カレンミロティック(英:Curren Mirotic、香:機伶迷宮)とは、2008年生まれの日本の競走馬。栗毛の騸馬。
10歳まで走り続け、8歳・騸馬・13番人気で天皇賞(春)制覇……を僅か4cm差で逃すなど、たびたび中長距離GIで穴を開けた名脇役。
父ハーツクライ、母*スターミー、母父A.P. Indyという血統。
父は国内で唯一ディープインパクトに土を付け、ドバイGIを勝ち、種牡馬としても大成功を収めた名馬。カレンミロティックら2008年産が初年度産駒である。
母はアメリカ産のマル外で、芝の短距離を走り10戦2勝。
母父エーピーインディはアメリカ三冠馬シアトルスルー産駒で、ベルモントSとBCクラシックを制し、種牡馬としても成功して父の血を繋げた名馬。
祖母Caerlinaは1991年のフランスオークス馬。半姉(父アグネスタキオン)に、2010年の京都牝馬S(GIII)を勝ち同年のヴィクトリアマイル2着の実績があり、母としてもホウオウアマゾンを産んだヒカルアマランサスがいる、なかなかの良血である。
2008年2月22日、ノーザンファームで誕生。オーナーはカレンチャン、カレンブーケドールなど「カレン」冠名を用いる鈴木隆司。
馬名意味は「冠名+迷路(ハングル)と英語の形容詞語尾ticからの造語」と登録されているが、おそらく東方神起の楽曲「呪文 -MIROTIC-」が由来と思われる。
栗東・平田修厩舎に入厩したカレンミロティックだが、入厩当時から「この馬は相当うるさいから」と言い含められるほど気性が激しかった。すぐに馬っ気を出す、立ち上がって他の馬を威嚇する、と落ち着きがなく、なかなか思うように調教も積めず体も絞れなかったという。陣営は去勢も考えたが、能力があることは感じていたため、とりあえずクラシックの間は去勢はしないでおこうという方針で進めることになった。
2010年11月7日、京都・芝1800mの新馬戦でデビューしたがトーセンラーの4着。明けて3歳、1月15日の未勝利戦はダノンシャークの4着と同期の後のGI馬たちと当たったりしつつ、2月の4戦目で勝ち上がったが、500万下は5着、8着と敗れ、結局クラシック戦線に入っていくことはできなかった。
10月の平場の500万下で2勝目を挙げ、1000万下を4着、3着として3歳は終了。明けて4歳、1月の初戦も3着に終わる(ここから主戦が池添謙一となる)。レースは真面目に走っていたので担当の調教助手は「去勢は可哀相」と思っていたそうだが、結局気性に落ち着きもみられず、1000万下ではワンパンチ足りないという判断から去勢されることになってしまった。
5月、騸馬となって初戦は馬体重-24kgながら3着。その後降級となり、9月の降級初戦を快勝すると、1000万下も2着のあと2戦目で突破。1600万下では3着→2着→2着→2着と勝ちきれないレースが続いたが、5歳6月の垂水Sをレコードで5馬身差圧勝してオープンに昇格する。
オープン昇格初戦の8月、札幌日経オープン(OP)は1.7倍の1番人気に支持されたが、10番人気8着に撃沈。ここまで勝ったレース5戦は1800mが4戦、2000mが1戦。ハーツ産駒とはいえ母は短距離馬だし、2600mは長かったか……。そう思うのが普通であったろうが、そういうわけではなかったことは、この後彼自身が証明していくことになる。
続いて向かったのは重賞初挑戦となる金鯱賞(GII)。1番人気が前走アルゼンチン共和国杯14着のメイショウナルト、2番人気が前走天皇賞(秋)13着のオーシャンブルーというはっきり言って弱メンだったため、6.6倍の3番人気に支持された。
〝サイレンススズカデー〟と銘打たれたこの日、ハイペースで逃げる1番人気メイショウナルトを2番手で追ったカレンミロティックは、直線で悠々と抜け出すと、追ってくるラブリーデイやウインバリアシオンを寄せ付けず2馬身半差で快勝。嬉しい重賞初制覇を飾った。
この勝利で有馬記念(GI)に向かったが、オルフェーヴルの引退レースなので池添は当然そちらに回り戸崎圭太がテン乗り。スタートでダノンバラードの影に完全に隠れて実況にスルーされたりしつつ2番手で先行し、3コーナーで先頭に立ったが、オルフェにあっさりかわされるとあとはオルフェの有終の8馬身差圧勝の後ろで地味に6着。
明けて6歳となった2014年は中山記念(GII)から始動したが、道悪で得意の先行策が取れずブービー14着撃沈。陣営によると雨はからっきしダメらしい。
続く産経大阪杯(GII)は8頭立てながらキズナ、エピファネイア、メイショウマンボと濃いメンバーの中、トウカイパラダイス・ビートブラックと3頭で後ろを離して逃げたが直線で捕まり4着。
安田記念との両にらみで選択した鳴尾記念(GIII)も最内で頑張ったが4頭もつれてのゴールで4着。
そんなこんなで迎えた宝塚記念(GI)。ゴールドシップ、ウインバリアシオン、ジェンティルドンナが人気を分け合う中、カレンミロティックは55.9倍の9番人気だった。
レースはゴールドシップが珍しく先行策をとる中、逃げるヴィルシーナとフェイムゲームを見ながらゴルシの手前の3番手を追走。直線でも逃げた2頭が粘る中、ゴールドシップが悠然とそれをかわして突き抜ける横で、カレンミロティックもひっそりと前2頭をかわすと後続を寄せ付けず、ゴルシに3馬身差をつけられたものの堂々の2着に突っ込んだ。3着にも8番人気ヴィルシーナが粘り、1番人気のゴルシが勝ったにもかかわらず馬連8990円、3連単は25万1440円もつく波乱を演出してみせた。
秋は京都大賞典からの予定だったがなかなか体勢が整わず、結局初の海外遠征となる香港ヴァーズ(GI)にぶっつけで参戦。4番手で進めて4コーナーから果敢に前を捕まえにいったが、結局かわしきれないままに後続に呑まれて5着。
明けて7歳は天皇賞(春)を目標に、阪神大賞典(GII)から始動。ミルコ・デムーロが騎乗したが、直線で内を塞がれて進路を探すことになり、ゴルシの3連覇の後ろでひっそりと4着。
そして迎えた天皇賞(春)(GI)。蛯名正義が騎乗するカレンミロティックは、30.5倍の10番人気と相変わらずの人気薄だった。
しかし内枠からすんなりと2~3番手のポジションを確保すると、向こう正面でゴルシが捲りを仕掛けてくるが動じることなく内に構え、淀の下り坂で前を捕らえにかかる。4コーナーで先頭に抜け出すと、そのまま後続を突き放して直線へ。直線でもそのまま押し切るかと思わせるほどに粘りに粘ったが、最後はゴールドシップにかわされ、外からフェイムゲームにも差されて惜しくも3着。
敗れはしたが、またも3連単23万6300円の波乱を演出し、穴馬としての評価を確固たるものとした。
続いては蛯名とともに前年2着の宝塚記念に向かい、14.1倍の5番人気とまずまずの支持を集めたが、ゴルシ120億円事件の影でひっそりとスタートで挟まれて得意の先行策をとれず、ゴルシと一緒に13着撃沈。
秋は蛯名と京都大賞典(GII)から始動。2番手追走から直線抜け出したもののラブリーデイとサウンズオブアースにかわされ3着。
天皇賞(秋)(GI)では吉田豊が騎乗したが、前半で3番手の位置を取るのにやや脚を使ってしまったためか、直線で全く伸びず13着に沈没。
ジャパンカップ(GI)では鞍上が蛯名に戻り、他に逃げ馬がいなかったこともありハナを切ると後続を大きく離して逃げを打ち、残り300m手前まで粘ったが力尽きて15着。結局春天のあとはGIでは惨敗続きで7歳を終える。
明けて8歳も現役続行し、前年に続いて阪神大賞典から始動。500万下以来久々の騎乗となった秋山真一郎とともにここでも後ろを離して逃げを打ったが、直線入口でもう捕まって6着。
そんなこんなで迎えた天皇賞(春)。人気どころは前年の有馬記念馬ゴールドアクター、菊花賞馬キタサンブラック、阪神大賞典を勝った上がり馬シュヴァルグラン、昨年2着のフェイムゲームといったところ。久々に鞍上に池添謙一が戻ってきたカレンミロティックはというと……単勝99.2倍の13番人気。単勝万馬券一歩手前という全くの人気薄だった。
レースは最内のキタサンブラックがスローペースで逃げを打ち、2枠3番のカレンミロティックは内の3番手でじっと脚を貯めながらそれを追走する。キタサンブラックの武豊が下り坂でペースを上げて後方待機勢を潰しにかかる中、カレンミロティックは上がって来たトーホウジャッカルとゴールドアクターの後ろで内に構えて直線。そのまま逃げ切りを図るキタサンブラックに少しずつ詰め寄っていくカレンミロティック。
残り200を過ぎたところでキタサンを捕らえた。並んだ。
残り50でかわした。カレンミロティックが僅かに先頭に立った。
武豊の魔術的なラップで脚を使わされた後続勢は届かない。
春の盾は間違いなくカレンミロティックの目の前にあった。
だが、かわしたはずのキタサンブラックが、なぜかまだ真横にいる。
間もなく残り200、粘っているキタサンブラックを3番カレンミロティックが捕らえる!
さらには外から9番のトーホウジャカル、間からは8番のシュヴァルグランが伸びてくるが、
さあ前はキタサンブラック! カレンミロティック!
キタサンブラック! カレンミロティック!
2頭まったく並んでゴールイン!
キタサンブラックか! カレンミロティックか! 最後は2頭並んでのゴール!
ゴールの瞬間は完全に横並び、ストップモーションでもどちらが勝ったのかわからない、京都競馬場がどよめきに包まれた大接戦。現地実況でもあるラジオNIKKEIの小塚アナは断定を避け、カンテレの吉原功兼アナは「内差し返した!キタサンブラック!」とキタサン優位と見た一方、NHKの藤井康生アナは「カレンミロティックー!」「なんとカレンミロティックこれは驚いた!」「まさかまさかの8歳馬、騸馬初の天皇賞制覇か!」と完全にカレンミロティック勝利実況。
そして写真判定の結果……僅か4cm差でキタサンブラックが差し返していた。
8歳にして文句無しに生涯最高の走りを見せたカレンミロティックだったが、春の盾の栄冠はほんの僅かの差でその手からすり抜けていった。そしてNHKの藤井アナの実況が放送事故となってしまったことは言うまでもない。
騸馬なので種牡馬入りの道はないカレンミロティックは、その後も走り続けた。宝塚記念を11着、オールカマー(GII)を9着と敗れたあとオーストラリアに遠征し、メルボルンカップ(G1)に挑戦したが、苦手な道悪でブービー23着と大敗。
9歳も阪神大賞典から春天を目指す予定だったが、阪神大賞典の前に裂蹄を発症。回避して春天直行に切り替えたが、1週間前の追い切り後に裂蹄が再発し無念の回避となった。
結局メルボルンカップから1年近くブランクが空き、秋に復帰したが、さすがにそれ以降の彼の戦績に語るべきことはほとんどない。10歳となった2018年、2年ぶりの天皇賞(春)をブービー16着に敗れたところで長い現役生活にピリオドを打った。
通算43戦6勝[6-6-6-25]。勝ち鞍だけ見れば重賞勝ちは5歳の金鯱賞のみだが、ゴールドシップやキタサンブラックといったスターホースを相手にたびたびGIで穴を開け、2010年代の中長距離路線を穴馬として盛り上げた名脇役であった。
引退後はノーザンホースパークで乗馬となり、2023年まで在籍。2023年12月、デルタブルースやアロンダイトなどがいる岡山県の引退馬牧場「オールド・フレンズ・ジャパン」へ移動した。
ハーツクライ 2001 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
アイリッシュダンス 1990 鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
*ビューパーダンス | Lyphard | ||
My Bupers | |||
*スターミー 1998 鹿毛 FNo.16-d |
A.P. Indy 1989 黒鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning |
My Charmer | |||
Weekend Surprise | Secretariat | ||
Lassie Dear | |||
Caerlina 1988 鹿毛 |
Caerleon | Nijinsky II | |
Foreseer | |||
Dinalina | Top Ville | ||
Shahinaaz |
クロス:Northern Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2023/02/19(日) 07:32:34 ID: TovRmKl9I2
この馬めっちゃ印象あるわ〜
特にゴルシが勝った春天で一瞬他馬を置き去りにしかけたのとキタサンブラックに数センチ差で負けた春天が
2 ななしのよっしん
2023/07/18(火) 09:04:39 ID: uJUHpLpsGK
まぁ後々を考えると、キタサンも当時は未だに本格化前みたいなものだったんだろうけど、
今見ると「鞍上武豊のキタサンブラックに」「春天で」しかも8歳で「4cm差まで迫った」というインパクトは凄い。
あの世代の凄みが産駒を通じて詳らかになり始めた今では猶更。元気にしてるかな。
3 ななしのよっしん
2023/09/22(金) 00:21:00 ID: X+Ool0mBil
ウマ娘化あり得るかな?
セン初になるな。 まぁモブとしてはレガシーが先だけど。
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最終更新:2024/04/21(日) 00:00
最終更新:2024/04/21(日) 00:00
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