「銀のつばさにのぞみを乗せて 灯せ平和の青信号
勇者特急マイトガイン 定刻通りにただいま到着!」
作品概要
勇者特急マイトガインとは、1993年1月30日から1994年1月22日まで放送された全47話のアニメである。
勇者シリーズの第4作目で、前3作で監督を務めた谷田部勝義に代わり、高松信司が監督を務めた。そういう事情もあり、従来とは違うコンセプトで作られている。
例えば、前作までトランスフォーマーからの流れを汲む「地球にやってきた宇宙生命体」を題材にしていたが、今作は「超AI」という形で登場ロボットも一から作ったものになった。その他、エンディングが悪者側に注目したものであったり、キャラクターの元ネタが昭和の日活・東映映画の俳優または周辺人物に因んでいる事などが挙げられる。
決定的なものとして、ロボットアニメシリーズを取り巻くメタフィクション(ロボット玩具のためのロボットアニメという上位構造)が大きく影響している。
型にはまったストーリ展開(主人公が正義を貫く完全超人、1号ロボの敗退→2号ロボの登場→1号と2号の合体)や、玩具会社のタカラを連想させる要素(『青戸の工場』、『トレジャー』ロボテック社)などが入っている。
特に最終話は直接的で「この玩具ももう用済み(放映終了的に)だ。」などの台詞やラスボスの素性が明かされたりと、ストーリに入り込む視聴者にはアレが無ければ最高なのに……という声も多く評価が分かれる。なお、毎話のエンディングクレジットで監督の名前が握乃手紗貴(あくのてさき)となっており、予め織り込み済みであったことをうかがわせる。筆者の個人的な感情を挟ませて頂くと、魅力的なキャラが多いのは正義が正義・悪が悪として振る舞えるこの構図があるからだと言っても良いと思う。
長らく勇者シリーズのクロスオーバー作品やサンライズ英雄譚シリーズの出演に留まっていた本作だが、20年以上の長い月日を経て2017年発売予定の「スーパーロボット大戦V」への出演に青信号が灯る。
今まで権利関係の難しさが未参戦の理由に挙げられていたが、事情は不明だが、長年のファンの要望が遂に叶った瞬間である。
あらすじ
昭和125年、石油枯渇により世界の交通手段は電気鉄道になっていた。
旋風寺コンツェルンの若き総帥は父の遺志を継いで無国籍救助隊である超AIロボット隊『勇者特急隊』を設立し、ヌーベルトキオシティを中心に悪と戦う。
登場人物
主人公とその仲間達
- 旋風寺舞人(CV:檜山修之)
- 主人公。高校生でありながら旋風寺コンツェルン総帥であり、美人秘書や執事さん、オタクな親友に囲まれて家業も正義も守るスーパーマン。
頭脳明晰で爽やかな正義感と、絵に描いたようなスーパーヒーローだがちょっとキザ。
- どんなピンチをも乗り越える、とてつもない強運の持ち主。たとえ貧乏人が相手だろうと見栄を張り、主役のキャラを食うライバルには新ロボで制裁する。
- 名前のモデルは小林旭(通称・マイトガイのマイトから)。
担当声優の檜山修之は本作が初主演であり、タイトルコールも兼任。檜山氏は後に別の勇者シリーズ作品「勇者王ガオガイガー」でも主役を務めている。
- ガイン/マイトガイン/グレートマイトガイン (CV:中村大樹)
- 舞人の相棒ロボ。300系新幹線から人型ロボに変形して戦う。ガインショットが効かない相手には合体せざるを得ない。舞人が乗るマイトウィング、巨大蒸気機関車ロコモライザーと合体し、巷で噂のマイトガインとなる。
- 適性のない空戦関連で苦戦に陥ると、2号ロボであるマイトカイザーが助けに来たりと強運の持ち主である。実際圧倒的な強さを見せたのはのっけの第1話くらいで、第3話で早くも一度は負けるなど性能面では早々に型落ちしており、強運や戦略でなんとかなった話もかなり多い。
強化合体のグレートマイトガインは飛行能力を持つだけでなく武装のバランスも優れており、特に装甲が桁違いに上がっているほか、マイトガインに比べると強い勝ち方が多い。
- マイトカイザー
- 舞人が後半搭乗するロボ。元々はマイトガインの強化パーツとしての運用が想定されていたが、完成前にロコモライザーが大破したため、急遽単独運用でもロボットに合体できるように改修された。超AI未搭載のためにパイロットの技量に左右される面はあるが、性能面ではマイトガインと同等でマイトガインにはない飛行能力を持つ。一方で武装に乏しく、決め手になる技が接近戦におけるドリルのみのため、単体での活躍期間は非常に短く、ロコモライザーの復帰後は単体で敵をほぼ撃破できていない。
- 吉永サリー(CV:矢島晶子)
- ヒロイン。母を亡くし、病気の父親に代わりアルバイトの兼任で家計を支える。ひょんなことから鉄道社長さんに出会って玉の輿の道が開けた。アウトローっぽい男性に気が動いたりするが、別に恋愛感情では無かった。
彼女の異常なアルバイト経歴の豊富さは語り草である。
- 名前のモデルは吉永小百合。
- 浜田満彦(CV:菊池正美)
- 劇中に出てくる舞人唯一の友達。機械に強く、勇者特急隊の設計などにも関わるすごい高校生。舞人の危機には自身もメカに乗って駆け付けることまであり、舞人の相棒ポジションである。
しかし将来の夢はメカニックでは無く漫画家であり、代表作は『銀河の用心棒ナイスガイン』。
- 名前のモデルは浜田光夫。
- 松原いずみ(CV:天野由梨)
- 舞人の秘書兼勇者特急隊オペレーターであり、姉のような存在。
結婚出来るかに悩んだりもするがまだ23歳なので大丈夫でしょう。(しかし結局結婚は舞人に先を越された。)
- イグアナをペットとして飼っており名前はトシキ。
- 名前のモデルは松原智恵子と和泉雅子。
- 雷張ジョー(CV:緑川光)
- 舞人のライバル。レースの落ち武者呼ばわりされたがハンドルを手放させず、ハンドル操作のメカで賞金稼ぎのエースとなった。舞人を名前の通りライバル視し、マッドサイエンティストのバックアップの元、決着を着けようと地球の危機にまで勝負を挑んだりする。
スタッフの発言から、CDドラマでは彼の貧乏生活が言及されていたりもする。
- 名前のモデルは宍戸錠(エースのジョー)。最後は父の仇を討つために舞人と共闘、特攻したりする。
勇者特急隊メンバー
- トライボンバー(CV:巻島直樹)
- 新幹線から人型・獣型に三段変形する「アニマル特急」ボンバーズの3体(ライオボンバー・バードボンバー・ダイノボンバー)が合体したロボ。
ジョーの飛龍を足止めした時に大破し、新メンバーのホーンボンバー(CV:巻島直樹)が加入、4体合体のバトルボンバーにもなった。以降トライボンバーには合体せず、バトルボンバーとして戦い、アニマル特急の通称も「猛獣特急」となる。
合体前も合体後も全員血の気が多い。
- ガードダイバー(CV:置鮎龍太郎)
- 消防車やジェット機などの乗り物から変形するダイバーズの4体(ポリスダイバー・ジェットダイバー・ドリルダイバー・ファイアダイバー)が合体したロボ。主に人命救助やサポートを中心として活躍しており、礼儀正しい性格。
双方ともに、メイン人格以外のロボの声優は掛川裕彦と菊池正美が担当。
ダイバーズ・ボンバーズとも、合体前の単体状態での活躍は登場直後くらいしか無く、中盤以降は登場→即合体となるため、非常に印象に薄い。しかも、作風ゆえか敵にトドメをさすのは必ずマイトであり、戦闘でもほぼアシスト役のため、合体状態でも「強い」というイメージが無い。そのせいか、次作では単体ロボがどいつもこいつもクセモノ揃いになった。
- マイトガンナー(CV:鈴木勝美)
- 最後に完成した勇者特急隊のメンバー。勇者特急隊では唯一単体で巨大ロボットになる勇者でもある。元々はグレートマイトガインの武装である超電導砲として開発されていたが、最終的には超AI搭載のロボットとして完成している。荒っぽい性格で、超遠距離の狙撃を得意とする。グレートマイトガインの右肩のジョイントに接続することで、グレートマイトガイン・パーフェクトキャノンモードとなる。
ヌーベルトキオに蔓延る悪の組織
ウォルフガング
- ウォルフガング博士
- 自身の技術に誇りを持つドイツ系マッドサイエンティスト。世界最高のロボットを作ることを目標としており、そのためには手段を選ばない。その反面、ロボットの頭部にドリルを装着するなどの拘りもある。しかし根っからの悪人と言うわけではなく、終盤は影からジョーや勇者特急隊を助けた。
- 搭乗者は自らであったり金で雇った傭兵(雷張ジョーを含む)であったりと、組織らしい組織は持たない。プログラム制御による操縦が主で、直線的なフォルムのロボットが多い。
- イッヒ・リーベ・ディッヒ
- 名前を続けて読むと「愛してる」になる三人組。最初は沢山いたウォルフガングの部下の中で最後まで残った人達。
因みに最初の頃にいた部下は全てイッヒと同じ見た目。(だからと言って人造人間という訳では無い。)
- 飛龍
- ジョーの乗機。元は試作機なのだが、性能面ではマイトガインと同等で飛行能力を持ち、超伝導ジェットのビークル形態をもつなど非常に性能は高い。ただし武装に関しては近接よりで貧弱だったのだが、メガソニックからビームライフルを強奪したことで克服。トライボンバーとマイトガインを大破させたが、マイトガインとの戦い方にジョーが最適化しすぎていたことが仇となり、空戦能力を持つマイトカイザーに撃破される。なおゲームによっては自軍加入条件が隠し機体となっていることがあり、また後継機の轟龍と性能が逆転している場合もある。
- 轟龍
- ジョーの2番目の乗機。飛龍を強化発展させた機体で、こちらも量産を前提にされた試作機に近い立場だが、スペック上はグレートマイトガインと同等で、飛龍同様にビームライフルが最大の武器。ただし完成後も出力の最適化調整が遅れていたようで、マイトカイザーやグレートマイトガインとの初交戦時は全開で戦えず、スペックほどの強さはなかった。その後はしっかりチェーンされ、フルスペックを発揮した戦闘ではグレートマイトガインを苦戦させた。最後はある機体と相打ちに近い形で失われた。
なお終盤で登場した量産機のイプシロン(γ)の原型機にもなっているのだが、このイプシロンは何故か異様に装甲がもろくなっており、バリア抜きでは完全な紙装甲。というか性能で完全に劣るはずのマイトガインにさえバリア除去後は簡単に破壊されている。
アジア・マフィア
- ホイ・コウ・ロウ
- マフィアの首領。のちに組織を奪われ、一文無しで屋台ラーメンから再出発をすることになる。意外と義理と人情に厚い男。
- マフィアらしく、ロボットは目的に応じ様々で統一感は無いが、中華的なデザインやスイッチに麻雀牌を用いたりとネタが散りばめられている。
- チンジャ・ルース
- ホイの組織の元ナンバー2。組織を失ったホイに唯一ついてきた人物。ホイと一緒にラーメン屋として悪の道から足を洗う。
因みに彼の作ったラーメンは不味い。
- パープル
- 人気ロックバンドのボーカル。だがその正体はマフィアのボスで中盤にホイ・コウ・ロウの組織を乗っ取る。
更に終盤ではいつの間にか洗脳されていたのか元々なのかは不明だが、エグゼブの部下になっている。
影の軍団
- ショーグン・ミフネ
- アングロサクソン系アメリカ人。『西洋から見たどこか間違った日本』が至高だと信じており、失われた日本を取り戻すことを目的としたテロ組織なのだが……当然どこかが変。先生、それ『犬』じゃなくて『太』です。
- 侍・やっこさん・日本城など、日本文化を取り入れた形状のロボットが多い。主にモーショントレースで操縦する。
- 名前のモデルは三船敏郎。
- 内藤ルンナ(CV:本多知恵子)
- ミフネ配下のくノ一で本名は胡蝶。浜田君が好きでストーカーまがいの事もしている。出番がもっとあって世が世ならヤンデレ属性を付けられていたかも知れない。
- 結局最後は使命より浜田君への愛がまさってミフネ達を裏切った。
- 名前のモデルは内藤洋子と彼女の曲の「白馬のルンナ」。
窃盗団ピンクキャット
- カトリーヌ・ビトン
- 自称フランス人のスイーツ(笑)個性的過ぎる女。常人を逸した思考で自分の欲求を満たすためだけに盗みを働く。見るだけで卒倒するほど納豆が嫌い。
- どこかメルヘンなロボットが多いのだがパワーだけは突き抜けており、たびたび舞人達を苦しめる。
- オードリー
- ビトンの右腕。基本無表情。名前のモデルは言わずもがな。
巨大な悪
- エグゼブ
- 中盤より登場する強大な敵。だからドリルは取れと言ったのだ。
- ブラック・ノワール
- ラスボス。アニメ作った人。
玩具について
今作でも「トランスフォーマー」からの玩具の流用が行われている。今作では「トランスフォーマーZ(ゾーン)」より、サイバトロン総司令官「ダイアトラス」が「轟龍」として、「ソニックボンバー」が「飛龍」として色や付属品を変更した上で発売された。両者とも元はサイバトロン=正義の味方(?)であり、なおかつダイアトラスに至ってはリーダーであった。それが悪役・ライバルのメカとして登場したのはかなり意外なことである。
また、マイトガインは「トランスフォーマー リターン・オブ・コンボイ」のフラッグシップアイテム「スターコンボイ」のギミックを継承しており、より洗練された形となっている。
ちなみに放送から十数年後の特撮作品「トミカヒーロー レスキューフォース」にて登場したメカ「ゼロファイヤー」は、マイトカイザーのドリル特急のコンテナ部分を流用している。ジョイント部分を分解するとよくわかる。
関連動画
関連項目