もしかして:TKG |
TTG とは、
- 1975年から数年にも渡り、中央競馬のクラシック三冠路線から古馬路線まで幾度も対戦した3頭の競走馬、トウショウボーイ (T)、テンポイント (T)、グリーングラス (G)の総称。由来はそれぞれの頭文字から。
- アメリカのアニメ「Teen Titans Go!」の略称。
- 株式会社TOUCH TO GOの略称。
- オーストラリア連邦南オーストラリア州、アデレード大都市圏の北東部に位置する地方自治体ティーツリーガリー市(City of Tea Tree Gully)の略称。
本項では1.について記す。
概要
77年 有馬記念
その直線で過去も未来も消え去った。
ただ、今と今のぶつかり合う、伝説のデッドヒート。
戯れにもみえた。死闘にもみえた。
その「勝者」の名は…
3頭とも1973年に生まれた牡馬で、1976年からクラシックから古馬路線にかけ一時代を築いた。
TTGは、トウショウボーイ(Tosho Boy)、テンポイント(Ten Point)、グリーングラス(Green Grass)の頭文字から。3頭で八大競走を7勝し、それぞれ有馬記念を勝利。3頭共に年度代表馬(76'、77' 、79')を獲得し、内トウショウボーイとテンポイントはJRAの顕彰馬に選出。3頭が揃い踏みしたレースでは3着以内を3頭で独占している。
繫殖成績においても、事故で種牡馬になれなかったテンポイントを除き好成績を残している。
3頭の概要
「天馬」 トウショウボーイ(T)
父:テスコボーイ 母:ソシアルバターフライ 母父:Your Host
勝鞍:皐月賞(1976)、有馬記念(1976)、神戸新聞杯(1976)、京都新聞杯(1976)、宝塚記念(1977)、高松宮杯(1977)
鹿毛の牡馬。父母共に優秀な繫殖成績を持つ良血馬。彼の優秀な繫殖成績により父と共に「お助けボーイ」とも呼ばれる。
「流星の貴公子」 テンポイント(T)
父:コントライト 母:ワカクモ 母父:カバーラップ二世
勝鞍:天皇賞(春)(1977)、有馬記念(1977)、阪神3歳ステークス(1975)、東京4歳ステークス(1976)、スプリングステークス(1976)、京都記念(春)(1977)、鳴尾記念(1977)、京都大賞典(1977)
栗毛の牡馬。額から真っ直ぐ伸びる流星と栗毛の馬体の美しさにより「流星の貴公子」、母母クモワカの逸話により「幽霊の孫」とも呼ばれる。彼の最後のレースは今でも多くの競馬ファンの記憶に残っている。
「緑の刺客」 グリーングラス(G)
父:インターメゾ 母:ダーリングヒメ 母父:ニンバス
勝鞍:菊花賞(1976)、天皇賞(春)(1978)、有馬記念(1979)、アメリカJCC(1977)、日本経済賞(1977)
黒鹿毛の牡馬。青森産馬として2020年終了時点で最後の有馬記念制覇馬。菊花賞で下位人気からの勝利により名前から「緑の刺客」と呼ばれた。「第三の男」とも。
対決の歴史
クラシック前まで(~1976/4)
テンポイントは75年夏の新馬戦で10馬身差の圧勝でレコード勝ち。次走も圧勝し阪神三歳ステークスは1番人気に支持されるとそこでも圧勝を見せ、当時西低東高の状況だった競馬界において、関西期待の星と見なされるようになる。年明けの東京四歳ステークスとスプリングステークスは辛勝ではあったが無敗でクラシック戦線に名乗りを上げた。
トウショウボーイは腰の甘さの改善目的の調教、グリーングラスは肺炎をこじらせたためデビューが遅れ、年明け1月末に新馬戦を迎えたが奇しくも同じレースでデビューすることになった。結果がトウショウボーイが3馬身差つけて1着、グリーングラスは4着。ここで明暗別れたかトウショウボーイがその後2連勝で皐月賞に出走できたのに対して、グリーングラスは3戦目の未勝利戦でようやく勝利するもその後は条件戦、NHK杯に勝ちきれず皐月賞、日本ダービー共に出走できずに裏街道を進むこととなる。
クラシック戦線(~1976/11)
1戦目の皐月賞では、1番人気テンポイント、2番人気トウショウボーイとなり、2頭の東西対決が注目された。しかし直前の厩務員による春闘の影響もありテンポイントの調整は上手くいかず、トウショウボーイが2着テンポイントに5馬身差つけてコースレコードを0秒1更新する勝利。
2戦目の日本ダービーでは、皐月賞と代わって1番人気トウショウボーイ、2番人気テンポイントとなった。期待された2頭だが、テンポイントは競争生活のうちでも最も体調が優れておらず、主戦騎手の鹿戸明の負傷による乗り替わりに、レース中には左前脚の剝離骨折も起こして7着。トウショウボーイは最終コーナーまで先頭に立っていたが、彼の弱点をついたクライムカイザー鞍上の加賀武見の作戦に嵌り2着の初敗北となった。
菊花賞に向けトウショウボーイは1ヶ月の休養後に中距離ダートの札幌記念に出走も出遅れ2着となり、デビューから騎乗していた池上昌弘騎手が降板するも、新たに迎えた鞍上の福永洋一騎手により、次ぐ神戸新聞杯と京都新聞杯でダービー馬クライムカイザーも含めた相手に連勝する。一方でテンポイントは軽い骨折であったため7月頃には回復し、調整が万全ではないものの古馬相手に0.1秒差の3着と健闘。グリーングラスはNHK杯後鞍上を安田富男に代え4戦し、菊花賞3週間前の4戦目の鹿島灘特別でアタマ差1着で3勝目を上げ、獲得賞金をギリギリ超えて回避馬が複数出たこともあり菊花賞の出走を何とか決めた。
迎えた3戦目の菊花賞。1番人気トウショウボーイ、3番人気テンポイント。グリーングラスは12番人気と下位人気に甘んじた。レースでは最終直線でトウショウボーイが一度抜け出すものの、マークしていたテンポイントに抜かされ、そのまま勝利するかと思われたが、4コーナーの内をついてきたグリーングラスに直線半ばで交わされグリーングラスが1着。テンポイントは2着、トウショウボーイが3着となった。
この時、グリーングラスの勝利は単なるフロック視されていたが、この菊花賞がTTG時代の幕開けとなった。
古馬戦線、そして伝説の有馬へ(~1977/12)
トウショウボーイとテンポイントはその年の有馬記念に参戦。(グリーングラスは予備登録していなかったので出走できず。)トウショウボーイは武邦彦騎手に変わったものの1番人気に選ばれ、テンポイントも3番人気と古馬に天皇賞馬が3頭交じる中で上位人気となる。レースは最終直線でTT2頭が抜けだすもトウショウボーイが1 1/2馬身差つけて1着、テンポイント2着で有馬記念史上初の4歳馬のワンツーフィニッシュとなった。この時のトウショウボーイの記録は2500m日本レコードを記録し、トウショウボーイは76年度代表馬に選ばれた。またこの時点でトウショウボーイ陣営もテンポイント陣営も互いをライバルを認め合っていた。
翌年トウショウボーイは連戦の疲労もあり春競馬をほぼ全休する。テンポイント陣営は天皇賞(春)に狙いを定めテンポイントは前哨戦の京都記念(春)と鳴尾記念を60kg近くの斤量をものともせず連勝。グリーングラスもアメリカJCCに勝利し、菊花賞の勝利がフロックでないと証明したが、この頃から脚部不安が出始め次戦の目黒記念(春)では2馬身差の2着。さらに天皇賞(春)に向けての調整中に歯替わりと虫歯もあって好調とは言えない状況で迎えた。レース当日はテンポイントが1番人気、グリーングラスが2番人気の中で、直線を押し切ったテンポイントが初の八大競走のタイトルを手に入れた。グリーングラスは0.3秒差の4着と敗れた。
トウショウボーイは休養明けに宝塚記念を選択し、残りのTG2頭も次戦は宝塚記念になり菊花賞以来の3頭揃い踏みとなった。6頭だてとなった宝塚記念は1~3番人気をTTGで占め出走馬のほとんどが八大競走優勝馬だった中、レースはスローペースの中で後半に大きくスパートしたトウショウボーイが1着と体調不安を払拭させる勝利を納め、テンポイントは2着、橈骨の状態が良くない状況下で挑んだグリーングラスはTTから大きく離されたが3着に入線した。
次の八大競走タイトルは天皇賞(秋)だったが、当時の規定によりテンポイントは出走できずに残りのTG2頭が向かうこととなった。
トウショウボーイは不良馬場をものともせず宝塚記念3週後の高松宮杯を勝利、秋に入って新人騎手にオープン戦を任せるもそこで当時の日本レコードで優勝と力量をまざまざと見せつける。グリーングラスも1番人気に押された日本経済賞で圧巻の走りを見せた。天皇賞(秋)はTG2頭の一騎打ちが期待され1・2番人気を分け合ったが、レースでは2頭が意識しすぎたせいか潰しあってしまいトウショウボーイの7着、グリーングラスの5着に終わった。
一方テンポイントは宝塚記念後に海外遠征に招待されるも打倒トウショウボーイのため辞退。トウショウボーイが天皇賞(秋)後に年末の有馬記念をもって引退との発表もあり、有馬記念目標に調整を開始する。夏季休養明けの京都大賞典を63kgの斤量ながらも8馬身差つける圧勝。翌月のオープン戦も快勝し、本格化した馬体でトウショウボーイとの最後の戦いに歩を進めた。
迎えた1977年第22回有馬記念はTTG最終決戦となり、トウショウボーイの引退レース、テンポイントが雪辱を晴らす最後のチャンスでもあり、日本競馬史上屈指の名勝負と呼ばれるものになる。
年末のグランプリであったがTTGの出走を見込まれたこともあり8頭立てに。上位1~3番人気はテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスの順になった。
レース展開は、他馬が逃げ宣言するものの、ハナからトウショウボーイが逃げテンポイントがピッタリマークし2頭が先頭を譲らない前代未聞のマッチレースを展開。向こう正面に入っても尚2頭は先頭を譲らない。最終直線、未だに先頭争いをするTT2頭の後ろでグリーングラスがスパート、3番手に上がり2頭との差を徐々に縮めていく。真ん中から抜け出そうとするテンポイント。内から差し返すトウショウボーイ。外から詰め寄るグリーングラス。3頭による激烈な死闘。
それを制したのは…テンポイントだった。2着は3/4馬身差でトウショウボーイ、3着は1/2馬身差でグリーングラス。4着以下に6馬身も突き放し、TTGがこの世代の中で突出していたことが明らかだった。このレースでついにテンポイントはトウショウボーイを破り、満票で77年度代表馬に選出され、ここにTTG最後の対決は幕を閉じた。
その後
トウショウボーイは予定通り引退し、年明けにテンポイント陣営は海外遠征を発表したが、関西のファンから遠征前にテンポイントの姿が見たいと関係者に多数の声が寄せられ、日経新春杯に出走。66.5kgという過酷な斤量を背負って雪が降る中出走したが、第4コーナー付近で故障発生。骨が皮膚から突き出すほどの重度な故障で安楽死処分されそうだったが、JRAにはテンポイントの助命を嘆願する電話が数千件寄せられ、JRAと馬主は大手術を決断。33名にも渡る獣医師の医師団が手術を行い、一旦は成功したように思われたが、ボルトが馬体重に耐え切れずに曲がるミスを犯しており、それが元で3月5日に蹄葉炎により死亡した。
最後に残ったグリーングラスは脚部不安に悩まされながらも、年明け以降2戦連続3着以内で天皇賞(春)を迎える。1番人気に支持され、トウフクセダンとカシュウチカラに直線で迫られるも粘って、1馬身差で初の盾の栄誉を手にし、鞍上の岡部幸雄もこれが初の天皇賞制覇となった。
次の宝塚記念はファン投票で1位で1番人気だったものの、逃げ馬を捕まえられず2着。故障の悪化もありこの年はあまりレースに出られず次の有馬記念にも脚部不安と風邪のせいもあってか6着と敗れる。
7歳となった翌年も更に脚部が悪化したこともあり出走レースも少なくなり、掲示板は外さないにしてもアメリカJCC、宝塚記念、オープン戦と3戦連続で勝利を逃す。この成績低迷もあり、この年の有馬記念で引退が決定。八大競走勝利馬が9頭という錚々たる顔ぶれの中で2番人気に支持され、鞍上は初めてコンビを組む大崎昭一となった。3コーナーで初めて先頭に立ち、そこから内ラチ沿いに伸びていき、最終直線ではメジロファントムにハナ差まで迫られるも凌ぎ切り、先にターフを去ったTT2頭に続き有馬記念の勝利馬となった。
TTGの中で唯一クラシック・天皇賞・グランプリ競走のいずれをも制し、生涯獲得賞金も最多だった。この有馬記念での勝利が評価され79年度代表馬となって彼は有終の美を飾った。これにてTTGの時代は完成されたと言っていいだろう。
種牡馬入りしたTG2頭はその後、トウショウボーイは初年度は不人気だったものの、2年目以降活躍していく産駒も増え、1983年には新馬戦で対戦したシービークインとの間にクラシック三冠馬ミスターシービーが誕生し、重賞勝ち馬を毎年輩出するのに加えて非常に高い勝ち上がり率もあり「お助けボーイ」と呼ばれるほどの渾名がついた。グリーングラスはトウショウボーイほどの人気はなかったものの、エリザベス女王杯を制すリワードウイングを輩出したほか何頭も重賞勝ち馬を輩出した。
1992年にトウショウボーイはライバルのテンポイントと同じ蹄葉炎で安楽死となり、グリーングラスは種牡馬引退後一時行方不明となったが個人が引き取った後に、2000年柵に激突して右前脚を粉砕骨折したことにより安楽死となった。
グリーングラスが亡くなった同年にJRAによって行われた「20世紀の名馬大投票」ではTTG3頭がそろって100位以内にランクイン。トウショウボーイが22位、テンポイントが14位、グリーングラスが26位と上位に選出された。
幾度も激闘と伝説を残した3頭は今でも鮮烈な記憶を残して、これからも名馬として引き継がれていくのだろう。
対戦成績(3頭のうち2頭以上が走ったレース)
競走名をクリックすると各動画へ行けます(天皇賞(春)はニコニコになかったのでYouTubeのリンク)
レース | トウショウボーイ | テンポイント | グリーングラス | (優勝馬) |
---|---|---|---|---|
4歳新馬戦 | 1着 | - | 4着 | |
皐月賞 | 1着 | 2着 | - | |
日本ダービー | 2着 | 7着 | - | (クライムカイザー) |
菊花賞 | 3着 | 2着 | 1着 | |
76年有馬記念 | 1着 | 2着 | - | |
天皇賞(春) | - | 1着 | 4着 | |
宝塚記念 | 1着 | 2着 | 3着 | |
天皇賞(秋) | 7着 | - | 5着 | (ホクトボーイ) |
77年有馬記念 | 2着 | 1着 | 3着 |
関連動画
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テンポイント
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