WBC2017とは、2017年3月6日から3月22日に行われた野球の国別世界一を決める世界選手権大会である。
概要
出場チーム | |
---|---|
A組 | 韓国 / オランダ チャイニーズタイペイ / イスラエル |
B組 | 日本 / キューバ 中国 / オーストラリア |
C組 | アメリカ合衆国 / ドミニカ共和国 カナダ / コロンビア |
D組 | ベネズエラ / プエルトリコ イタリア / メキシコ |
ワールドベースボールクラシックの第4回目の大会。
前年の2016年に第3回から引き続き予選ラウンドが4ラウンド開催。WBC2013にて予選免除となった12ヶ国を含め、16ヶ国によって争われた。この大会で観客動員数が初めて100万人を突破した。
日本は2013WBC後に就任した小久保裕紀監督の下、2大会ぶりの優勝を目指した。
しかし、日本人メジャーリーガーは青木宣親以外出場辞退。本大会全体の目玉として注目された大谷翔平や、正捕手として目されていた嶋基宏もロースター発表後に出場辞退を表明した。特に大谷の辞退は、小久保監督に辞退の連絡が行き届いていないなど、多くの混乱・憶測を招く事態となった。メンバー選出では、前回大会からは野手陣の若返り化が進んだ。NPB/MLB史上初、2年連続トリプルスリーを達成した山田哲人や2016年本塁打王と打点王の二冠を獲得した筒香嘉智、2015年にシーズン最多安打記録を更新した秋山翔吾、さらには広島の25年ぶりの優勝に貢献した田中広輔、菊池涼介、鈴木誠也、巨人の正捕手に定着した小林誠司など、若い野手陣が代表に選出された。
本大会前の強化試合を初めて負け越すなど、2年前の秋に開催された2015WBSCプレミア12での失敗もあり、今大会は史上初の2次ラウンド敗退ないし1次ラウンドでの敗退もあるのではないかとの声も上がっていた。しかし、1次ラウンドは史上初の全勝、2次ラウンドも全勝を決め、6戦全勝にて決勝ラウンドに進出する。
結果
準決勝・決勝
準決勝 | 決勝 | 優勝 |
---|---|---|
オランダ 3 | プエルトリコ 0 | アメリカ合衆国 |
プエルトリコ 4 | ||
日本 1 | アメリカ合衆国 8 | |
アメリカ合衆国 2 |
準決勝は2大会ぶりの顔合わせとなった日本対アメリカだったが、日本打線が菊池涼介のソロホームランのみ沈黙し1-2で敗戦。日本は2大会連続でベスト4敗退となり、アメリカは初めて決勝に進出した。
オランダ対プエルトリコは延長11回に及ぶ死闘となったが、プエルトリコがタイブレークを制して決勝に進出。
決勝戦ではアメリカは8点を取ったのに対してプエルトリコは0点、これがプエルトリコ唯一の敗戦となり、アメリカが初優勝を飾った。
日本のスコア
リーグ | 日付 | 対戦相手 | 結果 | 場所 |
---|---|---|---|---|
1次ラウンド | 3月7日 | キューバ | ○11-6 | 東京ドーム |
3月8日 | オーストラリア | ○4-1 | ||
3月10日 | 中国 | ○7-1 | ||
2次ラウンド | 3月8日 | オランダ | ○8-6 | 東京ドーム |
3月10日 | キューバ | ○8-5 | ||
3月12日 | イスラエル | ○8-3 | ||
準決勝 | 3月17日 | アメリカ合衆国 | ●1-2 | ドジャー・スタジアム |
出来事
「指名投手枠」の導入
この大会からは「指名投手枠」が導入された。MLB所属の投手はチーム側から契約上シーズン前に投球制限が掛けられている都合上、1次ラウンドから決勝まで帯同し、国を背負った戦いの中全力投球の登板を重ねる際の故障リスクを考えた場合、辞退を要望されるケースが多い。ただ、例えば「決勝ラウンドの準決勝だけなら登板OK」という条件付きの招集ならばOKという妥協案を球団側から引き出し、大会の盛り上げの一助になればという思惑もあってか、導入された。
- 各チームは本登録メンバー28名のほか、「予備登録投手」10名を登録する。
- 28名中、1名ないし2名を「指名投手枠」とし、「予備登録投手」との入れ替えを可能にする。
- 入れ替えは次のラウンドに進出したタイミングで行い、それぞれ2名まで可能。
他にも故障した場合はリスト外からも選手の入れ替えができた。日本チームの場合、小久保監督は「制度を利用する気はない」と明言。一応システム上、平野佳寿が指名投手枠になっており、大瀬良大地、澤村拓一、山崎康晃ら10名が予備登録投手として登録されていた。
野球新興国の躍進と強豪国の落日
今大会も、予選を勝ち上がり進出してきた初出場国が大会に大きなインパクトを残した。
イスラエルは、前回大会出場のブラジルを予選で下し出場。両親がユダヤ人などのユダヤ系マイナーリーガーで構成されたチームは、WBC全体の開幕戦となった韓国戦を2-1の接戦で制すと、国内のプロ・アマ組織の対立でボイコット者が続出したものの前回大会2次ラウンド進出のチャイニーズ・タイペイ(台湾)やベスト4のオランダ相手に3連勝。さらに2次ラウンド開幕戦のキューバ戦も勝利し、破竹の4連勝を飾るなど大会に旋風を巻き起こした。その後オランダ、日本に敗れ2次ラウンド敗退となったが、クローザー役を主に務めていたジョシュ・ザイドがオールWBCチームに選出された。
コロンビアは、パナマやスペインと言った本大会出場経験のある国を下し出場。ドミニカ共和国、アメリカ、カナダと同じ組に入れられる無理ゲーを強いられたが、あにはからんや、カナダ相手に大会初勝利を飾る。初戦のアメリカ戦と、最終戦のドミニカ共和国戦ではそれぞれ延長にもつれ込む大熱戦を繰り広げ、敗れはしたものの次回大会の予選免除を見事勝ち取った。
一方で、これまで「強豪国」と目されていた国の不振も目立った。
その最たる例が韓国。前回大会はまさかの1次ラウンド敗退となったものの、直近のプロ参加国際大会であるプレミア12では初代王者に輝き、今回は韓国初のドーム球場・高尺スカイドームを引っさげ1次ラウンドの開催権を取得。秋信守や姜正浩などメジャーリーガーは呉昇桓以外(直前でKBOに復帰した李大浩も居るが)辞退という不安要素はあったもののオランダとともに2次ラウンド進出は確実なものと思われてきた。しかし、初戦のイスラエル戦でまさかの敗戦を喫すると、続くオランダ戦にも敗れ、早々に2大会連続の1次ラウンド敗退が決定。最終戦でライバル・台湾と予選行きを賭けた一戦をするハメになり、なんとか延長で勝ちをもぎ取ったものの、ただでさえ大統領のスキャンダルで揉めに揉めている国内を活気付けることはできなかった(尤も勝とうが勝てまいが、正直WBCどころではなかったようだが)。
失点率をめぐる順位の混乱
1次ラウンドD組(メキシコ・ハリスコ)にて、「失点率」をめぐり順位の確定が二転三転する事態が発生した。
D組はプエルトリコが3勝0敗で1位通過。残り1枠(2位通過)を、イタリア・ベネズエラ・メキシコの3カ国が1勝2敗同士で争う形になった。この場合、今大会のルールではこのように順位を定める。
3チームが1勝2敗で並んだ場合は、当該3チーム間の対戦にて1イニングあたりの失点率が一番高いチームを最下位とし、残り2チームにてプレーオフを実施する。なお、イニング数には不完全なイニング(partial innings)も含める。
さて試合前、メキシコのエドガー・ゴンザレス監督は、「ベネズエラに2点差以上つければプレーオフに進出できる」と大会側から伝えられていた。試合は11-9でメキシコがベネズエラに勝利し、その情報が伝えられていたメキシコナインは大喜び。誰もが起死回生の状況からプレーオフに進出し、イタリアと最後の1枠を争う…はずだった。
国 | イニング数 | 失点数 | 失点率(失点数/イニング数) |
---|---|---|---|
イタリア | 19 | 20 | 1.05 |
メキシコ | 18 | 19 | 1.06 |
ベネズエラ | 19 | 21 | 1.11 |
ところが、その30分後、WBC公式サイトは明日の試合予定にあったイタリア対メキシコのプレーオフをTBD(未定)に変更、そしてイタリア対ベネズエラに変更 されたのであった。当然メキシコ側は困惑、激怒する。「なぜなんだ。お前らがそう言ったから俺達が進出じゃないのか」と。
実は大会側が失点率の計算をミスっていたのだ。というのも、D組のすでに行われたイタリア対メキシコ戦で、メキシコは9回裏に4点リードをひっくり返されてサヨナラ負けしているのだが、その9回裏の間アウトを一つも取れていない。これを野球の記録上に当てはめると、メキシコのイタリア戦で獲得したアウトの数は24であり、つまり3アウトで割ると8イニング。正確には8回と0/3イニングなのである。
ここで「不完全なイニング(partial innings)も含める」の問題が発生する。この「不完全なイニング」は、「イニング途中の1アウト(○回1/3)や2アウト(○回2/3)」であり、「イニング途中の0アウト(○回0/3)ではない」。なぜなら、8回終了して9回が始まる前と同じ状況も、9回がスタートしてアウトが1つも取れていない状態も、同じ8回0/3だからだ。
よって、メキシコのイニング数が1イニング減ることとなり、失点率の計算はこうなる。
国 | イニング数 | 失点数 | 失点率(失点数/イニング数) |
---|---|---|---|
イタリア | 19 | 20 | 1.05 |
メキシコ | 17 | 19 | 1.12 |
ベネズエラ | 19 | 21 | 1.11 |
もちろん、メキシコにとって到底納得できない話だ。エドガー・ゴンザレス監督は5回もWBC運営に電話をかけたがなしのつぶて。エドガーの弟で主将のエイドリアン・ゴンザレス(LAD)は「WBCには二度と出ない。クソみたいな大会からおさらばできて清々している。運営はリトルリーグ・ワールドシリーズ以下」とブチギレ。自身のtwitterアカウントからWBC公式アカウントに怒りのリプライを飛ばしまくる事態になった。
さらにこの後行われたプレーオフをベネズエラが制して2次ラウンドに進み、メキシコは予選行きの憂き目にあってしまったこともあって、好ゲームの続出した大会に水を差す出来事となってしまった。
観客によるホームラン性飛球のキャッチ
本大会では2試合にて「観客によるホームラン性飛球のキャッチ」が発生した。
1試合目は1次ラウンドプールB(東京)の日本対キューバ戦。4回に日本・山田哲人がレフトスタンドにホームラン性の当たりを飛ばすが、フェンス手前でグラブを伸ばした少年に取られ、ホームランからビデオ判定を経て二塁打に訂正される。松田宣浩の生還が認められ1点は入ったが、ボールをキャッチした少年がネット上で炎上する騒ぎとなった。山田はこの件を受け、「気にしていない。またグラブを持って応援しに来てほしい」とコメントした。
2試合目は2次ラウンドプールF(サンディエゴ)のプエルトリコ対ドミニカ戦。2回、ドミニカのネルソン・クルーズがプエルトリコ先発、オーランド・ロマンからセンター最深部へ飛球を放つ。これをフェンス手前に手を伸ばした男性の二の腕に当たり、そのまま捕球。ビデオ判定に持ち込まれ、結果本塁打として認められた。さらにこの試合はこれにとどまらず、4回にプエルトリコのエディ・ロサリオが放った打球が同じくセンター最深部へ飛んでいき、ワンバウンドにて手を伸ばした観客に捕球され、エンタイトルツーベースとなった。なんとこの打球を捕球した男性は、2回にクルーズの本塁打をキャッチした男性と同一人物。単純計算にて32万4900分の1という奇跡を起こした男性は、彼の息子とゲットしたボールを1つずつ手にして、記念撮影をしたそうだ(出典)。
大百科に記事のある出場選手一覧
ア行 | カ行 | サ行 |
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タ行 | ナ行 | ハ行 |
マ行 | ヤ行 | ラ行 |
ワ行 | ||
|
表彰
個人賞
名前 | 国 | 成績 | 所属球団 | |
---|---|---|---|---|
最多勝 | ダニー・ダフィー セス・ルーゴ |
アメリカ合衆国 プエルトリコ |
2勝 | カンザスシティ・ロイヤルズ ニューヨーク・メッツ |
最多投球回 | 菅野智之 | 日本 | 15回 | 読売ジャイアンツ |
最多奪三振 | マーカス・ストローマン | アメリカ合衆国 | 15個 | トロント・ブルージェイズ |
最多安打 | ウラディミール・バレンティン | オランダ | 16安打 | 東京ヤクルトスワローズ |
最多本塁打 | ウラディミール・バレンティン | オランダ | 4本 | 東京ヤクルトスワローズ |
最多盗塁 | ハビアー・バエズ | プエルトリコ | 4盗塁 | シカゴ・カブス |
関連項目
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