馬名の由来は「点火薬」。育成の際、制御が効かなくなる面があったことからこの名前がつけられた。
主な勝ち鞍
2021年:楠賞(地方重賞)
2022年:黒船賞(JpnIII)、かきつばた記念(JpnIII)、黒潮スプリンターズカップ(地方重賞)
2023年:JBCスプリント(JpnI)、さきたま杯(JpnII)、黒潮スプリンターズカップ(地方重賞)、園田チャレンジカップ(地方重賞)
2022年・2023年兵庫県競馬年度代表馬。
2022年・2023年NARグランプリ4歳以上最優秀牡馬、最優秀短距離馬、年度代表馬。
父エスポワールシチー、母ビアンコ、母父*ウォーニングという血統。
父はゴールドアリュール産駒で、ジャパンカップダートやかしわ記念などのGI級レースを9勝している。種牡馬としては主に地方で活躍する馬を多く輩出しており、2019年にはヴァケーションが全日本2歳優駿を勝っている。
母は生涯戦績14戦2勝。中央でデビューしたが、3戦目の3歳500万下を勝って以降は大敗が続き、2005年に大井に移籍するも結局勝てずに引退し繁殖入りしている。
母父はイギリスの競走馬・種牡馬。生涯戦績14戦8勝、GIではサセックスステークスとクイーンエリザベス2世ステークスで勝利をあげている。引退後はイギリスで種牡馬となり後に日本へと輸出された。欧州・日本問わずGI馬を輩出したが、2000年に心不全を起こし死亡、15歳という若さで早逝した。
イグナイターは2018年4月13日に生まれ、1歳の時サマーセールに出され、野田善己に税別650万円で落札された。イグナイターと初めて出会った当時のことを野田は「まるで恋に落ちたかのような気持ちだった」と語っている。
2歳になると栗東の牧田和弥厩舎に預けられ、2020年11月7日の東京新馬戦ダート1600mでデビュー。鞍上は武藤雅。単勝オッズ4.8倍の2番人気に推されて出走し、2着のジンジャーブラッドに7馬身差をつけて圧勝した。
新馬戦で圧倒的なパフォーマンスを見せつけたイグナイターだったが、次走の3歳1勝クラスでは3着となってしまう。その後、大井の福永敏厩舎へと移籍、矢野貴之を背に京浜盃、羽田盃へと出走するが、2着、8着と勝ちきれず、次走は地方所属でユニコーンステークス(GIII)に新馬戦でコンビを組んだ武藤を再び鞍上に出走するも12着と大敗した。
そして、次走の夕凪賞でも2着になったところで今度は兵庫の新子雅司厩舎に移籍。兵庫移籍後初戦のレースでは、笹田知宏を背に勝利。続くB1競争も勝利し、次走の名古屋の重賞秋の鞍では2着となるも、次の楠賞では鞍上を田中学に変え出走、好スタートを切ってハナをとり、そのまま逃げ切って勝利した。その後、次走のA2競争でも勝利をあげた後、再び笹田を鞍上に兵庫ゴールドトロフィー(JpnIII)に出走した。序盤にハナを制してそのまま譲らず最終直線に入る。残り100m付近まで粘るも、テイエムサウスダン、ラプタスに差され3着となった。
明けて2022年、イグナイターは始動戦として高知の黒潮スプリンターズカップを選択。鞍上は田中学。レース序盤から中盤まで先行勢と激しい先行争いを繰り広げ、残り400mを切ったところでハナを奪取、そのまま最終コーナーを回り直線に入ると他馬を一気に突き放して2着とは7馬身差で勝利した。激しい先行争いを演じたにもかかわらずの圧勝は地方馬の中でもイグナイターが突き抜けていることを示している。
次走は黒船賞(JpnIII)に出走。レースでは前走と異なり、ハナを譲り3~4番手で追走。第4コーナーに入ったところでインを付き、先頭に躍り出る。直線でヘリオス、サクセスエナジー、ダノングッドの猛追を受けるもそれらを振り切って勝利した。地方馬の勝利は2018年のエイシンヴァラー以来であった。
続くかきつばた記念(JpnIII)も前走同様ハナを譲り先行策を取る。3コーナーカーブに入ったところで先頭のラプタスから2番手で追走し、直線を向いたところで大外からラプタスを抜き去り、ヘリオスの追撃も振り切ってゴールイン。ダートグレード競争2連勝を成し遂げた。
次走はGI級初挑戦となるマイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)に出走。フェブラリーステークス連覇を成し遂げたカフェファラオや南部杯を連覇し、今回で三連覇のかかるアルクトス、東京スプリント競争などJpnIII3勝の実績を持つシャマルに、前走、前々走で対決したヘリオス、前走のかしわ記念で2着となったソリストサンダーなどの強豪が出走する中、イグナイターは5番人気に推された。レースではヘリオスがハナを取り、イグナイターはインに付き先行策を取る展開になる。直線に入るとイグナイターは空いたインを付こうと脚を伸ばすもカフェファラオとヘリオスを差し切れず、さらにシャマルにも差され4着に終わった。とはいえ、地方馬の中では最先着であり、1着のカフェファラオとは0.2秒差であるため、十分健闘したといえる。
さらに次走は前走と同じJpnIかつ2022年度は盛岡で開催されるJBCスプリント(JpnI)に出走。こちらも出走馬は強豪ぞろいで、昨年の同レースを勝ち、ドバイゴールデンシャヒーンで2年連続2着の実績を持つレッドルゼル、カペラステークス、リヤドダートスプリント、北海道スプリントカップを勝利するなど中央・地方・海外問わず活躍しているダンシングプリンス、前走で先着されたヘリオス、昨年イグナイターに先着した兵庫ゴールドトロフィーを始めGIII級3勝の実績を持ち、2022年はフェブラリーステークス2着、かしわ記念3着と力を示し続けているテイエムサウスダン、昨年のクラスターカップを勝って以降の7戦は勝利からは遠のくもうち5戦は2着という善戦続きのリュウノユキナ、イグナイターと対戦経験のあるラプタスなどが出走していた。レースではダンシングプリンスが先頭となる中、イグナイターは前走同様インに位置取りながら先行策を取る。最終直線に入った際には馬群に囲まれるも必死に馬込を捌いて前に出ようとする。そして、ダンシングプリンスの後ろに付き追走するも、突き放され、1着のダンシングプリンスとは4馬身ほど離された5着に終わった。前走同様地方馬の中では最先着である。
4歳最終戦は兵庫ゴールドトロフィー(JpnIII)に再挑戦。先行策を取り、道中先頭のオーロラテソーロの番手に付き追走するも、直線を向いたところでイグナイターとその内にいたオーロラテソーロの間からラプタスが抜け出しイグナイターを突き放して1着でゴールイン、イグナイターはオーロラテソーロを差せず、さらにシャマル、サクセスエナジーに差され5着に終わった。
こうして、イグナイターの4歳戦は幕を閉じた。春はダートグレード競争含め重賞3勝をあげ、秋には勝利を逃すも地方馬の中ではトップクラスの力があることを示し続けた。そのことを評価されてか、2022年度のNAR年度代表馬、NAR4歳以上最優秀牡馬、NAR最優秀短距離馬、兵庫県競馬年度代表馬に選出された。兵庫所属馬の年度代表馬の受賞は1996年のケイエスヨシゼン以来26年ぶり2頭目となる快挙で、サラブレッドとしては初。4歳以上最優秀牡馬と最優秀短距離馬に関しては兵庫所属馬では初の受賞であった。
明けて2023年。5歳の始動戦は昨年同様黒潮スプリンターズカップ。道中2番手で追走し、3コーナー手前で先頭に立って、そのまま2着以下を突き放して勝利。2着との着差は9馬身差で、公開調教も同然のレースであった。
その勢いに乗って連覇のかかる黒船賞(JpnIII)に出走する。今回は珍しくスタートが付かず、スタート直後外に寄ってケイアイドリーと接触してしまうアクシデントを起こすも、何とか第1コーナーに入るまでには4番手に付き追走。道中、シャマルに交わされ5番手となり、直線に入るとインをついて脚を伸ばす。しかし、シャマルに3馬身以上突き放された3着となり黒船賞連覇達成を阻まれることとなった。
次走は3歳以来となる南関でのレースとなるかしわ記念(JpnI)。ここでこれまで鞍上を務めた田中学から笹川翼に変わった。他の出走馬として、昨年の帝王賞馬メイショウハリオや昨年のJBCレディスクラシック馬ヴァレーデラルナ、前走先着されたシャマルに、マーチステークスを勝ったハヤブサナンデクンなどが出走していた。レースでは道中5番手に付き、第3コーナーから前に出て外を回り直線に入るも、伸びることなく7着に終わった。掲示板を外すのは3歳のユニコーンステークス以来であった。
次走はさきたま杯(JpnII)。ここでも因縁のシャマルと激突、他ニュージーランドトロフィーやゴドルフィンマイル、1351ターフスプリントで勝利したバスラットレオンに、地方重賞3勝をあげるも前走のイグナイターの出走したかしわ記念で故障し競走除外(出走取消)となったスマイルウィなどが出走していた。スタート後、シャマルは最後方となる予想外の展開となった(シャマルはその後最終直線で鞍上の川田将雅が下馬し右後肢跛行で競走を中止した)。第2コーナーに差し掛かって以降、ギシギシ、スマイルウィ、バスラットレオンが先行争いを繰り広げる中、イグナイターはその後ろで追走。第3コーナーあたりでギシギシが後退しスマイルウィが先頭に立つも、イグナイターは位置を変えず追走。最終直線に入ると、イグナイターはスマイルウィとバスラットレオンの間から一気に抜け出す。バスラットレオンを差し、スマイルウィと激しい競り合いを繰り広げ、最後はクビ差で勝利をあげた。何と地方馬がワンツーという結果となり、昨年のかきつばた記念以来のダートグレード競争での勝利であった。ちなみに、兵庫所属馬のJpnII勝利は初の快挙である。
この後は夏休みに入り、秋はコリアスプリント(GIII)を目指していたが出走叶わず、マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)からのJBCスプリント(JpnI)という前年と同じローテで挑む。その前哨戦として地元重賞の園田チャレンジカップに鞍上を田中学に戻し出走。単勝1.2倍の1番人気を背負い出走した。レース序盤はすんなりハナを取る。道中、高知のアポロティアモに番手でガッチリマークされるもそれを意に介さず、3コーナー手前に入ったときにはもう彼の独壇場。アポロティアモを突き放してそのまま最終直線に入り、最後は流して余裕のゴールイン。2着のアポロティアモにおよそ2馬身半の差をつけての完勝であった。「点火薬」である秋初戦は見事に着火、あとはこの勢いに乗ってJpnIを制するだけ…。
そして予定通りマイルチャンピオンシップ南部杯へ鞍上笹川翼を背に乗り込む。3コーナーまではレモンポップに追走することができたが、4コーナーに差し掛かるとおいて行かれてしまい、終わってみれば大差をつけられてしまった。それでも3着のレディバグは半馬身しのぎ切り、2着は死守。兵庫県競馬所属馬として初めてのGI級連対を果たし、地方総大将としての意地を見せた。
この後はJBCスプリント(JpnI)に出走。前走東京盃で大井1200mのレコードを更新したドンフランキーは回避したが、同馬をクラスターカップで破りコリアスプリントを完勝した4歳馬リメイクが立ちはだかる。他にも昨年同レース覇者ダンシングプリンス、同2着リュウノユキナ、世界を駆けるバスラットレオン、おなじみラプタス、南関東のスプリンター筆頭ギシギシやなどの強豪が出走、15頭中9頭のダートグレード競争or国際競争重賞の勝利経験のある馬が集うレースとなった。
レース本番ではスタート直後、ダンシングプリンス騎乗の岩田望来が落馬するアクシデントがあるも、きっちり先行策をとる。そして、直線で抜け出し先頭に躍り出ると、競りかけてくるリュウノユキナを振り切り、さらに差し切りを図ったリメイクをきっちりしのぎ切り、1馬身半差で勝利。ついに大きなタイトルに手が届いた。兵庫所属馬としては初のJpnI制覇であり、笹川翼、新子厩舎、野田善己もそれぞれ初のJpnI制覇、野田善己は2日前が誕生日であり、遅めの誕生日プレゼントを受け取ったことになる。また、父エスポワールシチーは2回目の産駒のGI級勝利を達成し、競走馬時代に同レースを制しているので、父子2代の制覇も達成している。
2歳でくすぶり、3歳で着火した「点火薬」は、その勢いに乗り4歳でJpnIII、5歳でJpnIIを手にし、そして、ついにJpnIで大きな爆発を起こしたのだ。年間通して安定した戦績とJBCスプリント制覇を評価され、2023年度NARグランプリではミックファイアを抑えて年度代表馬を2年連続で受賞。当然最優秀短距離馬、最優秀4歳以上牡馬、兵庫競馬年度代表馬も同時に受賞し四冠を獲得した。
空けて6歳はサウジアラビアのリヤドダートスプリント(GIII)への登録を行い、招待が無かった場合は国内戦線のフェブラリーステークス(GI)を目指すことが発表された。レーティングはリメイクより高い114と招待されるに十分な値で、笹川翼もX(旧Twitter)でカタールへの短期騎乗の後サウジに向かう可能性を発表するなど海外挑戦は現実味を帯びていたが、「兵庫からの海外遠征に未知の部分が多すぎる」という理由から、この年からJpnIに昇格したさきたま杯(JpnI)を大目標にフェブラリーステークスへの出走を選択した。笹川がJRAの規定上騎乗できないため鞍上は西村淳也となった。
レースは案の定ドンフランキーが逃げる展開に。イグナイターは2番手につけ、そのまま4コーナーまで粘ったものの、ドンフランキーが最初の600mを33秒9という、ダートマイルとしてはあまりにも高速な脚を使ったのを追走してしまったこともあり、みるみる馬群へ沈んでいき、終わってみれば11着と大惨敗を喫することとなった。とはいえ、元々マイルが長い馬であった以上、負けるのは仕方なかったのかもしれない。
そしてドバイゴールデンシャヒーン(G1)の招待が届いたため、それを受諾し、そのドンフランキーと一緒に、中央馬と地方馬という立場の違いはあれど、ドバイへの遠征を決めたのであった。そのドバイゴールデンシャヒーンは、イグナイターが馬番号6ゲート番号1と最内枠を確保。ドンフランキーは馬番号・ゲート番号ともに3、ケイアイドリー(2023年北海道スプリントカップ(JpnIII)勝ち馬)が馬番号7ゲート番号5、リメイクが馬番号11ゲート番号8となった。
レースは、ドンフランキーが逃げ、イグナイターとケイアイドリーは中団に控える形に。そしてリメイクは後方へ。Colour Upが垂れるのをよける際、周りがさらに大きくよけて大混乱になりつつも抜け出すが、ドンフランキーとTuzは止まらない。最後はNakatomiとリメイクにも差されるも、きっちり5着掲示板を確保。賞金6万ドル(2024年の公定レートで848万4187円か)を獲得した。なお、このよける際の斜行と、鞭の過剰使用に伴い、笹川騎手には前者は4月8日から11日の4日間の騎乗停止、後者は2000ディルハム(約8万2000円)の罰金が科されることとなった。
ダート改革が進む昨今の日本競馬界の中で地方馬として活躍を続けるイグナイター。2024年からさきたま杯がJpnIに昇格され、ダート短距離路線が強化されたが、果たしてイグナイターは今後も活躍を続け、彼の後に続くダート馬たちの「点火薬」となり続けられるのだろうか。
エスポワールシチー 2005 栗毛 |
ゴールドアリュール 1999 栗毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ニキーヤ | Nureyev | ||
Reluctant Guest | |||
エミネントシチー 1998 鹿毛 |
*ブライアンズタイム | Roberto | |
Kelley's Day | |||
ヘップバーンシチー | *ブレイヴェストローマン | ||
コンパルシチー | |||
ビアンコ 2000 鹿毛 FNo.4-n |
*ウォーニング 1985 青鹿毛 |
Known Fact | In Reality |
Tamerett | |||
Slightly Dangerous | Roberto | ||
Where You Lead | |||
*プラデシュ 1994 栗毛 |
*ジェネラス | Caerleon | |
Doff the Derby | |||
Bareilly | Lyphard | ||
Barger |
クロス:Roberto 4×4(12.50%)、Hail to Reason 5×5×5(9.38%)、Native Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
122 ななしのよっしん
2024/04/04(木) 01:47:31 ID: RpHuawZg8d
>>121
オーナーからも謝罪のツイートきてたね
https://
あとになってビデオ見返して気付いたとのこと
123 ななしのよっしん
2024/04/06(土) 11:05:10 ID: X7giMJ4fO8
まぁ良くも悪くもこれも経験だよね・・・。出すとこなかったとは言え流石に強引過ぎた。陣営全体が初海外だったから色々難しさもあった。一先ず戻って来て今後だね。恐らくさきたま杯辺りが最大目標になるかな?
124 ななしのよっしん
2024/04/07(日) 11:53:30 ID: GrDybljnb1
まぁイグナイターがノッてる今チャンスがあれば行くよねってのはわかるかな〜。
ただドバイ前後のオーナーのSNS発信が注目度を利用して政争の道具にしてる感もあるけど...
急上昇ワード改
最終更新:2024/05/03(金) 10:00
最終更新:2024/05/03(金) 10:00
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