エアスピネルとは、2013年生まれの日本の元競走馬である。平成末から令和初頭を代表する、馬場も距離も年齢すらも問わないシルバーコレクター。
主な勝ち鞍
2015年(2歳):デイリー杯2歳ステークス(GII、芝1600m)
2017年(4歳):京都金杯(GIII、芝1600m)、富士ステークス(GIII、芝1600m)
2着になったレース
2015年(2歳):朝日杯フューチュリティステークス(GI、芝1600m)
2017年(4歳):マイルチャンピオンシップ(GI、芝1600m)、マイラーズカップ(GII、芝1600m)
2020年(7歳):プロキオンステークス(GIII、ダート1400m)
2021年(8歳):フェブラリーステークス(GI、ダート1600m)、さきたま杯(JpnII、ダート1400m)、武蔵野ステークス(GIII、ダート1600m)
3着になったレース
2016年(3歳):菊花賞(GI、芝3000m)、弥生賞(GII、芝2000m)
2017年(4歳):東京新聞杯(GIII、芝1600m)
2018年(5歳):マイラーズカップ(GII、芝1600m)
2020年(7歳):武蔵野ステークス(GIII、ダート1600m)
父キングカメハメハ、母エアメサイア、母父*サンデーサイレンス。父と母父は説明不要の大種牡馬。母はクラシックの冠に届かなかった母エアデジャヴーの思いを背負い、変則二冠馬ラインクラフトを下してみせた秋華賞馬。まごうことなき良血である。
おじにAJCCを勝ったエアシェイディがいる(なおこの馬、有馬記念で2年連続3着、そのほかにもGII・GIIIで2着8回3着3回と本馬に負けず劣らずのシルコレである。)半姉に産駒がジャンプの某看板漫画由来の名前ばっかりつけられているエアワンピース、全弟にチャレンジカップを勝ったエアウィンザーがいる。
2013年2月10日に社台ファームで誕生し、母・母母同様に「エア」の冠名で知られる(株)ラッキーフィールドの所有するところとなった。ついでにいうと本馬の兄妹も全員ラッキーフィールド所有の馬である。やがて母を管理した伊藤雄二厩舎で調教助手をしていた笹田和秀厩舎に入厩した。
主戦に母と同じく武豊を迎え、2015年9月の新馬戦でデビュー。馬っ気を出すなど集中していない感じもあったが1.9倍の圧倒的人気に応えて2馬身差の快勝。
山元トレセンへの放牧を経て、2戦目は重賞挑戦となるデイリー杯2歳ステークス。1番人気に推されていたのはデビュー3連勝、すでに小倉2歳ステークスで重賞制覇を果たしていたシュウジであった。本馬は新馬戦の勝ちっぷりが評価されそれに次ぐ2番人気。3番人気の馬でもう10倍台という2強体制であった。レースはシュウジが大外から逃げを打つのを外を回しながら4番手で追走。そして最終直線。ユタカが鞭を一発入れると一気に加速。粘るシュウジをあっさりと切り捨ててそのまま独走。2着に粘ったシュウジには3と1/2馬身差つけて見事に重賞制覇を果たした。
この結果を受け、3走目は当然というべきか朝日杯フューチュリティステークス。この時点で武豊が唯一勝てていない国内GIレースであり、この馬で勝てれば国内全GI制覇という空前絶後の偉業達成である。当然ながらファンも大きな期待をかけ、1.5倍のダントツ1番人気であった。
レースは中団外目を追走し、最終直線で馬群がギュッと固まったところを外目から抜け出し先頭に躍り出た。上がり3ハロン34.0秒の脚を繰りだしそのままゴールへと後続を引き離しにかかる…が、大外・しかも直線最後方からそれを上回る33.3秒の脚で強襲してくる一頭。中山の急坂を上がり切ったところでかわされ、最後は1馬身差つけられての2着。3着は4馬身ちぎったのに…
本馬を差し切った1着は5.9倍の2番人気、同じくキングカメハメハを父に持ち、エアメサイアを樫の舞台で差し切った「ジャパニーズスーパースター」シーザリオを母に持つリオンディーズであった。奇しくも自身が前走でシュウジを倒した時のように、重賞実績のある馬を新馬戦から乗り込んできた馬が打倒する形となった。
武豊はこれで朝日杯4度目の2着。結局武豊が朝日杯を初めて制したのはドウデュースと挑んだ2021年のことであり、その4年前にホープフルステークスと大阪杯がGI昇格したのでいまだに武豊はGI完全制覇を果たせていない。大阪杯は昇格初年度にキタサンブラックで勝ったけどね。
3歳となり当然のごとくクラシック戦線へ。初戦は伝統の前哨戦弥生賞。リオンディーズと再度の激突となった…が、リオンディーズが1番人気(1.9倍)なのに対して本馬は3番人気(4.2倍)。2番人気はここまで2連勝、前走若駒ステークスを快勝してきたのちにともに長く走り続けることになるマカヒキ(2.6倍)である。4番人気が20倍台なので3強決戦である。レースは先行するリオンディーズをがっちりとマークする…が、最終直線で鞭を入れても差が詰まらない。そして朝日杯のリオンディーズのごとく後方から突っ込んでくるマカヒキ(そのままリオンディーズも捕まえて初重賞制覇)にもあっさりかわされて3着。4着を5馬身ちぎっているのだから間違いなく世代上位、それは間違いないのだが前2頭には2馬身差をつけられていた。
そして1冠目皐月賞。1番人気はきさらぎ賞を制してやってきた、サトノ冠初のGI制覇の期待がかかるサトノダイヤモンド。2番人気はリオンディーズ、3番人気はマカヒキ。本馬は4番人気だが16.1倍と、上位3頭とは埋めがたい差がついてしまった。レースでは1000m58.4秒とハイペースになる中を先行し3角から進出。先頭を走るリオンディーズにいざ襲い掛からん…としたところでよれてきたリオンディーズと後ろから突っ込んできたサトノダイヤモンドに挟まれてしまう。何とか立て直したもののその外からカッ飛んできたのがディーマジェスティとマカヒキ、サトノダイヤモンドにも差し切られて5位入線。
リオンディーズは降着となったために本馬は4着に繰り上がったものの、どうにも釈然としない皐月賞であった。まあ玉突き的に斜行の影響受けたサトノダイヤモンドに先着を許してるのでどのみち感はあるが。
1か月後の2冠目日本ダービー。皐月賞の3強にディーマジェスティを加えた4強が人気を分け合う中、本馬はというとここまでの2戦で実力の底を見せたと思われたのか、トライアル覇者たちを下回る7番人気。世知辛い…。レースは再び先行し残り400mで一旦は先頭に立ったものの、残り100mで脚色が鈍りマカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティにあっという間に差されてしまう。リオンディーズには4度目にして初めて先着したものの、再びの4着に終わる。武豊は「生まれた年が悪かった」とコメントを残した。
秋初戦の神戸新聞杯ではサトノダイヤモンドに次ぐ2番人気に推され、レースでもサトノダイヤモンドをマークして後方から進めたものの直線で伸びず、サトノダイヤモンドとミッキーロケットの激闘の後ろで5着。
本番菊花賞。とはいえこのレース、キングカメハメハ産駒の戦績が振るわないことで知られていた。そして母のエアスピネルもGIを獲ったのは2000mの秋華賞、ダービーの最後の脚色から見ても3000mは長い、ということでマカヒキとリオンディーズがいないのに20倍台の6番人気。まあ上の人気に来たのは神戸新聞杯で負かされた4頭とディーマジェスティなんで妥当っちゃあ妥当か。レースはというと1000m59.9秒という菊花賞にしては速いペースの中を三度先行策。武豊の好騎乗でするりと最内に入って最終直線を迎えた…のだが、サトノ軍団悲願のGIへ突き進むサトノダイヤモンドに置き去りにされ、大外から飛んできたのちの天皇賞(春)馬レインボーラインにも惜しくも差されて3着。距離不安がささやかれる中でディーマジェスティに先着したあたり実力は見せたが、どうにも歯がゆい結果に終わったクラシックであった。
4歳となった本馬、王道路線は距離不適とみてマイル戦線へ。初戦は大人のお年玉こと京都金杯。ここではブラックスピネルの強襲を受けたものの、1.8倍の人気に応えて1年3か月ぶりの勝利。これで武豊は31年連続の重賞勝利となった。
しかし続く東京新聞杯では再び1.8倍の人気を集めたが、ハンデの影響かスローペースを刻んだブラックスピネルを捉えられず3着。マイラーズカップは人気を分け合ったイスラボニータに届かず、復活勝利を見届ける2着。本番安田記念は連覇を目指すロゴタイプがハイペースで飛ばす中を中団待機したが、残り2ハロンで痛恨の前壁。そこから切り返して上がり3ハロン2位の脚で猛追するも届かず、大外からそれを上回る脚を繰り出したサトノアラジンの5着。残り1ハロンで繰り出した脚はものすごいものがあり、あれをスムーズに出せていれば…といったところはあるが、距離を変えても相変わらずのシルコレであった。
次走は天皇賞(秋)を見据え、皐月賞以来となる2000m戦である札幌記念。鞍上は武豊が秋天ではキタサンブラックに乗ることが決定的だったことと北九州記念に行った(そしてダイアナヘイローで勝った)ことからクリストフ・ルメールに乗り替わり。エアグルーヴ以来深い中であったエア冠との仲たがいか!?などとざわつかせたこの乗り替わりであったが、やっぱり本馬に2000mは長いのかサクラアンプルールの5着。
天皇賞(秋)からマイルチャンピオンシップに目標を切り替え、鞍上にユタカが戻って前哨戦の富士ステークス。おなじみイスラボニータに加えペルシアンナイトやサトノアレスといった3歳馬の挑戦を受けたが、不良馬場で先行すると後続が伸びあぐねる中2着イスラボニータに2馬身差の快勝。
満を持してマイルチャンピオンシップ…なのだが主戦の武豊が直前で負傷。幸い1週間で復帰できたのだが万全を期しての乗り替わりが決定。短期免許で来ていたマイケル・ムーアが鞍上となった。(ちなみに武豊はジョースクリクトリで臨んだが最下位)レースでは中団後ろにつけ、直線で外にスムーズに持ち出すと末脚を爆発させて残り1ハロンで先頭に踊りでる!イスラボニータもサトノアラジンもまだ後方、勝った!GI制覇!!…と思いきや大外から強襲してきたのが前走下したペルシアンナイト!クビの上げ下げに持ち込まれたところがゴール板。結果…ハナ差差し切られて2着。鞍上のムーア曰く「手ごたえが良すぎて早く先頭に出すぎた」分、わずか20cm、悲願には届かなかった。
2018年は中山記念からの始動予定だったが骨膜炎で回避。改めてマイラーズカップで復帰するが見せ場なく3着。おまけに疲労が抜けず安田記念を回避。秋は福永祐一と新コンビを組んで富士ステークスからとなったが福永祐一前が壁!などもあって直線伸びず4着。本番マイルチャンピオンシップは残り1ハロンで沈み、初めて掲示板を外す10着大敗を喫す。2019年は8か月の長期休養を経て函館記念で復帰するが58kg背負わされたこともあり13着と大敗。おまけにまた長期休養を余儀なくされる。この結果を受けて笹田調教師は1つの決断を下した。ダート転向である。
1年の休養をへてプロキオンステークスで復帰。いくら実績馬だからってもう7歳、しかも初ダートはどうなんだ?ということで7番人気。しかしここを前年の南部杯馬サンライズノヴァの2着と激走。続くエルムステークスは掲示板外に沈むが武蔵野ステークスで再び3着と好走。2年ぶりのGIとなるチャンピオンズカップは12番人気7着に終わったが上がり3ハロンは3位タイと未だ衰えないところを見せる。
同期の菊花賞馬がJSになった2021年はフェブラリーステークスより始動。9番人気と低評価だったが馬群の中から上がり3ハロン最速の脚を伸ばした…が変わらない脚を3番手から繰り出した左回り千六の鬼カフェファラオには4分の3馬身及ばず、GI3度目の2着。なぜか出走した芝のマイラーズカップ(8着)を経て出走したさきたま杯では先行して粘るが、大外から襲い掛かったアルクトスに半馬身及ばず2着。夏は休んで慣れ親しんだマイルチャンピオンシップ…ではなくマイルチャンピオンシップ南部杯に出走。おりしも前日に同期の日本ダービー馬マカヒキが5年ぶりの勝利を挙げ、本馬も続け!となったかは定かではないが3番人気に推される。しかしながらアルクトスが連覇を決める後ろで6着。それでも諦めず武蔵野ステークスに出走するが再びの2着。続くチャンピオンズカップは11番人気9着に終わった。
マカヒキともども同期の子供と走ることになるんじゃないかとか言われ出した(なんならリオンディーズの初年度産駒はもう古馬になる年である)2022年も現役続行。しかしさすがに寄る年波からか精彩を欠き、前年2着のフェブラリーステークスはカフェファラオ連覇の後ろで9着。その後のかしわ記念は5着、続くさきたま杯は上がり3ハロン最速で4着と意地を見せたが秋のマイルチャンピオンシップ南部杯は9着、とうとうマカヒキもターフを去った後の武蔵野ステークスは10着。潮時として引退が決まった。マカヒキともどもさすがに同期の子供と戦うことはなかった。
通算34戦4勝 [4-7-5-18] 。GIには届かなかったが、頑健に戦い抜いた馬生であった。
引退後は結局GIには届かなかったことや父キンカメ母父SSという主流血統がすぎて相手となる繁殖牝馬がいないことにより種牡馬にはなれず、茨城県のうまんまパークで乗馬となった。2025年度からは功労馬繋養支援事業の対象馬となり、同地で同馬主の東海ステークス覇者エアアルマスや日本一大きなサラブレッド牝馬として知られたケウらとともに余生を過ごしている。
| キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
| Gold Digger | |||
| Miesque | Nureyev | ||
| Pasadoble | |||
| *マンファス 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン | *トライマイベスト | |
| Mill Princess | |||
| Pilot Bird | Blakeney | ||
| The Dancer | |||
| エアメサイア 2002 鹿毛 FNo.[4-r] |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Wishing Well | Understanding | ||
| Mountain Flower | |||
| エアデジャヴー 1993 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
| Lady Victoria | |||
| *アイドリームドアドリーム | Well Decorated | ||
| Hidden Trail | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Northern Dancer 5×5×4(12.50%)
強過ぎる同期たち
掲示板
6 ななしのよっしん
2025/08/08(金) 09:33:10 ID: 80gnSQsb3c
ロイスアンドロイスやエタリオウみたいな惜しくも勝てない系の馬の記事はごまんとあるから別に作って良い
7 ななしのよっしん
2025/08/08(金) 12:19:03 ID: HSdhNAlvlC
惜しくはないでしょ
毎回自分の力は出し切った上でそれを上回られてるんだし
8 ななしのよっしん
2025/08/15(金) 01:07:27 ID: 80gnSQsb3c
あと少しのところで勝てなかった
そのことを普通「惜しい」と表現するんじゃないか?
力を出し切れたかどうかはそれに関係ないと思うが
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/10(水) 12:00
最終更新:2025/12/10(水) 12:00
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