベット | 中華人民共和国 | 独立した古~い歴史を持つ王国である。50年代のチベット動乱から続く独立運動があるが、中国から厳しい弾圧を受けてきた。 現在、元首ダライ=ラマ14世で知られる亡命政府がインドにあり、十数万人に及ぶ難民支援に力を尽くしている。 |
![]() ウイグル自治区 (東トルキスタン共和国) |
中華人民共和国 | この地域も独立運動が中国から弾圧を受け、アメリカ合衆国に「東トルキスタン共和国亡命政府」というのがある。 その亡命政府とは別に、中国国内での高度なウイグル人自治を求める運動も多々あるようである。 |
チェチェン共和国 | ロシア | 独立主張を理由とした犯罪やテロが起こっている。 |
アルバ島 | オランダ | カリブ海の島。オランダはいくつかカリブ海に島を持っているが、アルバ島だけ独自の自治機構を求めて分離された。 現在オランダ領の看板は外していないだけで、ほとんど独立と言える状態にある。 |
![]() マルタ騎士団 |
― | 十字軍時代から続く騎士修道会で、現在は領地を持っていない(現在の国際通念上の国家と見なすことはできない)が外交主体としての主権を残したままであり、なんと94ヶ国と外交関係を持ち在外公館などを置いている。 ローマにある本部の建物は、イタリア政府から治外法権を認められている。 |
ワイ公国 | オーストラリア | 自治体が自宅前に道路を敷設しなかったことに激怒した男、ポール・デルプラットが2004年11月に独立宣言。なんと地元自治体からノリで独立(の自称)を認可されてしまった。国民は家族5人とのこと。 |
![]() シーランド公国 |
― | イギリス近海上の人工要塞を国土として、ある人が独立宣言したもの(当時は公海)。 要塞の実効支配は一応行っていると言えるかもしれないが、定住住民はなく(首脳はドイツに「亡命」している)、しかも国際法上では人工構造物は国家領土とは認められていないため、国家成立要因に欠けている。 西川きよしがTV番組の企画か何かでこの国の貴族になった(お金で地位を買えるらしい)。 |
![]() セボルガ公国 |
イタリア | 北イタリアの、300人ほどの本当に小さな村。かつて公国として神聖ローマ帝国に編入されたが、小さすぎて気づかれてもいなかったのか、イタリアへ統一されたときには帰属について何も言及されなかった。 現在、村人は平和なイタリアンライフを送りながらも地味に独立国家を自称しているのだが、特に相手にしている国はないようである。 |
なお、クルディスタンやアルバ島のほかにも、本国と違うシステムでの自治権が認められている地域は多く、オリンピックやワールドカップで本国とは別に代表を出しているところもある。→ 香港、マカオ(以上中華人民共和国領)、ニューカレドニア、タヒチ(以上フランス領)、バミューダ諸島、マン島、ジブラルタル、フォークランド諸島(以上イギリス領)、グリーンランド、フェロー諸島(以上デンマーク領)、プエルトリコ、グアム、アメリカサモア(以上アメリカ合衆国領)その他多数。
中立地
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