なろう系とは、主に小説家になろう(以下:なろう)に投稿された作品の創作物をジャンルや出自で分類する言葉である。
概要
なろうでは多くの小説が投稿されているが、ニコ動やpixivなど他の投稿サイトと同様に、初心者の習作や好きな作品の模倣などから、似通った設定・展開の作品が流行りを形成することが多い(所謂テンプレ)。その中の上位作品は人気と競争力の高さを示す形になるため、商業進出にピックアップされやすい傾向にある。
それらを主としたテンプレ要素を含む作品を指してなろう系と呼ぶことがあるが、荒れる原因となってしまうため作品の誹謗中傷として使うことは控えよう。
- 主人公が何らかの理由で異世界へ転生・転移する
- 序盤で主人公がチートと呼ばれるほどの力を得る。努力を必要としないことが多い
- ありふれた知識、能力でも異世界では英雄に等しい活躍ができる
- ゆく先々でヒロインを助けてモテてハーレム作り
- とにかく作品名が長く、作品名だけで内容がわかってしまうことが多い
- ゲームの中でもないのにステータスやレベル、スキルなどがある世界観
・・・等が挙げられることが多いが、書籍化やアニメ化によってサイト外部に進出するまでのタイムラグの関係もあり、実際の流行りとはズレている場合もある。
また、コミックウォーカーなど一部のサイトでは、メディアミックスの原作がなろう投稿作品である場合にこう呼ぶケースも存在する。
いずれにせよ、字面に具体的な内容が含まれず、使用者によって指す対象がブレやすい部類の言葉であるため、誤解を招きやすいことには注意が必要である。
作品やその傾向を話題に挙げる場合、サイト内のジャンル(カテゴリ)やキーワード(タグ)を用いた方が無難なのは間違いない。
余談
「なろう系」と呼ばれる作品が批判されるときに、しばしば「連載が冗長過ぎるし、作者が読者のコメントを読みながら話を書き進めているため、矛盾点が多くグダグダ」といったことが言われる。
しかし、連載が冗長であることは曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』といった、歴史的に重要な小説についても言えることである。また、読者の感想を見ながら連載を進めていくという形式は、昔からある新聞小説などの連載小説の形態と何ら変わりない。そして、現在では文学的に重要な作品と位置付けられている尾崎紅葉の『金色夜叉』や徳富蘆花の『不如帰』ですら、全体を通して読むと矛盾点や登場人物の一貫性の無さが読み取れる(特に『金色夜叉』は人気が出たために続編が書き続けられてしまい、問題点が多くなっている)。
これらのことからもわかる通り、冗長であったり矛盾点があるからといってその作品の価値が無くなるというわけではないので、注意が必要である。
また、作品のタイトルが長く伸びがちな要因は小説家になろうのUIにあり、特にスマートフォン版ではランキングや検索画面においてタイトル以外の情報が初見では確認できない為、必然的にタイトルにあらすじが内包されるようになった結果として、内容を表記する長文タイトルが生まれていった形となる。
その為、パソコンが主流であった時期~スマートフォンが世間に広まりきるまでの小説家になろうの人気タイトルは、必ずしもあらすじ的なタイトルではなかった。2019年現在、一日に数百から数千作以上が更新されるサイトであり、少しでも読者の目に留まる為の工夫として広まっていった手法である。
更に、Web小説におけるなろう系と言われる物に近いジャンルはスパシン・U-1などを筆頭に二次創作の世界で以前から存在している。これらは90年代後半~2000年代前半で既に「最強キャラを主人公にして原作を改変する」というジャンルが確立され、賛否を生んでいた。
当時は個人サイトや、今と比べれば小さな投稿サイトでの活動だったが、
「トラックに轢かれるなどして超常的存在(あるいは神)の力で過去に逆行・転生・転移する」
「未来知識・作中で一番強い時の状態・あるいは最初から持っていた事する(空手の達人だった、前世が異世界の賢者だった等)などして、原作で苦戦した相手をあっさりと倒す」
「明らかにパワー差がある作品の主人公を転移させるクロスオーバー(例:北斗の拳の世界にドラゴンボールの孫悟空が転移する、弱体化なし)」
「一般人主人公がチート的な能力を手に入れて無双」
などの、今に通ずる創作が行われていたのである。
(なお、これらの二次作品の中で質が低いものは『最低系』と呼ばれていた。詳しくはSS用語一覧で確認していただきたい)
これらはメアリー・スー(元ネタはアメリカのオリジナルキャラを主人公とする二次創作群を皮肉った作品である)と呼ばれる事も多いが、確かに息の長い人気があり、インターネット黎明期から今に至るまで途切れる事無く生まれ続け、読者に親しまれている。
ニコニコ動画や旧2ちゃんねるなどで見た事のある方も居るだろうが、Web上での作品発表、ことに男性向けアニメ・漫画・ゲームコンテンツに近い長編連載の創作物となると、王道要素の逆張りを行う「最強主人公」や「ハーレム」などが沢山作られ、人気になる事例は他にもあり、ネット上においてはかねてからヒットしてきた売れ筋ジャンルなのである。
これらにもなろう系と同じく賛否両論があった点には留意しておきたい。
また、小説家になろうの知名度上昇と規模拡大によって勘違いされがちな事ではあるが、なろう系はネット上での創作として考えれば決して特殊なジャンルではない。
模倣や拡散によるテンプレ化がよくあるネット上での創作では、既にある設定+αの作品を、既に提示されたお題やジャンルの中で生み出して多くの作者が参入して広まっていたシリーズ物(BB先輩劇場・幻想入りシリーズなどの東方project二次創作群など)が存在し、各作者のオリジナリティでの違いこそあれど、そこにはあまり変わらない原作とも呼べる基礎がある。
小説家になろうにおいても、異世界観などはナーロッパと揶揄されるほど大枠において共有されている上に、人気作品に類似した内容を書く作者が増える為、サイトの中で共有されたストーリー展開が生まれていった。
つまり、作者・読者ともにテンプレ要素を使っている作品だと多くのユーザーが知っている状態になり、その中での工夫を見せ合う形で異世界転移・転生の主人公最強物、つまりなろう系が人気ジャンルとして確立していったのである。
これは同時に、読者側がそれらの基礎を把握している体で話が進む作品が多いとも言え、小説家になろうに触れた事のないユーザーが話題性などで初めて近づいた際に、しばしば戸惑いや誤解を与えてしまう要因となっている。
もちろん、各作品の質に大きな差があり、そのような基礎部分の理解がなくとも多くのファンを獲得できる作品がある一方で、基礎部分がなければ楽しみにくい作品があるのも事実である。
なろう系の歴史
1990年代~2007年
小説家になろうは2004年に設立。
この時はまだ単なるサークル運営の1サイトであり、主に名探偵コナンの二次創作小説投稿サイトとしてユーザーを獲得していた。
この時期では、一次創作は個人サイトでの発表と専用の検索サイトを通した交流が殆どであり、テンプレと呼ばれる物の認識はなく、散発的に異世界ものが生まれている状態だった。
90年代に発生した異世界ブームの影響がまだまだ残っており、「異世界迷い込み」「異世界召喚」などの、現実から異世界へ行く作品が多く記録されており、小説検索サービスなどを通して一定の読者層を生んでいた。
2007年には小説投稿サイトArcadiaにおいてVRMMOから異世界転移する作品が生まれており、後のジャンル形成の萌芽が見られる。
二次創作においてはスパシンやU-1などのジャンルによって、なろう系に近い作品がどんどん生み出されており、一次創作にはないファン同士の交流もあって個人サイトや投稿サイトで広まっていた。
2008年~2009年
小説家になろうの中で「異世界転移・最強もの」という存在が多く現れた。
この頃には小説家になろうのサイトリニューアルが行われ、それまでは「投稿作品数と作者数がほぼ同値=ほとんどのユーザーが作者」だったのに対して、作品を書かない読み専の読者が増えていった。
同じ頃、二次創作小説投稿サイトの最大手だったArcadiaにおいても「異世界や戦国時代に行って現代知識を武器に戦う」という一次創作が現れ、頭角を現すようになる。
また、世の潮流としてPixivやニコニコ動画の隆盛など、イラスト・動画などのジャンルでも個人サイトから投稿サイトにユーザーが移っていった時期でもあり、小説検索サービスと個人サイトの衰退という背景もあった為、以前から個人サイト間で行われていた異世界物の創作が、一つのサイトに集約された形となる。
2009年頃には異世界テンプレという存在が認識されており「世界を救う存在として異世界へと召喚される」などの、後に生まれる「召喚されたけど戦わずにスローライフする」等のアレンジが生まれる元となった作品の流行が見られる。(召喚要素自体は聖戦士ダンバインから続く鉄板パターンであり、小説家になろうで独自発展した訳ではない。また、なろう系異世界に強い影響を与えたゼロの使い魔が2007年前後に一大ブームを巻き起こしていた為、影響を受けていた可能性がある)
サイトリニューアル、世間の変化なども含め、実質的に「テンプレ」としてのなろう系元年と言える。
また、この時点で二次創作小説では後のなろう系と呼ばれる要素の「何かの理由で死んだオリキャラ主人公(基本はオタク)が神様に転生させて貰い、原作という疑似未来知識と転生特典のチートを武器に無双してハーレム」という流れは定着しており、ゼロの使い魔、魔法少女リリカルなのは、魔法先生ネギま!などの二次創作で広まっていた。
小説家になろうにおいては二次創作部門であるにじファンが存在しており、Arcadiaではオリジナル作品の区分があった。同一サイトで展開されていた以上、二次創作で行われていた事が一次創作にも影響を与えていた・あるいはその逆もあった物と思われる。
2010年~2011年
魔法科高校の劣等生やログ・ホライズンの書籍化の話題性もあり、小説家になろうにおいて多くの作者が現れ、既に定着していた異世界テンプレを多くの作者や作者へ転向した元読み専読者が使い、より一層多くの作品が生まれる様になる。
既存の異世界物に影響を受けた作者が増えていった事により、主人公が異世界に行くというのはサイト内では当たり前の光景となっていった。
また、ゲームのプレイヤーキャラクターとなって異世界へ転移する作品が定着した。後にこの流れが下火になった際、ゲーム要素がなろう系の異世界観に残り、ステータス画面の展開やレベル制、固有スキルなどの「ゲーム風異世界」を構築していった。
界隈においてはArcadiaが衰退し始め、にじファンが二次創作小説サイトとして最大手となる。(2ちゃんねるを媒体とする二次小説や、女性向け作品はまた別所)
これにより、一次創作も二次創作も小説家になろうがプラットフォームとなった為、Web小説=小説家になろうの図式が完成する。
ただし、この時はまだArcadiaにおいてオーバーロードを筆頭としたオリジナル作品も多く投稿されており、小説家になろうが完全に支配的な勢力だった訳ではない。
2012年~2015年
大手出版社がこぞって後になろう系と呼ばれる作品群の書籍化に乗り出した時期。大手出版社が動き出した事もあって年々書籍化作品が増加し、多くのユーザーを取り込む様になった。
「異世界で最強主人公」の作品は2012年には完全にテンプレとなり、そこから派生する形で無機物転生や料理物、ダンジョン経営、魔王主人公物、スローライフなどの作品が生まれるようになった。
個人サイト発であるソードアート・オンラインのアニメ化によるVRMMO物の流行が起きていた。デスゲームはもちろん、ゲーム世界への転移にも用いられる人気要素となった。
更に、異世界転生とゲーム世界への転移を土台とした悪役令嬢物は女性向けの異世界作品の新たな人気ジャンルとなり、やがて男性向け作品を巻き込んでなろう内で定着していった。
この時期になると2019年現在にアニメ化されている作品が次々投稿されており、後のなろう系のイメージを作っていく事になる。
なろう系と呼ばれる言葉が使われるようになったのはこの時期である。[1]
サイト内では以前から「テンプレ」や「異世界物」などと呼ばれていたが、メディアミックスから入った層や、それらの読者を狙った出版社によるゾーニング、このなろうでのファンタジー作品を語る際に用いる・時に否定的なニュアンスを含む単語として「なろう系」という呼称が生まれた。単語としてのなろう系元年である。
また、小説家になろうを運営するヒナプロジェクトはにじファンを2012年夏をもって閉鎖する事を決定し、小説家になろうで広く行われていたなろう系に近い二次創作が消滅する事となった。二次創作の舞台はこの時にハーメルンを筆頭とした別の投稿サイトへ移動している。
これにより、にじファン側で行われていた創作が少なからず一次創作である小説家になろうへ流入したと思われる。
2016年~現在
メディアミックスによって小説家になろうでの異世界ものが一般的にも知名度を上げ、サイト規模は一層拡大した。それまでWeb小説とは全く縁の無かったユーザーの目にも触れる事となり、新規参入者も増え続けている。
また、小説家になろうでは2016年にジャンル再編が行われており、ランキング内で「異世界転移・転生」とそれ以外のジャンルが分離され、実質上の隔離措置が行われている。
これによって、「パーティ追放物」「復讐物」「おっさん・父親物」などの、現地人が主人公となる異世界作品が大きく躍進する事となり、「なろう系と言えば異世界転生・転移」などの印象とは異なり、勢力としては今も多くの読者に好まれているが、ランキング内では少々の弱体化が見られる。
関連商品
関連項目
脚注
- *現在確認されている初出は、なぜ今,努力しないで成功する物語がはやるのか?――引きこもりのプロブロガー・海燕氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第17回https://www.4gamer.net/games/236/G023617/20140509083/index_3.html

- 1
- 0pt