キシリア・ザビとは、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』に登場するキャラクターである。
声:小山まみ(現:小山茉美) / 渡辺明乃(THE ORIGIIN) / 広橋涼(ガンダムさん)
概要
ジオン公国の中心に立つザビ家の一人で、デギン・ソド・ザビの長女。
宇宙世紀0055年生まれで、一年戦争時の年齢は24歳(TVアニメ版)だが、20代前半とは思えない程の老け顔。シワが刻まれた顔つきに鋭い眼光と、若い女性らしい可愛さは見当たらない。さすがに無理がありすぎると判断されたのか、『THE ORIGIN』では35歳に変更されている。そんな彼女の最大の特徴は、顔の半分以上を覆い隠している紫色のマスクとタイツであろう。マスクを外す時は父デギンの前くらいであり、兵士たちの前では常にマスクをしていて表情が分からない。女性でありながらオシャレから程遠いマスクで顔を隠しているのは、地球に舞う粉塵から防護するためとも、あるいは女性を捨てたためとも言われている。
月面都市グラナダに本拠地を置くジオン公国軍突撃機動軍の司令官で、階級は少将。主要な部下はマ・クベ、シャア・アズナブル(左遷後)、ジョニー・ライデン、ゲラート・シュマイザー、トワイニングなど。幼少期のシャアと一緒に遊んであげた事があり、その際にキシリアはシャアがジオン・ズム・ダイクンの遺児キャスバルである事を見抜いた。ザビ家を恨んでいると知った上で自身の近くに置く辺り、能力があれば過去は問わない考えを持っている。政治的には長男のギレン・ザビと、軍事的には宇宙攻撃軍の司令ドズル・ザビと対立しており、ただでさえ少ない国軍を三分割にし、派閥の将兵同士も仲が悪い。そんな中でキシリアは政治に力を入れようとしていたが、既に政治界にはギレンが進出しており、卓越なる手腕と話術を駆使するギレンに正攻法では敵わなかった。そこでキシリアは搦め手でギレンに挑むため、ニュータイプやモビルスーツといった目新しい物に興味を示すようになり、サイド6にフラナガン機関を設立したのも彼女である。
このように全体的に不仲だったザビ家であったが、キシリアは末弟のガルマにだけは優しく接していた。実際ガルマに地球攻撃軍として突撃機動軍の一部を割譲している。しかしガルマに優しく接していたのは忠誠心を育むためと言われ、地球攻撃軍の指揮権もキシリアにあった。兄弟とは不仲であったが父親のデギンを慕っていたようで、ア・バオア・クー戦の最中にデギンをソーラ・レイで焼き払ったギレンを父親殺しの大罪と称して殺害している。しかしギレン死亡によって生じた指揮系統の混乱によってジオン軍守備隊が劣勢に傾く事になってしまう。勝敗が決したのを見たキシリアは「ザビ家が潰えればジオンは終わり」と考え、ザンジバル級でア・バオア・クーから脱出しようとするもシャアに殺害される。キシリアの死によってザビ家の血筋は途絶えたと思われた。
ゲーム『ギレンの野望』では、ギレンがデギンを謀殺した事で離反。正統ジオンを結成し、ギレン率いるジオン軍と敵対するというシナリオが用意されている。またドズルの協力を得て、突撃機動軍と宇宙攻撃軍が共同でギレンを討つシナリオもある。
基本的にキシリア配下の将兵は人間の屑が多い。しかしこれは、どのような者にもチャンスを与え、成果を出せば重用する彼女の方針によるものだった。貧困層や出世街道から外れた人間も例外ではなく、ひねくれ悪たれ集団のマッチモニードもキシリアには恩義を感じ、彼女にだけトリントン基地に隠された核兵器の情報を伝えた。ゲーム『サイドストーリーズ』では特別競合部隊マルコシアス隊を編成し、新兵にも平等にチャンスを与えた。このため悪たれ軍人ばかりがキシリアにもとに集ったが、いずれも高い忠誠心を持つ。特殊部隊闇夜のフェンリル隊も彼女の許可を受けて創設されたもので、戦局が完全不利になった12月においても「諸君らが地上で奮闘している事を私は忘れない」「宇宙での戦いで連邦に勝利し、必ずや諸君らを迎えに行く」と激励の通信を送るなど有能な部下に対しては優しい。
一年戦争では
宇宙世紀0079年1月3日午前7時20分、ジオン公国は地球連邦に対して宣戦布告。わずか3秒後に攻撃が仕掛けられた。キシリア率いる突撃機動軍のモビルスーツ隊は本拠地サイド3を出撃し、月面都市グラナダを電撃的に占領。以降、グラナダは突撃機動軍の拠点となる。1月8日の戦闘でゲラート・シュマイザー少佐のザクⅠが被弾、視神経を損傷してパイロット生命を絶たれる。その後、ゲラート少佐はキシリアに特殊部隊「闇夜のフェンリル隊」の創設を進言。これを認可した事で結成に至った。1月13日、失敗したブリティッシュ作戦を挽回すべくグラナダから突撃機動軍艦隊を送り、サイド5宙域にてドズル率いる艦隊と合流。1月15日から16日にかけて生起したルウム戦役で連邦軍艦隊の80%を壊滅させ、総司令官レビル大将を捕虜とし、制宙権を確固たるものにしたが、目的のコロニー落としは失敗した。1月31日、捕虜になっていたはずのレビル大将が脱走して帰還。「ジオンに兵無し」演説を行った事で戦争は泥沼化の兆しを見せた。連邦軍の工作員が解放したとされるが、一方で戦争の継続を望むキシリアが解放した異説もある。地球侵攻作戦を見越し、2月1日に突撃機動軍第1機動歩兵団が増強される。
3月1日、ジオン軍は第一次地球降下作戦を実行。その際にキシリアは演説を行い、重力戦線の形成と地球の解放を宣言。翌2日、緊急記者会見に立ち会った。3月13日、北米の重要拠点だったキャリフォルニアベースを奪取して無傷の潜水艦を多数鹵獲。キシリアは潜水艦隊の創設を望んだがドズルの反対を受けたため、グラナダに配備される予定だったドロス級空母2番艦ドロワを宇宙攻撃軍に譲渡する事で認めさせた。
6月、ニュータイプに一定の理解を示していたキシリアにより、サイド6バルダにフラナガン機関を設立。また同時期にユーコン級3隻による潜水艦隊が新設され、7月には公式発表。10隻以上の潜水艦が太平洋、北極圏、インド洋に配備され、通商破壊に従事する。
9月16日、キシリア配下の海兵隊がルナツーを襲撃。しかし指揮官のアサクラ大佐がギレン派であり、指揮を放棄してしまったため占領には至らず。10月6日、地球攻撃軍司令のガルマを戦死させた責任を問われ、ドズルによりシャアの軍籍が剥奪される。ニュータイプに興味のあるキシリアは使者を送り、シャアと接触させる。11月3日、オデッサにあるタスケント鉱山地帯第102採掘基地を視察。配下のマ・クベが操縦するアッザムに乗っていたが、途中でガンダムと遭遇して戦闘。アッザムが撃破されてしまったため、機密保持の目的で採掘基地を爆破した。その後、シャアはキシリアの突撃機動軍に編入された。オーストラリア戦線で行動中の特殊部隊マッチモニードから「トリントン基地に核が秘匿されている」との情報を受けた彼女は、「奪取せよ」と短く命じた(結局失敗に終わってしまったが)。
12月30日、キシリア自ら艦隊を率いてグラナダを出撃。グラナダ管制区に侵入していたサラミス級2隻を砲撃で撃沈し、攻撃を受けていた第603技術試験隊の母艦ヨーツンヘイムを救った。キシリア不在の間、グラナダの留守はノルド・ランゲル少将に任された。12月31日のア・バオア・クー攻防戦では司令部にいたが、ソーラ・レイで父親ごと連邦軍艦隊を吹き飛ばした怒りから午前9時25分にギレンの頭を撃ち抜いて殺害。以降はキシリアが指揮を執るも、わずかな隙を突かれてジオン軍守備隊は急速に崩れていく。午後12時5分、ザンジバルに乗って要塞からの脱出を図るが、待ち伏せていたシャアのビームバズーカで首を吹き飛ばされて死亡。キシリアの死によってザビ家は全滅した。
余談
キシリア・ザビは紫ババアの愛称(?)で呼ばれる事がある。これは漫画『機動戦士ガンダムさん』でシャアがキシリアの召し物を見て「紫ババア」と発した事が由来。そんな暴言を吐いたシャアが無事で居られるはずがなく、生身のまま宇宙空間へと放り出された。しかし何故か生還している。シャアに紫ババアと呼ばれた事を相当根に持っているのか、後にシャアへ与えられた新型モビルスーツがダンボール製だった。なお、その際にはシャアは「紫ババア」と言っている。一方でシャアが作ったメロンパンを美味いと評し、褒美としてズムシティの一等地でパン屋を開くか、完成度80%のMSで戦線に復帰するかを選ばせている。
小説版『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で・・・』でザビ家を嫌うジオン軍人からさりげなく妖怪呼ばわりされている。あながち紫ババアは間違っていないのかもしれない。
キシリアの部下はマ・クベやマッチモニードといった捻くれ者が多い。一方で、キマイラ隊やサイクロプス隊といった精鋭も擁している。キシリア自身は冷酷な性格で、今まで自分の右腕として働いてきたマ・クベの死を悼もうとすらしなかった。しかし闇夜のフェンリル隊に対しては、わざわざ通信を入れて労いと励ましの言葉を隊員にかける様子が見られるため一応、人間味は残っている。きれいなキシリア
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