エーピーインディ(A.P. Indy)とは、1989年産のアメリカの元競走馬・元種牡馬である。
三冠馬Seattle Slewの傑作の一頭であり、種牡馬としても大種牡馬の父に劣らぬ活躍で血統地図に大きな足跡を残した。
父はSeattle Slew、母は自身も重賞を2勝したWeekend Surprise、母の父は三冠馬Secretariatという三冠馬の血を引く良血である。
更に半兄Summer Squallもプリークネスステークスを勝利しており、1990年7月の1歳馬セリにおいて、当時F1開催を目指してオートポリスを建設する(馬名のエーピーもこれが由来)などバブリーだった日本人の鶴巻智徳オーナーに290万ドルで競り落とされた。
……さすがに、アメリカの偉大な血統を奪われるのはイカンと思ったのか、あるいは290万ドルポンと出せる状況でなくなったのか、アメリカ人オーナーと折半して所有することになった。
ちなみに290万ドルはこのセリの最高額で、2位も鶴巻オーナーが200万ドルで落札したエーピージェットだった。バブリーだなぁ。
西海岸のニース・ドライスデール厩舎から2歳の8月にデビュー。デビュー戦は4着に敗退するがそこから3連勝。初GI勝利も4戦目のハリウッドフューチュリティで飾っている。
ちなみにデビュー戦と次戦の間に、本馬は停留精巣の手術を受け、片側の睾丸が除去されている。停留精巣は陰嚢の中に精巣が下りてこない症状で、最悪痛みだけでなく悪性腫瘍や授精能力の喪失に繋がるため、放置するのは非常にリスキーなのだ。
閑話休題、3歳シーズンはGIIから始動しきっちり勝利、西海岸のケンタッキーダービープレップであるサンタアニタダービーもきっちり勝ちケンタッキーダービーの有力馬に挙げられたが、よりによって当日の朝に左前脚に軽い故障を発症したため回避を余儀なくされる。その後はクラシック最終戦ベルモントステークスに照準を合わせ、ベルモントパークの前哨戦ピーターパンステークスを快勝。本番もきっちり差し切りクラシック獲得。優等生だなあ。
秋はブリーダーズカップ・クラシックを目標に始動するがまさかの2連敗。2戦目のスタートで躓いた際、ケンタッキーダービーの日に怪我した左前脚の症状を悪化させて暗雲が立ち込めたが、立て直した本番では2馬身つけて完勝。このレース限りで引退し、年度代表馬と最優秀3歳牡馬に選ばれた。ちなみに獲得賞金は297万9815ドルで、この手の高馬には珍しく賞金が落札額を上回っている。
この後日本で種牡馬入りする話もあったそうだが、さすがに生産者が鶴巻オーナーから所有権を買い戻して阻止されている。あとオートポリスの記事にもあるが同年バブル崩壊でオートポリスの運営会社が経営破綻してしまい、補填のために手放さざるを得なかった事情もあると思われる。
競走馬としても上々だが、本領発揮は種牡馬入りしてからである。Rags to Riches(ラグズトゥリッチズ)やBernardini(バーナーディニ)、Mineshaft(マインシャフト)らは競走生活でも活躍したが、繁殖馬としてはより活躍する傾向があり、自身も種牡馬として一流で、種牡馬として活躍するSly Mesa(スカイメサ)やTapit(タピット)を輩出したPulpit(プルピット)、僻地のメリーランド州からケンタッキー州栄転を果たしたMalibu Moon(マリブムーン)、早逝したが僅かに残った産駒が大活躍したOld Trieste(オールドトリエステ)ら、もう後継種牡馬に困ることがないくらい潤沢に活躍している種牡馬が存在する。エーピーインディ自身は2000年にアメリカ競馬の殿堂入りを果たし、2003年と2006年の2度の北米リーディングサイアーとなった。
アメリカではMr. Prospector・Danzig・Storm Cat・Deputy Ministerらの係累が覇を競っているが、エーピーインディの系統は第三極としてきっちり存在感を示しており、先細り気味だったSeattle Slewの血を守ることに成功した。特にTapitは2014年~2016年の3年連続で北米リーディングサイアーに輝き、さらには怪物Flightline(フライトライン)を送り出したので、先行きは当分のところ安泰だろう。
日本でも直仔のシンボリインディがGIを勝ったが、本領は孫世代以降。Mineshaft産駒カジノドライヴやMalibu Moon産駒オーブルチェフを露払いに、種牡馬として輸入された孫世代の*シニスターミニスターと*パイロがダート種牡馬として大活躍。前者はテーオーケインズ、キングズソード、ミックファイアなど、後者はミューチャリーやメイショウハリオを送り出している。さらに*ベストウォーリアの活躍で輸入された直仔*マジェスティックウォリアーもライトウォーリアやラムジェットを輩出、カジノドライヴもカジノフォンテンを送り出し、エーピーインディ系は日本のダート界に確固たる勢力を築き上げている。Tapit産駒の*テスタマッタを韓国送りにしちゃったのは勿体なかったのでは……。ちなみに母系まで含めればグランアレグリア、アルアイン・シャフリヤール兄弟、フォーエバーヤングなども母がエーピーインディ系である。
南半球でも南アフリカのJay Peg(ジェイペグ)がドバイDFなどを勝利し、エーピーインディ系の適性の幅広さが窺える。
2011年、受胎率の低下を理由に自身は種牡馬を引退。
以後は功労馬として悠々自適の生活を送り、2020年2月21日に死亡した。31歳の大往生だった。
| Seattle Slew 1974 黒鹿毛 |
Bold Reasoning 1968 黒鹿毛 |
Boldnesian | Bold Ruler |
| Alanesian | |||
| Reason to Earn | Hail to Reason | ||
| Sailing Home | |||
| My Charmer 1969 鹿毛 |
Poker | Round Table | |
| Glamour | |||
| Fair Charmer | Jet Action | ||
| Myrtle Charm | |||
| Weekend Surprise 1980 鹿毛 FNo.3-l |
Secretariat 1970 栗毛 |
Bold Ruler | Nasrullah |
| Miss Disco | |||
| Somethingroyal | Princequillo | ||
| Imperatrice | |||
| Lassie Dear 1974 鹿毛 |
Buckpasser | Tom Fool | |
| Busanda | |||
| Gay Missile | Sir Gaylord | ||
| Missy Baba |
クロス:Bold Ruler 4×3(18.75%)、Somethingroyal 3×5(12.5%)、Nasrullah 5×5×4(12.5%)、Princequillo 5×4(9.38%)、Turn-to 5×5(6.25%)
A.P. Indy 1989
|Pulpit 1994
||Lucky Pulpit 2001
|||*カリフォルニアクローム 2011
||||Kabirkhan 2020
||Tapit 2001
|||*テスタマッタ 2006
|||Tapizar 2008
||||Monomoy Girl 2015
|||Tonalist 2011
||||Country Crammer 2017
|||*ゴールデンバローズ 2012
||||フジユージーン 2021
|||*ラニ 2013
||||ケウ 2019
||||リメイク 2019
||||フークピグマリオン 2021
|||Flightline 2018
||*パイロ 2005
|||オーバーザリミッツ 2015
|||ミューチャリー 2016
|||メイショウハリオ 2017
|||ベルピット 2020
|||シャインブラスト 2023
|Old Trieste 1995
||*シニスターミニスター 2003
|||インカンテーション 2010
|||ヤマニンアンプリメ 2014
|||テーオーケインズ 2017
|||キングズソード 2019
|||グランブリッジ 2019
|||ドライスタウト 2019
|||ミックファイア 2020
|*シンボリインディ 1996
|Malibu Moon 1997
||*オーブルチェフ 2009
|Mineshaft 1999
||*カジノドライヴ 2005
|||カジノフォンテン 2016
|*マジェスティックウォリアー 2005
||*ベストウォーリア 2010
||プロミストウォリア 2017
||ライトウォーリア 2017
||ラムジェット 2021
|Congrats 2000
|*オナーコード 2011
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/12(金) 11:00
最終更新:2025/12/12(金) 10:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。