現人神(または荒人神:あらひとがみ)とは、神のような人間を表わす言葉である。
「この世に人間の姿で現れた神」「生きている人間でありながら同時に神である」の2つの意味を有する。
概要
神話や宗教の中には神話史・宗教史が同時に民族史を兼ねていることも多く、そのためその神話を共有する大集団内で権力者が自らを「神の子孫」「神の化身」「神の拠り代」と称し、政治手腕に拠らない権力を得ることはかなり多かった。
あるいはある集団が神話を作り出し、それを共有させることで王や呪術師を現人神として扱わせ、権力の基盤とする手法もあった。
まとまりを欠いていた古代の国家ではこのような現人神による権威付けはよくあることであり、前者は古エジプトの「ファラオ」、後者はインカ帝国の「マンコ・カパック」が有名であろう。
特にキリスト教は一神教であるため「神」と「王」は区別され、しばしば王よりも神の方が尊崇されやすかった。これを利用して王の権威は(キリスト教の)神から授かった物であり他の誰もこの結びつきを侵してはならない、とする「王権神授説」が作られたほどである。
なおこの王権神授説は「朕は国家なり」で有名な絶対王政に結びつき、圧政悪政を正当化する方便に使用された。これに反発して起こったのが「清教徒革命・名誉革命」「フランス革命」である。王権神授説を手本にした後述の王政復古が失敗するのも無理はない。
こうして「神は知られざる処におわす」のではなく、「神は権力者として表れている」という風に解釈されたものが現人神である。当時の境界を越えて伝播し、時に権力者に従わなかったある種の狂信者を「現人神」へ集権化するための1つの施策であるといえる。
この語が日本で有名になったのはやはり明治憲法の「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」で有名な王政復古であろう。本来は諸国割拠し纏まりを欠いていた明治維新以前の日本を1つの文明国としてまとめ上げるために、王権神授説などを元に作り上げた国家集権機構の1つが王政復古(と国家神道)であったが、国家権力とは独立していたキリスト教とは違い、神道はとても国民に浸透し生活に密着していたため、知られているように王権神授説-絶対王政-ファシズムと結びつき、様々な問題を引き起こしてしまった。
天皇はその始祖たる神武天皇からして神の血筋に連なると『古事記』にあり、またそれを証明する神器の1つを有する以上天皇はまさに現人神であるが、昭和天皇がアメリカに「人間宣言」をさせられた為、法律的には「日本国の象徴・国民の代表」という扱いになった。
(ただし「政治権力と分離させられただけであり、本来の意味で天皇は今だ現人神である」と考える人も少なくないという。)
一応、現代でも「現人神」は存在する。ネパールにおけるクマリ、ラスタファリ運動におけるハイレ・セラシエI世など。日本の諏訪信仰における諏訪氏・守矢氏もこれに当たる。
また神仏そのものではないものの、衆生を導くために諸仏や高僧が転生したとされる「ダライ・ラマ」も広義での現人神といえるだろう。
またユダヤ教では王が「最高司祭、かつ政治・軍事を掌握すべき者」としており、神の化身とは言わないまでも王が地上における神意の代理人とすべきであるとしている。
転じて現代特にネット上では、偉大な業績・行為をもった人物が今もそこにいるという意味をして「神」のようにネタで用いられている。その対象は故マイケル・ジャクソンや江頭2:50などの芸能人から、藤崎瑞希にヲタケンなど、不遜なほど多岐に渡る。
実在する「現人神」の愛称を持つ人物
プロスポーツの世界などにおいて、ファンから「現人神」という愛称をつけられる選手・人物を以下に記す。
初芝清
「幕張のファンタジスタ」「初芝神」の異名を取った元プロ野球選手。その野球人生のすべてを千葉ロッテマリーンズに捧げた”ミスター・マリーンズ”。また、小坂誠の「小坂ゾーン」を発動させるキーパーソン。
”ファールフライを明後日の方向に取りに行く”といった言葉に代表される打撃・守備で数々の珍プレーを残しながら「守備には一家言ある」と物議を醸す発言、「草野球チームに紛れ込んでも違和感がない」と評され、ずんぐりむっくりの体型にチャームポイントの眼鏡とファンから愛される風貌を持ちながら、数々の(珍?)偉業を成し遂げてきた男である。
そのあまりに有名なエピソードはこんな感じ。
・1995年シーズン最終戦で本塁打を放ち打率3割。同時にパリーグ史上最低の数字80打点で打点王を獲得。
・1996年スランプに陥るも、後のチャームポイントとなるメガネを得て復活。
・散髪に行き「ブリーチ」の意味が解らず、突然金髪に。ファンからは先述の風貌などから不評を買い、元に戻す。
・2000年キャンプでは30mダッシュの練習で初芝神に対し「でぶは2倍」。
・”怪物”松坂大輔のルーキーイヤーに松坂キラーとして活躍。野球ゲームに同様の設定が付いたり。
・2001年、イチロー神を特集するアメリカの番組で写真を間違えられ、初芝神の写真が放送される。
なお、同様の事件が他にも2度あり、岩村明憲の際に今江敏晃と、福留孝介は松中信彦と間違われた模様。
・引退セレモニーが行われた試合で代打を告げられる前にファンに発見され、歓声が上がる。
迎えた打席では死球を受け、さらに引退セレモニーではマイクの電源が入っていないハプニングに見舞われる。
・引退セレモニー後にもかかわらず、レギュラー今江の負傷により3試合続けてスタメン出場。
チームメイトから「早く引退してくれ!」と冗談を飛ばされる。
・同年プレーオフにも出場。第2ステージ第5戦ではボテボテの内野ゴロを放つも、川崎宗則とバティスタが交錯。
この間全力疾走していた甲斐もあり内野安打となり、福浦の安打、里崎の起死回生のタイムリーヒットに繋がった。
この安打でマリーンズは日本シリーズへの切符をつかむ。初芝神が現人神として再認識される試合であった。
・ちなみにこの年の日本シリーズは阪神ファンの黒歴史「33-4」で有名なアレ。
謎の濃霧、3試合連続2ケタ得点、4連勝でロッテ日本一と言った所業は、まさに初芝神がもたらした物であると
崇める信者も多い。
江頭2:50
数々の伝説を持つお笑い芸人。愛称はエガちゃん。
説明不要と思いますが、どういう人かは記事をご覧下さい。→ 江頭2:50
その行動力であるが故に、彼の熱狂的な信者となるか、絶対的な拒否反応を示すかの両極端に分かれる。
創作における自称現人神
その他、「現人神」を自称している創作物のキャラクターを以下に記す。
東風谷早苗
「東方Project」のキャラクター。奇跡を起こす程度の能力を持つ、守矢神社の風祝(かぜはふり)。
同作における土着神、洩矢諏訪子の血を引くとされている。これらは上述の守矢氏をモデルとしている。
『祀られる風の人間』(東方風神録)『山の新人神様』(東方星蓮船)の二つ名を持つ。
ムラクモ
自身を「現人神」と称し、自ら創設した秘密結社ゲゼルシャフトを率いて全世界に最終戦争を仕掛ける。
「増えすぎた人類は殺してでも減らすべき」という思想を持ち、同戦争による人類の大量虐殺を目論んでいる。
「転生の法」なるものを習得しており、これにより代えの肉体さえ用意すればいくらでも生き返る事が可能である。
ムラクモの声を担当した松本忍氏は、同ゲーム関連のラジオにて「あらひとがみ」と読むところを「げんじんしん」と誤読してしていた(ラジオの出演者に訂正され気付いた模様)。このため、ムラクモの別称も「げんじんしん」と呼ばれるようになった。
Tzee Xicu the Manifest
「FINAL FANTASY XI」に登場するハイレベルノートリアスモンスター(要はボスモンスター)。名は「ヅェー・シシュ・ザ・マニフェスト」と読み、和訳すると「預言者ヅェー・シシュ」といったところか。作中に登場する鳥の獣人「ヤグード族」を統率する存在であり、ヤグード教団で最高の地位たる「現人神」に就いている。性別は女性。
「神が肉体を拠り代にしているだけであり、死しても他の者に転生して新たな指導者になる」という特徴を持っている。
元々ヤグード族ミンダルシア大陸の土着民であり、タルタル族を支配していたが、後にウィンダス連邦から反撃を受けた。ヅェーはこの反撃時に離散した一族の出であり、「美声の珍鳥」として幼い頃から酒場で使役させられていたという。ある時ウィンダスから脱走し故郷のオズトロヤ城へ帰還するが、ヤグード語を話せなかった彼女は教義異端者として危うく処刑されそうになる。しかしそこに居合わせた神聖戦闘楽団の楽長が彼女の美声を前にして「殺すには惜しい」と助命し、そのまま楽団入りし一命を取り留めた。
その後「その美声は神の音域にまで達している」と教団内で聞き惚れられ、時の現人神ソー・ルマが彼女を次代の現人神として神託。現人神の座を与えられる。だがその直後、闇の王率いる獣人連合軍がミンダルシア大陸に上陸し、ヤグード族はこれに屈服。戦果を上げ王に称えられながらも彼女は頭を垂れる屈辱を甘んじる。闇の王が討たれた後オズトロヤ城に帰還したが、直後にウィンダス連邦の侵攻を受けてオズトロヤ城は陥落、ヅェーも行方不明となったが、(プレイヤー達の)現代にて復活を遂げた。
しかし本来短命であるはずのヤグード族を鑑みれば、彼女の存命期間は異様に長い。水晶大戦時から現代までの長い不在期間といい、PCに何度も倒されることといい、現代のシシュは転生を果たし先代を名乗った元別人なのではないかとも言われている。
素晴らしい美声を持つので詩人かと思いきやジョブは召喚士。睡眠、スタンに絶対耐性をもち、さらに通常攻撃に付加する麻痺が鬼の威力を誇る。だがこれはあくまで転生した後の現代の話であり、クリスタル大戦中の彼女はさらに強力な強さを誇る。
女性で美声でその波乱万丈な人生設定、作中で語る台詞のカリスマから、敵キャラで人外キャラながら一部プレイヤーにもファンがいる。
「亜人じゃねーか!」と突っ込んではいけない。
ヨシロー天皇(Emperor Yoshiro)
Command & Conquer: Red Alert 3に登場する人物。旭日帝国(Empire of the Rising Sun)の天皇である。
自らを現人神と称して帝国臣民の上に君臨し、帝国を統治している。
世界を制するのは社会主義や資本主義を掲げた西洋の野蛮人ではなく、
ブシドー(※注:武士道にあらず)を信ずる帝国であり、それが自分たちに約束された天命であると固く信じている。
また文武に通じ冷静で威厳に満ち、非常に支配者然とした人物である。
連合軍とソビエトが戦争をしている間、最新兵器を秘密裏に製造しながらずっと機をうかがっていた。
そして刻は満ち、ソビエトを最初の目標とし大規模攻撃を仕掛けることになる。
三勢力のトップの中で唯一専用兵器(Greater King Oni)を所持しており、
ソビエトシナリオではヨシロー天皇との直接対決に臨むことが出来る。
関連項目
- 9
- 0pt