メイショウタバル(Meisho Tabaru)とは、2021年生まれの日本の競走馬である。鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2024年: 神戸新聞杯(GⅡ)、毎日杯(GⅢ)
2025年: 宝塚記念(GⅠ)
概要
血統・関係者
父:ゴールドシップ、母:メイショウツバクロ、母父:*フレンチデピュティという血統。
父ゴールドシップはGⅠ6勝の紛れもない名馬だが、三連覇の懸かった宝塚記念で盛大に出遅れ約120億円分の馬券を一瞬で紙屑にするなど、ネタエピソードに事欠かない希代の個性派。種牡馬としてはオークス馬ユーバーレーベンなどを輩出している。
母メイショウツバクロは13戦2勝で中央1勝馬にも出走権がある金沢の加賀白山賞の勝ち馬。母の半兄に京都大賞典勝ち馬のメイショウカンパクがいる。
母父*フレンチデピュティはジェロームH(米GⅡ)の勝ち馬。産駒*クロフネの活躍により日本に輸入され、輸入後も活躍馬を多く輩出した。母父としてもBCディスタフを制したマルシュロレーヌやダービー馬マカヒキなどを輩出している。
生産は浦河の三嶋牧場。安田記念馬ダノンキングリー、高松宮記念馬ファストフォースなどを送り出している。また「メイショウ」冠の重賞馬も多く、帝王賞連覇のメイショウハリオや、メイショウベルーガ(日経新春杯・京都大賞典)とその仔メイショウテンゲン(弥生賞)・メイショウミモザ(阪神牝馬S)なども輩出している。
馬主は「メイショウ」の冠名で知られる松本好雄氏。
馬名意味は「冠名+熊本県の地名」。西南戦争の激戦地として知られる田原坂(たばるざか)がある熊本市北区植木町の地名か。
騎手としてメイショウサムソンでダービージョッキーとなり、メイショウタバルの母メイショウツバクロにも騎乗し新馬戦勝利に導いた[1]栗東の石橋守調教師に預けられた。
石橋守厩舎での担当者は上籠三男調教助手。上籠勝仁元騎手(現調教助手)の弟で、過去にはビワハイジ、ビワハヤヒデ、ファレノプシス、ディープスカイ、ローレルゲレイロ、ヒルノダムールと錚々たる面子の調教に携わってきた名うての助手である。
戦歴 ~粘る頑張るメイショウタバル~
2歳時(2023年)
最終調整の栗東CWコースでしまい11.2秒の動きを出し、10月9日の新馬戦(京都・芝2000m)に角田大河騎手でデビュー。道中は後方につけ直線で上がり34.2秒の最速で迫ったが0.4秒差届かず4着。
10月28日の未勝利戦(京都・芝1800m)、鞍上は前走と同じ角田大河騎手。道中は中団につけたがまたしても0.4秒届かず5着。
12月24日の未勝利戦(阪神・芝2000m)、ここで鞍上は浜中俊騎手に乗り替わり。道中は中団につけながら最後で上がり34.7秒の脚を繰り出し、3/4馬身差で初勝利を挙げた。
3歳時(2024年)
毎日杯での初重賞制覇まで
この年の1月20日の若駒ステークスに出走となったが、馬場入場後に右前肢跛行で競走除外となった。
気を取り直して2月17日のつばき賞(京都・1800m・1勝クラス)で鞍上は浜中俊騎手。このレースでは先手をとったが少し抑え2~3番手につけ、直線で抜け出しキープカルムの追撃をアタマ差交わしてゴール、2勝目を挙げた。
皐月賞のトライアルのスプリングステークスを目指していたがフレグモーネで回避。
1日休んでほぼ回復、毎日杯に向けて坂路の単走で4F52.0秒~1F11.8秒の好時計を記録。
毎日杯(GⅢ)は新たに鞍上坂井瑠星騎手で臨んだ。重馬場で行われたレースではスタートを決め、そのまま先頭に立って1000m59秒6のペースで逃げを打った。直線では内ラチギリギリを駆け(坂井は重馬場の中で内ラチ沿いに1頭分だけ残った芝の良い部分を狙ったとインタビューで語っている)、後続に6馬身も引き離し逃げ切った。石橋師は調教師として重賞初勝利、それも前述の通り騎手時代最後の勝利を挙げたメイショウツバクロの息子という縁のある血統の馬での達成となった。
暴走・取消、無念の春クラシック
次走を中2週での皐月賞に定め調整、半分暴走気味の4F52.6秒-ラスト1F11.8秒を計測。関東への初輸送もクリアし、いざ本番へとなった。鞍上は浜中俊に乗り替わり。
そして4月14日皐月賞(GⅠ)、抜けた馬が不在の中で4番人気に押し上げられ、馬体重もプラマイ0と仕上がったように見えた。
が、スタートしてから大暴走で前半57秒5、これは2013年(勝ち馬ロゴタイプ)の逃げ馬コパノリチャードの58秒0を更新する皐月賞の前半1000m最速通過である。これではいくらゴルシ譲りのスタミナといえど保つはずがなく、最終コーナーで馬群に沈んでいき、終わってみてば出走馬中最下位の17着。勝ったジャスティンミラノの1:57.1のコースレコードを演出する形となった。
この後は二冠目の日本ダービー(GⅠ)へ。8枠16番での出走が決まっていたが、直前の金曜日に左後挫石で出走取消が発表された。
神戸新聞杯親子制覇
秋の復帰戦は神戸新聞杯(GⅡ)(この年は阪神競馬場の改修に伴い中京芝2200m開催)。午前中の雨で稍重の馬場の中、春に引き続き浜中俊を背に大外8枠15番からスタート。馬の気分に任せて(浜中俊騎手談)コーナーインまでにハナを取り切ると後続に5~6馬身の差をつけつつ道中を運び先頭へ。最後はやや疲れジューンテイクの猛追を受けたが、半馬身残してゴール。重賞2勝目と共に、父ゴールドシップとの神戸新聞杯親子制覇を達成。ゴールドシップ産駒の複数平地重賞勝利は初となった。
不完全燃焼の菊花賞
ゴールドシップとの親子制覇を目指して臨んだ10月20日の菊花賞(GⅠ)は、単勝9.6倍の5番人気で迎えた。5枠10番からスムーズにスタートしたタバルだったが、距離を考えてか浜中はテンからは行かせず、1周目4角の下り坂は番手で進行。最初のホームスタンド前で歓声を受けて外から徐々に進出、一瞬ハナに立った。しかし、好きには逃げさせないとばかりに1・2コーナーでハナを奪取したのがベテラン柴田善臣のピースワンデュック。結局、タバルは逃げることができず、後方からも突っつかれつつ前団馬群の中で進行という窮屈な形となり、4角ではもう既に手応えは残っていなかった。セントライト記念制覇から臨んだアーバンシックが最後の一冠を勝ち取る中、メイショウタバルは16着。17着の皐月賞・出走取消の日本ダービーに続き、三冠は苦い結果に終わった。
菊花賞後は暮れのグランプリ・有馬記念(GⅠ)の登録を早々に表明。逃げ馬候補の筆頭と目されていたが、(本来非常に好ましいことではあるのだが)この年の第69回有馬記念は非常に有力馬の集まりが良かった。重賞2勝のメイショウタバルですら、カラテ・ホウオウビスケッツに次ぎ補欠3番手という状況で、出走を逃した。
4歳時(2025年)
再びの暴走、日経新春杯
陣営は回避馬の発生に懸けて直前まで有馬記念に向けた準備を継続していたものの結局出走はかなわず、古馬初戦として日経新春杯(GⅡ)にスライドした。この年は前年秋に制した神戸新聞杯と同じく中京芝2200mでの開催である。ハンデも57.5kgに留まり、条件戦3連勝でオープン入りしてきたヴェローチェエラに次ぐ2番人気(単勝5.3倍)で出走を迎えた。
3枠6番スタートからタバルはスムーズにハナを切ったが……「コーナーに入ってからガッツリかかって(浜中俊騎手談)」1000m通過は57秒7。後続をぐんぐん引き離し大逃げの形となったが、4ヶ月前に勝った神戸新聞杯の時は先頭を保ちつつも1000mを1分ジャストに留めていたので、これは明らかに飛ばしすぎである(ちなみにコースは違うが玉砕した皐月賞の1000mは57秒5)。直線で後続につかまり、ロードデルレイの勝利の中で11着に終わった。
転機、ドバイターフ
陣営は3月6日の朝に4月5日UAEメイダン競馬場で行われるドバイターフ(UAE・G1)の招待を受諾したことを発表。この年の芝中距離戦線は層が厚く重賞2勝のタバルでも大阪杯の出走が難しかったため、追加登録料を支払っての遠征であったが、松本オーナーからは「追加登録料のことは気にしなくていいから行って来なさい」とのゲキが飛んでいたそうな。サイレンススズカ、スマートファルコン、キタサンブラックなどで逃げの実績も数多い日本のレジェンド騎手、武豊と新たにコンビを組んで臨むこととなった。
このドバイ遠征は、メイショウタバルにとって大きな経験となったようである。
普段と異なり他厩舎の馬と調教を共にする環境の中、メイショウタバルは海外経験豊富なソウルラッシュの後ろについて走り、我慢して折り合う練習をさせてもらった。同時に、それまでどうにか制御するために装備していたクロス鼻革[2]を白いシャドーロールに変更したところ、大きく体を使えるようになったという。人を頼ることも覚えたようで、担当の上籠助手も後に「ドバイ遠征がなかったら今のタバルはない」と振り返っているほど、心身ともに大きく成長を果たした。
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レースではいつものように先頭に立つと折り合いもつき、馬場が重い影響で他馬との距離は引き離せなかったものの、並走する車載中継カメラをいつぞやのトランセンドの如くガン見しながらペースを作った。直線に入っても粘り、ソウルラッシュがロマンチックウォリアーとの激戦を制す中で7着ブレイディヴェーグと8着リバティアイランドには先着し、掲示板内の5着と健闘した。
宝塚記念: "縁"が織り成した逃亡劇
帰国して、引き続き武豊を鞍上に宝塚記念(GⅠ)に出走。大阪杯を連覇して臨むベラジオオペラ、有馬記念勝利以来の出走となるレガレイラ、前年の菊花賞馬アーバンシックと11年ぶりにファン投票の上位3頭が揃って出走。人気は単勝一桁オッズが5頭とやや割れており、メイショウタバルは先行力を買われ、単勝11.7倍の7番人気と穴候補として期待を集めた。
阪神競馬場は前日に強めの雨が降り、9Rには芝が稍重に回復するも、メインレースの時間も乾ききらず湿気った状態。道悪を得意とするタバルにとっては絶好の馬場となった。鞍上曰く返し馬ではかなりイレ込んでいたそうだが、本番はゲートを五分に出てハナを主張していき、行きたい馬も周囲におらず、すんなりとハナを取ることに成功。1000m59秒1と淀みないペースを刻み、道中絡まれることもなく鞍上の精密なペース配分の下、悠々と逃げて着実に後続の脚を削りにかかる。
4角で外から1番人気ベラジオオペラに競り掛けられたが(この際先頭を死守するメイショウタバルに対し関西テレビ実況の岡安譲アナからは「粘る!頑張る!メイショウタバル!」の実況が飛び出した)、直線で武豊がムチを入れると逆に突き放す。後続も全く寄せ付けず、2着ベラジオオペラに3馬身差をつける完全勝利。4度目の挑戦で念願のGⅠ制覇を成し遂げた。意外にも宝塚記念の逃げ切り勝ちは2008年のエイシンデピュティ以来17年ぶりとなる。
鞍上の武豊は2006年ディープインパクト以来19年ぶりの宝塚記念勝利となった。これで5勝目で、自身が持つ同競走最多勝利記録を更新した。また武豊がGIを5番人気以下で勝つのは実は初めてとのことである(それだけ「ユタカが乗る馬」には人気が集まるということでもあるが)。馬主の松本好雄氏は2013年エリザベス女王杯以来12年ぶりのJRA・平地GⅠ勝利[3]。武豊にとっては幼少期から親交が深い松本氏・石橋師と組んでのGⅠ勝利で、更に言うと2008年の宝塚記念で2着に終わったメイショウサムソンのリベンジを果たした形になり、インタビューでは珍しく「人がつないでくれた馬の縁、そして馬がつないでくれた人の縁。この勝利は格別」「泣きそうなくらい嬉しい」と感慨に浸っていた。
また管理調教師の石橋守は厩舎開業12年目で調教師としてのGⅠ初勝利。石橋師も騎手時代の2007年、メイショウサムソンと挑んだ宝塚記念で2着に敗れた苦い思い出があり、やはりリベンジ達成となった。取材では「オーナーには騎手時代からお世話になっていたので、少しでも恩返しができたかな」と答えている。
ゴールドシップ産駒としてはマイネルグロン以来約1年半ぶりのGⅠ勝利。平地GⅠに限ると前述のユーバーレーベン以来4年ぶりの2勝目。この年の宝塚記念は父の日であったが、父ゴールドシップには牡馬産駒初の平地GⅠ勝利という嬉しいプレゼントが贈られることとなった。史上初の宝塚連覇を成し遂げた父との史上4組目の親子制覇[4]となったが、その父とは似ても似つかぬ逃げ切り勝ちに、関西テレビの中継では解説の安藤勝己元騎手に「ゴールドシップの面影もないね」と言われ、同中継の実況・岡安譲アナにも「お父さんと違ってスイスイ進んでいきます」「恐らくお父さんのゴールドシップは北海道で応援しているのか。まぁあの馬のことだからしていないかもしれませんけれど……(笑)」とイジり倒されていた。奇しくもこの年はゴールドシップが宝塚で120億円事件を起こしてから丁度10年の節目であった。相変わらずなんともネタに事欠かない親子である。
余談
- 上籠助手からの愛称は「タバさん」または「兄貴」(!?)。上籠助手が朝厩舎に出勤すると顔を出して呼んでくるという。[5]
- 上籠助手曰く、その性格は「極端に臆病」。気性の荒さも恐怖から来るものだという。[6]
- 宝塚記念は「1番人気のオペラを2着に負かしたメイショウ」ということで、松本オーナー初のGI勝利となったメイショウドトウの宝塚記念を連想するコメントが多く見られた。
血統表
ゴールドシップ 2009 芦毛 |
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo | |
Wishing Well | ||||
ゴールデンサッシュ | *ディクタス | |||
ダイナサッシュ | ||||
ポイントフラッグ 1998 芦毛 |
メジロマックイーン | メジロティターン | ||
メイショウタバル 2021 鹿毛 |
メジロオーロラ | |||
パストラリズム | *プルラリズム | |||
トクノエイティー | ||||
*フレンチデピュティ 1992 栗毛 |
Deputy Minister | Vice Regent | ||
Mint Copy | ||||
Mitterand | Hold Your Peace | |||
メイショウツバクロ 2010 鹿毛 FNo.8-h |
Laredo Lass | |||
ダンシングハピネス 1999 黒鹿毛 |
ダンスインザダーク | *サンデーサイレンス | ||
*ダンシングキイ | ||||
メイショウサチカゼ | *クリスタルグリッターズ | |||
シアトルダンサー | ||||
競走馬の4代血統表 |
祖母ダンシングハピネスも冠名こそついてないが松本好雄氏所有馬であり、母仔4代続けて松本オーナーに所有され続けている縁ある牝系である。
関連動画
関連リンク
- 競走馬情報 メイショウタバル Meisho Tabaru(JPN) - JRA
- メイショウタバル (Meisho Tabaru) | 競走馬データ - netkeiba
- メイショウタバル|JBISサーチ(JBIS-Search)
関連項目
脚注
- *ちなみにこの勝利が石橋守騎手の現役時代最後の勝利であった。
- *馬の鼻先でX字に交差するように装着する鼻革。馬の口を開かなくしてハミ受けを良くする効果があるが、その分頭や首の可動域が小さくなってしまうデメリットもある。
- *地方のJpnIはメイショウハリオの2025年川崎記念が直近。J・GIはメイショウダッサイの2021年中山グランドジャンプがある。
- *前例は1966年エイトクラウンと1975年ナオキ、1999年グラスワンダーと2011年アーネストリー、2006年ディープインパクトと2016年マリアライトの3組。
- *netkeiba馬ラエティBOX『【日本ダービー】“佐藤くん”ことシュガークン、藁をくわえて眠る!? ゆるい出馬表!
』より。
- *平松さとし『宝塚記念を制したメイショウタバルの、武豊×石橋守とはまた別の、信頼のストーリー
』より。
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