ファインニードル(Fine Needle)とは、2013年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
史上5頭目の春秋スプリント制覇を果たしたスプリンターにして、モハメド殿下(ゴドルフィン)所有馬として初の自前国内産GⅠ馬である。
主な勝ち鞍
2017年:セントウルS(GⅡ)
2018年:高松宮記念(GⅠ)、スプリンターズS(GⅠ)、セントウルS(GⅡ)、シルクロードS(GⅢ)
本馬について語る前に、まずオーナーであるゴドルフィンと、生産牧場であるダーレー・ジャパン・ファームについての説明が必要だろう。
ゴドルフィンは、ドバイの王族マクトゥーム家のドバイ首長、シェイク・モハメド殿下が中心となっている世界的な馬主。ロイヤルブルーの勝負服でおなじみである。日本ではステイゴールドにボコられたことが一番有名かもしれないが、ドバイミレニアムやファンタスティックライト、エレクトロキューショニスト、スラマニといった世界的名馬をいくつも所有している。
ゴドルフィンは自ら生産部門を持ち世界中で馬産を行っているが、その日本部門が日高町のダーレー・ジャパン・ファーム。当初は日本の牧場に繁殖牝馬を預託していたが、日本の牧場を買収して国内生産を開始し、2005年産(2007年デビュー)から生産馬が国内で走っている。
ダーレー・ジャパンは2003年から地方競馬の馬主資格を取得しフリオーソなどを所有していた。中央の馬主資格は現地の生産者の反発などもあってなかなか申請が通らなかったが、2007年にようやく権利を獲得し、近藤利一からアドマイヤムーンを40億円で譲渡されるなどしたが、何かあったようで同年秋にはあっさり権利を手放す。
その後、2009年にモハメド殿下が個人馬主として「H.H.シェイク・モハメド」名義で馬主資格を取得。モハメド殿下の勝負服は海老茶・白袖のものだったが、2018年に名義が「ゴドルフィン」に統一され、ロイヤルブルーの勝負服に切り替わった。
本馬の説明に戻る。父アドマイヤムーン、母*ニードルクラフト、母父Mark of Esteemという血統。
父は2007年のドバイデューティーフリー、宝塚記念、ジャパンカップを制し年度代表馬に輝いた名馬。是前述の通り、2007年夏に「アドマイヤ」冠名の近藤利一オーナーから、40億円という超高額でモハメド殿下に権利が譲渡された。引退後、ダーレー・ジャパン・ファームで種牡馬入りした。
母はアイルランド産の輸入繁殖牝馬。ダーレー生産のモハメド殿下の所有馬で、欧州でフランスGⅢクロエ賞、イタリアGⅢセルジオクマニ賞と重賞を2勝している。
母父マークオブエスティームはアイルランド産のゴドルフィン所有馬で、1996年のイギリス2000ギニーとクイーンエリザベス2世Sの勝ち馬。
というわけで、2013年4月26日に日高町のダーレー・ジャパン・ファームで生まれた彼は、父も母も母父もゴドルフィン(モハメド殿下)の所有馬という、ゴリゴリのゴドルフィン血統である。
なお、ファインモーションやファイングレイン、ファインルージュとは特に関係はない。
栗東の高橋義忠厩舎に入厩。2018年初めまでは馬主名義はモハメド殿下で、勝負服も海老茶・白袖である。2015年9月19日、阪神芝1400mの新馬戦でデビュー。後方から大外を追い込んだものの4着。その後、11月の3戦目、京都芝1400mの未勝利戦を直線で抜け出して後続の追撃を凌ぎきり勝ち抜ける。
年末の500万下を2着のあと、明けて3歳となり初重賞としてシンザン記念(GⅢ)に挑んだが、積極的に先行したものの直線で沈み10着。これで陣営はマイルをすっぱり諦め、以降は1400m以下の短距離戦に的を絞ることとなる。
しかしこの後はなかなかトントン拍子には勝ち上がれず、4歳春までは条件戦での戦いが続く。500万下は4着→4着→3着として5月の5戦目で勝ち抜け。夏場は休んで1000万下は2戦目で10月の芦屋川特別を勝ち抜けたが、1600万下も脱出には5戦を要し、4歳2月にアクアマリンSを勝ってオープン入り。その後のオープン特別2戦を敗れて4歳夏の降級となり、降級直後の水無月Sを勝ってオープンに復帰する。
1年半ぶりの重賞挑戦となった北九州記念(GⅢ)では1番人気に支持されたが、直線で前が壁になりダイアナヘイローの5着。それでも続くセントウルS(GⅡ)も1番人気に支持され、3番手で先行すると直線で前の狭いところを抜け出して完勝。重賞初制覇を飾った。
この勝利でスプリンターズS(GⅠ)に6番人気で乗りこんだが、大外回しで下がってしまい直線でも何の見せ場もなく12着に惨敗。4歳シーズンを終える。
5歳となり、鞍上に川田将雅を迎えてシルクロードS(GⅢ)で始動。ここは4番人気に留まったが、逃げるセイウンコウセイを真後ろで見る位置で進め、直線でかわして押し切り2馬身差で完勝。
この勝利のあと、3月17日から馬主名義が「ゴドルフィン」に変わることになり、勝負服も世界のレースでおなじみのロイヤルブルーに変更となった。
青い勝負服となって初のレースとなる高松宮記念(GⅠ)。レッドファルクスに次ぐ2番人気に支持されたファインニードルは、道中は中団の外目に構え、直線で大外を追い込む。先に抜け出したレッツゴードンキをハナ差かわしたところがゴール板だった。
モハメド殿下は(アドマイヤムーンを除くと)個人名義時代から34度目のJRA・GⅠ挑戦で待望の初制覇。高橋師も開業8年目でGⅠ初制覇となった。もちろん、ダーレー・ジャパン・ファーム産のモハメド殿下所有馬としてもGⅠ初制覇である(同牧場産のGⅠ馬自体は2010年NHKマイルカップを勝ったダノンシャンティがいた)。
この勝利で香港のチェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)に日本代表として乗りこんだが、アイヴィクトリー、ミスタースタニング、ビートザクロックと香港の強豪3頭に全く歯が立たず離された4着に敗れる。
気を取り直して休養明け、秋はセントウルS(GⅡ)から始動。58kgも重馬場もものともせず、枠なりに外を回して中団から直線一気に差し切り完勝。
そしてスプリンターズS(GⅠ)。台風が近付く中での稍重での開催となったが、今回も中団から外を回して追い込み、直線で抜け出したラブカンプーを最後クビ差かわしてゴール板に飛び込んだ。
フラワーパーク、トロットスター、ローレルゲレイロ、ロードカナロアに次ぐ史上5頭目の同一年春秋スプリントGⅠ制覇を達成。スプリント重賞年間4勝は史上初であった。ちなみにファインニードルは2.8倍の1番人気だったが、2着ラブカンプーは11番人気、3着にも13番人気ラインスピリットが突っ込み、3連単は20万9620円とそこそこ波乱の決着であった。
というわけで国内4戦無敗、ロードカナロア以来の春秋スプリント制覇の勲章を掲げて年末の香港スプリント(GⅠ)に挑んだが、発走時に他の馬がゲート入りを嫌がったためにゲート内で待たされて集中力が切れたらしく、中団から外を回して直線勝負という勝ちパターンに持ち込みながら直線で伸びず8着惨敗。
高橋師は「また来年頑張りたい」と6歳となる2019年も現役続行のつもりだったが、年が明けた1月、2018年度のJRA賞最優秀短距離馬受賞が発表されたその日に現役引退が発表される。「国内ではともかく世界では厳しいだろう」というモハメド殿下の意向だったようで、そのままダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで種牡馬入りとなった。
通算28戦10勝、GⅠ2勝を含む重賞5勝。やや遅咲きとはいえ充分に名スプリンターと呼ぶに値する戦績だが、競馬ファンからの評価はというと……おおむね「地味」の一言である。ロードカナロアが世界で大活躍した後だっただけに、海外で勝てなかったのが痛かった。2018年の国内4戦無敗という戦績も、この時期の短距離戦線はスター不在でライバルらしいライバルはおらず、倒した相手にビッグネームが乏しい。ゴドルフィンの初の自前国内産GⅠ馬というのも、日本人が応援したくなる要素とは言い難いだろう。強いんだけどアイドル性にもドラマ性にもネタ性にもいまいち欠ける。なんというかそんな馬であった。
2022年から産駒がデビュー。初年度産駒では2022年のカンナS(OP)を勝ったウメムスビが同年の朝日杯FSで産駒GⅠ初出走を果たし、クルゼイロドスルが2023年のジュニアカップ(L)を勝利。2世代目のカルチャーデイが2023年のファンタジーSを勝って重賞初勝利としており、まずまずの滑り出しを見せている。
サンデーサイレンスの4×3が作りやすい血統背景だけに、産駒の活躍を期待したいところである。
| アドマイヤムーン 2003 鹿毛 |
*エンドスウィープ 1991 鹿毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
| File | |||
| Broom Dance | Dance Spell | ||
| Witching Hour | |||
| マイケイティーズ 1998 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo | |
| Wishing Well | |||
| *ケイティーズファースト | Kris | ||
| Katies | |||
| *ニードルクラフト 2002 栗毛 FNo.10-c |
Mark of Esteem 1993 鹿毛 |
Darshaan | Shirley Heights |
| Delsy | |||
| Homage | Ajdal | ||
| Home Love | |||
| Sharp Point 1992 栗毛 |
*ロイヤルアカデミーII | Nijinsky II | |
| Crimson Saint | |||
| Nice Point | Sharpen Up | ||
| Alpine Niece |
クロス:Northern Dancer 5×5×5(9.38%)、Sharpen Up 4×5(9.38%)
掲示板
6 ななしのよっしん
2023/02/15(水) 13:56:48 ID: 9ihDGjP1iy
7 ななしのよっしん
2025/01/20(月) 22:33:47 ID: Khmz0+p4L4
最近の競走馬だったのにコメント少ない(記事作成も引退後)ってのはやっぱり地味な印象なんだな…?
8 ななしのよっしん
2025/11/07(金) 11:23:49 ID: MkpccvINv9
>>7
中長距離路線と比べると根本的に盛り上がりにくい短距離
ネットやSNSで競馬が盛り上がりだした21年以降あたりからちょうど一世代前
こういう要因を加味しても、イマイチ地味で語られにくいのは否めないと思う
最近の煮え切らないスプリントの情勢で、春秋制覇が再評価されかけてるところもあるけど、やっぱりここで名前挙げるなら種牡馬としての活躍で見返すしかないかも?
重賞馬はポツポツ輩出してるから頑張ってほしいなぁ
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/12(金) 12:00
最終更新:2025/12/12(金) 12:00
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