投げ銭とは、お金を投げることである。
概要
いわゆる大道芸人(パフォーマー)やストリートミュージシャンに対し、その芸や音楽を楽しんだ謝礼として、あるいは芸能に対する賞賛などの意味を込めて金銭を渡すこと。
その芸や音楽を中止しなくとも金銭を受け取れるように入れ物が置いてあることが多く、観客はそこに金銭を投げ入れていくために「投げ銭」と呼ばれる。「放り銭(抛り銭)」(ほうりせん)とも言う。
インターネットが発達した現代では、何らかの創作作品に対してインターネット上で報酬を送る手段が多数生まれている。これらの手段も、上記のような「金銭を投げ渡す」行為に喩えて「投げ銭」と総称されることがある。
インターネット上で誰かを賞賛するとき「神」と表現されることがままある。神に捧げる金銭という事で、一種のお賽銭と言えなくもないだろう。
ちなみに、銭を投げて攻撃の手段とすることを指すこともある。小説『銭形平次捕物控』の主人公である「銭形平次」の得意技として有名。有名なコンピューターRPGシリーズ『ファイナルファンタジー』には「ぜになげ」の名称で登場しているためそちらの呼称の印象が強い人も居るかもしれないが、『銭形平次捕物控』での表記は「投げ銭」である。
なお、日本においてはマネーロンダリングとして法に抵触する可能性があるため、下記のようにポイント等のサイト内で運用できるアイテムに換金したうえで、運営の原資から配当する形で疑似的に対応している。それにより、配当率は公開できない。
※YoutubeやTwitchでも、目立つコメント表示を購入する、サイト内貨幣に変えてから提供する形式もあるため、どの国もこれが基本とも言える。
2019年3月22日、ニコニコ動画などを運営する株式会社ドワンゴが「投げ銭」を商標登録申請を提出(出願番号: 2019-041558)。2020年7月21日に認められた(登録番号: 6271896, 区分: 9,38,41,42.)。2020年8月6日のプレスリリースによると、登録目的は「用語を用いるにあたり第三者の商標登録の有無について調査費用等の負担が発生しないようにするため」であり、「独占的に使用する意図はない」と表明している。そのため、今後もこの「投げ銭」という単語は気にせずに使用することが可能だ。
詳しくは「投げ銭はなぜ複雑なのか?」いろんなサービスを比較してみた(ブロマガ)をチェック。
niconico
2018年5月12日まで、下記の2種以外にniconicoには直接的な明確な投げ銭機能は存在していなかったが、後にギフト機能が導入された。以下ギフトが導入される前までの記載。
2018年5月10日に発表されたカドカワ株式会社のIR資料に「今後の方策」として「都度課金の導入」の一環としての「投げ銭」の記載があり、今後投げ銭機能を導入する予定が示された。[1]
さらに2018年5月22日にニコニコ生放送で配信された「第二回 動画と生放送サービスに対する改善報告会」において、投げ銭機能を導入予定であることが明言された。
その生放送では、「現在機能を開発中。夏頃導入予定」「ニコニコならではの面白いものを提供する」「Virtual Castだけではなくユーザー生放送でも利用できるようにする」「ただし動画の方は既存のクリエイター奨励プログラムと、新たに取り入れられるニコニ広告の分配で対応する(つまり動画には投げ銭機能は導入されない?)」「還元率は他社とほぼ同じぐらい」「オン・オフ機能は付ける」等の情報が語られている。
ギフト・Vギフト
詳細は、ギフト(niconico)を参照。
ニコニコ生放送内において、画面内に表示するアイテムを購入する。通常の生放送では2D表示の「ギフト」、バーチャルキャストを使用した場合は3Dの「Vギフト」になる。
ニコニ広告
「ニコニ広告」という、ニコニコ動画に投稿された動画やニコニコ生放送で配信中の生放送に対してユーザーがお金を払って広告する機能はある。ニコニコ生放送では誰かが何を広告したのかを即時通知する機能などもあり、後述するYouTubeやTwitchの投げ銭機能に近い雰囲気はある。
以前はこの「ニコニ広告」の画面で「お金持ちそうな人がコインを投げている」というイラストが掲載されていたことがあり、niconicoの運営としてはこれが投げ銭機能に準じるものであると考えていたのかもしれない。
だが、このニコニ広告に支払われた金額は基本的には動画投稿者や生放送配信者などのクリエイターには全く還元されていなかった。つまり全額がniconicoの運営会社の収入となっていた。
だが2018年5月28日からニコニコ生放送限定で、ニコニ広告の消費ポイントに応じたクリエイター奨励プログラムスコアが広告対象の生放送の配信者に加算されるようになった[2]。
ただし無料クーポンや割引クーポンを使ってのニコニ広告はカウントされず、お金を実際に消費した広告のみが加算されるとのこと。その還元率が何割かは公表されていない。
同様の仕組みはニコニコ動画についても導入予定だが、導入時期は未定であるとのこと。
クリエイター奨励プログラム
動画や生放送や静画などの投稿者・配信者が「クリエイター奨励プログラム」に登録すれば、再生数や視聴者数などの「人気に応じたスコア」が付与され、それを換金すれば金銭がniconicoの運営から支払われる。
ただし、投稿者や配信者が作品を「クリエイター奨励プログラム」に登録していなければスコアの付与の対象にならない。
「人気に応じた金額」というものの正確な定義も不明。niconicoの運営はその計算式を公開していない。
さらに、実際にクリエイターの口座に支払われるまでに数か月もかかる。
このように、やや不透明かつ動きの遅い仕組みとなっている。
YouTube - Super Chat
「Super Chat」とは、2017年に動画配信サイトYouTubeにて提供開始された機能。
YouTubeやYouTube Gameでのライブ配信中には、視聴者によるコメントが流れてくるチャットウインドウが脇に表示されている。しかし、視聴者が非常に多かった場合、そのコメントは次々に流れて来る他の視聴者のコメントに押し流されてすぐに消えてしまう。
だがチャットコメントを投稿する際、YouTubeに料金を同時に支払ってSuper Chat機能を使う事で、「背景色が付いて文字がやや大きくなる」「文字数の上限を大きくする」「チャットウインドウにそのコメントを長く表示しておく」などの特殊効果を付けることができる。日本の場合では100円から5万円まで。なお、一人のユーザーがSuper Chatで支払える上限は、サイト全体での合計で1日5万円と定められている。
「視聴者数が多くてチャットコメントがすぐに流れてしまう」という場合以外ではさほど意味がないためか、Super Chat機能の設定は多数のチャンネル登録者を獲得済みのクリエイターにのみ可能となっている。
単純に「コメントを目立たせるだけの機能」ではなく「視聴者がクリエイターと交流するための機能」と位置付けられており、通常であれば他の多数の視聴者のコメントに流れてしまうコメントを、クリエイターの目にも止まらせやすくする。応援するようなコメントの他、イジったりからかうようなコメントを投稿することも可能。ただし悪意のあるコメント・公序良俗に反するコメントなどは規約違反として除去されるし、その場合の返金もされない。
人気が高くSuper Chat機能を利用するユーザーが多いクリエイターの場合、Super Chatに毎回反応していると、それに終始するだけのライブ配信になってしまい面白くもなんともなくなるという本末転倒の事態にもなりかねない。そのため、「放送中はSuper Chatに反応することはできないことも多いけれど感謝しています」というスタンスのクリエイターも多い。
「投稿者への支援」の役割も担っており、このSuper Chatに支払われた金額の多くは視聴者本人に支払われる。
人気のゲーム実況配信者やYouTuberでは上限額5万円の利用者が複数出没することもあり、結果としてかなり高額な支援を集める場合もある。たとえば2017年末~2018年に入ってから急速に知名度と人気が上昇した「バーチャルYouTuber」の界隈では、1回(数十分)のライブ配信で数百万円のSuper Chatが贈られた例もある。
米国に本社があり、さらにYouTubeという巨大サイトで多くの著名な投稿者(YouTuber)が利用開始しているため、「投げ銭」への注目と知名度が急速に増す原動力にもなっている。
Twitch - Cheeringなど
ゲームのライブ配信サイト「Twitch」でも投げ銭機能がある。2016年6月に公式機能「Cheering」がベータ実装されたが、それ以前からサードパーティ製の追加機能により視聴者が自らの配信ページに「Donate」(寄付)ボタンを置くことは可能だった。こちらのサードパーティによる機能の方がカスタマイズ性は高いようだ。
たとえば以下の動画はTwitchでの実況プレイ動画である。「kimdoe」という韓国人実況ゲームプレイヤーによる、ゲーム「Getting Over It with Bennett Foddy」のプレイ動画。
投げ銭が行われると、プレイ動画の左上にGif動画が表示されその下に「1000원」「7700원」(「원」は韓国の通貨単位で、「ウォン」)などの金額表示が出てくる。これが視聴者からの投げ銭の額にあたる。さらに、その視聴者が選んだ音楽が流れたり、視聴者のコメントが読み上げられるなどの追加効果も設定されているようだ。
(なお上記の動画は元の動画などの表記が皆無なので、おそらく無断転載であろう。元のライブ配信の一部を記録したTwitch純正機能「クリップ」はこちら。)
このようにTwitchでは投げ銭が盛んだが、時に驚くような並外れた金額の投げ銭が行われることもある。
高額Donationの最高記録クラスでは、1人が1回の投げ銭で10万ドルを送り付けた例もある。石油王か?
暗号通貨(仮想通貨)による投げ銭
Bitcoin(ビットコイン)に代表される暗号通貨(仮想通貨)はpeer to peer(利用者から利用者へ)での金銭の受け渡しが容易にできるとして、その普及の初期のうちから「投げ銭」としての利用が期待されてきた。
しかし予想されたほどには暗号通貨による投げ銭は普及していかなかった。その理由は「暗号通貨を投げ銭として渡すには、相手もその暗号通貨を利用している必要がある」という前提条件があったためだ。そして暗号通貨の入手方法や管理方法はそれなりにややこしく、敷居は低いとは言えなかった。
その結果、暗号通貨での投げ銭はあくまで「暗号通貨に興味があり、面倒くささやわかりにくさを乗り越えて利用を開始した人達」の間でお互いに投げ合うのみの、狭い輪にしかなっていなかった。
だが2017年頃からの暗号通貨の急速な普及に伴って徐々にそれぞれのコインの入手・購入方法の敷居は下がってきている。例えば有名企業が運営・出資する暗号通貨の取引所が複数登場し、それらがテレビコマーシャルなども流し始めている。
ただし暗号通貨で投げ銭をもらうには、基本的にはその暗号通貨の受け取りアドレスを表示しておく必要がある。これが大道芸人やストリートミュージシャンで言う投げ銭入れの容器のようなものになる。niconicoで動画や静画や立体を投稿していたり、生放送を配信していたり、大百科記事を投稿・編集していたりするあなたも、ニコニコマイページの自己紹介欄や自分のユーザー記事に暗号通貨のアドレスを表示してみてはいかがだろう。
さらに、「ややこしいことを意識しなくても、とりあえずTwitter上などでbotにツイートで命じるだけで簡単に任意のTwitterアカウントに暗号通貨を送り付けることができる」という「tipbot」と呼ばれるウェブサービスも多数出現・普及してきている。つまり「この動画いいね。投稿者Twitterやってるんだ。じゃあそのTwitter宛に〇〇〇円分のコイン送っちゃえ」と気軽に送れる体制が整ってきつつある。詳細は「tipbot」の記事を参照されたい。
OFUSE
2018年3月に株式会社Ofuse(後に「株式会社Sozi」に社名変更)がスタートさせたウェブサービス。同サービスに登録したクリエイターに、ファンがお布施を送ることができる。
- ファンが1文字2円(絵文字は4円)でファンレターの文字数を買う。
- 購入した文字数制限の中でファンレターを書いて、クリエイターに送る。
- クリエイターにファンレターが届く。
- さらに、ファンが支払った金額のうち約9割がクリエイターに振り込まれる。
という仕組みになっている。1度に購入できる金額は50円~10万円。
購入した文字数は必ずしも使い切らなくてもよいので、ファンレターの文面を考えるのが面倒な人は例えば「10万円購入して「♥」の1文字だけのファンレターを送る」といったことも可能。
詳細は「OFUSE」の記事を参照。
上記の暗号通貨(仮想通貨)による投げ銭と比べて「1割弱が運営会社&決済会社の経費として抜かれる」、「相手がOFUSEに登録していないと送れない」、「相手の銀行口座に振り込まれるまで数日かかる」といったような弱点はある。しかし「わざわざ暗号通貨を用意しなくてもクレジットカードで簡単に送ることができ、相手も日本円で受け取ることができる」という取り回し上の優位点は大きい。
OFUSEの運営はniconicoユーザーでもあり、niconicoが投げ銭機能を実装しない事に対するフラストレーションもこのサービスを立ち上げた原動力の一つになっていたようだ。
ニコニコの投げ銭機能はいつ実装されるのだろうなぁと思いはや何年経ったでしょう・・・
※公式ツイートより
ニコニコに投げ銭機能付いてたら銭投げまくりたい人沢山いるんですよね・・・なのでOfuse登録して欲しいんですよ・・・銭を投げつけさせてください・・・この想いよ届け・・・
マシュマロ - チョコ入りマシュマロ
「マシュマロ」は合同会社Diver DownによるTwitter連携の匿名メッセージサービスで、このマシュマロのアカウントを開設している人には匿名でメッセージを送る(「マシュマロを投げる」と表現される)ことができるというサービス。絵師やバーチャルYouTuberなどで既に利用している人も多い。
そんなマシュマロが2018年12月24日に公開した新機能が「チョコ入りマシュマロ」(略してチョコマロ)である。チョコマロを受け入れる設定をした相手には、通常のマシュマロ(メッセージ)を投げる他に、「チョコ入りマシュマロ」を投げることができるようになる。チョコは1個120円(税込み)で、1個から999個(11万9880円)まで選択できる。
既に多数のクリエーターが利用しているサービスであるため、多くの相手にチョコマロを投げられるようになるのではないかと期待されている。
Twitter連携サービスである点などが上記の「OFUSE」と類似しているが、OFUSEは受け取り手によるリアクションは不要だがチョコマロは受け取り手の回答が必須である点など、細かい相違点は多い。
詳細は「マシュマロ(匿名メッセージサービス)」の記事を参照。
関連項目
- ストリートミュージシャン
- 賽銭
- クラウドファンディング
- YouTube
- Twitch
- niconico
- 暗号通貨 / 仮想通貨
- tipbot
- OFUSE
- マシュマロ(匿名メッセージサービス)
- コミッション
- 振り込めない詐欺
- ファンクラブ
脚注
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