ヤングブラック・ジャックとは、手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」を原作とした漫画。またそのアニメ作品。
漫画は、田畑由秋(脚本)、大熊ゆうご(漫画)による共作。医療監修は漫画・アニメ共に後藤伸正。
ブラック・ジャックの医学生時代を描く。
概要
2011年より2019年2月まで漫画雑誌ヤングチャンピオン(秋田書店)で連載された。単行本は全16巻。
2015年10月よりアニメ放送開始。
舞台は1960年代。
間 黒男は、臨床研修制度改善の学生運動をする同学を尻目に、医大生としての日々を過ごしていた。
なぜ彼は無免許かつ、法外な高報酬を要求するブラック・ジャックとなったのか。そんな彼の軌跡を描く。
原作は手塚治虫の「ブラック・ジャック」で、原作・本作ともに外科手術を題材とした医療漫画である。
だが黒男のサービスシーンが多く、よく肌を露出している。時々、BJというよりBLだと揶揄される。
原作「ブラック・ジャック」と同じくスターシステムを用いている。名前のあるキャラクターはもとより小さく描かれている背景モブ等も含めた大半のキャラクターが手塚治虫作品のキャラクターから引用されており、コミックの巻末にて元作品・キャラクターが紹介されている。
漫画では精巧な手術シーンが描写されるが、アニメでは血に配慮してグロシーンも抑制されている。
時代背景
インターン制度と学生運動(第1話)
かつて医師の世界には「インターン制度」という臨床研修制度があった。1967年まで、医師の卵は皆その制度を1年以上こなさなければ、医師国家試験の受験資格を与えられなかった。
インターン期間中、医師の卵は学生でも医師でもない不安定な身分となる。そのため低賃金・長時間労働を強いられる医師が多数存在した。教育という名の下に、研修とは無縁な本番の医療行為に従事させる病院が存在した。要するに病院は「インターン制度」を悪用し、「この労働をしなければ、将来医師になれないぞ」と脅す。
1968年、この臨床研修制度の待遇改善を要求する学生運動が繰り広げられた。「名目上は研修制度だが、実際は劣悪な環境下における労働」という仕組みに疑問を持つ、東京大学の医学生が中心に活動を展開した。医学部から始まった学生運動は、後に他学部にも波及する。
1969年まで継続したこの東大学生闘争を、俗に東大紛争と呼ぶ。
東大紛争に影響を受けた全国の大学生により、学生運動は全国各地に拡大する。偶然にもこの時代、日米安保条約締結や、ベトナム戦争開戦と時期が重なる。当初は、学生自治要求や授業料値上げ反対など、大学に直接関係する運動のみされたが、後に上記の政治問題に関連付けた政治的要素を含む運動に拡大していく。革新的(新左翼的[1])な思想を持ち、過激化する若者が続出した。
結局「インターン制度」は、1968年に廃止された。暴力的手段による運動は非難されるべきだが、ブラック病院たる「インターン制度」の廃止は、東大の医学生による学生運動の成果であるのも事実である。
なお現在の「研修医制度」は医学部卒業し、医師国家試験合格後に行う臨床研修制度である。2004年から2年間義務化されている。なお過去を繰り返さない為、劣悪な労働環境下での雇用は禁止されている。
ベトナム戦争(第3話〜)
本作は、1960年から1975年まで続いたベトナム戦争も描かれる。
(ベトナム戦争の歴史については当該記事を参照。)
モンサントが製造した枯れ葉剤散布や有無を言わせない敵人員の射殺などの映像が、当時普及し始めていたテレビを通じて放送された。非人道的と受け取った人々により、反戦運動が高まる。
前記の通り、日本では学生運動の学生がベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)に代表されるベトナム反戦運動へ流れ込む。なお同様の反戦運動はアメリカにも発生し、大学での反戦運動のほか、良心的徴兵拒否(当時のアメリカにはまだ徴兵制度があり)が盛んに行われた。
第3話において「米軍の脱走兵」「脱走兵を支援する活動家」「脱走兵を偽装した諜報員」が描かれる。これらは全て実話である。
ベトナム特有のジャングルという過酷な戦場に耐えかねた、アメリカ兵の約3%が脱走した。
またベ平連から派生した、脱走兵を支援する組織「JATEC」が存在した。1968年には、米軍空母からの脱走兵を、横浜港からウラジオストクの連絡船に乗せ、モスクワ経由で中立国のスウェーデンへ脱走させている。(アニメでは空路である。)
JATECは、上記の”密出国”に見られるように、手段をいとわずに脱走兵活動を続けた。
翌1979年には米国情報機関の職員が脱走兵のフリをして"JATEC"に潜入し、同行の脱走兵と活動家が逮捕された。(ただしこの活動家は銃刀法違反容疑で逮捕されたが、後にモデルガンと判明し、釈放されている。)
当初のベ平連は、反戦活動家のみならず一般市民も参加する、新左翼との関係が薄い普通の市民団体だった。また自衛官、警察官や右翼団体の寄付も集めていた。しかし徐々に新左翼団体構成員が流れ込み、左翼化する。成田空港闘争や日本の公害問題などベトナム反戦運動と直接関係ない事項に関わり、過激化した。これに疑問を持った参加者は脱退していく。
1975年、アメリカ軍がベトナムから撤退し、ベ平連も解散した。
登場人物
担当声優は今作のもの。ナレーションは複数のOVA版やテレビアニメ版でブラック・ジャックの声優を担当した大塚明夫。
なお本物の原作には登場しない人物も存在する。
これは本作が手塚治虫の死後に製作された系列作品であるため。
- 間 黒男 (はざま くろお)
- 声:梅原裕一郎
医大生。後にブラック・ジャックと名乗る無免許医となるが、今作ではブラック・ジャックとなる以前の学生時代を描くため、自称・公称ともに本名の間黒男である。
幼少期に浜辺でアメリカ軍の不発弾を踏み、身体がバラバラになるが、本間丈太郎の手術で奇跡的に回復する。これが彼が全身「つぎはぎ」になった理由である。(この時、付き添いの母親は黒男を庇い寝たきりになり、後に死亡。) - 岡本舞子(おかもと まいこ)
- 声:伊藤静
希志本城大学付属病院のインターン生。間の先輩。女性。
無免許の学生の身でありながら違法に医療行為を行なう間を時折とがめている。 - 藪 (やぶ)
- 声:遊佐浩二
血を見るのが苦手な医者。中年男性。借金を抱え、麻薬に溺れている。父親から病院を相続し、間に手術設備を提供する。24年前の太平洋戦争中、パプア・ニューギニアで新米軍医として従軍した経験を持つ。
心優しい性格を持つためメインヘロイン(メインヒロインの意)と視聴者から呼称される。ただし原作ではヘロインではなく、覚せい剤乱用者(メタンフェタミン中毒、ヒロポン中毒=ポン中)である。
厳密にはメインヒロポンが正しい。童貞。 - 軍医(ドクター)/キリー
- 声:諏訪部順一
若き日のドクター・キリコ。
アメリカ軍の医師で、患者を救うことを何よりも優先する。その為なら自らの命をも顧みない。
テレビアニメ
スタッフ
- 監督 : 加瀬充子
- シリーズ構成・スーパーバイザー : 高橋良輔
- キャラクターデザイン・総作画監督 : 片山みゆき・三浦菜奈
- 美術監督 : 西田稔・柴田正人
- 色彩設計 : 新井めぐみ
- 撮影監督 : 染谷和正
- 編集 : 渡部珠未
- 音響監督 : 亀山俊樹
- 音響制作 : グルーヴ
- 音楽 : 池田大介・古井弘人・秋山健介
- 音楽制作 : ビーイング
- アニメーション制作 : 手塚プロダクション
主題歌
- オープニングテーマ「I am Just Feeling Alive」
- 歌・作詞:UMI☆KUUN / 作曲・編曲:徳永暁人
- エンディングテーマ「オールカテゴライズ」
- 歌・作詞作曲:焚吐 / 編曲:Neru
放送局
放送局 | 放送開始日 | 通常放送時間 | 備考 |
---|---|---|---|
TBS | 2015年10月2日 | 木曜日 26:16~ | 茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川 |
CBS | 木曜日 27:58~ | 岐阜・愛知・三重 | |
サンテレビ | 金曜日 23:30~ | 兵庫 | |
BS-TBS | 2015年10月4日 | 土曜日 25:30~ | 日本全国(BS放送) |
CS-TBS | 2015年10月12日 | 未定 | 日本全国(CS放送・有料) |
インターネット配信
配信事業者 | 配信開始日 | 配信時間 | 備考 |
---|---|---|---|
ニコニコ動画 | 2015年10月5日 | 月曜日 24:00~ | 日本全国(配信より1週間無料) |
U-NEXT | 2015年10月5日 | 月曜日 更新 | 日本全国(有料) |
アニメ放題 | 2015年10月5日 | 月曜日 更新 | 日本全国(Softbankの有料サービス) |
各話リスト
#02以降の動画は、1週間限定無料配信。生放送は全話タイムシフト対応だが、これも1週間限定。
手術内容が薄字の物は黒男がメインではなく他者の手術の助手をした・もしくは一切関与していないもの。
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 手術内容 | 動画 |
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#01 | 「医者はどこだ!」 | 森田眞由美 | 寺田和男 | 吉村文宏 | 瀬谷新二 内田裕 斉藤圭太 篠原隆 青木一紀 千葉 茂 |
手足再結合 | |
#02 | 「拉致」 | 東海林真一 | 又野弘道 | 青木一紀 | 顔面整形 (予定は心臓移植) |
||
#03 | 「脱走兵」 | 野崎 透 | 加瀬充子 | 前園文夫 | 斉藤圭太 清水健一 |
減圧開頭術 | |
#04 | 「ベトナムにて その1」 | 寺田和男 | 西田健一 | 内田裕 清水健一 三浦菜奈 |
左内頚動脈結紮 | ||
#05 | 「ベトナムにて その2」 | 西田正義 | 山口頼房 | 小林明美 斉藤圭太 |
左内頚動脈の再吻合 | ||
#06 | 「ベトナムにて その3」 | 於地紘仁 | 前島健一 | 小林ゆかり 申馨植 |
腹部銃創の手術 | ||
#07 | 「苦痛なき革命 その1」 | 金春智子 | 東海林真一 | 青木一紀 清水健一 千葉茂 |
右腕骨折の手術 | ||
#08 | 「苦痛なき革命 その2」 | 寺田和男 於地紘仁 |
前園文夫 | 内田裕 斉藤圭太 |
無痛症の治療 | ||
#09 | 「無残帳 その1」 | 森田眞由美 | 藤本さとし | 西田健一 | 興村忠美 LEE JUNG-JON |
義肢機構の埋め込み | |
#10 | 「無残帳 その2」 | 鈴木卓夫 | 山口頼房 | 飯飼一幸 南伸一郎 半田大貴 桜井木の実 |
上腕動脈結紮 | ||
#11 | 「無残帳 その3」 | 又野弘道 | 青木一紀 LEE JUNG-JON 千葉茂 |
眼球摘出 | |||
#12 | 「狂騒の季節」 | 鈴木卓夫 寺田和男 |
前園文夫 | 斉藤圭太 千葉茂 |
暴行による複数箇所の 損傷の手術 |
エンドカードイラスト
話数 | 担当絵師 | 話数 | 担当絵師 | 話数 | 担当絵師 |
---|---|---|---|---|---|
#01 | 杉野昭夫 | #05 | 泉谷あゆみ | #09 | 左近堂絵里 |
#02 | カレー沢薫 | #06 | ゆーぽん | #10 | 梅田阿比 |
#03 | 森チャック | #07 | 石黒正数 | #11 | 田中圭一 |
#04 | ERIMO | #08 | 小田すずか | #12 | 大熊ゆうご |
現在12話全てのエンドカードがアニメ公式ホームページに掲載されている。
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関連項目
外部リンク
脚注
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