B'TX(ビート・エックス)とは、「月刊少年エース」1994年12月号から2000年2月号に連載された、車田正美による漫画作品である。後にアニメ化やパチンコ化もされた。
タイトルロゴの「T」の字が、小文字の「t」のように小さく書かれているのが特徴である。
ここではテレビアニメ版の続編であるOVA作品「B'TXNEO(ビート・エックスネオ)」についても触れる。
概要
兄を救うために『機械皇国』に挑む主人公・高宮鉄兵の戦いを描く熱血アクション漫画。単行本は全16巻、文庫版は全8巻。ニコニコでは表記揺れが多いため、検索する際は「ビート・エックス」「ビートエックス」「B'T-X」の単語も使って調べることをおすすめしたい。
本作にはB'T(ビート)と呼ばれる実在・架空の生物をモデルとした機械生命体が登場し、様々なデザインや能力を持っている。戦闘シーン、多種多様なB'T、登場人物達の胸に響く言葉、敵味方双方の信念を投げかけ合う会話が、本作の見所として挙げられるだろう。旅の中で強くなっていく鉄兵とエックスの絆も見逃せない。
結構ショッキングな描写も多いので、グロ描写が苦手な人は閲覧注意。
あらすじ
21世紀後半、北京で開かれた機械万国博(メカトピア)。天才科学者である高宮鋼太郎は研究発表の講演中、謎の組織『機械皇国』にさらわれてしまう。唯一の肉親である鋼太郎を救うため、弟の高宮鉄兵は単身機械皇国へ乗り込むも、皇国のメタルフェイスとB'Tマドンナの襲撃を受け重傷を負う。しかし鉄平の血が流れたスクラップの山の中から突然、伝説のB'T「エックス」が蘇り......。
主な登場人物
主役サイド
- 高宮鉄兵(CV:檜山修之、幼少期は亀井芳子)
本作の主人公である14歳の少年。“熱血漢”という文字が似合う熱いヤツ。5年前に華蓮と出会ったことがきっかけで彼女から機械皇国について教わり、兄を救える強い男になるため彼女に師事する。右手に装着した手甲状の武器「メサイヤ・フィスト」は華蓮が製作してくれたもので、ワイヤーの発射や握力の大幅な強化など、使い方一つで様々な効果を発揮する。敵味方問わず、出会った者が引き寄せられる不思議な「輝き」を秘めている。
無茶をしてしまうことはあるものの、華蓮から教わった機械工学をマスターしているあたり、頭はかなり良い方だと思われる。 - 高宮鋼太郎(CV:佐々木望)
鉄平の2歳年上の兄であり、若くしてロボティクス界の世界的な権威となった恐るべき天才。11歳でベルリンに単身留学していたため、メカトピアでは鉄兵との5年ぶりの再会となった。しかし喜びもつかの間、その後で機械皇国に連れ去られてしまった。弟の鉄兵同様、どんな逆境でも諦めない強い意志を持っている。
ベルリン留学時に別れを悲しむ鉄兵に対し「太陽の光を借りずに輝く恒星のように、僕たちは誰の力も借りず自分自身の力で光れる男になろう。そうすればどんなに離れていても互いの想いは届くんだ」という旨の言葉をかけており、これが鉄兵の「自力で輝ける男になる」という信念のきっかけとなる。 - 華蓮(カレン)(CV:緒方恵美)
かつてのエックスのドナー。機械皇国を守護する西の四霊将だったが、ある理由から5年前に皇国を脱走。追っ手の攻撃で負傷し、逃げ延びた神居島で倒れていたところを鉄兵にかくまわれるが、鉄兵は「華蓮はどこだ」というメタルフェイスの尋問に反抗したことで瀕死の重傷を負わされる。追っ手が去ったところで華蓮は鉄兵を見捨てて逃げようとするが、彼の中に「輝き」を見出し、鉄兵に輸血を行い救出、互いに命の恩人となる。その後は鉄兵の師匠となって戦闘術や機械工学を教え、自身の製作したメサイヤ・フィストを授けた。三節棍状の武器「トリプル・ロッド」を使い、その連撃「スピニング・サンダーボルト」が必殺技。
四霊将(しれいしょう)
機械皇国の中央部「エリア」の東西南北を守護する、最強を誇ったといわれる四人の戦士達。中国の四霊獣をモチーフとしたB'Tを与えられており、そのB'Tは「霊獣」とも呼ばれている。
- 鳳(フォウ)ラフィーネ(CV:一条和矢、幼少期は平松晶子)
南の霊将。階級は中尉。額のビンディーと長髪の金髪が特徴。教会で華梨上等兵と共に戦災孤児達を集めて養い、生きる喜びと神の教えを説いている。バイオリンの弓の形をした「フューネラル・ボウ」が武器で、ここから電撃を放つことも出来るほか、普通の弓としてバイオリンを奏でることも出来る。
ジュテーム「どなたですか『鳳様のスーパーKY演奏タイム 』なんてタグを作ったのは」
- ロン(CV:藤原啓治)
東の霊将。階級は中佐。カンフー服と長髪の黒髪が特徴。戦災孤児だった自分を救ってくれた機械皇帝と皇国に対し、強い忠誠を誓っている。竜の装飾が施された槍「サンダーランス(雷槍)」が武器で、素手での戦闘能力も非情に高い。 - 北斗(ホクト)(CV:佐久田修)
北の霊将にしてマスタードックと呼ばれる名医。身につけた白衣と栗色の髪が特徴。傷ついた相手を見捨てられない性格で、人間でも機械でも治してしまう非情に高い医療技術を持つ。杖状の武器(名称不明)を持っているものの、基本的に争いは好まない。
機械皇国
世界征服を目論む究極の科学力を持った悪の組織。世界中の天才科学者を拉致し、忠誠を誓わせ働かせている。皇国の中心部「エリア」はゴビ砂漠に位置しており、周囲には「ポイント」と呼ばれる要塞が星座のように配置されている。
- メタルフェイス(CV:堀内賢雄)
機械皇国の中尉。名前の通り顔の左半分と左半身が機械(サイバネティック・ボディ)化されており、左腕は「サイバネティック・ランス」という伸縮自在の刃となる。冷酷で傲慢、好戦的な性格で、命令を無視して行動してしまうことも。5年前の華蓮の捜索中に鉄兵と遭遇、彼女の行方を話そうとしなかった鉄兵を切り捨てて致命傷を負わせるが、これが後にエックス復活のカギとなってしまうのであった。 - アラミス(CV:湯屋敦子)
機械皇国の少佐でメタルフェイスの上官。機械皇国の行く末を心から懸念しており、無尽蔵に生物の吸収とメタモルフォーゼを繰り返すラファエロの対策を得るために鋼太郎誘拐を命じた。誘拐の際に会場にいた10000人を抹殺するような残酷な面も見られるが、皇国や部下のことを思いやる上に立つ者らしい面も見られる。ちなみに女性である。ポロリもあるよ!
- ミーシャ(CV:折笠愛)
機械皇帝の代理人(エージェント)といわれる少年。ナーシャの双子の兄。幼い外見をしているが、実質的な皇国の最高権力者。念力を操ることが出来、相手を浮かせたり傷つけたりすることが出来る。気に入らない相手を虐殺したりアンダーヘルへ落としたりするような残酷な性格だが、妹のナーシャに対しては深い愛情を抱いている。 - ナーシャ(CV:氷上恭子)
機械皇帝の代理人(エージェント)といわれる少女。ミーシャの双子の妹。身体が弱いらしく一年のほとんどを眠って過ごしており、玉座に座っている時もほとんど目を閉じてまどろんでいる。いつも熊さんのぬいぐるみを抱いている。ミーシャが非道な行いを続けることに、ナーシャは心を痛めている。 - リュカオン部隊
頭部と胸部を覆うバトルギアに身を包んだ一般兵。皇国内で通信や指令を行う兵士にも頭部をバトルギアで覆った者がおり、見た目はまるでロボットである。皇国に敵対する者に集団で襲いかかり、鉄平達の前に幾度となく現れる。強敵の討伐に大勢を派遣されて全滅させられたり、討伐指令の確認をうるさがられてミーシャに頭を吹き飛ばされたりと、苦労も絶えなかったりする人たちである。
「しかしミーシャ様、ほうれん草と確認は大切ですぞ」
- 華梨(カリン)(CV:横山智佐)
機械皇国の上等兵。鳳の部下であり、彼と共に教会で子供達を養っている。作中では珍しい女性のドナーであり、彼女も自分のリュカオンを持っている。 - キャプテン・フック(CV:松尾まつお)
砂漠のポイントの守護者。名前の通り海賊の格好をしている。戦車すら釣り上げる釣り竿状の武器「ハンギング・ロッド」を使い、これで最大100万ボルトの電流を流す「エレクトリック・ライン」を必殺技とする。 - カミーラ(CV:山口勝平)
花園のポイントの守護者。蝶のように華やかな衣装をした美男子で、幻術の使い手。武器は剣。エビル・フラワーを管理できる唯一の人間で、ナーシャに花を献上している。 - 機械皇帝
機械皇国を統べる皇帝。戦災孤児達に救いの手を差し伸べ、困窮する者には必要な物資を、身体の一部を失った者には生身同様の機械の身体を与えている。B'Tの設計を考案するのも彼であり、皇帝から送られる設計図と基本材料を元にB'Tは作られている。「戦争のない真の平和をつくるため、世界を統一する」ということを理想としており、不可能を可能にするようなその力から、皇国の人間からは神としてあがめられている。しかしミーシャとナーシャを代理人として置いていて人前に出ることはないため、彼に出会った者は限られているらしい。
B'T(ビート)
機械皇国によって生み出された機械生命体。自らの頭脳(BRAIN)で思考し、人間の血液(BLOOD)で作動し、芸術的ともいえる華麗さ(BRAVERY)をもった、史上類のない究極の戦士(BATTLER)。それらの特性を総称(TOTAL)し、B'T(ビート)と呼ばれている。B'Tは「最初に血液を提供した人間(ドナー)に対してのみ忠誠を誓う」「性別がある」「モチーフとなった生物に応じた能力を持つ」「ガードシステムと呼ばれる搭乗者や自身を保護する特殊なバリア機能を持つ」といった共通の特徴がある。
※B'Tを呼ぶ際は「B'T○○」と名前の前に「B'T」をつけることが多いですが、ここでは簡略化のため名前のみを掲載させていただきます。
- エックス(CV:堀川仁)
華蓮をドナーとする、伝説のB'Tと呼ばれた西の霊獣。モチーフは麒麟。5年前に華蓮と共に脱走した際に追っ手の攻撃で負傷し捕らえられ、スクラップとして廃棄されてしまったが、鉄兵の流した血を浴びて蘇る(これは鉄兵が華蓮から輸血を受け、彼の体内に華蓮の血が流れていたため)
当初は鉄兵と新しいドナーと認めず反抗的な態度をとるが、鉄兵の強い意志を見て心を開き始める。ドナーと一心同体になったときに放たれる「五色の燐光」は、あらゆるものを消滅させるという。鉄兵が応急処置として左前脚に巻いてくれたバンダナがトレードマーク。
余談だが、カラー絵ではピンク色のエックスの絵があるが、これは初期の彼の色が「青みがかった白」ではなくピンク色だったかららしい。 - ジュテーム(CV:百々麻子)
鳳をドナーとする西の霊獣。モチーフは鳳凰。ソニック攻撃を得意としており、必殺技の「デッドリー・キャロル」は人間に聞こえない特殊な波長でB'Tの頭脳回路を破壊する恐るべき技。格下のB'Tではジュテームの姿を見ただけで怯んでしまうものもいる。 - 雷童(ライドウ)(CV:水野龍司)
ロンをドナーとする東の霊獣。モチーフは龍。一機で複数のB'Tを粉砕するほどの高い戦闘力とスピードを誇っており、復活したばかりのエックスをかすっただけで撃墜してしまうほど。口から電撃を放つ「サンダー・キャノン」が必殺技。 - マックス(CV:高島雅羅)
北斗をドナーとする北の霊獣。モチーフは亀。巨大なB'Tであり、体内には医療設備を備えたコクピットがある。皇国一のガードシステムを備えるほか、体表から衝撃波を発して周囲のものを吹き飛ばす攻撃も持つ。 - ローズマリー(CV:沢海陽子)
蜂をモチーフとした巨大なB'T。頭部には複数の人間が搭乗できるコクピットがある。吸った者を数秒で死に至らしめる甘い香りの毒ガス「フローリアン・フォッグ」を放つ。 - マドンナ(CV:渡辺美佐)
メタルフェイスとドナーとするB'T。翼の生えた角竜のような外見をしている。巨体に違わぬパワーとスピードを兼ね備えた重量級のB'Tで、肉弾戦が得意。アニメ版では火球を吐き出す攻撃も行った。 - グルピー(CV:長島雄一)
キャプテン・フックをドナーとするB'T。モチーフは環形動物。普段は触覚状の一つ目だけを地上に出しているが、獲物を狙うときにその巨大な姿を砂中から現し、戦車ですら一飲みにしてしまう。機械皇国の超スチールすら溶かす強力な胃液を持つ。 - ミラージュ(CV:岡本麻弥)
カミーラをドナーとするB'T。モチーフは蝶。カミーラ同様エビル・フラワーの花粉の効果を受けない数少ない存在。羽から巻き起こす突風攻撃「デス・フラップ」が必殺技。 - リュカオン
皇国の下士官以下が乗るB'T。翼の生えたサーベルタイガーのような外見をしている。胸部からミサイルを発射するほか、アニメ版ではワイヤーを射出する攻撃も行った。言葉を話すことは出来ないが、他のB'T同様ドナーへの忠誠心は強い。 - ラファエロ
究極のB'Tと呼ばれる謎のB'T。皇国の至宝としてエリア中心部で育成されている。機械でありながら日々メタモルフォーゼを繰り返して姿形を変えており、初登場時は「表面に無数のドクロが浮かび上がった、触手が生えた大樹」というべき不気味な外見をしている。あらゆるものを取り込んでその特性を吸収するという性質を備えており、エサとして与えられた様々な生物を体から触手を伸ばして捕食してしまう。そして成長を繰り返すうち、自らを育成してくれる皇国の人間までも襲うようになってしまった。アニメ版の「食事」シーンがトラウマになったのは初版作成者だけではないだろう。
主な用語
- アンダーヘル:機械皇国の地下7000mにあるこの世の地獄と呼ばれる地下採掘場。ミーシャの怒りに触れた者達が落とされる。現場監督のマルチェロと助手のアミーゴの下、ここの人間達はネズミやノミ、シラミ以下の扱いを受けて強制労働させられている。
- エビル・フラワー:カミーラの守護する花園のポイントに咲く魔の花。吸った者は強力な幻覚を受けて苦しんでしまう、恐ろしい花粉を持っている。逆に治癒効果を持ったエビル・フラワーもあり、ナーシャはカミーラから献上されたその花々の効果によって容態を保っている。
- 神居島(かむいとう):高宮兄弟の故郷である北海道北方にある孤島。5年前にオホーツク海に落下した華蓮はここへ逃げ延び、鉄兵と出会った。
- バトル・ギア:B'Tに乗ったドナーが「バトルギア・オン」のかけ声と共に装着する戦闘スーツ。アニメ版では毎回鉄平のバトル・ギア装着シーンが流れ、さながらヒーローの変身シーンのようなかっこよさ。
アニメ版について
BS系にてアニメ版が1996年から放送された。かっこいいOPテーマ、声優陣によって命を吹き込まれたキャラクター達、鉄平とエックスの「バトルギア!オン!」のシャウトと共に流れるバトル・ギア装着シーン、アニメによって激しさが更に増した戦闘シーン、アニメオリジナルの展開やキャラ・B'T、そして原作以上にツンデレなエックス...とアニメ版ならではの見所も多かったのだが、突如打ち切りとなったらしく、原作中盤に当たるところで放送終了となってしまった。
その後、テレビアニメ版の最終話以降の展開を描いたOVA版が「B'TX NEO(ビート・エックス ネオ)」として1997年に発売。原作と並行しての発売となったためか、アニメオリジナルの展開となっている。こちらのOP・EDテーマは遠藤正明氏が歌っているが、偶然なのか同年遠藤氏は檜山氏の出演する「勇者王ガオガイガー」の主題歌も歌っている。EDムービーでは全裸の華蓮さんのお尻まで含めた後ろ姿が映っている。
なお、最終話の挿入歌である畑亜貴氏の「瞳は幾千の窓」はOVA版サントラ以外に、市場にある畑氏のアルバムにも収録されている。
※以下、原作・アニメ双方のネタバレ及びOVA版に対する初版作成者の主観が入っているため反転表記とさせていただきます。ネガティブな発言が含まれることをお許しください。
OVA版の最後は「ラファエロと鉄兵達の戦いの物語を、華梨が子供達に書物で読み聞かせる」というもので、戦いの最後の様子は「『太陽のかけら』を手にした鉄兵がラファエロに鉄拳を喰らわせ、ラファエロにひびが入り大きな光に包まれる」ところまでしか描かれておらず、戦いの結末はどうなったのかはっきりと語られていない。また、消化されなかった伏線(「バラの騎士ローズナイト」としてのアラミスの使命や、結局登場しなかった機械皇帝の正体)もあり、更に原作で消息不明になった四霊将どころか主役の高宮兄弟の消息も不明と、すっきりしない終わり方を迎えている。原作連載中の作品だったために仕方ない面もあるのかもしれないが、アニメ版も魅力の多い作品であったため、非常にもったいなく感じられてしまう。
現在ではTVアニメ版がdアニメストアにて配信中。
もちろんニコニコ支店でも視聴可能である。
関連動画
外部リンク
関連項目
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- 0pt