マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe,MCU)とは、MARVELの映画部門マーベル・スタジオによる作品が共通して持つ世界観のことである。
概要
MCUとは、2000年代後半から作られ始めたマーベル・スタジオ製の実写版アメコミ作品が共通して持つ世界観であり、すべての作品はこの同一の宇宙の中、すなわちアース199999での出来事を描いている。
そのため、ある作品のヒーローが別の作品のヒーローと共闘できたり、あるいはヒーロー同士が戦うことができる。
この「すべては同一宇宙で起こっている出来事」というアイデアはアメコミでは数十年前から一般的であり、だからこそMARVELの『アベンジャーズ』やDCコミックスの『ジャスティスリーグ』などのクロスオーバー企画が刊行できている。作品とキャラクターの版権が作者ではなく出版社に属する、という日本では見られない手法が生み出したアメコミ独自のスタイルである。本家アメコミでは大クロスオーバー企画は数年に一度開催され、そこでは複数の雑誌に渡って通常連載では出会うことのないヒーローやヴィラン達が入り乱れるシリーズが構築される。
MCUでも同様に、各ヒーローが活躍するシリーズを作り、彼ら彼女らを数年に一度の『アベンジャーズ』シリーズで共演させるというスタイルをとっている。
作品は数年区切りでフェーズという分類がされ、各フェーズの終わりには『アベンジャーズ』が公開されるのが通例となる、予定だったのだが、フェーズ2は『アントマン』がラストとなり、フェーズ3は『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』がラストとなった。本来は『アントマン』はフェーズ3のトップに来るはずだったのだが、2014年にフェーズ3のラインナップが発表されたときに修正された。[1]『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』は2019年4月の『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開直前にフェーズ3への移動が発表された。
また、映画とは別にドラマシリーズの中にもMCUに含まれる作品が複数存在する。『エージェント・オブ・シールド』や『エージェント・カーター』は日本国内でもDLifeなどで目にした視聴者も多いはず。その他、『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』『ルーク・ケイジ』などNetflixでの配信専用作品もあった。他にもHuluでは『ランナウェイズ』が配信されていた。だが、2021年以降は後述するディズニー+への配信媒体への変更により、既存のドラマシリーズの展開はすべて終了している。また、代表作ともいえる『エージェント・オブ・シールド』は全7シーズンを経過するうちに映画シリーズとは乖離した世界観に移行したという見解も出ている。
2020年以降のドラマシリーズはディズニーの配信サービス「ディズニー+」での配信が主なものとなり、映画で活躍したヒーローたちのスピンオフ作品が多数作られている。
MCUに登場可能なヒーローと不可能なヒーロー
スパイダーマン
サム・ライミ版『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは当初権利の関係でMCUには参戦できなかった。
が、2015年にスパイダーマンの実写化権利を持つソニーとの協定を結び、権利関連の問題をクリアし、スパイダーマンは『ホーム三部作』として再リブートしたうえでMCUに参戦した。
さらに、ホーム三部作の最後を飾る第3作『ノー・ウェイ・ホーム』ではサム・ライミ版のスパイダーマンと『アメイジング・スパイダーマン』のスパイダーマンもMCUの世界に登場した。
2022年6月にはDisney+でのサム・ライミ版『スパイダーマン』および『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの配信も始まった。
X-MEN、ファンタスティック・フォー、デッドプール
実写版『X-MEN』シリーズ、および、そのスピンオフである『ウルヴァリン』や『デッドプール』はやはりキャラクターの権利の関係でMCUには含まれない。
唯一の例外としてクイックシルバーが実写版『X-MEN』とMCU作品の両方に登場するが、設定も演者も異なる完全な別人である。実写版『ファンタスティック・フォー』も同様でこちらも権利の関係でMCUには参戦しない…とされていた。
2018年に『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』の実写化権利を持つ20世紀フォックスがマーベル・スタジオの親会社であるディズニーに買収されることが判明し、それに伴い『X-MEN』シリーズもディズニー配給に代わる。これで『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』のMCU参戦を阻んでいた権利関係はクリアされた。
2022年10月現在、Disney+での20世紀フォックスのアメコミ実写化作品が配信されており、2022年5月公開の『ドクター・ストレンジMoM』では旧作のキャストで『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』のキャラクターが登場した。
今後、『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』のMCUでのリブートが予定されているが、新型コロナの影響で予定は遅れている。数年後にはMCUで活躍するX-MENやFFの姿も見れるようになるかもしれない。
だが、『デッドプール』はMCUへの合流は見送られるようである。もともとR-15指定映画と言う特殊なくくりとなっていたデッドプールは、子供向け作品も多く制作しているディズニー傘下で存続されるか心配されていたが、R-15指定のままシリーズを存続させると発表された[2]。
なお、2022年9月27日に『デッドプール3』がマーベル・スタジオ制作で2024年9月6日に公開予定であることが発表された。おそらくMCUに合流すると思われるが、内容や本当にMCUに合流できるかなどは2022年10月時点では不明である。
スタン・リー
そんなMCU作品群であるが、作中では必ずと言っていいほどある爺さんが存在した。
そう、マーベルコミックスの中核を担うスタン・リー本人である。[3]まったくもって出たがりなお爺ちゃんである。
スタン・リー本人は2018年に95歳で大往生したが、先に撮影してあった映像で『エンドゲーム』まで登場し、その後も写真などでカメオ出演していた。2022年にはマーベルがスタン・リーの肖像権に関する20年の契約を結んだとの報道もあり、CG技術でスタン・リーが復活する日も来るかもしれない。
2020年以降の新型コロナウイルスの影響
フェーズ4の最初を飾る『ブラック・ウィドウ』は本来2020年5月に公開予定だった。
しかし、2020年に新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るったことにより、映画の公開や撮影予定が延期される事態が発生した。MCUもこの流れから逃れることは出来ず、ブラック・ウィドウ以下6本の映画の公開が延期されたほか、映画・ドラマの撮影にも影響が出ている。制作会社の違うスパイダーマンもこの流れからは逃れることは出来ず、公開時期が延期されたが、その影響を受けてドクター・ストレンジは再延期された。結果的に、2020年はMCU関連作品の劇場作品が一つも公開されない年となってしまった。
『ブラック・ウィドウ』が公開されたのは2021年7月となる。
2021年10月19日のアナウンスでは新型コロナの影響による制作の遅れに伴い、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の公開スケジュールが延期された。この延期に伴い、他の作品もところてん式に公開日が後ろ側に移動し、2022年の公開予定本数が4本から3本になっている。
MCUに含まれる作品
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フェーズ1
ヒーローの存在が明確になる『アイアンマン』における”私がアイアンマンだ”発言を皮切りに、ニック・フューリーが各所で動く1週間”Fury's Big Week”を経て『アベンジャーズ』に至るまでの流れを描く。彼らがいかにしてヒーローになったのか、ヴィラン達はどのような目的を持っているのか。そういった世界観やオリジンを取り扱う作品が中心。
フェーズ2
『アベンジャーズ』でNYが戦場になって1年後からの話。ビッグ3のその後の情勢にも切り込んでいき、地球を離れ宇宙で起こっている出来事からインフィニティ・ストーンの秘めた力も徐々に明らかになっていく。一方で『アントマン』では縮小世界という、新しい舞台へも広がりを見せていく。
フェーズ3
『エイジ・オブ・ウルトロン』でソコヴィアが壊滅、ヒーローの活動自体が世間から疑問視されるように。ヒーロー同士の軋轢が見え始め、混沌した関係に発展。『ドクター・ストレンジ』で新たに描かれる平行世界という概念、更なるインフィニティ・ストーンの力、ブラックパンサーやスパイダーマン、キャプテン・マーベルといった新世代ヒーローの出現がMCUに大きなうねりを起こす。
- シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
- ドクター・ストレンジ
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
- スパイダーマン/ホームカミング
- マイティ・ソー/バトルロイヤル
- ブラックパンサー
- アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
- アントマン&ワスプ
- キャプテン・マーベル
- アベンジャーズ/エンドゲーム
- スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム
ここまでの23作品をまとめて「インフィニティ・サーガ」と呼ぶ。
フェーズ4
キャプテン・アメリカとアイアンマンが本作で卒業となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降もMCU作品は続いていく。本作からフェーズ6までの作品群は「マルチバース・サーガ」と呼ばれ、新生アベンジャーズ結成に向けてのストーリーが映画、ドラマで紡がれていく。
元々はフェーズ4の最初を飾るはずだった『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』はフェーズ3最終作に繰り上げられた。代わりにブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ主演の『ブラック・ウィドウ』がフェーズ4最初の作品になる。
2021年に入ると、ネット配信のドラマ『ワンダヴィジョン』が話題をさらい、それに続く『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』、さらにアニメ『ホワット・イフ...?』も新たな流れを作っている。
2021年7月には『ブラック・ウィドウ』が1年2ヵ月の延期を経て7月8日に公開された。劇場公開の翌日にはディズニー+でのネット配信も開始された。9月には『シャン・チー/テン・リングスの伝説』、11月には『エターナルズ』が劇場公開。これらの作品関しては45日間の劇場独占公開を経た上でディズニー+で配信されるとアナウンスされている。
2021年11月12日にはディズニー+での新たなドラマシリーズ『ムーンナイト』『エコー』『アガサ:ハウスオブハークネス』『シークレット・インベージョン』などの制作が発表されている。
2021年末にはドラマ『ホークアイ』が配信、日本では2022年1月に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はMCUだけでなくこれまでの実写版スパイダーマンシリーズの集大成となった。3月にはドラマ『ムーンナイト』が配信。二重人格のヒーローとエジプトの神々の物語が語られた。5月には『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が公開。マルチバースを行き来し、別次元のヒーローたちも登場した。6月にはドラマ『ミズ・マーベル』が配信。ムスリムの少女がヒーローになるまでが描かれた。7月には『ソー:ラブ&サンダー』が公開。女性版ソー/ジョディ・フォスターが暴れまわった。8月にはドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』が配信。11月にはフェーズ4のトリを飾る『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』が公開された。
『ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー』は2020年8月にブラックパンサーの主演俳優であるチャドウィック・ボーズマンの逝去が伝えられたが、制作サイドはボーズマン不在のまま代役も立てずに本作を制作・公開した。また、単独ドラマシリーズでデビュー予定だったアイアンハートが本作に先行登場した。
以下、フェーズ4に含まれる映画のラインナップ。公開日は国内のもの。
- ブラック・ウィドウ(2021年7月8日)
- シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年9月3日)
- エターナルズ(2021年11月5日)
- スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2022年1月7日)
- ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年5月4日)
- ソー:ラブ&サンダー(2022年7月8日)
- ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年11月11日)
フェーズ5
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』は監督のジェームズ・ガンが一時解雇されていたために一時公開日時は未定となっていた。また、本来は2020年に撮影が開始予定だったが、実際には2021年10月に撮影開始となった。2023年5月公開予定。
FOXをディズニーが買収して実写化の権利関係もクリアしたため、ファンタスティック・フォーの再リブートも予定されている。X-MEN関連作品にも期待が高まる。また、『ブレイド』もリブートが発表された。
ムスリム系女性ヒーローという設定で話題を呼び、先にドラマシリーズが作られたミズ.マーベルも劇場作品『マーベルズ』へ参戦予定。
『キャプテン・アメリカ:ニュー・ワールド・オーダー』はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に引き続き、アンソニー・マッキー演じるファルコンが2代目キャプテン・アメリカとして登場する。
2022年4月29日に『アントマン&ワスプ:クアントマニア』と『ザ・マーベルズ』の公開順が入れ替わったことが発表された。それぞれの公開時期はアントマンは2023年7月から2023年2月に、ザ・マーベルズは2023年2月から7月に変更された。ザ・マーベルズは2023年2月にさらに4か月の延期が発表され、公開日は2023年11月10日になった。
2022年9月には『アーマー・ウォーズ』が配信ドラマから長編映画に変更のアナウンスがなされた。また、2024年9月に『デッドプール3』が公開されることが発表された。前述した通り、『デッドプール3』がMCUに属する作品かどうかは2023年2月時点ではまだ不明であるが、念のために記載しておく。
2022年9月に10月のクランクイン直前で『ブレイド』の監督降板が報じられ、その後に制作の一時中断が伝えられた。そのため、『ブレイド』の公開は2023年11月から2024年9月に遅れ、『デッドプール3』を含む他の作品も公開が延期される。また、以前は『ファンタスティック・フォー』がフェーズ6の始まりとされていたが、この変更により、フェース5とフェーズ6の境目が不明となってしまった。
以下、フェーズ5の劇場公開ラインナップ(2023年2月25日現在)。公開日は変更の可能性あり。上記の通り、フェーズ6との境界線があいまいだが、暫定的にデッドプール3までを記載しておく。
- アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年2月17日)
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3(2023年5月5日)
- ザ・マーベルズ(2023年11月10日)
- キャプテン・アメリカ/ニュー・ワールド・オーダー(2024年5月3日)
- サンダーボルツ(2024年7月26日)
- ブレイド(2024年9月6日)
- デッドプール3(2024年11月8日)
フェーズ6
フェーズ6は遂に新生アベンジャーズ結成を描くストーリーへ突入。メインヴィランには征服者カーンを携え、ここから本格的にファンタスティック・フォーの面々を導入させていく。
ファンタスティック・フォーとカーンの情報は公開されているが、その他に関してはまだ情報が不足しているため、作品タイトルも抜けが多い。
2023年2月のケヴィン・ファイギのインタビューにて、MCUスパイダーマン第4作の制作にも取り掛かっていることが言及された。この時点では脚本家が案を出し合っている状態なので、フェーズ6に間に合うかは不明。
以下、フェーズ6の劇場公開ラインナップ(2023年2月25日現在)。公開日は変更の可能性あり。また、情報不足のため、以下のラインナップのうち、フェーズ5に含まれる可能性がある作品も混じっているかもしれない。
- ファンタスティック・フォー(2025年2月14日)
- アベンジャーズ/カーン・ダイナスティ(2025年5月2日)
- アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ(2026年5月1日)
- アーマー・ウォーズ(公開日未定)
ドラマシリーズ
アメリカABC系列ドラマNetflix配信ドラマアメリカなどでは2022年3月からはDisney+での配信に変更。 その他形式による配信ドラマ |
ディズニー+での配信ドラマMCUフェーズ4に含まれる作品
配信予定作品。すべてディズニー+での配信予定。MCUフェーズ5に含まれる作品以後制作が決定している作品 |
関連動画
関連商品
関連項目
- 映画
- アメコミ
- MARVEL
- クロスオーバー
- スタン・リー
- ヤクルト(スポンサー企業。アントマンやドクター・ストレンジにヤクルトが映る)
- シェアードワールド
- DCエクステンデッド・ユニバース
- ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース
脚注
- *Marvel Releases Official Phase 3 Timeline Image
- *『X-MEN』ディズニーで2021年以降にリブートへ ─ 『デッドプール』のみ存続、米報道
- *これに関してはMCU特有と言うよりもMARVEL原作の実写全般に言えることであるが…。これまでX-MENやサム・ライミ版スパイダーマン3部作、デアデビルに旧ファンタスティック・フォー2作にもカメオ出演していたが、MCUでも必ずと言っていいほど毎回顔を出していた。
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