インテリビレッジの座敷童とは (インテリビレッジノザシキワラシとは) [単語記事]

※注意※
この記事にはネタバレ成分が含まれています。
多少のネタバレは気にしない方のみ自己責任で突っ走って下さい。

インテリビレッジの座敷童とは、電撃文庫から発行されている鎌池和馬著のライトノベル作品である。

概要

テクノビレッジの座敷童として電撃 MAG AZINEに掲載された小説を長期執筆の為に改変した作品。

オカルトコメディと謳っているが内容はシリアスで、残虐・グロテスクな描写も多い。本作と比べれば、まだ戦争を題材にした前作『ヘヴィーオブジェクト』の方がコメディ成分が多いと思われる。
また、それまでの鎌池作と比べるとループ展開、仮想世界、運命(世界)改変などやりたい放題のぶっ飛んだ展開が多い。

主人公は陣内忍(男子高校生)、菱神舞(女性の殺し屋)、内幕隼(刑事)の3人体制。
例外もあるが基本的には陣内忍パート、菱神舞パート、内幕隼パートで構成され、それぞれの一人称視点で物語が進行する。最後の方はだいたい一堂に会して問題の解決に突き当たる展開になる(もしくは同時進行パターン)。
また、主人公以外のキャラクターの視点で進行するケースもある。

鎌池和馬の長期執筆作の中では初の完結作となった。

そしてこの作品、6巻目の一ヶ月後に7巻目が出たのだがこれにより「6巻が発売前なのに7巻目のあらすじが出ている……」という事態を招いた。ちなみに8巻目はその3ヶ月後である。

なお、完結はしたのだが鎌池和馬公式サイトにていくつかの短編がアップされている。アップされ続けている。インテリビレッジの座敷童は終わっているが終わっていない。

あらすじ

見た目は田舎、中身はハイテクな最先端の田舎、インテリビレッジ。そのうちの一つであるインテリビレッジ納骨村に住む高校生陣内忍の家には祖父母や父母の他にもグラマラス座敷童、縁が住んでいた。

妖怪に好かれやすい忍は妖怪が絡んだ数々のトラブルに巻き込まれる。周囲には叔父で刑事の内幕隼、貧乳探偵・菱神艶美、彼女の姉でフリーランスの仕事人、菱神舞も居た。

比較的一般的な高校生、陣内忍は数々のトラブルから生き延びる事が出来るのか。

登場キャラ紹介

陣内忍とその周囲

陣内忍（じんないしのぶ）: 主人公の1人。ハイテク化した田舎「インテリビレッジ納骨村」に住む高校生。
父や伯父とは違って「妖怪に好かれる体質」で、妖怪に関する騒動に巻き込まれやすい。
座敷童 / 縁（ゆかり）: 本作のメインヒロイン。正体は運命を司り、世界に破滅と不吉を呼び込むチゾメノザシキワラシ。
縁は忍が女の子だった場合の名前である。
外見は赤い着物を着たグラマラスな黒髪ロングの女性。忍が幼少のころから面倒を見ており、良いお姉ちゃんだったが現在はグータラ妖怪と化してハイスペックなゲームに勤しんでいる。
鎌池和馬の長期執筆作で初めて主人公とメインヒロインが彼氏彼女の関係になる。
国家登録：361 10054Ra2号。スリーサイズはB98,W54,H85。
雪女: 納骨村で忍が出会ったロリっ子雪女。薄い青髪に、同色の着物を着ている。「パッケージ」に組み込まれていたところを忍に助けられ、陣内家に居座ることになった。ことあるごとに結婚を迫ってくること以外は、世話を焼きたくなる普通の少女。…少しヤンデレ気味だが。
国家登録：58902385Ra4号
サキュバス / ヘンリエッタ: 西洋の悪魔。ユーロセキュアフォースを支配し、百鬼夜行に喧嘩を売るも敗北、追われる立場に。
1章ラストで陣内家へ自分を荷物として包装して送りつけ、百鬼夜行から身を隠すために半ば押しかける形で住まわせてもらう。配達の折、忍に内緒で「契約」した。その関係で忍が現在の「ご主人様」に。彼女の名はヘンリエッタというのだが、それが明かされるのはだいぶ後。
猫又: 白い猫の姿をした妖怪「猫又」。陣内家に住み着いている。尻尾を触れられるのがお嫌い。
正体は復讐集団『因果応報』の元エース。殺された主人の復讐のために一つの組織(因果応報)を潰すほどの実力者である。噛み殺した相手に化ける事が出来る。直接的な力では見劣りするが、敵を疑心暗鬼にする戦法が得意だったらしい。
忍を認めていて、致命誘発体の自分が引っかき回してグチャグチャにするよりは忍に問題の解決を任せた方がいいと思っている。
古椿: 女性に化ける能力を持つ椿の妖怪。大小2体が陣内家に住み着いている。（大）は元々住み着いていたが（小）は2巻の魔女騒動で悪魔化させられたものを陣内家で引き取った。（小）の出番が多い。
青行灯: 百物語の妖怪。ボクっ娘。自称ラスボスちゃん。
外見は額に刃物のような一本角が付いている、白い花嫁衣装のような着物を纏った黒髪ロングの女。青行灯を構成するのは百物語の謎・恐怖であり、100の問いを提示して全て解き終わると現れるという。
100もの超常を内包する青行灯は、怪異の構成パターンによって無限と言える力を行使することが可能。「様々な妖怪の性質・力」を持つ強力な妖怪である。
油取り: 作中で陣内忍という人間に多大な影響を与えた妖怪。
油取りと言う妖怪の発祥は100年ほど前の明治時代で、比較的新参の部類である。
●●後・・・・10年程前、自ら望んで『パッケージ』に組み込まれ、さらにそのパッケージを乗っ取った。忍や子供達の臓器を抜き取ったが縁が運命を改変した結果、事件そのものが無に帰されて敗北する。
●●前・・・・忍の友達。本作の核となる部分。是非とも7巻を読んで確かめるべし。
小手蜜惑歌（こてみつまどか）: 納骨村の高校に通っている忍のクラスメイトの女子高生。資産家。
株取引など金融関係の長があり、デイトレ等で莫大な資金を動かし、大金を稼いでいるスーパー JK様。
スタイルは良いが運動神経は人並み以下。擦れるという理由で色気の無い下着(スポブラ)を着用しており、忍に反発されたことも。
渚（なぎさ）: 幼少期・・・・忍のガールフレンド。エビフライが海で泳いでいると思っている。
現在・・・・忍の元恋人。刃物が似合う立派な世界三大ヤンデレに成長しました。

内幕隼とその周囲

内幕隼（うちまくはやぶさ）: 主人公の1人。納骨村出身の警官。警視庁刑事部捜査一課、巡査部長。
陣内忍は兄の息子、父方の甥にあたる。忍とは真逆の「妖怪に嫌われる体質」。ここら辺は兄の「怖がられる体質」と似ている。
艶美は「刑事さん」、忍は「(隼)伯父さん」と呼んでいる。普段クール振っていても、事件を解決するためなら例え自分が(冤罪で)犯罪者扱いされようともやり遂げる。根は熱血で世渡りが下手なタイプである。
料理下手であり、コンビニ食が一番の御馳走。色々レトルトのアレンジを試しているが手料理は一切しない。
相方役はほぼ艶美。巴や澪など何故か中学生と関わりを持つ事が多い。
菱神艶美（ひしがみえんび）: 内幕隼サイドのヒロイン。セパレート水着、ツインテールが特徴の女子中学生。
凶事を呼ぶ『菱神の女』。菱神舞の妹だが姉に似ず胸が哀れ。小手密惑歌とは友人関係である。
隼へアピールするために普段は水着姿で過ごしている。秋に入っても水着だが流石にそろそろ厳しくなってきたか。
事件が発生するところに出没する。探偵紛いな事をしている。一般人ながら推理力は高く、隼から「推理マニア」と呼ばれており、サポートに回ることも多い。隼が知る「今現在の彼女」になった理由は彼もだいぶ関係してくる。
八河巴（はちかわともえ）: 艶美の友人。艶美と同じ中学に通っている同級生。眼鏡っ娘。旧姓は東条。
実父の一件(2巻)で隼と面識を持ち、彼に助けてもらった。なお両親が離婚して母に引き取られている。母親は再婚済み。
妻田澪（つまだみお）: 巴の学友でマンションの隣人。
『人面瘡』パッケージの被害者。その後遺症で集団の輪に入ると存在が希釈になってしまう。

菱神舞とその周囲

菱神舞（ひしがみまい）: 主人公格の1人。タンクトップ、ホットパンツが似合う20代女性。
凶事を招くと言われる『菱神の女』。菱神艶美の姉。妹よりも遥かにスタイルが良い。
式神『死出の竜姫』を仮想敵に自身の体を開発・組み直し、人を陵駕する身体性能を獲得した狂気の存在。『死出の竜姫』と同等以上の力を持つ。身体スペックは人間の中では最高峰で、大抵の事態には対処が可能。だからこそ“銃に頼れば8割負け。『死出の竜姫』を使う場面は10割負け”と得心する。という割には劣勢でなくとも銃は使っているのだが。
飄々としているが冷徹で、人も平気で殺すし敵だけでなく味方も欺く。仕事に情は持ち込まないタイプ。フリーランスの殺し屋だが、最近は百鬼夜行の仕事を請負う事が多い。
活躍している割に不憫な御方。
すねこすり: 小型犬の姿をした妖怪「すねこすり」。
舞のサポート役を任され、腐れ縁になりつつある。相棒役というかマスコット、弄られキャラ。愛くるしい姿をしてはいるが百鬼夜行の正規構成員である。まぁ…すねこするくらいしか出来ないのだが。
実は既婚者で子持ち。妻の「お初」が行方不明となって妻を捜すために百鬼夜行に入った。
無害な妖怪で暴力を良しとしない。そのため殺し屋稼業が身に染みついている舞と衝突することも。
祝（はふり）: 百鬼夜行のリーダー。喪服のような服装の10歳程の少女。和ロリ枠。
父に人間の呪（まじな）、母に座敷童の迷（めい）を持つ半人・半妖。真面目だが年相応の可愛らしい一面も。
病魔の使役者: 1巻のラスボスだがその後もかなり出番のある人。落ち武者、侍と評されることも。
病魔を使役する。百鬼夜行の『五本指』に数えられる程の凄腕。

他、主要な人間・妖怪など

米咲尋（よねさきひろ）・・・・納骨村の小学生。大勢の妖怪と暮らしている。
蘭園幸（らんぞのさち）・・・・ファッション誌『オートフォーカス』の読者モデル兼ライターの少女。
大百足・・・・妖怪。サチの友達。
呪（まじな）・・・・百鬼夜行の元リーダー。祝の父。
お初・・・・すねこすりの嫁さん。
菱神樒（ひしがみしきみ）・・・・1000年以上生きている菱神の始祖筋。
菱神恭（ひしがみきょう）・・・・舞と艶美の兄。
ツェリカ＝ヴィーン＝アルファ＝チェリディア＝ルミディリエ・・・・七つの大罪に収まりきらない程の大悪魔。

※加筆修正求む

基礎用語

インテリビレッジ
　ハイテク、高級ブランド化した田舎のこと。三菱ホテルや有名百貨店が提唱した田舎の新たな姿。
　精密機械工業分野において致命的な敗北を喫した現在の日本は、権力者たちの後押しで工業を切り捨て農業に力を注ぐことを選択。これにより国土の三分の一が再開発され、日本の第一次産業は大きな変革を迎えた。
　ぱっと見、外観はかろうじて田舎のイメージを留めているものの村の中は大幅にハイテク化している。村を走る軽トラすら電気自動車になり、あぜ道や建物の屋根にはソーラーパネルが設置されている。
　過疎化防止と謳ってはいるが、究極的には「安い海外産(輸入物)には勝てないから高級ブランド化してしまおう」という思惑が背景にある。よく例に挙がるインテリビレッジ産のブドウは一房3万円の高値が付けられ、そこらの自然風景にも値がつく程。
　泥棒にも目を付けられやすく、辺りは最新セキュリティを張り廻らせている。もっともインテリビレッジは警察を嫌い、交番・警官が少ない。自前の武装警備員に治安の安定を任せているようだが。
妖怪
　百年・千年以上もの長い時の間に淘汰され、鋭く尖れた「意思を持つ超常（オカルト）」。
　人々の恐怖・伝承が交錯した結晶体。想いが固着して意思や肉体を得た超常的存在とも。また、一部は現実での伝承通り「まつろわぬ神々の零落した姿」とも云われている。
　妖怪はそれぞれの伝承に由来した「超常現象」を起こすことができる。一方で性質・習性・思考パターンも伝承に左右される。例えば座敷童は毎晩誰かの布団に潜り込み、油取りは意思に反しても子供を殺す対象として見てしまう。いずれも近代的な街並み（コンクリート等）を厭い、自然風景に囲まれた田舎を好むという特徴がある。
　妖怪に日本国憲法・法律は適用されず、そのものを裁く事は出来ない。ゆえに例え妖怪が人を殺しても事件性はないものとして扱われる。国家登録番号が割り振られ、管理されているが、いまどき誰も使わないらしい。
パッケージ
　犯罪のシステムに「妖怪」を組み込み、霊障事件を起こす究極の犯罪装置。
　手法は様々だが多くは妖怪の概念上の「性質」を切り抜いたり接続したり再定義したり…そうやって夢のような完全犯罪のシステムを作り出す。厄介なことにパッケージに組み込まれた妖怪に自覚は無いので無意識に犯罪に加担してしまうケースが多い。
　妖怪の特性次第だが、距離、物理法則…果ては時間や運命すらも陵駕する程の強力なパッケージを作る事も可能。そのような強力かつ大規模なパッケージのアセンブルにはある程度の人員や時間、計画性も必要となる。
妖怪以外の超常的存在
　動物や器物に低位の神霊や妖怪が宿った「憑き物」、死者の姿を残した「幽霊」、生前強い憎悪を持っていた幽霊が変質した「怨霊」、中東・西洋諸国の宗教的文化に由来する「悪魔」。
　妖怪と同じ超常的存在は作中でも数多く出るが、厳密にはこれらは妖怪とは似て非なる存在である。