2000年11月3日に作者のサイト『狂気太郎』(現在は狂気太郎.net)にて掲載され、その後約2年おきに新作を発表。2010年1月1日掲載の『殺人鬼探偵V』をもって完結した。
まずはじめに言っておくこととして、この作品はいわゆる「推理小説」ではない(作者曰く「不条理スプラッター・ハードボイルドアクション」)。各話の流れとして主人公黒贄礼太郎が誰かに探偵業を依頼され、その解決を見ていく形になる(『III』と『V』は長編形式)のだが、その際に推理する場面はほぼ全く出てこず、力任せに目標や周りを殺していくことがほとんどとなっている。
狂気氏の他の作品と同じく最低でも数百人、多いときには数百万、数千万人が各エピソードごとに殺されていく。それは事件に関係ある者ももちろんであるが、ただの通行人も極めてあっけなく次々と殺されていく。このように殺害描写が横溢しているが、日常パートでは主人公の性格故かコミカルな描写もあり、笑える要素も多い。メタなネタも多く作中で「誰か」「誰かさん」「彼」などのセリフが出た場合大抵それは作者自身を指す。
本作の主人公。全話に登場している。身長は190前後。二十代後半から三十代前半のように見えるが実年齢は不明。よれよれの黒い略礼服に身を包んでいる。ネクタイはしておらず、薄汚れたスニーカーを履いている。彫りの深い整った顔立ちで、瞳と髪は漆黒。肩の辺りまで伸びた髪は自分で切っているのか、やや左右が不揃い。肌は異様に白く、眠たげな目と、常に何かを面白がっているような微笑を浮かべている。
ほぼ廃墟となっている四階建てビルの最上階にある「黒贄礼太郎探偵事務所」の所長であり唯一の所員(後に一名加わる)。なぜ探偵をやっているのかは作中で明かされていない。何者なのかは一切不明。少なくとも人間ではない。脳や内臓、血など体の構造は普通の人間と同じだが銃で蜂の巣にされても火達磨になっても脳漿がこぼれても首の骨が折れても頭がまるごと吹き飛んでも死なない。特技は「誰も見ていないところでこっそり回復」であり、どんなにボロボロになろうとも場面転換や次のエピソードでは服もろもろも含めサウスパークのケニーばりに復活している。
主人公であるがタイトルの通り殺人鬼でもあり、作中での殺人回数がトップクラスに多い人物でもある。犯人だろうと事件に無関係の通行人であろうと躊躇なく(そして実に楽しそうに)人々を殺し回る。依頼そっちのけで殺人に走ったり依頼者や人質をつい殺してしまったりしてしまうせいかなかなか収入が安定せず、貧乏暮らしを強いられている(水だけで二ヶ月間過ごしたこともあるらしい)。
基本的に無差別に人を殺すが一部「そそられない」人には手を出さなかったりと例外もある。また殺人鬼に対して独自の哲学を持っており、「殺人鬼は痛がってはいけない」「殺人鬼は寂しがってはいけない」「殺人は無償であることに意味がある」「人を殺すのに理由などない」と明言している。「自分の利益のために人を殺すことは殺人を冒涜している」とも言っており、殺害した相手から金品を奪うことは一切行っていない。また基本的に殺人の依頼は受けていないため、誰かを殺して欲しい場合は迂回した言い回しで依頼される。
カニバリズムの趣味はないが、死体をいじって遊ぶことは好きらしい。幽霊は苦手(殺すことができないから)。恐いものは副流煙と生活苦。名前を「くろにえ」と呼ばれるとそれが何百回目であろうと訂正する。ちなみに自分で名づけたらしい。すさまじい筋力を持っており、素手で頭蓋骨を破壊したり首をたやすくねじ切ったり時速120キロの車に追いつくスピードで走ったりできる。字は下手。くじによって選ばれた凶器・そこらへんから取ってきた仮面・その場で考えた奇声の三つが合わさると、「絶対零度の瞳」と形容される冷酷な目で抑揚のない奇声を繰り返しながら収拾がつくまで周りの人間を皆殺しにしていく。
作中で不明な単語が出た場合「ははぁ、○○ですか」「知ってましたか」「いえ、全然知りませんな」というお決まりのパターンを置いて説明が行われる。
第二話から登場。八津崎市警捜査一課の刑事。三十八才。くたびれた地味なスーツを着て、折れ曲がったネクタイを締めている。寝癖が付いたままの短めの髪で、頬と顎は不精髭が覆っている。好物はビーフジャーキー。
対戦車砲に吹っ飛ばされた過去を持ち、体の一部をビニール製の人工物でカバーしている。初期は右手や首筋の肌だけであったが、その後も怪我が増えるごとに機械部分がどんどん増えていく。体内に火炎放射器や携帯電話、小銭入れなどがついており便利な体となっている。『II』中盤より彼以外の署の者が全員殺されたため、刑事から署長へと昇進。
作品が進むにつれどんどんやさぐれ具合がひどくなっていき、危険なことなどはほとんど他人任せに事を進めていく(モットーは『楽して得取れ』『部下は使い捨て』)。その割に指示は的確であり、どちらかといえば裏方・頭脳派キャラ。黒贄曰く「そそられない」。黒贄のことを毎回「クロちゃん」と呼び、毎回訂正されるが一向に呼び方を変えない。作中黒贄に依頼をすることが最も多い人物であるが、報酬金額は全体的に低い。初期は安月給を嘆いていたが、署長になってからは不明。
機械部品であることを除けば至って普通の人間であるが、何度も死にそうになりながらも毎回なんだかんだで生き残っており、上記のように作中で出世したりとかなり優遇されている。作者のお気に入りキャラ。
第三話から登場。燕尾服に身を包み、黒のシルクハットを被っている。小柄でやや肥満体。外見は四十代ぐらい。殆ど表情が動かさず、喋る時は音程の狂ったような不自然な声音が混じる(作中ではカタカナ混じりで表現されている)。左目に填まった片眼鏡から銀色の細い鎖が垂れている。
その中身(内臓・脳等)は何も入っていない。正体はアルメイル出身の怪物であり、上記の紳士は仮の姿。本来は二メートルを超えるひょろ長で毛むくじゃらの生き物。
第五話から登場。着物着用で素足に草履を履いている。浅黒い肌に引き締まった体、尖った犬歯が特徴。外見は二十代から四十才までに見える不思議な雰囲気を漂わせている。易術と占術をやっている傍ら、裏稼業で殺し屋をやっており知る者には『闇の占い師』と呼ばれている。多方面の呪術に精通しており、またナイフ等を使った体術もこなす。半透明の黒い翼で空を飛ぶこともできる。
普段は敬語で話し一人称も「私」だが、怒ると荒っぽい話し方に変わり「俺」に変わる。黒贄によくターゲットにされているため一緒に行動する時は常に警戒しながら仕事をこなす。基本的に真面目なので他のキャラのツッコミに回ったりボケに巻き込まれたりする苦労性キャラ。
『II』第二話より登場。年齢は二十代半ば。二メートル近い背丈と、見事なまでに盛り上がった筋肉を持つ。スキンヘッドで、鼻は殴られ慣れているのか低く潰れている。偶然街中で通りかかった黒贄に「凶器」としてスカウトされ、百一番目の凶器となる。最初は嫌がっていたがその後凶器としての快楽に目覚め、額の『101』のタトゥーを入れたりくじに工作をしたりするなど積極的に使われてもらうようになる。
おそらく最初は普通の人間だったのだが、凶器となった以降は不死身化しバラバラにされても生き返る体となった
『II』第四話から登場。表面の塗装が何度も塗り替えられ、蔦が絡んでいる約五メートル四方の鋼鉄の箱に入っている八津崎市の市長。箱の一ヶ所だけ横五十センチ、縦三十センチほどの真っ暗で何も見通せない隙間が開いており、そこから業務を行う。どんなものも質量を無視して吸い込むことができ、出てくる時は書類・人間・生首に関係なく『不受理』『受理』の印鑑が押されている。戦前からずっと同じ市長らしい。
後に箱から出てくる場面があるが、そのあまりにも恐ろしい姿から黒贄さえ手も足も出ないまま敗北した。ちなみに作中で黒贄が敗北したのは彼(彼女?)だけである。
『II』第五話から登場。中肉中背、色白で優男風だが陰気な顔をしている。年齢は三十代の半ば。常に雨に降られているため髪も服もぐっしょりと濡れており、足元には水溜まりが出来ている。
五年前に享年三十一で死亡。生前は私立探偵を営んでいたため死後も黄泉の世界の住人の依頼で探偵業を続けている。雨の日に死んだため雨が降っている間しか活動出来ず、また物質的な働きかけは殆ど出来ない(くじを引く程度はできる)
『III』から登場。実質的な『III』のヒロイン的存在。年齢は二十二、三ぐらいで美人に分類される。政治家正木政治のメイドとして働いていたが、正木の実験台として殺されそうになったところをすんでのところで逃げ出し八津崎市と黒贄に保護を求める。
『II』第四話から登場(ただし名前が出るのは『III』から)。八津崎市の警察官。上半身は裸で、引き締まった筋肉をしている。槍と斧が一体になったハルバードを持ち業務を行うが、悪人も善良な市民も悪びれず皆殺しにしていく。
『III』から登場。鍔広の帽子を目深に被り、黒い革の手袋、厚めのダークグレイのロングコートを着ている。身長は百八十センチ前後。異様に低く掠れた声で喋る。口笛の音にも似たヒュールルルル、という澄んだ音を出すことで、剣と自身を空間を無視して自由自在に動きまわることができる。
アルメイル出身であり数百年前に地球に出てきた。自らを『次元放浪者』と呼んでおり、一つの世界に長時間留まることができないようになっている。『IV』以降では『剣里火』(つるぎ さとび)という名前で探偵業を営んでいる。
『III』に登場。三選目の国会議員。愛称は「マサマサ」。政治家向けの笑顔を見せるが目が全く笑わない。『マッド・フィロソファー』(狂った哲学者)を自称し、物事の本質を見つけるために自宅の地下にて実験(殺人などを含む)を行っている。後に『V』にて違った形態で再登場を果たした。「形態は変わっても本質は変わらない。では本質とはなんだ。意味とはなんだ。」「分かるということは、あるものと他のものを分けるということだ。つまり、あるものの本質を掴むためには他のものとの明確な違いを知る必要がある。私の世界とこの世界、何処が違うのか知りたいものだ。」「私が知りたいのは根源的なことだ。世界の本質、人生の意味、分からないことばかりだ」「本質、真実、意味、世界、人生、本質、人生、意味、世界、真実」「変わらぬ本質とは何なのだろう」「生と死の違いは何なのか、一体生きるとはどういうことなのか」「意志とは何なのか。分からない。分からないことばかりだ。私は答えを知りたい。」「何が何だかさっぱり分からないのだ。私は知りたい。一体これに意味はあるのか。意味とは何なのか。生きるとは何なのか。人は何のために生きるのか。苦痛とは何なのか。分からないことばかりだ。私は真実を知りたいのだ。しかしそもそも真実とは一体何だ。真実、意味、真実、意味」「本質は同じ筈だ。だがそもそも本質とは何なのか。どんな実験も根本的な問いに立ち返ってしまう。意味とは何なのか。意味というものは本当にあるのか。本当とはどんな意味だ。あるとはどういう意味だ。ないとはどういう意味だ。意味とはどういう意味だ。どういうとはどういう意味だ、だ、だだだだだだ。私は真実が知りたい。長い間様々な実験を続けてきたが結局私の知りたい真実は得られなかった。何一つ分かっていない。世界の本質が知りたい。世界とは何なのだ。人生とは何だ。人生の意味とは何だ。世界は何のためにある。意味の意味は一体何だ」「意味だ、真実だ、本質だ、世界、真実、人生、意味、本質、世界、真実、人生、意味。分からない。さっぱり分からない。これに意味はあるのか。君達はどうして悩まずに生きていられる。意味を既に知っているのか。私だけが知らないのか。誰か私に教えてくれ。意味だ、意味、意味意味意味意味意味意味」「意味、本質、意味、本質、人生、世界、真実、分からん、何も分からん。知りたい。私は知りたいのだ。意味を、本質を。一つでもいい。私は真実を知りたいのだ。真実、本質、意味、世界、人生、真実本質意味世界人生本質真実世界意味人生世界本質意味人生真実意味世界真実本質世界人生意味世界本質人生意味世界真実本質意味世界人生意味本質」「幸せ、意味、本質、人生、世界、真実。分からない。私は何一つ分からないのだ。教えてくれ。幸せとは何だ。教えてくれ。何だ。何なのだ。幸せとは何だ」「本質、意味、本質、意味、キャハッ、本質、意味、キョヘ、本質、意味、ヘキョッ、本質、意味、ウキョパーッパッパ」「意味、本質、意味、オヒャハハハッ、エピャピャ、オキャーッ、全然面白くない、本質、意味、本質、意味、オヒャッ、ハッ、ポピャッ、全然面白くない、アハハハハ、全然面白くない」「ヒョハーッ、意味、本質、意味いいいっ」「ぬはははは。全然面白くない。キョハッハッ、全然面白くない。オゲギャハハッ」「人は何のために生まれたのか。私は何のために生まれてきた」「人は何のために生きる。私は何のために生きている」「神が世界を創ったのなら、神はどうやって創られたのだ」「時の始まる前には何があった。どうして時は始まったのか。時が始まる原因があったとすればその時点で世界も時も存在していたことになり矛盾する。ならば時が始まることは不可能の筈なのに、実際に時は始まってしまっている。どうしてこんなことになっている」「世界の外には何があるのか。何かがあるとすればそれも含めて世界であり、世界の外とはいえない。ならば何もないのか。何もないとはどういう意味か。世界とは一体何だ」「考えていると眩暈がする。胸が張り裂けそうになる。どうして世界は存在する。存在する筈がないのに。どうして私は存在している」「全ては感覚だ。あらゆる情報は最終的には私自身の感覚に委ねられる。情報が正しいかどうかを本当に証明するすべはない。証明自体も情報であり感覚に過ぎないからだ。世界が本当に存在するかどうかは証明出来ない。他人が本当に存在するかどうかも証明出来ない。私はただ独り、夢を見ているだけなのか」「狂おしい。その不安故に私は足掻くのか」「観念が私を苦しめ、狂わせる。獣であればこんなに苦しまずに済んだのに」「虚しい。虚しい。虚しい」「愛。魂を焦がすような愛は私の人生には存在しなかった。或いは、それがあれば私の虚しさを埋められたのだろうか。私の苦悩に麻酔をかけることが出来たのだろうか。しかし私は愛さず、愛されなかった。好意を抱く相手はいた。しかしそれは究極ではなかった。究極でなければ無意味なのだ。感謝はぬるま湯に浸っているようなものだった。私のこの空虚な心を埋めるものはなかった」「私は対象が魂のない人形であることを恐れた。夢の中の幻影であることを恐れた。私は自ら拒絶した」「世界が私一人だけだというのなら、もう究極を目指すしかないではないか」「そもそも愛とは何だ。性ホルモンによる神経の興奮ではないのか。私はそんなものに踊らされたくなかった」「しかしそもそも私の思考も感情も踊らされたものではないのか。私のあらゆる欲望は生物としての本能による神経の興奮ではないのか。私は何度も脳機能を停止させ検証した。だが脳を破壊しても既に形成された精神構造はそのまま残ってしまう。異世界の多くの生物にも類似の精神構造は存在する。それらはやはり自らの遺伝子情報を残すという目的へ収束する。いやそれはどうでもいいのだ。私だ。私の意志は本当に私の意志なのか。考えるほどに分からなくなる。証明しようがない。全ては感覚でしかない。どうしようもないのだ。思い出してしまった思い出してしまった」
前文の警告をよく読んだ上でお読みください。
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最終更新:2024/12/28(土) 04:00
最終更新:2024/12/28(土) 04:00
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