EST(競馬) 単語

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EST(競馬)とは、2021年中央競馬クラシック三冠を分け合った3頭の競走馬、「エフフォーリア」「シャフリヤール」「タイトルホルダー」の総称である。

加筆依頼 この記事は現在進行中の話題を扱っています。
今後の進展によって内容が増補、訂される場合があります。

概要

この3頭は2018年に生まれ、2021年クラシック三冠をそれぞれ勝利した。ESTエフフォーリアEfforia)、シャフリヤールShahryar)、タイトルホルダーTitleholder)の頭文字から取られており、英語最上級を意味する接尾詞と引っ掛けている。2021年クラシック世代は彼らを代表として「EST世代」と呼ばれることもあるとかないとか。

クラシックを3頭が分け合うこと自体はそれほどしくないが、彼らはクラシック後にそれぞれGI勝利3頭全てが古GI勝利するのは史上初の快挙である

また、エフフォーリア史上初 となるクラシック及び天皇賞秋有馬記念を三歳で制覇

シャフリヤール毎日杯及びダービーレコード勝ちし、ダービーとして史上初めて海外G1を制覇

タイトルホルダー菊花賞及び天皇賞春を史上初めて逃げ切り勝ち し、またそれぞれの上が兄弟であり、両方にG1を獲らせた のも史上初めての事である。

とはいえ、かつて人気を博したTTGBNWべると、ライバル感は薄いかもしれない。特に、シャフリヤールジャパンカップ後に海外路線へを切ったため、他の2頭との直接対決がほとんどない。また、3頭全員ったのも日本ダービーのみである。

ちなみに、2021年は『ウマ娘 プリティーダービー』が大ヒットし、新たに競馬を始める人が急増した年でもある。そんな中で颯爽と現れたこの3頭と2021年クラシック世代は、新しい競馬ブームを牽引する存在となった。有馬記念宝塚記念で歴代最多得票を更新したことからも、この世代の人気の高さが伺えるだろう。

各競走馬の概要

時代の継承者エフフォーリアE

偉大なる王シャフリヤールS

怪物を超えた怪物タイトルホルダーT

活躍の歴史

生い立ち~デビューまで

まずこの三頭、生い立ちが三者三様で全く違う。


エフフォーリアは血統こそ良かったものの、トモ(後肢)を始めとした発達の悪さ、運動を行う度に疝痛を起こす体質の弱さが問題視されており、クラブ代表に「がない」と言われてしまうくらいには注されていなかった。結果、同期のオーソクレースや同厩のダノンザキッドの方に注が集まり、しばらくは文字通りパッとしない存在だった。1口7万円×400口の2800万円という安めの価格で募集がかけられていたことからもその存在感のなさが伺える。[1]

そんな彼が所属することになった厩舎は騎手時代に祖シンボリクリスエス調教にも参加していた鹿戸雄一厩舎。かつてスクリーンヒーロージャパンカップを制したこともあったが、それ以降重賞とはどこか縁がい所であった。

一方のシャフリヤール。こちらはが説明不要の三冠馬はBCフィリー&メアプリントの勝ちと良血中の良血から生まれた存在である。おまけにあたるアルアインGIを2勝するなど既に実績を残していたため、サンデーレーシング玉として高額な募集(総額1億2000万円)がかけられた。エフフォーリアとは対称的にこちらは生まれた時から注の的であり、所属もダービーエイシンフラッシュをはじめ多くの名を送り出してきた東の名門、藤原英昭厩舎である。

そしてタイトルホルダーは、この中では一の個人馬主である。日本競馬の結晶とも言うべき良血であり「怪物」とも呼ばれて二冠を制したドゥラメンテメーヴェ英ダービーを制したMotivatorと、こちらもなかなかの良血なのだが2160万円とわりと安値で買えてしまったためオーナーは逆に不安になったとか。

しかし、坂路追い切りで頂上からさらに先へ行ってしまうなど調教の時点で強さを発揮。生産者である岡田牧雄氏はこのを「マツリダゴッホ以上の[2]」と言ってタイトルホルダーの事を各所に触れ回り、また抜群のスタミナから菊花賞天皇賞春を最大標としていた。

所属は美栗田厩舎。タイトルホルダーが来た頃はアルクトスで初重賞を飾ったばかりであった。

デビュー~クラシック前哨戦

エフフォーリア2020年8月デビュー。当初は札幌デビューする予定であったがコロナ函館に移動しており、また体質が弱く疲れが残りやすいことから緩やかなレースプランが組まれることになった。上は調教を担当していた横山武史騎手に決定[3]。追切での調教オープンであるトーラスジェミニにも先着しその時のエフフォーリアの動きに惚れ込んだ武史騎手は知り合いの記者などに触れ込みまくっていたという。

そんなエフフォーリア新馬戦を先行してから抜け出して勝利ステークスからホープフルステークスに向かうプランもあったが体質を考慮し百日草特別へ向かう。レースでは群に閉じ込められピンチに陥るも一で抜け出して快勝、絶好のスタートを決めた。

シャフリヤールは同年10月菊花賞の開催日にデビュー上は福永祐一騎手となり、1番人気に応える形で見事勝利を収めた。

にはタイトルホルダーデビュー。前向きな気性面を考慮して上には戸崎圭太騎手が選ばれた。デビュー戦では1800mを逃げ切り勝ちし、続いて東京スポーツ杯2歳ステークスホープフルステークスにも出走するがいずれも2着、4着に終わる。どちらも勝ったのは二歳王者ダノンザキッドであった。

明けて3歳。間隔をけて走らせつつじっくり調教したエフフォーリアは弱点だった体質が徐々に善。営はこれを好機と見なしクラシックの前戦として共同通信杯 を選択する。ちょうどシャフリヤールも休養を挟んで同じレースを選択したため、ここでESTにとって初めての直接対決となった。

レーススローペースで進む中、エフフォーリアは3~4番手につき、シャフリヤールは中団でじっくりと足を溜めながら待機。最後の直線でが入ると、エフフォーリアはぐんぐん後続を離していき、2着に2身以上の差をつける快勝。傷の3連勝を達成した。一方のシャフリヤールは、2着のヴィクティファルスをアタマ差捉えきれず3着。収得賞金の加算に失敗してしまう。

そんな訳でシャフリヤール毎日杯 へ出走。オッズ人気は良血グレートマジシャンに次ぐ2番人気となり上には先約のあった福永騎手から乗り替わり川田騎手が乗ることとなった。中を4~5番手で控えたシャフリヤール1000m通過タイムが57.6というハイペースの中で最後は群の中から抜け出し、追いすがるグレートマジシャンから逃げ切ってゴールイン。かつてアルアイン勝利したレース日本レコードタイの1.43.9という歴代の毎日杯でも圧倒的なタイムで制し、クラシックへの出走を決める。

しかしレコード戦で反動を気にしたことや共同通信杯で敗れたこともあって皐月賞には出走せず、標をダービーに絞り調整が進められることになった。

一方のタイトルホルダーは、弥生賞ディープインパクト記念 に出走。戸崎騎手海外遠征後の自隔離期間中だったため上はエフフォーリアと同じく横山武史騎手となった。ここでタイトルホルダー、後に彼の代名詞となる逃げの手を打ちそのまま逃げ切ってゴールイン。ここまで負け続きだったダノンザキッドに初めて先着した。
もっとも、菊花賞標としていたタイトルホルダー営にとってのこの勝利想定外のものであり、予定にはなかったものの皐月賞に挑戦することになった。

皐月賞~若きGIジョッキー誕生!~

迎えたクラシック初戦・皐月賞 エフフォーリアは引き続き横山武史が騎乗し、いたタイトルホルダー田辺裕信スイッチ
エフフォーリア人気の根強いダノンザキッドに次ぐ2番人気、一方のタイトルホルダーは8番人気と乗り替わりのからか扱いされていた。

本番ではタイトルホルダーが先頭争いに加わる積極的な競馬を展開。エフフォーリアは4番手あたりでじっくりと好機を待っていた。ダノンザキッドアサマノイタズラが先行集団でしくやり合った結果、タイトルホルダーエフフォーリア以外の先行勢は壊滅。最後の直線で先頭のタイトルホルダーの横から抜け出したエフフォーリアは他とは段違いの脚を伸ばし三身差でゴールイン史上19頭敗の皐月賞となる。

上の横山武史騎手GI初制覇。敗のエフフォーリアとともに、新たな世代の台頭を予感させる鮮やかな勝利を決めてみせた。
ちなみにこの横山武史騎手、今となっては信じられない話だがもとからエフフォーリア上になる予定だったわけではなく当初は新潟に居た三浦騎手や、武史騎手と同じく北海道に居たルメール騎手を乗せる予定だったという。しかしその二人とは都合が合わなかったため「じゃあ調教担当の彼に乗ってもらおうか」ということで武史に白羽の矢が立ったのだ。そんな身も蓋もない事情から二人三脚GIタイトルを手にするまでに至るのだから、競馬というのはつくづく分からないものである。

なお、タイトルホルダーエフフォーリア全に離されてしまったが、それでも後方から追ってくるたちを抑えきって2着と善戦。「皐月2着のダービーに行かないのはどうなのよ」ということで、こちらも当初は予定になかったダービーへ向かうことになった。

日本ダービー~3頭集結・大接戦!~

競馬の祭典、東京優駿(日本ダービー) 。ここでついにESTの3頭が集結する。内有利とされるレースの中、エフフォーリアは11番を引き、さらには他の人気が軒並み外へ追いやられたのもあって、エフフォーリアダントツの1番人気。10番のシャフリヤールマイラー疑惑もあってか4番人気、14番のタイトルホルダーはまたも8番人気に留まる。
レース中、エフフォーリアは内でキツめのマークを受けてしまうが、最後の直線でなんとか好位置につけ、タイトルホルダーを躱しつつ残り200m辺りでついに先頭へ。「敗の二冠馬だ!」「最年少ダービージョッキー誕生か!?」と観客の期待は最高潮。多くの人がエフフォーリア勝利を確信したその時……群を抜けて猛然と追い上げてくるがいた。

それこそがシャフリヤールであった。既に共同通信杯で土をつけさせたはずのシャフリヤールが、前年のダービージョッキー福永祐一騎手上にリベンジと言わんばかりに急追してきたのだ。

福永祐一騎手はこのシャフリヤールに並々ならぬ思いを抱いていた。というのもこの二人は長い付き合いがありexitワグネリアンダービージョッキーとなった福永騎手っ先に祝福したのも二着に破ったエポカドーロ調教師であった藤原調教師なのである。だからこそ、このダービーに賭ける執念は凄まじいものがあった。

そのシャフリヤールに外から体を併せて差し返しに行くエフフォーリア、しかし譲らないシャフリヤール。2頭は横並びとなり、そのままもつれるようにゴールイン眼では勝敗の判断がつかない僅差の決着。そして、3着から5着のハナ差と、競馬史に残るであろう大接戦となった。

写真判定の結果、ギリギリの勝負を制したのは――シャフリヤール。わずか10cmの決着であった。記録された2:22:5 タイムは、当時のダービーレコードであった。

「自分は下手に乗った。横山武史騎手が一番上手く乗っていた」とるのは、3度ダービー制覇となった福永祐一である。そんな騎乗で10cmの差に泣かされてしまうのも、ある意味「最も運のあるが勝つ」ダービーならではと言える。とはいえ、当然ながら武史は悔しいことこの上なく、レース後にを見せた。
一方のタイトルホルダーは弱点となる不足を露呈させてしまう形で伸びを欠き、あまり見せ場がないまま6着に敗戦。

しかし、ある意味ではタイトルホルダーにとっても大きな意味を持つ結果だった。

この敗戦を受けてエフフォーリアは古距離路線へを切ることに。当初から菊花賞していたタイトルホルダー上に武史騎手が戻ってくることになったのだ。

この大接戦の結果が、後に世代の代表となる2頭のレース、そして上を左右することになったと思うと、「もしも」を想像したくなる数奇な運命を感じないだろうか。

菊花賞~亡き父の忘れ物~

前述の通りエフフォーリアは古距離へ路線変更し、天皇賞(秋)へ向かうことに。さらにはシャフリヤール神戸新聞杯で重馬場巧者ステラヴェローチェの4着という結果に終わり、「菊花賞3000mは不適」と判断されてジャパンカップへと向かった。その結果、菊花賞皐月賞ダービーも不在の混戦模様を呈する。まあ次世代のステイヤーを決めるレースになるのはいつものことのような気もするが。

残ったタイトルホルダー上に横山武史が戻り、前戦にセントライト記念を選択。これまでの実績を踏まえて1番人気に支持されたものの一番人気で先行した結果、前が壁どころか前後左右全部という状況に陥ってしまい、先行勢がって沈んたのに巻き込まれる形で13着とボロ負け、評価を落としてしまう。

しかし、営は転んでもただでは起きなかった。この失敗でを括った栗田調教師は武史騎手に「責任は自分が持つから逃げてくれ」と頼み、武史騎手もこれに応える形である秘策を練っていた。

菊花賞 本番。24番からスタートしたタイトルホルダーは抜群のスタートを切り、同じく逃げようとしたワールドバイバルを武史騎手視線で牽制して積極的な逃げの手を打つ。最初の1000mを1分ちょうどの緩みないペースで通過すると次の1000mは65.4一気にペースを緩めた。序盤に作ったリードを存分に活かし、1着をキープしたまま足を溜めていたのである。
そして最後の直線コース横山武史の追い出しに応えたタイトルホルダーは、温存したスタミナ一気に後続を突き放す。2着争いが大接戦となる中、タイトルホルダーは2着から5身の差を作る大楽勝となった。こうして、タイトルホルダー23年ぶりに逃げ菊花賞勝利したとなったのである。

「この勝ち方、どっかで見たことあるぞ!?」とどよめく往年の競馬ファンたち。それもそのはず、23年前に菊花賞逃げきった横山典弘騎乗のセイウンスカイ逃げ方が全く同じなのである。

ラップタイム
1000m 2000m 3000m
セイウンスカイ
上:横山典弘
59.6 123.9 183.2
タイトルホルダー
上:横山武史
60.0 125.4 184.6

もともと研究熱心な性格の武史はかつてが菊の舞台で見せた逃げを、数十年の時を経て見事に再現してみせたのだ。

また、タイトルホルダードゥラメンテにとっても嬉しい勝利となった。かつて「怪物」と呼ばれたドゥラメンテ皐月ダービーの二冠達成後、怪に泣かされ菊花賞に出られなかった経緯を持つ。おまけ2021年8月、繋養中の社台SSで急性大腸炎を発症し9歳という若さでこの世を去ってしまっていた。タイトルホルダー勝利は、亡きに出られなかった最後の一冠を届けたレースとなった。

本命不在と言われた菊花賞も、終わってみれば非常にドラマチックな決着になったと言えよう。

クラシックを終えて~3歳馬の実力発揮~

日本ダービーの節で書いた通り、エフフォーリアは古距離路線へ進むことに。向かうのは天皇賞(秋) 。1番人気大阪杯辱に燃える三冠馬コントレイル。2番人気は短距離マイル女王で、中距離含めた三階級制覇を狙う5歳女王グランアレグリア。その中でエフフォーリアは3番人気になった。

スタートが切られると先行策をとるグランアレグリアエフフォーリアは中団前方に、コントレイルは中団中ほどにつける。ここで上の横山武史、先のダービー仕掛けからハナ差で負けた反省を活かし、コントレイルが前に持ち出すギリギリまで仕掛けを慢する戦法を選択。最初の1000m通過タイムは605とペースで進み、残り400mを通過する頃にグランアレグリアが掛かり気味になりながらも先頭につける。残り100m付近でエフフォーリアグランアレグリアをかわし、コントレイルもそれに追いすがるがエフフォーリアには届かない。前評判通り3強がってゴールインエフフォーリアは3歳にしてをもぎ取る快挙を達成。これはシンボリクリスエス以来であり、史上4頭1987年以降に東京競馬場で行われたものに限定すると史上2頭 )となる記録であった[4]

一方、菊花賞の節で書いた通り、シャフリヤールジャパンカップへ。1番人気コントレイル(1.6倍)、2番人気シャフリヤール(3.7倍)、3番人気アルゼンチン共和国杯連覇のオーソリティ(7.1倍)で、4番人気アリストテレスが20.5倍と大きく離れた。そしてこのレース日本ダービーを制したが4頭もいることも注された(2021年シャフリヤール2020年コントレイル2018年ワグネリアン2016年マカヒキ)。

スタート直後に先行集団にとりついたシャフリヤール、それをマークする形でコントレイルは中団につけた。しかし、1コーナーの所でゴールに驚いたアリストテレスが驚いてしまい、それに釣られる形でシャドウディーヴァが外にヨレてから内に戻ってしまい、その内に潜り込んだシャフリヤールラチに思い切り衝突してしまうexit[5]。それでも落は避けられたがこれで掛かってしまい、しかも1000mは622とかなりスローペースの展開。だがここでキセキ(2017年菊花賞)がハナを取るために後方から一気に上がっていき大逃げを打つ。

4コーナーを抜けオーソリティは2番手、シャフリヤールは5番手、コントレイルは8番手であった。そしてオーソリティがあっさりとキセキをかわすと、シャフリヤールコントレイルが上がってくる。だがコントレイルは差しで末脚を出せるも、ラチに衝突した上オーソリティコントレイルの二頭に体を併せられて怯んでしまいシャフリヤールコントレイルの外側にまで行ってしまう。立て直そうにも既にそこまでのは残っておらず、オーソリティに引き離されないようにするのが精一杯であった。

結果はコントレイルが1着となり有終の美を飾り、2着がオーソリティシャフリヤールは3着に敗れ去り、ダービー対決では[6]コントレイルはまだしもGI勝利オーソリティにまで先着されてしまい、しばらくの間「いつものダービー」等と揶揄されることに[7]シャフリヤールは年内はこれで休養となった。

一方エフフォーリアタイトルホルダーは年末のグランプリ、有馬記念へと向かっていた

先述の通り、エフフォーリアタイトルホルダーも、武史騎手の騎乗によってGI勝利したである。巷では武史が足りないとか言われていた。結局、武史騎手エフフォーリアを選択。いたタイトルホルダー騎手はどうなるのか注されたが、ここで武史の横山和生騎手白羽の矢が立つ。和生は横山長男でありデビューから既に10年が経っていたが俗に言う中堅騎手であり、一時期は1年間で500にまでしか乗れないということも経験した苦労人であった。しかも年間勝利数は武史の方が上でGI勝利に先を越されていた。 「武史が活躍したことによるおこぼれなんじゃないか」とも囁かれたがただの代打ではなく、彼自身のさが評価されたが故であり今後も騎乗することを見越しての起用だった。

レース本番、行ったのはパンサラッサ[8]で、大外もありタイトルホルダーは2番手につける競馬となる。四歳勢の大将ディープボンドは先行策。中団にグランプリ四連覇を女王クロノジェネシスエフフォーリアがつける。最初の1000mは595と、2500mということを踏まえるとややハイペース気味(といってもそこまでぶっ飛ばしてるわけではない)。3コーナーに差し掛かるころにはタイトルホルダーパンサラッサに追いつき始めるが、簡単には譲らないパンサラッサ。4コーナーを抜けてようやくタイトルホルダーが先頭に立つが、そのころにはすでに最内を突いてディープボンドが抜きかけており、それらをまとめて外からエフフォーリアが抜き去っていく。結果、エフフォーリアが1着でゴールイン。2着にディープボンド、3着には厳しいマークを受けながらもクロノジェネシスが入り、タイトルホルダーは5着に終わった。

そしてエフフォーリア3歳で皐月賞天皇賞(秋)有馬記念を制するのは日本競馬史上初の快挙である。ただ勝っただけでなく三冠馬コントレイルグランアレグリアクロノジェネシスなど、並居る名を蹴散らした上での勝利は高く評価された。これらの実績によりエフフォーリア最優秀3歳に満票で選出。しかもオルフェーヴル以来となる3歳の年度代表馬になった騎手の武史も、この年にGI5勝[9]記録令和を迎え、競馬界にも新たな時代の到来を予感させる1年となった。

武史と和生は、引き続きエフフォーリアタイトルホルダーにそれぞれ騎乗することになる。

……この時はまだ、両者の選択が4歳の明暗をくっきり分けることになるなんて、も予想していなかったのである。

4歳春~低迷・復活・覚醒~

当初阪神大賞典で復帰予定だったタイトルホルダーは、地面に脚を付けれない程の重度の筋肉痛を発症。一度はを全休するという話にもなったが、回復く1週遅れの日経賞 での復帰に。天皇賞春に備え余を残したまま迫る後続を差し返す形で逃げ切ってみせた。

一方シャフリヤール49kgも太りしてドバイの地にいた。ドバイシーマクラシック に出るためである。メンバーBCターフの勝ちユビアー、同期オークスユーバーレーベンJCで先着されサウジシリーズで快勝してきていたオーソリティ上はC.デムーロ騎手[10]

レースではオーソリティ逃げる形でスローペースの中番手からオーソリティをあっさりと躱し、ユビアーが猛な末脚を見せる中「最後はソラを使っていた」というほどの会心のレース振りで勝利し、シャフリヤールというアラビア大王の名を背負い、その名前の通りにドバイで戴冠してみせた。

シャフリヤールドバイ勝利したこともあり、期待度が高まっていたエフフォーリアは去年の天皇賞秋後に追った怪もありぶっつけでの大阪杯に挑む。だがスタートから10台のラップを刻まれるとあっさりと置き去りにされてしまい中団で捲ることも出来ず直線でも伸びあぐね、9着と大敗を喫することになってしまう。様々な理由はあったとされるが初の惨敗ということもあってか「古で枯れてしまったのでは」という意見も出ていた。

そしてタイトルホルダーは兼ねてからの最大標であった天皇賞(春) へ。1番人気阪神大賞典から乗り込んだディープボンド(2.1倍)、タイトルホルダーは怪調教と様々な要因もあって2番人気(4.9倍)であった。

しかしレースが始まるとタイトルホルダー横山和生騎手が斜行ギリギリで内に切れ込んで先頭に立ち、しかも菊花賞とは異なり稍重の芝の中で11~12台のラップを連発し息を入れたのも13台が一度きり。シルヴァーソニックの落によりほかのが近づきずらい状況であったということもあるが、終わってみれば上り最速のまさに「逃げて差す」走りで2着のディープボンドから7身も離して逃げ切勝ちを収めた。なお、父親横山典弘天皇賞(春)イングランディーレ逃げ切ったのだが、その時と同じ7身差であり、戦いぶりはドゥラメンテ同期の王者キタサンブラックにそっくりだという話も出たほどである。

シャフリヤールはドヴァイ勝利を収めたあと、イギリスアスコットで開催されるプリンスオブウェールズステークスに挑むが元々日本不良馬場で敗れている上にアスコットの高低差20mという非常にキツイ坂で全にバテテしまい5頭立て4着に敗れる[11]

内ではエフフォーリアタイトルホルダー宝塚記念 で再び直接対決となり、ここにはドバイターフ逃げ切ったパンサラッサ(5歳)、ディープボンド復活デアリングタクトも乗り込み、出走希望があふれるほどになった。最終的にオーソリティが怪で競走除外され17頭立てになったこの宝塚記念

大阪杯辱に燃えるエフフォーリア営はブリカーまで着けて挑んで来たが、一方でタイトルホルダー営は宝塚記念勝利したら凱旋門賞へ向かうと言いながらもどこか気楽なムードがあった。

というのも元々生産者の岡田牧雄氏はアメリカ競馬すべきだという持論があり、またタイトルホルダー完成途上と見ており中距離においてはまだエフフォーリアを相手にするのは厳しいという思いがあったからである。凱旋門賞に行く提案も栗田調教師の発案であり、岡田氏もオーナーである山田氏に「とりあえず登録だけでも…」という事であった。そしてレースパンサラッサには理に着いていかず60台のペースで行ってほしいという示もあったほどである。

そんな思いを他所にゲートは開かれ、抜群のスタートを決めたタイトルホルダーが先頭に立ったがほどなくしてあまり出は良くなかったもののパンサラッサが第一コーナーで先頭に立ち、タイトルホルダーは2番手に。少しでもリードを広げようと先頭の1000m通過ラップが576とかいう異常なまでのハイペースに(サイレンススズカ宝塚記念が586だったことを考えるといかにおかしいかが想像つくだろう)。しかし実はこのレース、全頭ハイペースなのだ。最後方のアリーヴォですら前年の先頭並のハイペースなのである。

何故ハイペースとなったかというとパンサラッサ以上にタイトルホルダーペースが速かったからである。しかもタイトルホルダーを警したディープボンドハナを狙ったアフリカンゴールドがひたすらタイトルホルダーに着いていった上、この年は京都競馬場修ので芝もそこまで傷んでいなかった。そんなハイペースの中エフフォーリアは前走と全く同じようにスタート後に置き去りにされ中団に。4コーナーを抜けるころにはタイトルホルダーは先頭に躍り出る。そしてきっちりと2逃げ切ってGI3勝をあげ、タイムレコード、2分97。阪神菊花賞阪神天皇賞春を含めて空前絶後の阪神三冠であった[12]

一方のエフフォーリアは3コーナーからデアリングタクトポタジェに外から被せられてしまい、後方10番手以下では最先着であるもののハイペースの為に脚が溜まらず6着に沈んみ、競馬界のヒーローエフフォーリアからタイトルホルダーに移ったといわざるを得ない状況になった。

タイトルホルダートリコロールの法被を携えたトップスターにされて凱旋門賞に向かうとのことである。

4歳秋~高き世界の壁と迫りくる新世代と旧世代の意地~

凱旋門賞に向かったタイトルホルダー。だが、世界の壁は高かった。最終直線まで先頭でるも、最後は失速してしまい、日本最先着とは言え11着に沈んだ。

一方、シャフリヤール天皇賞(秋)から始動。パンサラッサ大逃げを打ち、バビットが大きく離れた2番手。シャフリヤールは中団につけたが、後ろからくる3歳のイクイノックス[13]ダノンベルーガにおいていかれ、パンサラッサを捕まえることもかなわず、始終4番手にいたジャックドールに2身おいていかれた5着に終わった。

その後、シャフリヤールジャパンカップへ。今度は後方からの競馬となる。末脚を使い残り100mでヴェルトライゼンデをかわして先頭に立つが、その刹那閃光の末脚で飛んできたヴェラアズール[14]がかわしていき、2着に終わった。

そして有馬記念タイトルホルダーエフフォーリア対決となった。タイトルホルダーが先頭に立つも、直線に入るとエフフォーリアが先頭に立とうとする。だが、後ろからくるイクイノックスボルドグフーシュジェラルディーナ[15]イズジョーノキセキ[16]らに飲み込まれ、エフフォーリア5着、タイトルホルダーに至っては9着に沈んだ。

5歳春~E、引退~

5歳エフフォーリア京都記念から始動する。先行集団につけるが、心房細動を発症してしまい、4コーナーから失速、そのまま競走中止となってしまった。このレースを最後に彼は引退種牡馬入りの運びとなった。日本ダービー以来の3頭の共演は、ついに実現しなかった。

シャフリヤール2月末を以て引退する福永騎手による『ジョッキーとして最後の追い切り騎乗』で好感触をもらい、ドバイシーマクラシック連覇をす。

タイトルホルダー有馬記念の大敗から春の海外転戦を諦め内路線へ。天皇賞(春)連覇を標に定め日経賞または大阪杯をステップにする。

シャフリヤールドバイシーマクラシックを5着とし、台頭するイクイノックスをただ後ろで見るしかできなかった。

タイトルホルダー日経賞は圧勝したものの、本番の天皇賞(春)ではレース中に競走中止の憂きに遭い、はどちらも不本意な結果しか残せなかった。

5歳秋〜新世代に立ち塞がる壁として〜

シャフリヤールブリーダーズカップ・ターフ標とし、札幌記念に出走するも、喉頭蓋エントラップメントを発症していたこともあり、11着に沈む。一方のタイトルホルダージャパンカップ標とするためにオールカマーに出走するが、2着に敗れる。

そして本番のレースシャフリヤールBCターフAuguste Rodinの3着、タイトルホルダーイクイノックスの5着となるも、世代代表としての意地は見せつけた形となった。

シャフリヤール香港ヴァーズタイトルホルダー有馬記念へ向かう。引退が刻一刻と近づく中、どんな走りを見せてくれるだろうかとなった。ところが、シャフリヤールは不整脈の疑いで現地の医師から出走の許可が下りず、失意の帰をすることに。このため、有馬記念へスライドすることになり、タイトルホルダーラストランで、東京優駿以来の対戦が実現することになった。やはりタイトルホルダー逃げるも、最後の直線でドウデューススターズオンアースに抜かされ3着、一方のシャフリヤールも先行策をとったが後ろから差し追い込みで突っ込んだドウデュースジャスティンパレスに抜かされタイトルホルダーにも届かない5着に終わった。

6歳~残されたダービー馬~

先述した通り、5歳皐月賞エフフォーリア菊花賞タイトルホルダー引退した結果、6歳で現役を続けることとなったのは東京優駿シャフリヤールただ1頭となった。

そんなシャフリヤールが6歳初戦で走ったレースは2年前に制したが前年は5着に沈んだドバイシーマクラシック。結果としてはRebel's Romanceに屈する2着となったが、前年の3冠リバティアイランドらにはきっちり先着し、ただでは負けぬと意地を見せたのであった。

対戦成績

レース エフフォーリア シャフリヤール タイトルホルダー
2021年
共同通信杯 1着 3着 -
皐月賞 1着 - 2着
東京優駿 2着 1着 6着
有馬記念 1着 - 5着
2022年
宝塚記念 6着 - 1着
有馬記念 5着 - 9着
2023年
有馬記念 - 5着 3着

上記の通り、互いに一度は先着を果たしている。

関連動画

関連リンク

関連項目

ニワンゴ(大百科グランプリver.) この記事は、大百科グランプリシーズン大会「シーズン2022上半期7月」において優秀賞記事に認定されました!
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脚注

  1. *最もこれはケイティーズハートの繁殖成績にも寄るのだが。詳しくはエフフォーリアの個別記事参照
  2. *マツリダゴッホ岡田牧雄氏の生産した芝の中で最も強かったであり、それ以上というのは彼のブリーダー人生の中で最強が出来たということでもある
  3. *この年に函館リーディングを獲得、そして史上最年少で関東リーディングを獲得することになる。
  4. *なおグランアレグリアはその後マイルチャンピオンシップへ向かい、3歳シュネルマイスターらを含めた15頭をねじせ、引退を飾った。
  5. *その時の音は大きく、後ろに居たコントレイル福永騎手は落してくると思って外に持ち出した程である
  6. *マカヒキは14着、ワグネリアンは18着である。またワグネリアンはこれが最後のレースとなり翌年1月にこの世を去った。
  7. *ただしこれを言っていたのはエフフォーリアへのアンチが多く、「オーソリティにすら先着されたシャフリヤールに負けたエフフォ」という論調の者が有馬記念まで特に多かった
  8. *この年の福島記念大逃げ勝利し、その戦いぶりから「令和のツインターボ」と呼ばれていた
  9. *エフフォーリア皐月天皇賞秋有馬記念タイトルホルダー菊花賞キラーアビリティホープフルステークス勝利
  10. *福永騎手は前年の香港スプリントで負傷し、怪くという理由で海外にはいかないという意向を示していた。
  11. *しかも五着は目隠し事故で致命的な出遅れを起こしたロードノースのため実質的に最下位である
  12. *元々タイトルホルダーには番手だと掛かり気味になる傾向があった。しかし、調教などの積み重ねが功を奏し番手で行けるようになった事、そして和生騎手が彼を信じて行かせたことが結果に結びついたのだ
  13. *この年の皐月賞東京優駿も18番になってしまい2着になった
  14. *脚部不安でダートを使わざるを得なかったが、この年の濃尾特別(中ダート1700m2クラス)7着の後芝に転向し淡路特別(阪神2600m2クラス)を勝ち上がり、その後3勝クラスを3戦で突破。そして京都大賞典(GII)を勝っている。
  15. *ジェンティルドンナ。この年のエリザベス女王杯覇者
  16. *この年の府中牝馬ステークス(GII)ソダシを破ったエフフォーリアと同じエピファネイア産駒
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