メタバース(Metaverse)とは、コンピューターネットワーク上に作られた仮想世界のことである。元々はパソコン通信の2Dチャットサービスを3D化、インターネット上でサービスをしたもの。
概要
第一世代
「メタバース」は「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語で、もともとはSF作家ニール・スチーヴンスが1992年に発表した小説「スノウ・クラッシュ」に登場する仮想世界の名称だったが、今はインターネット上に構築される仮想世界を指す言葉として使われている。
ユーザーはアバターを操作してCGで作られた仮想世界の中で様々なことを行う。アバターの行動は各国の法律および利用規約の範囲内であれば自由である。ゲームではないので提供者が提供するシナリオや設定等に左右されない部分が利点で、チャットから創作まで思うがままに楽しむことができる。
代表的なサービスは米LindenResearch(リンデンリサーチ)社の開発スタジオLindenLab(リンデンラボ)が運営するSecondLife(セカンドライフ、旧名称LindenWorld(リンデン・ワールド)、2003年公式公開)。しかし、Web2.0サービス(ユーザーが情報発信者となり、コンテンツをWebサーバーに蓄積する形態のWebサービス。ブログや動画共有サイトが代表例)としては使い勝手にやや難があり、あまり普及しなかった。また2010年以降、インターネット端末の急速なモバイル化(スマートフォン)もありモバイル端末で楽しみにくいこれらのサービスは勢いを失い、2020年に会社ごと身売り。
第二世代
2011年、再びSF小説「ゲームウォーズ」(2018年「レディ・プレイヤー1」として映画化)が発表され、気づいたら第二世代に突入する。
2014年、ヘッドマウントディスプレイに対応したVRChatが登場、徐々に人気が出始める。2019年12月からの新型コロナウイルス感染症の行動制限対策としても挙げられた。2021年に巨大SNSを運営するFacebook社が社名を「Meta Platforms(通称Meta)」に変更してメタバースの実現に注力する姿勢を示すなど、再びメタバースに対する注目が集まった。2024年1月にはVRChatの同時アクセス数が10万を突破、先代SecondLifeの2倍に達した。
しかし2022年11月登場のChatGPTに代表される生成AI(生成人工知能)に注目が移り失速している。
主なサービス
第一世代
- SecondLife(旧・LindenWorld) - LindenResearch社LindenLab(アメリカ)2003年~
- OpenSimulator(通称OpenSim)- SecondLifeをモデルとして有志により作成されたオープンソースプロジェクト( OpenSimulator公式Wiki )2007年~
- meet-me - 株式会社ココア (日本) 2008年~2018/1/31
- PlayStation®Home - ソニー (日本) 2008/12~2015/4
- ai sp@ce(アイスペース) - ドワンゴ (日本) 2008/10~2011/6
- BlueMars - Avatar Reality(アメリカ)初めて(?)商業ゲームエンジンで構築 2009年~
第二世代
- VRChat - 2014年1月16日~
- cluster - クラスター株式会社(日本)2017年5月31日~
- DMM Connect Chat - DMM(日本) 2021年1月26日~2022年8月31日
- Horizon Worlds - Metaが展開するメタバース。2021年12月よりアメリカとカナダで先行してサービスを開始、その後イギリス、フランス、スペインでもサービスを開始している。[1]
歴史
前史
- 1986年、米ルーカスフィルムゲームス(現・ルーカスアーツ)、2DCGを使ったパソコン通信チャットサービス「Habitat(ハビタット)」開始
- 1988年、インターネットを用いたテキストチャットIRC(Internet Relay Chat)登場
- 1990年、富士通、「Habitat」を日本語化し国内でサービス開始。富士通Habitat
第一世代
- 1992年、SF小説「スノウ・クラッシュ」が発表される
- 1992年、2D/3DグラフィックスAPI「OpenGL(旧・IRIS GL)」オープン化
- 1994年頃、フィリップ・ローズデールがインターネットを使った仮想世界を考案
- 1995年、米Microsoft、Windows95と2D/3DグラフィックスAPI「DirectX」をリリース
- 2000年、フレッツISDN(インターネットへの常時接続)スタート
- 2002年、商業ゲームエンジン「CryENGINE(クライエンジン)」初版リリース
- 2003年6月、SecondLifeが正式オープン
- 2005年6月、商用ゲームエンジン「Unity(ユニティ)」初版リリース
- 2006年、米国経済誌にドイツ国籍の中国人の活動が取り上げられ、SecondLifeブームが起きる
- (2008年、竹の子のように同様のサービスが開始される)
- 2009年、初めて(?)商業ゲームエンジンを利用して作られたメタバース、BlueMarsがオープン(CryENGINE 2)
- 2010年以降、サービスの閉鎖が相次き、ユーザーのSecondLifeへの合流が続く。前史のHabitatを引き継ぐJ-チャットも終了
第二世代
- 2013年、初と思われるヘッドマウントディスプレイ対応「AltspaceVR」(現マイクロソフト社運営)サービス開始
- 2014年1月14日、VRChatリリース
- 2014年、SecondLifeがVR機器対応計画「Oculus Rift Project Viewer」を開始。しかし2016年7月7日に技術上の困難さで断念
- 2016年、日本においてVR元年と言われる
- 2017年、日本製のclusterリリース
- 2018年 8月 VRChatの3Dモデル等を販売する「バーチャルマーケット」開催、以降年2回の頻度で行われる。
- 2019年、SecondLifeの月間アクティブユーザー数が20%減少していることが運営元よりアナウンスされる
- 2019年12月、新型コロナウイルス感染症流行開始
- 2020年、FacebookがVR向けSNSの「Facebook Horizon」を開発中と発表
- 2020年7月、SecondLifeの運営会社が身売り
- 2022年、メタバース元年と呼ばれる。総務省がまとめた「情報通信白書」によると「世界のメタバース市場は、2022年に655億ドルだったものが2030年には9,365億ドルまで急拡大する」と見込まれた
- 2023年5月、(日本)新型コロナウイルス感染症流行が徐々に収まる、5類移行
- 2024年1月、VRChat、同時アクセス数10万の大台を達成
構築に関連する技術
受賞歴
- 国際ゲーム開発者協会「パイオニア賞」 - Habitatの開発(Chip Morningstar<チップ・モーニングスター>、Randy Farmer<ランディー・ファーマー>)
- 全米テレビ芸術アカデミー「テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞」 - SecondLifeの開発(Philip Rosedale<フィリップ・ローズデール>)
ニコニコのサービスを絡めた活用例
マシニマ活用例
MMD
MMDのモーションをSecondLife、VRChatに移植し、撮影・編集することで本家MMDに近い動画を作成することができる。SecondLifeではカメラモーションの移植はできなかったが、VRChatでは移植に成功している。
→SLダンス動画を参照
マシニマ
マシニマ(Machinnima)とはゲームのグラフィックを利用して作られた映像作品のことである。
プレイ実況
教育
SecondLifeでは大学を中心として教育に活用しようとの動きがあった。
KADOKAWAグループの教育事業部門、角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校とS高等学校では、2021年より授業に第二世代メタバースを活用している。
メタバースで出会える様々な人達
文学
- スノウ・クラッシュ
- レディ・プレイヤー1 - 2018年公開の第二世代メタバースを舞台にしたSF作品。原作アーネスト・クライン(ゲームウォーズ、原題はReady Player One)、監督スティーブン・スピルバーグ
関連項目
- ソーシャルVR
- OpenGL / DirectX / Havok …メタバース構築に利用される技術。
- バズワード
- VRChat / cluster / SecondLife / meet-me
- バーチャルマーケット
脚注
子記事
兄弟記事
- なし
- 7
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