ホウオウイクセル(Ho O Ixelles)とは、日本の競走馬である。
2021年からの新規競馬ファンに血統の浪漫を教えてくれた馬だが、実際に受け継いだ血は…
父ルーラーシップ・母メジロオードリー(母父スペシャルウィーク)。
通常の競馬記事なら、父ルーラーシップは…という説明から入るが、2021年春から競馬ファンになった人は、ホウオウイクセルは「ルーラーシップの子」からは紹介されていない。2代上から、「エアグルーヴ・スペシャルウィーク・メジロドーベルの孫で…」 と紹介されている。もちろん、競馬では2代上も重要であるが、真っ先に考慮されるのは通常母父であって、父母が父より先とはどういうことか。
2021年、過去の名馬が女の子の姿になって走るゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』がリリースされる。ホウオウイクセルは、血統表の中に『ウマ娘』に登場する競走馬が5頭もいたのである。
そりゃサラブレッドなんだし、競馬ゲームにご先祖様がいっぱいいるのは当然だろ、と思うかも知れないが、『ウマ娘』に登場する競走馬は90頭ほどと他の競馬ゲームに比べてかなり少なく、ここまできれいに血統がつながっている馬はなかなかいなかったのである。そのため、『ウマ娘』ファンを本物の競馬に引き込む際に、血統のスポーツとしての競馬を語るとき、彼女がよく引き合いに出された。
父ルーラーシップは勝ち負けにムラがありながらもクイーンエリザベス2世カップを制したG1馬であり、種牡馬としても目下活躍中であることは古参競馬ファンには語るまでもないことである。しかしルーラーシップは残念ながら、2022年末までで1頭もウマ娘化されていないサンデーレーシングの所有馬。『ウマ娘』ファンにはなじみが薄かった(ついでに、海外の競走はゲーム版『ウマ娘』に登場しないので、勝ち鞍がピンと来ない)。しかしその後、彼らもルーラーシップがいかに「すごい」馬だったのかを思い知ることになる。
母メジロオードリーは、スペシャルウィーク とメジロドーベルを両親に持つ良血馬。旧メジロ牧場の忘れ形見でもあり、メジロ牧場からは最も多くウマ娘が登場しているので冠名はそちらのファンにも知られている。
また、スペシャルウィークの祖父マルゼンスキーとメジロドーベルの父メジロライアンも『ウマ娘』に登場するので、彼女が母親というだけで4頭が確定、という「ウマ娘血統」の鍵とも呼べる存在。
そんなホウオウイクセルの生まれ故郷は、解散したメジロ牧場の敷地と所有馬を受け継いだレイクヴィラファーム。同場は生産馬を自分で走らせるのではなく、セリに出して他の馬主に買ってもらう生産牧場へと変わっていた。ゆえに、彼女に限らず今後の生産馬に「メジロ」の名がつくことは基本的にない。
彼女は2019年セレクトセールにて、小笹芳央(よしひさ)に購入された。冠名「ホウオウ」は彼の下の名前を音読みしたもの。「イクセル」は「ベルギーの地名から」とされているが、ここは大女優オードリー・ヘップバーンの出身地。つまり母メジロオードリーつながりか。
2020年10月、新潟の2歳新馬戦でデビューしたホウオウイクセルは、そこを3着で終えるものの、次月福島の未勝利戦では。残り200mから抜け出すと追いすがるコスモマインを振り切って初勝利。
3戦目は早くもG3 フェアリーステークスを選択。後方待機から徐々に進出し、大外からゴボウ抜きに掛かるが、逃げるファインルージュをかわせず2着。
4戦目もG3 フラワーカップ。前述の『ウマ娘』のリリースは2021年2月24日であり、ホウオウイクセルが「ご先祖様にウマ娘がたくさんいるよ」と紹介され始めていた。同競走はちょうどその次走だったため、応援していたウマ娘ファンも多かった(ただし5番人気)。
レースでは、好スタートからの先行策。うまいこと経済コースに入り込み、残り200mで抜け出してそのまま逃げ切り、重賞初制覇を果たす。
ウマ娘ファンは素直に喜んでいたが、そこまでの成績が、すべて馬券に絡んでいるとはいえ負・勝・負・勝。この勝ちパターンに、競馬ファンはなーんか嫌な予感がしていたかもしれない。
続くはもちろんG1 桜花賞。サトノレイナスの隣で後方待機…をしていたのだが待機したまま直線に入っても全く伸びず。その間にサトノレイナスがぶっ飛んでいき、それでもソダシが振り切って決着。
ホウオウイクセルは9着と惨敗。しかし彼女の悲劇は、狂気のお嬢様メイケイエールの存在により、負けた、という面でもいじられる要素がなかったことかも知れない。その上オーナー側がウマ娘化立候補を(リップサービスの面が大きいであろうとはいえ)宣言していたので、そっちでも話題を奪われてしまった。
オークスは、距離と飛節の不安から回避。次走はG3 紫苑ステークスを選択したのだが…
スタートで立ち上がってしまい 、大出遅れ。競馬ファンの嫌な予感が現実のものとなり、「うわやっぱり親父の血かー!」と頭を抱える羽目になった。がんばって追いかけたがもう遅い。直線で馬群をどうすることもできず、13着と大敗してしまう。
競馬ファンには、2012年有馬記念で父ルーラーシップがやらかしたゲート立ち上がりの再現と見えたが、今回はなぜかウマ娘ファンもこれを知っていた。
なぜかというと、『ウマ娘』の側では少し前にエイシンフラッシュが育成実装されており、目標レースだった有馬記念に、バッドスキル「ゲート難」持ちのエアグルーヴ というふしぎな存在がNPCで登場していたためである。エイシンフラッシュと戦った競走馬の多くがウマ娘化していなかったために、出せない馬の代役をその親に当たるウマ娘が行っていた。ルーラーシップは、母エアグルーヴにそれっぽいスキルをつけて再現されていたのである。ウマ娘ファンも、古参競馬ファンからその旨説明を受けて、この事件の存在を知っていたのだった。ちなみに、のちに同年の有馬記念に出走していたトーセンジョーダンのシナリオにも登場する。
いずれにせよ、ホウオウイクセルに父譲りの出遅れ癖があることが明るみに出、それが新規競馬ファンにも知れ渡ることになり、次走秋華賞を迎えることになる。
「お願いだからゲートを出てくれ…」というファンの祈りを一身に受けた秋華賞。
その祈りは…届かなかった。
ゲートが開くと同時に右側に顔をぶつけ、またもや大出遅れ。大急ぎで内ラチに向かうがもうそこは馬群の中。向こう正面では、外傷性鼻出血で本来の実力を出せなかったオークス馬ユーバーレーベンと併走にまでは持ち込めたが、そのまま誰にも追いつけず16着と最下位に終わった。
先頭ではアカイトリノムスメが父と母の名にかけて素晴らしき飛翔を見せていたが、こちらの「ホウオウ」は父の名にかけて見事に墜落していた。
長らく休養していたが、2022年7月30日、関越ステークス(OP)で復帰。このレースでは出遅れなく先頭集団のすぐ後ろ、4番手あたりを追走。結果は差し馬にごぼう抜きにされ、5着に終わった。
次走は10月23日新潟牝馬ステークス(OP)。いつも通り出足は良くなく後方3番手からのスタート。最後上がり2位タイの速度で追い込むも、同じ上がりで中団から出たホウオウエミーズ(同じ冠名を使ってることから察することができるが、馬主は同じ、こちらは5歳)に追いつくことができるわけもなく、4分の3馬身差の2着に終わった。まあ斤量差が収得賞金の都合で1kgこちらが重かったのもあるだろうが。
年明けての次走は1月14日のG3 愛知杯。特に出遅れることもなく中団に控えることができたが、直線で後続馬に抜かれていき、特にいいところなく11着惨敗に終わる。
次走は福島牝馬ステークス(GIII)だったが8着。関越ステークス(OP)は14着。新潟牝馬ステークス(L)では久しぶりに掲示板に入る5着となった。
新潟牝馬ステークスを最後に、10月27日に競走馬登録を抹消、レイクヴィラファームにて繁殖入りする運びとなった。
「ご先祖様がたくさん出てくるゲームがブームになった」という偶然により思わぬ人気が出た馬ではあるが、その期待に応え、一度は重賞を制した。
父ルーラーシップも、出遅れ癖と戦いながら勝ったり負けたりを繰り返し、ついにはG1馬となった。ホウオウイクセルも、新たな競馬ファンの期待と新生メジロ・レイクヴィラファームの実力を証明するため、そしてオーナーに初のG1をプレゼントするため、夢を次世代へ繋いでいく。
ルーラーシップ 2007 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
エアグルーヴ 1993 鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
ダイナカール | *ノーザンテースト | ||
シャダイフェザー | |||
メジロオードリー 2007 鹿毛 FNo.10-d |
スペシャルウィーク 1995 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
レディーシラオキ | |||
メジロドーベル 1994 鹿毛 |
メジロライアン | アンバーシャダイ | |
メジロチェイサー | |||
メジロビューティー | *パーソロン | ||
メジロナガサキ |
掲示板
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最終更新:2024/05/10(金) 10:00
最終更新:2024/05/10(金) 10:00
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