全ての奇跡にタネがある。
TRICKとは、テレビ朝日系列で放送していたドラマシリーズである。
それまで人気の低かった深夜ドラマが大きく見直されるきっかけとなった作品であり、人気のなかったテレビ朝日のドラマが見直されるきっかけにもなった作品。監督の堤幸彦をはじめ、蒔田光治などTBSテレビで放映されていた「ケイゾク」のスタッフが多数関わっている。
貧乳やカツラ、巨根など令和の世の中では放送で来なさそうなルッキズム発言も多いが、それ故面白さのある部分もある。
概要
自称天才マジシャンの山田奈緒子と大学教授の上田次郎が、超常現象の裏にあるトリックを解き明かすミステリー仕立てのドラマ。ミステリーを本筋としているものの、深夜ドラマにあったコメディの要素がふんだんに盛り込まれており、看板・張り紙・習字など背景にさまざまな小ネタを仕込んでいる。その一方でトリックを解明した事で後味が悪い結末に終わったエピソードも少なくなく、(例:第1期『千里眼の男』、第2期『天罰を下す子』、第3期『絶対死なない老人ホーム』)、コメディ一辺倒ではない部分も描かれる事もある。
また、後の『ごくせん』と共に仲間由紀恵が有名になった作品である。
DVDでは、やむなく落としたカット集(通称:やむ落ち)が収録されており、テレビでは見ることのできなかったシーンを見ることができる。これを楽しみにDVDを買った人も多いのではないだろうか。(Amazon prime Videoなどでは見られないので注意)
ドラマ3作の主題歌を歌っているのは“鬼束ちひろ”。2005年の新作スペシャルと2006年の映画はJoelle(ジョエル)、2010年の新作スペシャル2と映画は熊谷育美が歌っている。
登場人物
- 山田奈緒子(仲間由紀恵)
- 自称天才美女マジシャン。だが、実際は貧しい暮らしをしている売れない手品師。作中で頻繁にアレの貧しさを弄られている。
父親がマジシャンであり、「全ての超能力や超常現象はマジックのタネで説明できる」と教えられていた影響で、超能力者を名乗る連中にもタネがあると思い「あんなのインチキじゃないですか」と嫌っている。しかしその父の教えが幸いして手品やマジックの知識を豊富に持っており、それで作中に現れるインチキ超能力者のTRICKを暴き立てていく。
決め台詞は「お前のやったことは全部お見通しだ!!」。毎回バリエーションが増える。
飼っている亀の“カメイチ”“カメニ”を競わせるのが自宅での楽しみ。笑うのが苦手で「エヘヘヘ」「ウヒャヒャ」と奇妙な笑い方をする。中の人が貞子の役も演じた為か、寝てる時等に貞子っぽく見えることもある。本人は否定しているが、何らかの超能力があることが示唆されている。
- 上田次郎(阿部寛)
- 拝島出身。日本科学技術大学教授(当初は助教授=准教授)で、専攻はぶっつり物理学。作中で頻繁にアレの物理っぷりを弄られている。ちなみに長男。「一郎」と名付けられる予定が「一浪」経験のある父親が土壇場で変更した。
超常現象を真っ向から否定しており、山田とは対照的に自身の知識見識に基づいた理論武装を用いるが、ゆえにTRICKに引っかかる時はあっさり引っかかるため、マジックのタネと見破れる山田からは酷評されている。「どこまでも手間のかかることを」やるのがこの作品の似非超能力の特徴だが、なまじぶっつり学の教授ゆえにそれに輪をかけて「手間のかかる」推論を自信満々に語りだすことも。
また山田以上に凄まじい世間知らずであり、とんちんかんな発言を繰り返すことも多い。だが「通信教育で習った空手」で得た腕っ節は非常に強く、「ベストパワー」で並み居る新興宗教の信者(おっかぁさまー!)やら因習に囚われた村人やらをバッタバッタと薙ぎ倒すほど。さらに山田を巻き込むことにかけては頭が回り、実際金持ちでもあるため「腐れ縁」と言っていいコンビを結成する。
彼の著作に「どんと来い超常現象」シリーズ、「なぜベストを尽くさないのか」があり、これは実際に書籍として発売された。最新作は「どんと来い超常現象 IQ200」。どこぞのノーベル文学賞候補とは特に関係ない。
- 矢部謙三(生瀬勝久)
- 警視庁公安部所属の警部補。個性的な部下を引き連れている。作中で頻繁にアレの三流っぷりを弄られている。
事件があると必ず2人の前に現れ、事態をさらに複雑にする。彼の中ではだいたい犯人は山田奈緒子。強者には媚びへつらい弱者には辛く当たる典型的な小物だが、自分勝手な解釈を押し通してしまうことも。シリーズ初期はまだかっこいいところもあったものの、作品が進むに連れどんどんヘタレ三流刑事と化していく。
アレゆえに温泉に目がなく、演者の多忙もあって劇場版などではほとんど温泉に入っているだけだったりする。得意料理は「スペシャル・チャイニーズ・モーニング ダンシング・シュリンプ・ファイヤー」。人それをエビチリという。
スピンオフドラマ『警部補 矢部謙三』シリーズで、まさかの主役に躍進した。
- 山田里見(野際陽子)
- 奈緒子の母。沖縄出身。
長野県で書道教室を営んでいるが、その内容はだいたいがスタッフの内輪ネタや悪ノリ、金曜ロードショーに関するネタであり(「なんどめだナウシカ」「映画化希望」等)、子供たちにそれを教えている。劇場版では映画鑑賞における諸注意を生徒の書の形で提示するのがお約束(「ケータイ消せな」「ポップコーン食うな」など)。
後のシリーズでは彼女が書いた文字に不思議な力が宿っていると吹聴して回り、お札やら看板やらの揮毫で大儲けしている。しかし外面はいいものの娘には一銭も渡さないためか、山田からは「強欲な母」と言われている。
沖縄・黒門島の祝女(シャーマン)の血筋を引いているらしく、時々意味深な発言をする。奈緒子同様超能力があることが示唆されるシーンもあり、奈緒子が上田の家を自宅として紹介したにもかかわらず本当の家に書き置きを残したり上田の前に気配もなく急に現れたりしている。
TV作品
金曜ナイトドラマ TRICK
特徴的なメインテーマ、暗く不気味ながらも数多く仕込まれたギャグと独特のテンポ、その中に多くの伏線を仕込む手法は、この時点で殆ど完成され、以後継続される。奈緒子のルーツや、父・剛三が認めた霊能力者の存在など、シリーズの根底に流れる重いテーマが多かったが、後のシリーズではほとんど無視されていく。
卵が割れて、有り得ない色の黄身が出てくるオープニングも今作から。
卵の中身は緑。
金曜ナイトドラマ TRICK2
シリーズでは最後の深夜枠放送となった。
矢部の携帯の着メロ「六つ墓村の手毬唄」、椎名桔平妖術使い、ゾーンなどはこのシリーズが出典。
木曜ドラマ TRICK 〜Troisième partie〜
現時点で、シリーズ最後の連続ドラマ作品。
この作品で、木曜ドラマ枠=ゴールデンに進出。視聴率は前2シリーズを上回った。
スリット、駄洒落歌などのネタ、そして「なぜベストを尽くさないのか」の初出回。
『Troisième partie(トロワジェム・パルティー)』は、フランス語で『3つ目のエピソード』という意味。
鬼束ちひろが主題歌を担当していたのは今作まで。
卵の中身は金。
TRICK 新作スペシャル
2005年11月13日放送。1話完結の約2時間ドラマ。
2006年6月には、『まだまだ新作スペシャル』として再放送された。シリーズ第5作。
これ以降はハイビジョン製作作品となる。
瞬間最高視聴率は24.7%。シリーズ最高の視聴率と反響を得た。
TRICK 新作スペシャル2
2010年5月15日放送。1話完結の2時間ドラマ。シリーズ第7作。
『霊能力者バトルロイヤル』の直前の出来事とされており、同作品を宣伝する描写が多い。
矢部が微妙にロマンスったりしたが、「髪の毛」が重要アイテムなのでどうしようもなかった。
卵の中身は、ひとまわり小さな卵。今作も卵の割れ方が違う。
TRICK 新作スペシャル3
2014年1月12日放送。1話完結の2時間ドラマ。シリーズ第9作。
『TRICK劇場版 ラストステージ』の直前の出来事とされている。
無論ドラマも最後である。また霊能力者があまり出ない。
劇場版
TRICK 劇場版
初の劇場版であり、深夜時代の2シリーズを受けた完結作として製作されていた。興行収入は初登場1位を獲得した。
前原一輝演じる石原刑事が正式に本編に出演したのは今作が最後である。
TRICK 劇場版2
『これで最後 かも』
2006年6月10日公開。
2007年には、『秋のトリック祭り』としてテレビで放映され、視聴率19%を記録した。
シリーズ第6作。「←出口 ブラジル→」などのネタはこの時。完結編の色が強く、出演者や監督も「最後」ということをアピールしていた。実際、奈緒子のアパートや矢部の髪がいろいろと大変なことになった。
劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル
10周年を記念して製作された劇場版第3弾。
2010年5月8日公開。
シリーズ第8作にあたり、完結作と言っていたがそんなことはなかった。
山田と上田の迷コンビが復活。佐藤健、松平健、夏帆などの豪華ゲスト俳優を数多く迎え、シリーズの集大成として製作する。例によって怪しい村が舞台となり、霊能力者を名乗る怪しい人物(奈緒子含む)がバトルロイヤルを繰り広げる。
TRICK劇場版 ラストステージ
2014年1月11日公開。
シリーズ第10作、今度こそ完結編(と思われる)第4弾。
初の海外での撮影となった。
成り行きで霊能力者と対峙することになるのはいつものことだが、映画のラストはファンならばグッとくるものであることには違いないだろう。
尚、映画の主題歌には初代ドラマの主題歌だった鬼束ちひろの「月光」が使用される。この曲も含めてまさに完結作にふさわしいラストとなっている。
番外作品
金曜ナイトドラマ 『警部補 矢部謙三』
矢部刑事を主人公に据えて製作された、スピンオフシリーズ。
2010年4月9日~5月14日放映。全6話。
初期のシリーズ作品と同じく、『金曜ナイトドラマ』枠での放送(同枠でのシリーズ放映は8年ぶり)。矢部を演じる生瀬にとって、初の連続ドラマ主演となる。まあどうせ仲間やら阿部やらを全員集める金が無いからたんだろうけど、触れてはいけない。
貫地谷しほり演じる桂木美晴と鈴木浩介フクナガ演じる桜木健一の警視庁公安部庶務係コンビが中心となり、難事件の謎解きに挑み、最終的に矢部が事件を解決に導いていく。基本的に物語の中心は、どちらかというとこの2人である。
超能力がメインテーマのTrick本編とは違い、こちらは現実的な推理モノドラマの様な雰囲気である。
矢部の部下の秋葉原人や菊池愛介を始めとするTRICKの面々も次々に登場しており、最終話では矢部の右腕として活躍した石原達也が一夜限りの復活を遂げる(演じた前原一輝は既に俳優を引退していたが、ファンや木村ひさし監督の後押しを受けて一時的に復帰)。
また、幸か不幸か、監督は堤幸彦ではない。
金曜ナイトドラマ 『警部補 矢部謙三2』
矢部謙三を主人公に招聘し制作されたスピンオフ第二弾。
2013年7月5日~8月30日放映。全8話。
桂木美晴、桜木健一の庶務係コンビを外し、代わりに御手洗ちかお警視総監(大和田伸也)の愛娘で天才少女の御手洗未来(畠山彩奈) を推理役に配置。未来から得た父親のスキャンダルで警視総監を脅し昇進を企む矢部と、その矢部に戦々恐々としつつ難事件で陥れようと企む警視総監という展開がストーリーの基本。
矢部は相変わらず好き勝手やっているが、推理役が一人になったことから秋葉原人が未来のコンビ相手に抜擢されており、前作に比べ秋葉の活躍が多くなっている。
他メディア展開
TRICK DS版 ~隠し神の棲む館~
2010年5月13日、KONAMIより発売。
ニンテンドーDS専用ソフト。
完全オリジナルストーリーを収録した、トリック初のゲーム作品。キャラクターはイラストで表現されているが、BGMや効果音は本編と同じ物が使われている。
帰天城の謎 ~TRICК 青春版~
ドラマ・映画のノベライズではない、完全オリジナル小説作品。
はやみねかおる作。
中学生時代の山田と、武者修行時代の上田、若かりし頃に実は一度出会っていた2人の活躍を描く。
物語はこの中学生版山田の一人称で進んでいくのだが、この頃から既に自己中・無責任な性格が完成されており、自分のことを「容姿端麗・学業優秀」などと嘯いている。
ちなみに、「きてんじょう」とかでなく、「かえりそらじょう」と読む。
あらすじ
「奈緒子は、帰天城が消えたことは知ってるの?」
「うん。先生から聞いた。」
「お父さんはね、新しいマジックの参考にしようとして、帰天城のことを調べたの。」
「あと、お姫様の妖術も調べてたわね。『あれは、妖術じゃない。すべて、手品で再現できる』――お父さんは、そういってたわ。」
超常現象は、全てトリックで説明できる――それが、父の口癖だった。
中学2年生の自称美少女・山田奈緒子は、社会科の藤原先生に勧められ、仲の悪い同級生3人と、N県は踊螺那村(おどらなそん)という村を訪れる。
道中、次郎号という奇妙な名前をつけたママチャリに乗った、傲岸不遜な髭面の男と出会う。男は上田次郎といい、未来の天才物理学者を自称する若者だった。
奇妙な5人パーティとなってたどり着いた踊螺那村。そこには、400年前に突然消えた城の話、かつて妖術で人々を脅かした残忍な女・玲姫の伝説、そして埋蔵金の噂が流れていた。超常現象をいぶかしみ、反面埋蔵金に燃え上がる山田。しかし到着した日の夜、同級生の一人が消え、その後残りの2人も、次々と消えていってしまう。
超常現象は実在したのかとビビる上田。しかし、父の教えと埋蔵金を心から信じる山田は、弱冠中学生でありながら、上田と共に謎を解明していく。
「彼女達を見捨てて逃げられるわけないじゃないですか!
さあ、早く埋蔵金を探しに行きましょう!」
同じく埋蔵金に目をつけ、独自に調査に来ていた母・里見。現在の面影はどこへやら、長い髪を自慢げに振りかざす若き日の矢部。ドラマ・TRICKに繋がる、4人の最初の物語が幕を開ける。ちなみに、最後まで上田は山田に名前を覚えてもらえなかったため、ドラマ第一作との設定齟齬は発生していない。
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