フサイチエアデール(Fusaichi Airedale)とは、1996年日本生まれの元競走馬・繁殖牝馬である。黒鹿毛。
開業して間もない名伯楽とともに1999年クラシックを駆け抜けた小さなド根性娘。
馬名は冠名+英国ヨークシャー州の地名、あるいはテリアの王とあだ名されるエアデール・テリアからか。
主な勝ち鞍
1999年:報知杯4歳牝馬特別(GⅡ)、シンザン記念(GⅢ)
2000年:ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)、マーメイドステークス(GⅢ)
父はもう説明不要、同い年の産駒としてアドマイヤベガやトゥザヴィクトリー、スティンガー、エイシンルーデンスなんかがいる*サンデーサイレンス、母はノーザンファームによって輸入された繁殖牝馬*ラスティックベル、母父Mr. Prospectorという血統。
母方は3代母からの分岐に本邦輸入牝馬*エリーツー(京王杯SC勝ちのトーアフアルコンの母)、4代母からの分岐に本邦輸入種牡馬*プラウドデボネア(父Lyphard)、その全妹Lyphard’s Deltaからロイヤルデルタが輩出されるなど活躍馬に当たる血統である。
初子のアネーロは父*ノーザンテースト、二番子の彼女は父サンデーとなるくらいには期待された母から生まれ、金子真人氏・近藤利一氏とともに当時新興馬主トリオ「キンコンカン」と括られたりしたイケイケドンドン系ゴージャス馬主、この馬がデビューした後にあのFusaichi Pegasusを購入することになる関口房朗氏に庭先取引で購買され、当時開業間もない調教師試験一次試験11年連続突破、裏を返すと10年連続二次試験落ちというこの試験がムラの外から来た者[1]にやたら厳しいのか、本人が色々やらかしたのかわからない記録を作ってしまっていた松田国英厩舎に預託されることとなった。
同厩の同い年にはダートマイル付近で活躍したゴールドティアラがいた。
順調に調教が進み、1998年秋競馬開幕週の阪神競馬場でデビューを迎えたが、断然1番人気の武豊騎乗馬ながら勝ち馬から5秒落ち、上がり3ハロン40.2という惨憺たるタイムを出して惨敗。タイムオーバーペナルティで1ヶ月の出走停止を食らってしまい、当時は同一開催なら連闘しまくれば最大4回まで出走できた新馬戦出走権残り3回をフイにしてしまう。
その後未勝利戦に出走したもののなかなか勝ちきれなかったが、12月の4戦目で後続を1.3秒離す圧勝で勝ち上がる。しかし阪神3歳牝馬S出走は出来なかった。なんせ勝ち上がった日のメインレースだったので…
続く500万下ではエイシンキンボールに敗れ2着とするが、牡馬相手でも大負けしなかったのでシンザン記念へ。1番人気がエイシンキンボールだったためか、鞍上武豊だったためか2番人気に推され、4コーナー2番手から力強く抜け出し快勝。エイシンキンボールが撃沈する中重賞初勝利。松田国英厩舎も重賞初勝利となった。
当時は1月から桜花賞直行はよっぽどの理由がない限りやらないことだったため、報知杯4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)に出走。1.7倍の支持に応え一瞬前が壁になるがスイーッと外に抜けて3馬身差つけカレンチャンやラブミーチャンとは特に関係がないステファニーチャン以下を圧倒し重賞連勝。タイムオーバー負けというドン底から這い上がり堂々と桜花賞に向かった。
そうして迎えた1999年の桜花賞は1番人気に阪神3歳牝馬Sの勝ち馬スティンガーが推されたが、3.1倍と圧倒的とは言えない支持であった。末のキレや勝ちっぷりは見事なものであったが当時はアバンギャルド通り越して順調な馬ならあり得ない12月から直行ローテを取ったのが大きかったのだろうか。今や定石なんだから時代の進みは恐ろしい。
エアデールは2番人気(4.5倍)、しかし3番人気の取りこぼし多い系女子ゴッドインチーフ(4.6倍)と差はなかった。
そうして始まったレースでは久々のスティンガーが出遅れる中、勝ってきた頃よりやや後ろのポジションで進め、先頭に立ったトゥザヴィクトリーを外から差す…あたりで更に外からぶっ飛んできたプリモディーネの末脚の破壊力が上回り、惜しい2着となった。
とはいえこれでオークスの優先出走権も今後に向けて十分な出走賞金も手に入れたのだが、距離に不安があったのかサンスポ杯4歳牝馬特別(現フローラS)へ。1番人気に推されるが桜花賞でやらかしていたスティンガー逆襲の一刺しにしてやられ2着。
ある程度距離に目処はつけたもののオークスは武豊が降りることになった。より距離適性や才能で上と見たかトゥザヴィクトリーへの騎乗を決めたためである。というか桜花賞でもトゥザヴィクトリーが抽選に回ってなければバッティングしていたので、すんなり桜花賞乗ってもらえたのは運があったのかもしれない。
ということで四位洋文を迎えて挑んだオークスであったが、距離がキツかったがジリジリ伸びて掲示板は確保の5着。勝ったのはトゥザヴィクトリーでもスティンガーでもプリモディーネでもなく、ピンクのサウスポーこと父内国産の星・ウメノファイバーがキレッキレの末脚でかっさらっていった。
秋はローズSから復帰。武豊は秋の騎乗馬にトゥザヴィクトリーを指名したため、代わりにプリモディーネがオークス後蟻洞[2]を発症ししばらく休養せざるを得なくなり、ちょうど手が空いていた福永祐一にスイッチ。
先行するが更に前にいたヒシアマゾンの全妹ヒシピナクルを捉えられず2着。とはいえなんかよくわかんない条件馬にも負けて4着のトゥザヴィクトリーよりは貫禄を見せた。
本番・秋華賞ではオークス馬ウメノファイバーよりも人気したもののヒシピナクルとトゥザヴィクトリーより下の3番人気。なんとか見返してやろうと乱ペースで前が崩れる中、中団インコースから外のヒシピナクルと同じようなタイミングで上がっていったものの脚が止まり5着。なんかよくわかんない条件馬ことブゼンキャンドルと、あと一歩が足りず優先出走権を取れなかったクロックワークが大穴をぶち開けるのを許す形になってしまった。
秋華賞後、当時は秋華賞組も多く参戦したエリザベス女王杯へ。鞍上はトゥザヴィクトリーこそ休養となったが、武豊は1歳上の牝馬二冠馬ファレノプシスを取ったため福永祐一で継続。人気は大きく落とし結構離れた7番人気となったものの、距離を考えてか中団で進めて末脚を溜め、大外一気を狙ったが真ん中を堂々と突き抜けたメジロドーベルには3/4馬身届かず2着となった。
これで終わりか…と思われたが有馬記念にも出走。前半が極端に遅くなったのもあったのか強気に4番手付近を先行したがツルマルツヨシが仕掛けて以降連鎖反応で激流となると後退し9着。ステゴには先着したが最強の2頭と後の世紀末覇王の背中は遠かった。
有馬記念後は冬休みを取り、復帰戦に選んだのは春の中山マイルの名物ダービー卿チャレンジトロフィー。武豊に手が戻った効果か、エルコンに迫った男シンコウエドワードの追撃をクビ差退けて牡馬を撃破し重賞3勝目を挙げる。
しかしマイラーズカップでは武豊が*アドマイヤカイザーを優先し降板。和田竜二に乗り代わるが手が合わなかったか当時は皐月賞週開催で前走から中1週だったのが良くなかったのか13着と惨敗。牡馬相手はとても厳しい時代でもあった。
それでも春の大目標安田記念に向かう。1番人気は短距離路線で開眼し京王杯SCでは圧倒的末脚で4角17番手から16頭ゴボウ抜きにして圧勝というすんごい競馬を見せ、海外遠征すんぞ!と鼻息も荒かったスティンガーだったが、香港馬Fairy King Prawnとゴドルフィンの*ディクタットの前に日本馬は宮記念でついに悲願達成したキングヘイローが3着に入るのがやっとで全滅した。エアデールは7着。なにげに安田記念では除外対象から繰り上がりでギリギリ出走だった*アドマイヤカイザーには先着したのは意地であったか。
続くレースは今は府中牝馬Sに存在を剥奪されてしまったマーメイドS。本来であれば宝塚記念前のレースで安田記念とはタイトになる日程だったがこの年は7月9日、七夕賞と同日開催だったため余裕を持って臨むこととなった。
久々の対牝馬戦となったがトップハンデ58キロ、ライバル・トゥザヴィクトリーが重賞未勝利のため55キロと裸同然の軽量だったこともあり5番人気と軽視されたものの、そのトゥザヴィクトリーの逃げを先団から足を伸ばし捕まえて勝利。笠松から乗りに来ていた頃のアンカツを確保できたのも大きかったかもしれない。
ここで夏休みに入った後秋はエリザベス女王杯を目指し、現在はマーメイドSを乗っ取る形で名称が初夏に移動したため、残されたこっちはアイルランドトロフィーとして独立した府中牝馬Sから復帰。裏が秋華賞だったため関西の主だったメンツをエリ女までの依頼で確保できなかったからか、藤沢厩舎所属だったためいい馬にも乗ったりしていた2年目の北村宏司を鞍上に出走。
が、このレースは夏の札幌でついに重賞を取っていたトゥザヴィクトリーがひたすらに強かった。逃げて上がり最速ではエアデールら後続馬は何にも出来なかった。とはいえ休み明けで3着なので叩きとして割り切るなら十分な成績ではある。
そうして迎えた本番・エリザベス女王杯。鞍上に横山典弘を据え必勝体制で臨む。2番人気トゥザヴィクトリー(3.1倍)と僅差ながら1番人気(2.8倍)に推され、逃げたトゥザヴィクトリーを外から被せるようにがっちりマーク。直線を向くと粘ろうとする宿敵を競り落として前に出る!ゴールまであと僅か…だったが、不振にあえいでいた1個上の牝馬二冠馬、3番手で2頭をマークしていたファレノプシスにゴール寸前で差し切られて2着。エリ女で牝馬二冠馬に敗れるという嫌なリフレインとなってしまった。
この後年末時代の阪神牝馬Sに短期免許騎手時代でまだ関西系イタリア人になる前のミルコ・デムーロを迎えるが、先行するも伸びに欠け5着。
ここで生産牧場のノーザンファームから要請があったか2000年いっぱいで引退、繁殖入りとなった。通算21戦5勝[5-7-1-8]うち重賞4勝GⅠ2着3回。小柄ながらマーメイドSでトップハンデ58キロを背負って勝つなど斤量負けするようなところもなく、先行力があり安定感のある走りをしたものの、土壇場の勝負においての爆発力という面ではGⅠ馬には及ばないところがあったのかGⅠでは勝ちきれなかった。
同い年の有力牝馬との対戦を勝敗にするとプリモディーネとは五分だしトゥザヴィクトリー、ウメノファイバー、ブゼンキャンドル、ヒシピナクルなんかには勝ち越しており負け越したのはスティンガーくらいなのだが、肝心要のGⅠではきっちり遅れを取ってしまっている。
しかし絶望的なタイムオーバー負けからよくぞ巻き返したと言えるし、開業以来初の一流馬とあって松田国英厩舎に大きな経験をもたらした馬であった。
クロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハ、ダイワスカーレットら後輩たちの活躍の陰にもエアデールとGⅠ戦線で戦って積んだ経験や教訓はあっただろう。
引退後は故郷で繁殖牝馬となった。サンデー直子ということや馬格を補う意味もあってパワー系の*フレンチデピュティやその息子でデカい*クロフネを中心に種付けされると初子でクイーンCを勝利し牝馬クラシック戦線に参戦した初子ライラプス(父*フレンチデピュティ)、朝日杯FSを勝ち短距離路線で活躍した第二子フサイチリシャール(父*クロフネ)らを輩出。繁殖牝馬としても活躍した。
しかし近年だと未出走の全妹インディスユニゾンの孫にノームコアとクロノジェネシスが出現したため、エアデールのラインは若干影が薄い。まあこっちもライラプスの全妹グリッターカーラの孫、エアデールから見ればひ孫に海外重賞勝ちを成し遂げたビザンチンドリームが出ており活力がないわけでは決してない。
2017年の種付けシーズン終了後にエイシンフラッシュの子を受胎した状態でノーザンファームを放出され、長浜牧場に移った。
繁殖入り後不受胎となったのは2010年のみ、2018年生まれのショウネンジダイ(地方で2025年8月現在現役)まで延べ16頭を生むほどの脅威の子出しを誇った名牝であったが、ショウネンジダイを産んだ後の動向は2018、2019と2年連続で不受胎となり、2019年10月20日付けで用途変更となったところで途切れている。
もしかするとこの日付で死亡したのかもしれないし、展示馬助成事業の対象外であったため処分されたのかもしれないし、公表されていないだけでどこかでまだ余生を送っているのかもしれない。とはいえ初版執筆時の2025年で29歳であるため何にせよ死亡している可能性は高い。
| *サンデーサイレンス Sunday Silence 1986 青鹿毛 |
Halo 1969 黒鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
| Nothirdchance | |||
| Cosmah | Cosmic Bomb | ||
| Almahmoud | |||
| Wishing Well 1975 鹿毛 |
Understanding | Promised Land | |
| Pretty Ways | |||
| Mountain Flower | Montparnasse | ||
| Edelweiss | |||
| *ラスティックベル Rustic Belle 1990 鹿毛 FNo.20-a |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Raise a Native | Native Dancer |
| Raise You | |||
| Gold Digger | Nashua | ||
| Sequence | |||
| Ragtime Girl 1973 栗毛 |
Francis S. | Royal Charger | |
| Blue Eyed Momo | |||
| Swinging Doll | Raise a Native | ||
| Doll Ina |
クロス:Raise a Native 3×4(18.75%)、Royal Charger 5×4(9.38%)
前述の通り、ロイヤルデルタやノームコア、クロノジェネシスらが一族にいる活躍馬の血筋である。
なんと勝ちレースが2本もあった
この手の馬はだいたい負けたレースしかないオチが多いのだが…
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最終更新:2025/12/06(土) 10:00
最終更新:2025/12/06(土) 09:00
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