ダーク・ネスト三部作(The Dark Nest Trilogy)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説シリーズである。
「レジェンズ」作品群に属する。全3作。著者はトロイ・デニング。
集合意識を持つ昆虫種族キリックが引き起こす危機にジェダイと銀河同盟が対処するなかで、ルーク・スカイウォーカーが新ジェダイ・オーダー体制の再構築に挑む姿を描いた長編小説シリーズ。
映画新三部作に並行して展開された超長編「ニュー・ジェダイ・オーダー」シリーズの直接の続篇ということもあり、同シリーズで残されていた伏線や同シリーズ刊行後に公開された映画エピソード3『シスの復讐』の要素を起用しつつ、同著者による『タトゥイーン・ゴースト』で触れられたキリックや「ニュー・ジェダイ・オーダー」で問われたジェダイ哲学についてもさらなる掘り下げが行われた。
2021年時点で、レジェンズ作品群の邦訳小説としては作中時系列上では最新時間軸のシリーズである(単行作品では『ミレニアム・ファルコン』が最終)。
銀河に恐るべき惨禍を引き起こしたユージャン・ヴォング戦争の終結から5年。多くの若いジェダイ・ナイトが、かつて行方知れずとなった若きジェダイ、レイナー・スールからのフォースを通した呼びかけに応じ、突如として任務を放棄する事件が発生する。
ユージャン・ヴォング戦争中、ロミ・プロウとウェルクという2人のダーク・ジェダイに連れ去られて姿を消したレイナーは、未知領域に墜落して昆虫種族キリックに保護されていた。重傷を負ったレイナーは彼らキリックの持つ集合意識に加わり、未開のキリックを短時日で大きく発展させ、領域を拡張したが、同じ未知領域に帝国を築くチス・アセンダンシーと衝突し、かつての仲間の助けを呼んだのである。
調査に向かったジェダイのグランド・マスター、ルーク・スカイウォーカーは、キリックを観察するうち、種族全体の集合意識から隠れた悪意ある一派「ダーク・ネスト」の存在に気づく。ルークたちはダーク・ネストの「見えない女王」となったロミ・プロウと戦い、ウェルクを倒す。ダーク・ネストに驚愕したレイナーは、チスとの戦いを避けるため、キリックのウテゲトゥ・ネビュラへの移住に同意する。
しかし、新天地と思われたウテゲトゥ・ネビュラの惑星は、謎の酸性物質が侵食する有害な地だった。ダーク・ネストによる無意識下からの干渉もあって、レイナーは銀河同盟の裏切りと判断し、ひそかに復讐に着手する。銀河同盟では、兵器用のティバナ・ガスの盗難や海賊の跳梁、そしてキリックの密輸出する中毒性のアルコール飲料ブラック・メンブロージャがもたらす被害が深刻化し、銀河同盟政府にはキリックとチスの争いに干渉したジェダイ・オーダーへの不信も生じていた。
事態の解決に向かって囚われたルークとハンのため、レイアたちジェダイのチームが救援に赴く。しかしジェダイの干渉に不信感を抱く銀河同盟は、ネク・ブウァトゥ提督率いる第五艦隊を展開し、ウテゲトゥ・ネビュラを封鎖していた。レイアとジェダイの師サーバ・セバタインが乗る<ミレニアム・ファルコン>は、第五艦隊の旗艦<アドミラル・アクバー>に拿捕されてしまう……。
対峙するレイアとブウァトゥだが、そこにロミ・プロウの意志を受けたキリック艦隊が現れる。<アクバー>艦内では潜んでいたダーク・ネストの工作部隊が姿を現し、銀河同盟軍は<アクバー>を棄てることを余儀なくされた。ルークとハンも密輸業者ジャイ・ジューンたちの助けで囚われの身から脱出し、ロミ・プロウ打倒を試みていたが、強力なフォースで巧みに身を隠す彼女の前に失敗を余儀なくされる。
ルークが戻ったジェダイ・オーダーでは、ルーク不在と銀河同盟の介入で内部の問題が悪化していた。ジェダイたちは各自の良心に従って活動し、ときに激しく対立する状況に陥っていたのだ。理想のあまり彼らに統一された指導を与えてこなかったことを反省したルークは、全てのジェダイに通告した。団結せよ、オーダーへの献身を最優先せよ、何よりもまずジェダイ・ナイトであれ。でなければジェダイであることをやめよ、と。大きな賭けだったが、彼は勝った。ジェダイ・オーダーは統率を取り戻す。
改めてダーク・ネストに立ち向かうルークだが、彼には気がかりがあった。愛する妻マラ・ジェイドが、過去に皇帝のエージェントとして彼の母を手に掛けたという示唆を受けたのだ。名も顔も知らぬ母の手がかりはR2-D2が経年劣化したメモリーに隠すホロ記録だけだったが、完全な記録を見られないうちに情勢が悪化。ルークたちは再びロミ・プロウに挑むが、彼女はルークの心の隙を突いてマラに重傷を負わせ、またも姿を消す。改めてR2の記録を知る必要を感じたルークは、母パドメ・アミダラが父アナキン・スカイウォーカーの手で死の床につく姿を直視し、愛する家族が傷つく恐怖を受け入れる。
地表のジャングルでチスとキリックの血みどろの戦いが続く惑星テヌペの軌道で、銀河同盟艦隊はキリック艦隊と対峙した。銀河同盟はチスの戦いに介入せず、ロミ・プロウとレイナーの排除、<アクバー>奪回だけを目的とする。キリックを指導する2つの意志を排除し適切な処置を行えば、キリックは本来の未開種族へと戻り、脅威ではなくなるだろう。<アクバー>に乗り込んだルークは、キリックの抵抗を一蹴し、レイナーを捕らえ、落ち着き払ってロミ・プロウを切り捨てた。
キリックは戦いつづける力を失い、地表ではキリック絶滅を目論むチスの生物兵器がレイアにより阻止され、戦いは終わった。チス・アセンダンシーは渋々ながら和平に同意した。ルークは銀河同盟の諮問評議会にジェダイが席を持つ現状を見直し、新たに作るジェダイ・カウンシルを通して元首に助言する体制に変えることにする。レイナーとキリックが示したように、いかなる善の理由があっても、ジェダイは人々を支配するべきではない――ジェダイは仕えるべきなのだ。
原著は長篇小説全3作(ペーパーバック)でいずれも2005年刊行。邦訳にあたっては全作が文庫版上下巻構成で2006年から翌年にかけソニー・マガジンズ(刊行中途でヴィレッジブックスに改編)より出版された。日本語訳はすべて富永和子による。邦訳本表紙イラストは全巻を長野剛が担当し、原著の表紙イラストを参考にしつつもまったくオリジナルのものとなった。
※英字表記は原著、日本語表記は邦訳を示す。邦訳書籍の「ダーク・ネスト三部作」表記および巻数表記は表紙カバーにのみ配されている。
EP6以降、帝国の残党と再三戦い、むやみに湧く帝国軍の分派とやり合い、シスの復活を阻止しダーク・ジェダイを滅ぼし、トカゲ・インベーダーだの純血主義エイリアンだの外宇宙侵略エイリアンだのもなぎ倒し、地方の反乱も田舎犯罪王も悪徳企業の陰謀も片付け、ついでに金ピカ異次元ホタテまで出てきたスピンオフ作品群が繰り出した今回の敵、それが集合意識を持つ昆虫型エイリアン、キリックである。
実は惑星オルデランの先住民であり、3万5000年を遡る先史時代に繁栄し人間の入植以前に絶滅したと考えられていたが、実際には未知領域に大移動して生き延びていた。「ネスト」と称される部族ごとに生活する原始的な知性種族で、その総体を「コロニー」と呼ぶ。身体の大きさや能力は様々で、中には親指程度のサイズしかないネストもあり、ネストごとの役割分担が成立している。
その最大の特徴は、コロニーに加わったもの(同じキリックや昆虫種族に限らず)を、コロニー全体の意思に従い、相互に記憶や感覚を共有する「ジョイナー」とする点。ジェダイすらジョイナーとなりうるが、フォース感知者がジョイナーになる際には、その個性を引き継ぐことがある。このため、本来は原始的で多産多死だったキリックはレイナーの影響で生命を尊ぶようになり、種族を繁栄させ、科学技術を取り込み拡張へと走らせた。いっぽう、ロミ・プロウらのパラノイア的な秘密主義の影響は、キリック全体の集合意識からも隠れ潜むダーク・ネストの分立をもたらすこととなった。
文明は全体的に未開ではあるものの、銃器を扱うこともでき、技術レベルは低いがダートシップと呼ばれる宇宙戦闘機や宇宙艦艇も運用する。しかし最大の軍事的な脅威は、地上・宇宙の違いを問わず、昆虫種族ゆえの個体数の多さそのものである。
ルーク・スカイウォーカーがグランド・マスターとして立つ新たなジェダイ・オーダー。銀河同盟成立以来、諮問評議会に席を有し、元首と施政に助言を与えている。
ユージャン・ヴォング戦争で衛星ヤヴィン4のジェダイ・プラキシウムを失って以来、古のジェダイの惑星オッサスを本拠地としている。再興から日が浅く、またユージャン・ヴォング戦争での損害も激しく、全体数は旧共和国時代には及びもつかない程度の少数でしかない。
ユージャン・ヴォングとの戦いを経て、フォースに本来ライトサイドとダークサイドの区別はなく、善悪は目的によって決定される、という思想に到達し、各々その良心に従ってフォースに仕えるオーダーを理想とした。しかし思想と行動の変化のなかで、特にユージャン・ヴォング戦争を最前線で経験した若いジェダイの中では正しい目的のため手段を選ばない傾向が生じ、またオーダー全体でも、良心に基づいた各自の判断に相違が生じるとジェダイどうしでも反目を辞さない雰囲気があらわれてルークを悩ませている。
銀河同盟とは、大規模な犯罪捜査や地域紛争の調停といったかたちで統治に寄与し、また支援を受けている。しかしフォースに仕え銀河の平和と安定を守るというジェダイの義務の中で、しだいに強まる銀河同盟の干渉をどこまで受け入れるべきか、銀河同盟の意向を優先させることが正しいのかを巡り、深刻な対立が生じつつある。
銀河規模の連合国家。エンドアの戦い後に反乱同盟軍が樹立した新共和国を再編して成立した。
銀河共和国の再興として成立した新共和国は、加盟惑星の拡大と体制の複雑化によって行政の停滞が顕在化し、ユージャン・ヴォングの侵略への対処の遅れを招いた。このため戦争中、銀河首都コルサントの陥落を機に、より緩やかな連合体である銀河連合自由同盟へと再編された。銀河帝国やヘイピーズ・コンソーティアムといった既存の星間国家も、その主権を維持しつつ銀河同盟に参加している。
ユージャン・ヴォング戦争終結から数年を経て、全銀河の各種族・各惑星で戦後復興が進展中。銀河同盟政府はその調整に心を砕いている。物語現在の元首は最後の新共和国元首として政府の再編を主導したカル・オマス。物語開始時点の防衛軍最高司令官は、ユージャン・ヴォング戦争時と同じくサラスタンのシーン・ソウヴが務める。
銀河の外縁部、未知領域に住む青い肌と赤い瞳のヒューマノイド種族チスによる独立国家。
ルーリング・ファミリーと呼ばれる複数の一族が支配する寡頭制で、極めてシステマチックで保守的な社会を形成する。銀河共和国時代にはほとんど知られていなかったが、帝国軍のスローン大提督を輩出した縁により銀河帝国とは秘密裏の協力関係にあった。
未知領域に一大覇権国家を築いているが、厳格に先制攻撃を禁じる規律と保守性、そして他種族を見下すチス特有の気位の高さのため、勢力としては孤高を保つ。銀河外縁部で拡大するキリックの領域と接近しつつあるが、チスには珍しく極端に攻撃的な反応を示しており、複雑な事情がうかがわれる。
人名・種族名・役職名など固有名詞の日本語表記は基本的に本書の邦訳に基づく。
この他に作中で一定の役割にあるジェダイとして、ケンス・ハムナー(人間・男性。銀河同盟との連絡役)、シルガル(モン・カラマリ・女性。フォースによる治癒の技を持つ)、ローバッカ(ウーキー・男性。通称ローイー。チューバッカの甥)などがいる。
| スター・ウォーズ レジェンズの邦訳小説 (作中時系列順) |
||
|---|---|---|
| 前作 | 本作 | 次作 |
| ニュー・ジェダイ・オーダー (25ABY-30ABY) |
ダーク・ネスト三部作 (35ABY-36ABY) |
ミレニアム・ファルコン (43ABY) |
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最終更新:2025/12/19(金) 04:00
最終更新:2025/12/19(金) 04:00
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