「GODZILLA ゴジラ」は、ゴジラ生誕60周年記念作品であり、ハリウッドによるゴジラシリーズのリブート作品である。
概要
レジェンダリー・ピクチャーズ提供・製作、ワーナー・ブラザーズ提供。総製作費は1億6000万ドル。2014年5月16日にアメリカで公開され、日本では7月25日より公開された。
1998年のローランド・エメリッヒ版以来2作目となるハリウッド製ゴジラだが、エメリッヒ版との設定の繋がり等は一切無く、レジェンダリー・ピクチャーズによる怪獣作品のシェアードワールド構想「モンスターバース」シリーズの第1作目として新たにスタートを切った作品である(後述)。
監督は超低予算SF映画『モンスターズ/地球外生命体』で一躍脚光を浴びたイギリスの新鋭ギャレス・エドワーズ。ギャレス監督は自分がゴジラマニアである事を自負しており、本作は日本のゴジラ映画や様々な怪獣・モンスター映画へのオマージュを散りばめた作品となっている。筆頭プロデューサーは『パシフィック・リム』の製作に関わったメアリー・ペアレント。脚本には『ショーシャンクの空に』『ミスト』を監督したフランク・ダラボンやノーラン版バットマンシリーズの脚本を担当したデヴィッド・S・ゴイヤーなどが参加している。
また、本作の製作総指揮には1971年に『ゴジラ対ヘドラ』の監督を務め、後にアメリカに渡ってIMAX版でのゴジラ新作製作の許可を得ていた坂野義光も関わっており、この時彼が進めていた企画が本作の制作につながったとされる。
主演俳優にはアクション映画『キック・アス』の主演を務めたアーロン・テイラー=ジョンソンが、助演にはTVドラマ『ブレイキング・バッド』のブライアン・クランストンや映画『マーサ、あるいはマーシー・メイ』のエリザベス・オルセンが起用され、さらに『ラストサムライ』の渡辺謙が日本人の科学者役として出演している。
制作~公開
日本版ゴジラの最終作『ゴジラ FINAL WARS』から4年後の2010年、前年にゴジラの制作権を獲得していたレジェンダリーがワーナーとの共同企画による完全なリブートとしての新たなゴジラ映画の制作を発表。レジェンダリーとワーナーの組み合わせは、『ダークナイト』『300』『ハングオーバー』など、アメリカで記録的なヒットを飛ばした大作・傑作を生み出している。
当初は2012年の公開を目指していたものの、脚本家の一人の交代や旧プロデューサーとの訴訟問題などにより製作は遅れた。プロデューサーなどの面子も入れ替わり、最終的に映画の撮影が開始されたのは2013年であった。
2012年7月にアメリカ、サンディエゴのコミコン[1]の会場で制作会社によりトレイラーが限定的に公開された。事前告知無しのサプライズであったが、観た人々は「ゴジラのデザインは日本版に近かった」「オッペンハイマー(原子爆弾の開発者)のスピーチが流れていて、雰囲気はシリアス、ダークだった」といった感想と共に好評を伝た。トレイラー公開後に登場した監督のギャレスも「オリジナルを参考に、シリアスなゴジラを作る」という主旨の発言をしていた。
以降の製作状況については日本にはほとんど伝えられてなかったが、2013年末に予告第一弾が公開。日本ではかつてのトラウマからか当初はいろいろ不安視する声も多かったものの、情報が追加されるに連れて本作におけるゴジラのヴィジュアルや能力などの設定が日本版のゴジラに近い事、さらに本作オリジナル怪獣「MUTO」が敵として登場しゴジラと対決する事などが明らかになっていった。
そして2014年5月16日より全米公開されると、アメリカでの初日の興行収入は3850万ドル(約39億円)を記録。5月時点で最大のヒット作であった『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の初日興行成績を追い抜くという好スタートを切り、わずか公開から一月足らずで98年版の総興行収入とほぼ同等の約3億8000万ドルの収益を叩き出した。
日本での公開は7月25日になった。これは客入りが予想される日本の夏休みに合わせたものと推測される[2]。また、何故か初日を客入り戦略上不利な金曜日に充てた事に一部のファンは苦言を呈したが、第一作で芹沢博士を演じた平田昭彦氏の命日がちょうど30年前の1984年7月25日だからではないか?とも言われている。
初週は動員数第1位を獲得。最終的には30億円以上の興行収入を記録し、年間の興行収入トップ10に滑り込む健闘を見せた。ちなみにその主な原動力は20代以上の男性=子供時代に怪獣映画に親しんだ世代であった。
全世界での最終的な興行収入は約5億2000万ドル。上位は『キャプテン・アメリカ』『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』『アメイジング・スパイダーマン2』などのマーベルヒーロー映画と『マレフィセント』などが独占しているが、これらに次いで年間第6位に入ると予想される。
評価・反応
前回とは対照的に本作を見た日本および世界のゴジラファンからの評価は概ね好評である。
前作においてファンの間で散々問題視されていたゴジラの描き方も、本作では本来のゴジラにかなり忠実であり、口から熱線を吐き、人類はおろか敵怪獣をも圧倒する怪獣王と言うべき存在として描かれ、この姿をほとんどのファンが「ゴジラが帰ってきた」「(本作は)紛れも無くゴジラ映画である」と肯定的に評価している。
他にもかつて東宝でゴジラシリーズの制作に携わった人達からもだいたい賞賛されるなど、見事に前作での汚名を払拭する事に成功しており、後述する本作の続編制作や日本でのシリーズ再開にもつながる結果となった。
反面、脚本の都合上かゴジラの具体的な出番がラストまでほとんど無く、本作のゴジラが人間にさしたる興味も敵意も持っていないという設定も相まって劇中ではむしろ敵怪獣のMUTOの方が人間への脅威として強調されており、初代を含めて今までのような“ゴジラvs人間”の展開を期待した人にはその事を不満とする声も少なくない。第一弾予告編がゴジラだけが登場して人間の脅威として暴れまわるような内容を示唆するものであった事も影響していると思われる。
モンスターバースと続編企画
「モンスターバース」の詳細については当該記事を参照。
2017年1月、レジェンダリー・ピクチャーズは同社が制作する一連の怪獣作品を「モンスターバース」と呼称し、これらはすべて同じ世界観が舞台であるというシェアードワールド構想を発表した[3]。2014年公開の本作「GODZILLA ゴジラ」はその第1作目として位置付けされるという。
第2作目はキングコングを主役に据えた2017年に公開された映画「キングコング:髑髏島の巨神」であり、本作より約40年前の髑髏島を舞台に、MONARCHとベトナム帰還兵たちがキングコングと遭遇する事件が描かれる。
第3作目は本作の続編に当たる2019年公開の「Godzilla: King of the Monsters(邦題:キング・オブ・モンスターズ)」で、同作においては日本のシリーズでも馴染み深いラドン・モスラ・キングギドラの登場権利を東宝から取得しており、それらの登場も果たしている。そして2021年には本シリーズのゴジラとキングコングが激突する「Godzilla vs. Kong」も製作および公開された。
また、本作の前日譚であるアメリカン・コミックスの「ゴジラ:アウェイクニング<覚醒>」がレジェンダリー・ピクチャーズのコミック部門から発売されている。日本語版の発売はヴィレッジブックス。
あらすじ
1999年、フィリピンの炭鉱で巨大な生物の骨の化石が発見される。その化石には卵の殻のようなものが寄生するように付着しており、そこから「何か」が誕生し海へと這い出た痕跡があった。
同じ年、日本の雀路羅(じゃんじら)市にある原子力発電所に謎の震源と電磁波が徐々に接近しているのが探知され、やがてその振動が炉心に異常をもたらし始めた。この発電所に勤務していたブロディ夫妻は異常の調査を開始し、妻・サンディが炉の修理へと向かうが、謎の咆哮と共に巨大な地震が発生、炉心融解を伴う事故が起こってしまう。夫・ジョーはサンドラもろとも炉を閉鎖する苦渋の決断を下し生き延びるが、結局、放射性物質が撒き散らされた雀路羅市は完全に封鎖される事となった。
15年後の2014年、ジョーの息子フォードは成人しており、米軍での任期を終えてサンフランシスコの自分の家族の元へ戻っていた。しかしそこに日本に滞在していた父が雀路羅市に入り込んで逮捕されたという知らせが入る。今なお事故の原因に執着する父に従ってフォードもまた雀路羅市に赴く。二人はそこで「ある異変」に気付くも、市の跡地で活動していた正体不明の組織に捕まり、連れて来られた研究施設で巨大な光る繭のようなものを目撃する。
やがて繭から巨大怪獣“MUTO”が羽化。施設を破壊して逃げ去り、それに巻き込まれたジョーは命を落とす。
フォードは施設の責任者だった芹沢猪四郎に引き連れられ、彼から約60年前にその存在が確認され、人間による幾度もの核攻撃を受けて姿を消した最初の怪獣“ゴジラ”のことを聞かされる。ゴジラとMUTOには生態的に深いつながりがあると考える芹沢はもしゴジラがMUTOの誕生を察知すれば向こうも再び動き出すだろうという予測を立てる。
その頃、日本を飛び出したMUTOはハワイに飛来し、そして芹沢の予想通りそれに呼応するかのようにゴジラもまたハワイに上陸。ゴジラとMUTO、この二種の怪獣の遥か太古から続く因縁の対決が始まろうとしていた。
登場怪獣
ゴジラ
ゴジラシリーズ全般を通しての詳細については記事「ゴジラ」を参照。
地上が今よりも濃い放射能で満ち溢れ様々な巨大怪獣が跋扈していた古生代ペルム紀(約2億7000万年前)、その生態系の頂点に君臨していた「王たる種族」の末裔。
その名前の由来は劇中では語られていないが、前日譚であるアメコミ「Godzilla:Awakening」にて芹沢博士の父親が「日本語で鯨とゴリラを合わせた言葉」と語っており、また本作のパンフレットでは日本の大戸島に伝わる「呉爾羅」に倣ったと記されている。
核攻撃にも耐えられるほどの強靭な肉体を持ち、体内には原子炉のような器官を持つ。
太古の放射能濃度が高かった時代で生きていたとされ、1954年の水爆実験が原因で蘇ったのではなく、核開発が活発になった1945年頃に覚醒していた。近隣の島々に上陸する事はなく、人間に危害を加える事もしなかったが、ゴジラの存在を把握したアメリカとソ連は、実験を口実にしたゴジラへの核攻撃を何度も実行していた。
必殺技はお馴染みの放射熱線(アトミックブレス)。使用するとエネルギーを著しく消耗するため、使い所によっては逆にピンチに陥る可能性もあるという諸刃の剣となっており、従来作品に比べると劇中での発射回数は非常に少ない。なお、尻尾の先から背中にかけて徐々に背びれが発光していくというエネルギー充填のカウントダウンのような演出が追加されている。
本作のゴジラは善悪を超越した存在として描かれ、今まで以上に「人知を超えた者」らしさが強調されている。劇中では敵怪獣であるMUTOを狩るため執拗に追跡するが、その理由ははっきりしない。
性質は野生動物のそれで、標的に対しては狂暴性を発揮するがそれ以外には全く関心を示さない。人間がアリにいちいち構わないようにゴジラは足元にいる人間は全く眼中になく、米軍の集中砲火を浴びてもちょっと嫌がる程度の反応である。だが、その巨躯ゆえ上陸するだけで高波を引き起こし、街を歩くだけでビルが勝手に倒壊するなど、まさに生きた自然災害そのものと言っても過言ではない。
シルエットは平成VSシリーズのゴジラに似ているが、背びれは鋭く尖っており、頭は若干小さく首が室伏選手ばりにガッチリしている。正面から見るとちょっと可愛らしい。全体的にはクマを、目の周辺は鷹などの猛禽をモデルにしている。
MUTO(ムートー)
- 身長:約61m(オス) / 約91m(メス)
- 体重:不明
詳細は記事「MUTO」を参照。
名称は、未確認巨大陸生生命体という意味の「Massive Unidentified Terrestrial Organism」の頭字語(アクロニム)であり、厳密には同怪獣の個体名ではない。
ゴジラと同様、ペルム紀に存在していた昆虫のような怪獣。鎌状の長い四肢と赤く怪しく光る眼が特徴的。性質は非常に凶暴で、放射能および放射性物質を餌としている。
ペルム紀時代は天然の原子炉であるゴジラの先祖に寄生して卵を産み付ける習性があったが、現代に復活した今は原子力発電所や核兵器などの代替要素が豊富にあるため、そちらを優先的に狙っている。雀路羅原発を襲撃した張本人であり、主人公フォードにとっては憎き親の仇である。
ゴジラと違い放射熱線のような飛び道具は持たないが、爪先から強力な電磁パルスを発生させ、自分の周囲の電子機器類を一瞬で無力化させる事ができる。映画では描写されていないが、小説版ではゴジラが熱線を発射しようと背びれを光らせるも、電磁パルスによって発光が遮断され、熱線が出なくなってしまう場面がある。
オスとメスのつがいで登場し、ある目的のためにアメリカに上陸する。ゴジラはその目的を阻止するためにMUTOを追うが、決戦の地サンフランシスコでゴジラはこのMUTO夫妻のコンビネーション攻撃に苦戦を強いられる事となる。
無機質な見た目とは裏腹に感情表現は意外と豊かで、思わずリア充爆発しろと言いたくなるほどのイチャイチャぶりを披露してくれるとか、そうでないとか。
前日譚「ゴジラ:アウェイクニング<覚醒>」では、細胞のひとつひとつが独立した生命を持つ群体生物という本種とは別種のMUTO「Shinomura」(シノムラ)が登場している。
登場人物 / キャスト
- フォード・ブロディ(アーロン・テイラー=ジョンソン)
- 本作の主人公。幼少時に雀路羅市の原発事故を目撃した経験を持つ。現在はアメリカ軍の海兵隊員で、やがて日本、ハワイ、そしてサンフランシスコで、ゴジラとMUTOの戦いに巻き込まれる事となる。
- 芹沢猪四郎(渡辺謙)
- 特務研究機関「MONARCH」の学者。ゴジラとMUTOの生態、その関係性を長きに渡って研究していた。名前の元ネタは『ゴジラ(1954年)』でオキシジェン・デストロイヤーを使いゴジラを倒した芹沢博士と同映画の監督・本多猪四郎から。
- ジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン)
- フォードの父で核物理学者。雀路羅原発事故で妻を喪った後、事故の原因究明に執念を燃やし、強大な電磁パルスを発する何者かの存在に独力で辿りつく。
- エル・ブロディ(エリザベス・オルセン)
- フォードの妻。サンフランシスコの病院看護師で、フォードとの間にサムという息子がいる。
- サンドラ・ブロディ(ジュリエット・ビノシュ)
- ジョーの妻。15年前に夫とともに雀路羅市の原発で働いていたが、突如発生した原発事故によって死亡した。
- ウィリアム・ステンズ(デヴィッド・ストラザーン)
- 米軍提督。例え米国本土で核兵器を使用してでもゴジラとMUTOを倒そうとする。
スタッフ
- 監督:ギャレス・エドワーズ
- 製作総指揮:アレックス・ガルシア、パトリシア・ウィッチャー、坂野義光、奥平謙二
- 製作:メアリー・ペアレント、ジョン・ジャシュニ、トーマス・タル
- 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー、マックス・ボレンスタイン、フランク・ダラボン
- 音楽:アレクサンドル・デスプラ
余談
- 本作の製作者に名を連ねている板野義光は『対ヘドラ』を手がけた際に“ゴジラに空を飛行させる”という前代未聞の演出を行った事で当時のプロデューサーだった田中友幸の怒りを買って二度とゴジラ映画を撮らせないと言われていた人でもある。
- ギャレスが映画の撮影のためカナダに入国した際、カナダの入国管理官に自分がゴジラ映画の撮影に来ていると知られるとその管理官に「今度は変なもの作るなよ」と釘を刺された。
- 撮影も終わっていざ編集作業に入った所、このままでは完成品が4時間超えになってしまう事が判明したためやむなく場面の大部分をカットしてどうにか2時間で作品が収まるようにした。
- 芹沢が1945年の原爆被害者の遺族として米軍に核兵器使用の中止を求めるシーンは実際にはもっと長く具体的な陳情になる場面だったらしいが、尺の都合上あくまでその事を仄めかす程度に留まっている。
- 初代『ゴジラ』で主演を務めていた宝田明も本編にカメオ出演する予定だったが、こちらも本編ではカットされている。
- ファンの間では98年版ゴジラは監督(エメリッヒ)と制作会社(トライスター)の名前からそれぞれ「エメゴジ」「トラゴジ」と称されていたのに対し、本作のゴジラも監督(ギャレス)と制作会社(レジェンダリー)の名前を取って「ギャレゴジ」および「レジェゴジ」と呼称されている。
- 今作のゴジラはフルCGだが、人間のモーションアクターが動きをつけている。演じたアンディ・サーキスは2005年の『キングコング』でコングを演じており、キングコングとゴジラを演じた2人目の俳優となった(ちなみに1人目は中島春雄)。
- 2014年12月発売のPS3用ゲーム『ゴジラ-GODZILLA-』およびその続編の『ゴジラ-GODZILLA- VS』の隠しキャラクターとして本作のゴジラが登場する。
- 本作のヒットを受け、東宝は並行して復活企画を進めていた国産ゴジラシリーズの正式な再始動を決定。翌2015年にはシリーズ第29作目となる「シン・ゴジラ」およびシリーズ第30作目にして本邦初とも言えるアニメ映画版「GODZILLA」の製作にゴーサインを出し、本作とその続編のちょうど合間に当たる2016年から2018年にかけてそれらが公開されている。
関連動画
予告・特報
メイキング
関連項目
- ゴジラシリーズ / ゴジラシリーズの関連項目一覧
- 怪獣 / 映画 / 映画の一覧 / 特撮 / 特撮作品一覧
- モンスターバース
- ギャレス・エドワーズ / デヴィッド・S・ゴイヤー
- We call him…ゴジラ
脚注
- *映画、漫画等の大衆文化を扱うコンベンション
- *98年版もアメリカでは5月公開だったのに対して日本では7月に公開と大きく間が開いていた
- *Thomas Tull to Exit Legendary Entertainment (Exclusive) | Hollywood Reporter
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- キングコング:髑髏島の巨神
- ゴジラ:アウェイクニング<覚醒>
- Godzilla: King of the Monsters
- Godzilla x Kong: The New Empire
- Godzilla vs. Kong
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