『全滅エンドを死に物狂いで回避した。パーティが病んだ。』とは、雨糸雀(アメリア)によるライトノベルである。
概要
本作品のジャンルは『曇らせ』。
理不尽展開が多い漫画作品へ転生したハッピーエンド主義者の主人公が不幸の存在を減らそうと奮闘するが、主人公ウォルカは物語の冒頭で無理を通す代償に大怪我を負っているため、大怪我を押してなお無理をするんじゃないかと心配するパーティメンバーが曇ってしまうのである。
小説投稿サイトのハーメルンにおいて2023年7月1日から連載中。カクヨムにおいても2024年5月1日から連載開始。「KADOKAWAの新文芸」レーベル(KADOKAWAホビー書籍編集部 編)より書籍化され、四六版サイズで2024年8月30日に第1巻が発売された。書籍版のイラストはkodamazonが担当している。書籍版ではウォルカやウォルカの剣の師たる祖父、リゼルアルテ他パーティメンバーの出会いや過去も大幅に加筆されている。2025年11月現在3巻まで刊行されている。
なお、サイバー犯罪者によるKADOKAWAへのサイバー攻撃の影響で作品紹介の特設サイトが開設出来なかったため、代替としてKADOKAWAのライトノベルのキュレーションサイトであるキミラノ内において作品紹介ページが開設された(のちにKADOKAWAサイト復旧に伴い特設サイト開設)。
書籍版1巻の帯にてコミカライズ企画が進行中と告知された。2巻発売発表に際してコミカライズが2025年中にカドコミ(旧:ComicWalker)で連載開始と告知され2025年11月26日から連載されている。漫画は縞が担当。
書籍版2巻発売につき、声優のボイスつきPVが全3編制作され、漫画情報の解禁が行われた。
このライトノベルがすごい!2025で単行本ノベルス部門13位、次にくるライトノベル大賞2024で単行本部門5位にランクインした。KADOKAWAの2024年の新文芸新作売り上げ1位作品となっている。このライトノベルがすごい!2026においても単行本ノベルス部門14位を獲得している。
あらすじ
冒険者で剣士のウォルカは、日本から異世界転生した人間である。魔法がある世界であるため前世から好きだった漫画的な抜刀術を再現しようと幼い頃から修行に明け暮れる。しかし転生した世界は前世で読んだダークファンタジー漫画の世界だった。
ウォルカ自身が漫画の中では主人公の前座で全滅するモブパーティーの一員であったことに気付くのは、Sランクパーティでも逃げが第一選択になる絶望の敵である『摘命者』相手に片目片足を失った時だった。仲間が戦闘不能になるなか漫画の主人公が倒した手段という前世知識と現世で磨き続けた抜刀術の技術を使って死に物狂いで倒す奇跡を起こす。
教会で目覚めた後パーティの運命を覆した代償が自分の片目片足だけだったことを確認し安堵するウォルカだったが、パーティのメンバーはそう思っておらず剣士として優れていたウォルカの未来を奪ってしまったことに愛情、後悔などが色々感情が入り混じって激重感情になってしまい……。
登場人物
銀灰の旅路
当初はリゼルとウォルカの2人パーティであったがアトリとユリティアが加入。Aランクに位置づけられる有名パーティーの一つ。拠点は聖都。原作ではモブパーティーとして作品冒頭で摘命者と対峙し敗北、凌辱の上殺害されるという悲惨な末路を遂げていた。
- ウォルカ
- 主人公で男性剣士。17歳。異世界転生した際に生前憧れていたファンタジー抜刀術が出来る世界だと気づき、元は王都に住んでいたが両親が亡くなって地方に住む祖父に引き取られる。引き取られた剣士の祖父に懇願して尋常ではない訓練を施される。転生した先の漫画は最後まで読めてはいない。ハッピーエンド主義者であるため、キャラクターは美しく可愛くかっこよくても理不尽な展開には納得はしてはいない。そのため神様といえる原作者は恨んでいるとは言えるほどではあるがこの世界の宗教に関しては意見がない。それでも信心が薄いと自認している。摘命者の戦いでは、原作の主人公が倒した方法の知識と自身の剣術と気合で倒し切るが、右眼と左足を失ってしまう。パーティみんなから寄せられる激重感情に胃痛が絶えないが、自分で動けるよう、生活出来るようになりたいと思っている。左足には義足が充てられた。
- リゼル(声 - 麻倉もも)
- パーティリーダーの魔法使い。名前はリゼルアルテでリゼルは愛称。銀髪で瞳は金色。花柄付きの巨大な三角帽子(よくある魔女っ子帽)を被っており10代前半の女の子にしか見えないが、ウォルカ達より遥かに年上だという。普段は師匠ヅラしてのじゃ口調だが精神的に追い詰められると容姿に見合った女の子の口調になってしまう。少年期のウォルカが魔狼と戦っていたところに行き会い、ウォルカの我流な身体強化魔法の使い方が非常にもったいないと思い指導したのがきっかけでパーティを結成する。銀灰の旅路というパーティ名は彼女の発案。「銀」はリゼルの髪色、「灰」はウォルカの髪色でありこのパーティ名を冠する限りずっと一緒だという独占欲の現れだとか。魔法の知識や威力は抜群だが、「偉大で尊大な魔法使い」のキャラづくりが崩れてしまうと打たれ弱く繊細で寂しがり屋。摘命者の戦いでは依頼を持ってきたのが自分なので自身を責めている。
- ユリティア(声 - 高尾奏音)
- 女性剣士。ウォルカより4歳年下で13歳。桃色のセミロングの髪と桃色の瞳が特徴。ウォルカを慕っております先輩と呼ぶ。天才剣士と言われるほど才能に溢れており見た剣術をすぐに自分のものに出来るらしい。実家は騎士の家系だったが兄2人に勝ってしまい嫉妬に駆られた兄2人から暴力を受けていた事から魔法学校に進学。そしてウォルカの剣術を見る機会があり、その剣術に惚れたことから紆余曲折を経てパーティに加入。リゼルアルテやアトリよりも年下だがパーティ内での1番のしっかりもの。摘命者との戦いでは自身が罠を踏んだ事から戦う羽目になったこともあり責任を感じている。
- アトリ(声 - 福圓美里)
- 南方の一騎当千と言われる戦闘部族『アルスヴァレムの民』出身の、巨斧を使う女性戦士。年齢はウォルカより一つ年下の16歳。布の厚みが薄い民族衣装を身にまとっており髪は白色だが褐色肌。非常に端的な発言が特徴的で、部族の長で教えを受けていたおばばの教えもあり、相互誤解のすれ違いを多数発生させている。摘命者の戦いでは先制の一撃を打ち込んだところを摘命者の不死性に跳ね返され、魔法による反撃を受けるところをウォルカに庇われる。ウォルカが治療の甲斐もなく右眼と左足を失ったことを聞き、仲間を守れぬどころか仲間に庇われるなど戦闘部族の民の名折れだと慟哭するが、同時にウォルカが摘命者を倒す姿に部族の戦士の理想像を見出してしまい、ウォルカに対して自分の全てを捧げることを決意する。おばばの教えを忠実に守りつつ自身の感情もあり、ウォルカを押し倒そうと思っているが無理強いはしないらしい。
その他
- アンゼ
- アンゼはウォルカに付けられたあだ名で本名はアンジェスハイト。背中まで届くプラチナブロンドのロングヘアと、コバルトグリーンの瞳を持ち黒い修道服を身にまとっている。実は4人いる聖女のうちの1人で『天剣の聖女』と呼ばれている存在であるがウォルカ以外の『銀灰の旅路』のメンバーには正確な正体を伝えている。しかしウォルカには『聖導教会』の中枢機関の大聖堂所属のシスターとしか伝えていないようである。ウォルカとは小さい頃に自分の素性を明らかにする前に出会って治療しており、厳しい修行に励むウォルカの存在がカルチャーショックを受けるほどで亡くなったと思った際には数ヶ月落ち込んだらしい。再会した際にはウォルカは知らないものの泣くほど喜んだという。ウォルカが欠損を含む怪我を負ったと聞き、聖都からすぐに駆けつけた。その後、ウォルカたちのパーティーの銀灰の旅路の『パトロン(後見人)』となった。ウォルカ達が聖都に帰る際にも同行し、事件に巻き込まれる。
- ロッシュ
- 本名はロッシュハルト。男性。聖都随一の武を誇る3人の聖騎士の1人であるが、『銀灰の旅路』のメンバーには聖都の騎士団《聖導騎士団》の平騎士であると偽っている。アンゼの護衛として聖都からルーテルの街に派遣された。身長は180センチあり金髪碧眼。ウォルカより年上の20歳だがウォルカとは剣の腕を競う間柄であり、親友。対戦成績は49勝49敗12分けの五分だった。イケメンで言葉もキザったらしいが女性には気を使う性格もしている。アンゼの護衛とともにルーテルのギルドの踏破報告が正当だったかどうかの調査も行っていた。騎士としての実力は確かなもので数十人の敵に囲まれても無傷で倒せるほど。
- 原作主人公
- ルーテルの街のダンジョンに潜り、『摘命者』を倒した後に倒れたウォルカへ応急処置を施し、ルーテルの街の聖導教会まで運んだ後すぐに立ち去ったらしい。原作では『摘命者』は主人公が倒している。聖都や王都へ忌避感を持っているらしく立ち寄らないとのこと。
- ウォルカの祖父
- 両親が亡くなったウォルカを引き取った当初はチャンバラみたいな遊びの剣を教えていたが、ウォルカが強度を上げたいとしたことから大人以上の苛烈な修行を施した。
- 摘命者
- ルーテルの街近くにある攻略済みダンジョン《ゴウゼル》に潜んでいた真のボス。手にした大鎌の一撃をまともに受ければいかなり守りも意味はなく即死、またその身は特定の手順を踏んだ攻撃以外に対してほとんど無敵。すなわち、Sランクパーティでも逃亡を前提に行動しないとならないほど強力な魔物である。討伐は歴史に名を刻むレベルの偉業とされ、記録を遡っても十あるかどうかというところらしい。
なお、原作主人公はこいつを見開き込みの3ページで撃破したんだとか。 - 老シスター
- 摘命者を倒して大怪我を負ったウォルカを治療した、ルーテルの街の聖導教会の主。ウォルカに義足を提供したがウォルカの義足への適応の早さに驚く一方、リゼルが通常の人類でないことに気付くなど聡い。アンゼの正体を承知しており、アンゼがウォルカ達と気の置けない話をしていた際には卒倒寸前になっていた。
- ルエリィ
- ルーテルの街から聖都までの商隊馬車の護衛依頼への応援を募集していた冒険者の少女。パーティ名は『天巡る風(ウインドミル)』でCランクパーティ。同じパーティの姉『シェリィ』がいるが体調を崩しているらしい。パーティとしてカインとロイドの男性メンバーがいる。
- シェリィ
- 『甘巡る風(ウインドミル)』のパーティーの少女。
- カイン
- 『天巡る風(ウィンドミル)』のパーティーの少年。
- ロイド
- 『天巡る風(ウィンドミル)』のパーティーの少年。
- 森羅巡遊(シークロア)
- Aランクの4人のパーティー。ルーテルの街の周辺を拠点にしていた実力派パーティーだったが《ならずもの》による策で人質に取られたところ降伏したものの男性メンバーは殺されてしまう。
- スタッフィオ
- ルエリィの仕事の依頼元の商隊の商人の男性。
- 白亜の聖女・レスターディア
- 聖都の大聖堂において、『摘命者』討伐の報告をはじめに受けた聖女。白髪短髪の聖女ではある一方、言葉は粗野で対立勢力からの煽りから煽り返そうという聖女のイメージから離れた言動をするが、アンゼがウォルカを心配するあまりルーテルの街へ出奔する勢いだったのを押し留め準備をさせ、アンゼが持っていた仕事を引き受ける。アンゼのことは妹のように思っているらしい。アンゼ経由でウォルカに関心を持つ。なお言動は聖女らしく取り繕えるが、ウォルカと一対一で対面で話し合った際には言動を崩した。ウォルカの神を憎んでいる発言やダンジョン《ゴウゼル》の踏破承認事故の原因となったパーティーの処罰に関して関心を寄せないウォルカに対して曇らせる。
- 福禍の聖女・アルカシエル
- 4人の聖女の1人。ティアラに月の紋章が記されている。いつも眠たげである。所在地は聖都の大聖堂。
- 星眼の聖女・ユーリリアス
- 4人の聖女の1人。嘘と罪を見通す能力がある聖女。同じく所在地は聖都。
- じいや
- 聖都の大聖堂で聖女に仕える老執事。姿などを隠蔽する魔法を仕えるらしく、気配も消せるらしい。
- ロゼ
- 聖都にある宿屋《ル・ブーケ》のオーナー兼シェフ。本名はローゼアクス。<口調は女口調で化粧はしている少しオネエ系だが振る舞いはイケメンらしい。『銀灰の旅路』の拠点ともなっており親しい仲である。なお元はロッシュの上司で6年ほど前まで聖導騎士隊の隊長を務めていたという。/dd>
- シャノン
- 聖都の聖延街の冒険者ギルドに所属している事務員をしている少女。銀灰の旅路に目を掛けており、親しい間柄だった。ウォルカたち銀灰の旅路が遭遇したダンジョン《ゴウゼル》の踏破承認事故発生の際には調査や支援のためにルーテルの街まで駆けつけてウォルカへ面会を試みている。
- 福禍の聖女・アルカシエル
- 4人の聖女の1人。ティアラに月の紋章が記されている。いつも眠たげである。所在地は聖都の大聖堂。
組織
《聖都》
正式名称は南方聖都〈グランフローゼ〉。聖導教会の総本山、大聖堂が位置する宗教都市。この国でもっとも治安の良い街として知られる。
聖都には4人の聖女がおり、原作でほのめかされた範囲の情報だとそれだけで王都全体の戦力を上回りうるとされていた。
《王都》
正式名称は北方王都〈アイゼンヴィスタ〉。4人の聖騎士と3人の賢者からなる〈七花法典〉という実力組織が国の中枢を占めている。作中時間で4年前の摘命者討伐は七花法典によるもの。
ダンジョン《ゴウゼル》
ルーテルの街近くにあるダンジョン。ルーテルの冒険者ギルド支部に攻略済みと報告され、聖都のギルドから確認部隊が派遣されて公式には攻略済みということになっていた。ダンジョン遺構が犯罪者やモンスターのねぐらになっていないか確認する巡回依頼を受けた銀灰の旅路が、転移トラップによるボス部屋が見落とされていた踏破承認事故に遭ったところから本作は幕を開ける。
書籍版作品紹介ツイート(公式)
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書籍版・Web版対照
なお、書籍版では加筆改稿されており、大まかな展開は収録されているものの、正確には当てはまらない場合もある。
| 書籍版 巻数 |
Web版話数 (書籍版書き下ろしの場合 は別記) |
備考 |
|---|---|---|
| 1巻 | 第0話~第16話「〈天巡る風〉Ⅲ」の途中(書籍版大幅加筆あり) | |
| 書き下ろし 「ウォルカが死の淵から目を覚ましたときの話」 「ウォルカが聖女全員から包囲網を敷かれる話」 |
- | |
| 2巻 | 第16話~第34話(28〜31話は除く)(大幅加筆あり) | |
| 書き下ろし 「アンゼがウォルカのために魔物と戦った話」 |
- | |
| 3巻? | 第35話~連載中(2025年4月2日現在45話まで連載中) | |
| - | - |
書籍版店舗特典ショートストーリー
| 巻数 | 店舗別 | サブタイトル | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1巻 | ゲーマーズ | アンゼがウォルカの目の傷にクソデカ感情を抱く話。 | |
| メロンブックス | リゼルがウォルカの背中の傷に激重感情を抱く話。 | ||
| - | メロンブックス | ウォルカが生きるか死ぬかの瀬戸際だった時の話。 | ノベル祭り2025冬景品クリアファイル |
| 2巻 | ゲーマーズ | ユリティアがウォルカの髪の毛を乾かす話。 | |
| メロンブックス | アトリの夜這いをユリティアが全力で阻止する話。 | ||
| TSUTAYA | リゼルたちが身体測定をする話。 | ||
| 全国の一部書店 | アトリがウォルカをシャワーにつれていこうとする話。 | 1,2巻共通特典 | |
| 3巻 | ゲーマーズ | アンゼがウォルカの決闘を知って取り乱す話。 | |
| メロンブックス | リゼルとシャノンがオトナの魅力について考える話。 | ||
| BOOK☆WALKER | 残念ぽんこつシアリィさんの話。 | ||
| 全国の一部書店 | 寝坊したユリティアが迂闊な姿を晒す話。 | 1,2,3巻共通特典 |
関連漫画
関連リンク
- Web版連載サイト(ハーメルン)
※最速 - Web版連載サイト(カクヨム)
- KADOKAWA公式作品サイト
- 書籍版作品紹介サイト(キミラノ)
- 漫画版連載サイト(カドコミ:旧コミックウォーカー)
- 漫画版連載サイト(ニコニコ漫画)
- 作者公式X(旧Twitter:雨糸雀)
関連項目
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- 0pt

