西九州新幹線とは、九州旅客鉄道(JR九州)が運営する新幹線である。
概要
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九州新幹線新鳥栖駅から分岐して長崎駅へ至る路線で、整備新幹線上は福岡市~長崎市を結ぶ新幹線である(博多駅~新鳥栖駅間は九州新幹線と共用を予定)。
2022年9月23日[1]に佐賀県武雄市にある武雄温泉駅から長崎県長崎市にある長崎駅まで暫定開業した。暫定開業時は武雄温泉駅でリレー特急に接続し、博多駅まで連絡する。
路線名称が決まるまでは九州新幹線(鹿児島ルート)の別線と言う扱いでしか無かったため、「長崎新幹線」・「長崎ルート」や「西九州新幹線」・「西九州ルート」などと呼ばれていた。もともと、長崎ルートが主に用いられていたが、佐賀県への配慮により公的な名称は西九州ルートに変更され、最終的に路線名称に「西九州新幹線」が採用されることになった。なお、厳密には計画区間のままである博多駅〜新鳥栖駅〜武雄温泉駅間は、西九州新幹線には現時点では含まれていないが(あくまで整備新幹線としては九州新幹線のままであるため)、将来的に西九州新幹線に含まれる可能性が高いため、この記事でまとめて記述する。
なお、後述する理由から新鳥栖駅〜武雄温泉駅間はルートすら決まっていない状況である。
使用車両・列車名
列車名は「かもめ」となることが発表されている。使用車両はN700S・6両編成であり、普通車自由席3両・普通車指定席3両となる。グリーン車指定席は乗車時間が短いためか暫定開業時点では存在しない。
武雄温泉駅で暫定的に接続する特急(博多駅〜武雄温泉駅間)については「リレーかもめ」となる。旅客案内上は1本の列車として扱われ、「リレーかもめ 長崎行き」「かもめ 博多行き」として案内される(九州新幹線の部分開業時に取られていた案内手法である)[2][3]。
なお、博多駅〜武雄温泉駅〜佐世保駅・ハウステンボス駅間を運行する特急「みどり」「ハウステンボス 」から、西九州新幹線に乗り換えることも可能であり、接続する列車については「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」と案内される(「ハウステンボス(リレーかもめ)」は上りの臨時列車のみ)。なお、この場合の案内表記については「佐世保(長崎)」のような表記になっている。
結果として接続するリレー特急の形式は885系・787系・783系の3種類となる。この対面乗り換えの詳しいことは武雄温泉駅の記事を参照。
運行形態
2012年時点では32往復運行するとされていたが、2022年暫定開業時点では22往復になる(2022年3月ダイヤ改正時点では「かもめ 」は22往復であるので同等本数である)。
うち下り5本/上り7本は嬉野温泉駅通過、下り5本/上り2本は嬉野温泉駅・新大村駅通過の速達型となる。
案内上、各駅停車はかもめ、嬉野温泉駅通過はかもめ、嬉野温泉駅・新大村駅通過はかもめと色が変わる[4]。
西九州新幹線は暫定開業時点では途中駅に待避できる駅は存在しないので[5]、停車パターンに関わらず先発した列車が先着である。
また、新大村駅に車両基地として大村車両管理室が設置されることから、朝に下り2本・深夜に上り1本新大村駅発着が設定される。ただし、出入庫列車全てが営業運転をするわけでなく、長崎駅との間を回送列車として営業運転しない運用も存在する(ちなみにこの回送列車が唯一の諫早駅通過列車である)。
リレー特急については「リレーかもめ」が下り18本/上り16本運行される。残りの下り4本/上り6本は「みどり(リレーかもめ)」と接続する。基本的に博多駅発着であるが、「リレーかもめ」1往復のみ門司港駅発着となる。
西九州新幹線で臨時列車が運行される場合や、「みどり」が臨時で「ハウステンボス」と連結する場合は、 「ハウステンボス(リレーかもめ)」とも接続する場合がある。
金・土曜ならびに休日にはこれに加えて、4往復が臨時列車として設定される(「リレーかもめ」も同様)。
なお、山陽新幹線・新大阪方面との乗り換えは博多駅で行うものとしてダイヤが組まれており、新鳥栖駅での乗り換えは待ち時間や料金面からして推奨しない。ただし、eきっぷやスーパー早特きっぷでは新鳥栖駅乗り換えの設定があり、後者については新鳥栖駅乗り換えでも同額となっている。
九州新幹線・熊本・鹿児島中央方面との間を乗り換える場合は、新鳥栖駅で乗り換えることになる。
運賃・料金
西九州新幹線の運賃・料金体系については2022年4月27日に発表された(リンク)。
まず、運賃計算のために用いる営業キロであるが、諫早駅〜長崎駅間は長崎本線と並行しているためこれらの営業キロを準用されることになる。それ以外の区間は建設キロを営業キロとする[6]。
長崎本線の肥前山口駅(江北駅)〜諫早駅間の営業キロは60.8kmであるのに対し、西九州新幹線を経由した場合は58.4kmと短くなる。
料金については、当面の間武雄温泉駅で乗り継ぎとなることから、武雄温泉駅で乗り継ぐ場合は新幹線特急料金と在来線特急料金をそれぞれ1割引し、10円未満を切り捨てて合算となる[7]。これは自由席特急料金の場合であり、指定席特急料金については合算後に指定料金を足すことになる。
博多駅〜長崎駅間の「かもめ」の指定席特急料金が2,730円(運賃込みは5,590円)なのに対し、西九州新幹線開業後の乗り継ぎの場合は3,190円(運賃込みは6,050円)となる。
割引きっぷについては運賃込みの「九州ネットきっぷ」が「かもめネットきっぷ」に変わり、ネットきっぷが3,150円→4,200円、早特3が2,550円→3,600円、早特7が2,340円→3,200円(ただし早特7は12月末2023年9月末までの期間限定)となる。ネットきっぷと実質同額であった「2枚きっぷ(指定席)」は廃止となるため、割引料金で利用するにはインターネット予約が必要になる。なお、料金のみの割引きっぷである「eきっぷ」は現行2,200円(運賃込みは5,060円)だが、新幹線開業後は2,660円(運賃込みは5,520円)となる。
これらの乗継割引料金(幹特在特)は基本的に武雄温泉駅で「かもめ」と「リレーかもめ」(「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」含む)が対面乗り換えとなり、1本の列車として扱うこととしたため適用されるものであるが、一旦武雄温泉駅で改札を一時出場する必要がある「リレーかもめ」扱いとならない「みどり」「ハウステンボス」(佐世保・ハウステンボス方面は対象外)、ならびに「ふたつ星4047(武雄温泉駅→江北駅利用のみ)」との乗り継ぎでも適用される。
このため、「リレーかもめ」扱いされない「みどり」「ハウステンボス」の1往復のみ停車する吉野ヶ里公園駅も西九州新幹線と乗り継ぐ場合であれば割引料金が適用されることになる。
こう言った乗り換えに対応するため、武雄温泉駅では自動改札は特別下車扱いの一時出場に対応している(下車前途無効と書かれているきっぷでも武雄温泉駅で出場することが可能)。
なお、「36ぷらす3」にはこの乗継割引料金は適用しない。
ちなみに長崎駅の隣にある浦上駅は優等列車が停車しなくなるが、救済措置として「かもめネットきっぷ」等の割引きっぷでは長崎駅発着で浦上駅で乗下車出来ることになっている(通常の乗車券・特急券で長崎駅で乗り換える場合は長崎駅で分割した乗車券が発券されることになる)。
なお、喜々津〜西浦上駅間の長与回りの各駅は諫早駅で在来線に乗り換えた場合のみ追加運賃不要であるが、長崎駅から乗り換えた場合は、浦上駅からの運賃が別に必要となる(従来の「九州ネットきっぷ」等の割引きっぷも同様)。通常の乗車券では長崎駅〜浦上駅間の分岐駅通過の特例と選択乗車が適用されて追加運賃不要となる。
ところで2023年3月末までの期間限定で佐世保駅〜武雄温泉駅〜長崎駅間の「かもめネットきっぷ」が発売される。直通運転がある快速「シーサイドライナー」を利用した場合とどちらが早いかは乗車する時間による。実験的要素か単に佐世保市民にも新幹線に乗ってもらいたいだけかもしれない。なおこのきっぷは2023年4月以降も発売されている。
なお、西九州新幹線の隣接駅ならびに新大村駅〜長崎駅間を利用した場合は、自由席特急料金870円を適用する。
乗り換え・ICカード・チケットレスについて
SUGOCAを始めとした各種交通系ICカードについてはリレー区間のうち博多駅〜佐賀駅間のみ乗車券として使用可能であり、特急券は別に必要である。
また西九州新幹線はエクスプレス予約には対応していないため、ICカードだけで乗車することは不可能である。よって紙の特急券・乗車券または割引きっぷ・フリーきっぷが必要となる。
なお、新大村駅・諫早駅・長崎駅は在来線がSUGOCAの長崎エリアに属しているため、乗り換えた際に在来線側でICカードを使うことは可能。
なお、諫早駅・長崎駅は乗り換え改札が存在するが、乗り換え改札はICカードに対応していないため、乗り換え改札の駅係員に対応を依頼するか、一度出場する必要がある。
2024年度に武雄温泉駅(ならびに江北駅)もSUGOCAに対応する予定であるが、新幹線乗り換え時の取り扱いは2022年時点で不明である。
またチケットレス乗車については2024年秋に自動改札機にQRコード読取機を設置し、「JR九州インターネット列車予約」で一部割引きっぷのQRコード表示に対応させることで実現する予定である(「リレーかもめ」も含む)。
駅一覧
※博多駅〜新鳥栖駅〜武雄温泉駅間は九州新幹線(西九州ルート)(西九州新幹線)としてはルートは未定。便宜上、リレー区間の特急停車駅を記載する。また、「リレーかもめ」は門司港駅発着が設定されるが、門司港駅〜博多駅間の停車駅は記載しない。
※吉野ヶ里公園駅、神埼駅、(臨)バルーンさが駅は「リレーかもめ」「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」は停車しないが、「みどり」「ハウステンボス」の一部が停車(神埼駅、バルーンさが駅は臨時停車)し、乗り継ぎ割引(幹特在特)が適用されるため記載する[8]。ちなみに西九州新幹線のeきっぷではこれら3駅の料金設定も記載されている(参考)。
- 凡例
- 福 :福岡市内駅(特定都区市内)
- 停車駅
- 博多駅〜武雄温泉駅間:「リレーかもめ」「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」
武雄温泉駅〜長崎駅間:「かもめ」 - ●:停車、|:通過、▲:一部停車
- ※リレー区間
- JB鹿児島本線:博多駅〜鳥栖駅間、JH長崎本線:鳥栖駅〜江北駅間、■佐世保線:江北駅〜武雄温泉駅間
なお、リレー区間では同一線路を使用する路線は接続路線から省略する。
- | 各 停 型 |
速 達 型 |
駅名 | 接続路線 | 所在地 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
「リレーかもめ」は門司港駅JA31まで直通運転 | ||||||||
※ リ レ | 区 間 |
● | ● |
00
|
博多駅 福 はかた |
九州旅客鉄道(JR九州): JA鹿児島本線(小倉方面)・JC篠栗線(福北ゆたか線) 西日本旅客鉄道(JR西日本):山陽新幹線・博多南線 福岡市地下鉄:K空港線・N七隈線 |
福岡県 | 福岡市 博多区 |
|
▲ | ▲ |
08
|
二日市駅 ふつかいち |
筑紫野市 | ||||
● | ● |
15
01
|
鳥栖駅 とす |
九州旅客鉄道(JR九州):JB鹿児島本線(熊本方面) | 佐賀県 | 鳥栖市 | ||
● | ● |
02
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新鳥栖駅 しんとす |
九州旅客鉄道(JR九州):九州新幹線 | ||||
| | | |
05
|
吉野ヶ里公園駅 よしのがりこうえん |
※「みどり」「ハウステンボス」1往復が停車 | 神埼郡 吉野ヶ里町 |
|||
| | | |
06
|
神埼駅 かんざき |
※秋の九年庵一般公開時に 「みどり」「ハウステンボス」の一部が臨時停車 |
神埼市 | |||
● | ● |
08
|
佐賀駅 さが |
九州旅客鉄道(JR九州):■唐津線 | 佐賀市 | |||
| | | | (臨)バルーンさが駅 ばるーんさが |
※佐賀インターナショナルバルーンフェスタ開催時に 「みどり」「ハウステンボス」の一部が臨時停車 |
|||||
▲ | ▲ | 江北駅 こうほく |
九州旅客鉄道(JR九州):■長崎本線(肥前鹿島・多良方面) | 杵島郡 江北町 |
||||
● | ● | 武雄温泉駅 たけおおんせん |
※当面の間は乗り換えが必要 | 武雄市 | ||||
西 九 州 新 幹 線 |
● | ● | 九州旅客鉄道(JR九州):■佐世保線 | |||||
● | | | 嬉野温泉駅 うれしのおんせん |
嬉野市 | |||||
● | ▲ | 新大村駅 しんおおむら |
九州旅客鉄道(JR九州):■大村線 | 長崎県 | 大村市 | |||
● | ● | 諫早駅 いさはや |
九州旅客鉄道(JR九州):■長崎本線・■大村線 島原鉄道:島原鉄道線 |
諫早市 | ||||
● | ● | 長崎駅 ながさき |
九州旅客鉄道(JR九州):■長崎本線(浦上・長与方面) 長崎電気軌道:■□■1・2・3号系統(長崎駅前停留場) |
長崎市 |
未着工区間(新鳥栖駅〜武雄温泉駅)
未着工区間である新鳥栖駅〜武雄温泉駅間については下記の案が検討されている。詳細は後述。
- フル規格案A:新鳥栖駅で分岐し、佐賀駅を経由して武雄温泉駅に至るルート。与党側はこのルートを推進している。
- フル規格案B:新鳥栖駅で分岐し、長崎自動車道に並行して武雄温泉駅に至るルート。佐賀市北部に新駅を設置。
- フル規格案C:筑後船小屋駅で分岐し、佐賀空港を経由して武雄温泉駅に至るルート。
- フル規格案D:新鳥栖駅または久留米駅で分岐し、佐賀駅と佐賀空港の中間を経由して武雄温泉駅に至るルート。AとCの折衷案。
- フリーゲージトレイン:佐賀県側は最高時速200km/hであれば運行できる可能性を主張している(元々は270km/h)。
- スーパー特急:実現には武雄温泉駅〜長崎駅間の線路を標準軌から狭軌に変更する必要がある(もしくは三線軌条化)。
- ミニ新幹線:実現には少なくとも新鳥栖駅〜武雄温泉駅間の線路を狭軌から標準軌に変更する必要がある(もしくは三線軌条化)。
なお、スーパー特急ならびにフリーゲージトレインで検討されていた時は、佐賀駅・肥前山口駅(江北駅)に停車する予定とされていた。
発車メロディ・車内メロディ
発車メロディ・車内メロディは向谷実が作曲を担当する。発車メロディについては各駅ごとに異なるメロディが使用される。
詳細はこちらを参照。
開業による在来線の変化
2022年9月の西九州新幹線の暫定開業では、並行在来線である長崎本線(肥前山口駅(江北駅)〜長崎駅間)については、肥前山口駅(江北駅)〜諫早駅間については設備が一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センターに移管される上下分離方式となるものの、全区間がJR九州運営のままとなる。ただし、維持費削減の観点から肥前浜駅〜長崎駅間が非電化となり、気動車での運行となる(JR九州直営の諫早駅〜長崎駅間も非電化となるのは、電化区間が孤立してしまうのを避けるため)。
これにより普通列車は基本的に肥前浜駅で乗り換えが生じる予定(当初は肥前鹿島駅〜長崎駅間を非電化にする予定であったが、折り返しの都合や鹿島市の観光客誘致の関係で変更された)。特急列車は後述の肥前鹿島駅発着の特急や、新たに設定される観光特急「ふたつ星4047」を除いて廃止される。「36ぷらす3」は肥前浜駅に寄る形で佐世保駅発着となる。
他に並行する在来線である佐世保線・大村線は引き続きJR九州が運営する。このうち、佐世保線は高速化に向けて地上設備の更新が進められているほか、振り子式車両である885系が導入された。そんなに時間短縮しなかったので長崎県側からはクレームが入ったが
大村線については新大村駅に在来線駅を併設するほか、大村車両管理室横に新駅(大村車両基地駅)を開業させる。
特急「かもめ」(博多駅〜長崎駅間)は、新幹線に列車名が移行するため廃止され、代わりにリレー特急となる「リレーかもめ」(博多駅〜武雄温泉駅間)が運行される。これにより、肥前鹿島駅に特急が通らなくなるため、代わりに肥前山口駅(江北駅)〜肥前鹿島駅間に7往復特急「かささぎ」が運行される(なお開業3年後に5往復に減便される予定)。また門司港駅・博多駅〜佐賀駅間のみ運行する特急も同様に「かささぎ」になる。
ちなみにこの影響で長崎本線・大村線を運行する快速「シーサイドライナー」(佐世保駅・竹松駅〜長崎駅間)は、特急の待ち合わせが無くなることから速達性が向上することになる。
このほか、観光特急としてキハ40・47を使用した「ふたつ星4047」が武雄温泉駅〜長崎駅間(長崎行きは長崎本線経由、武雄温泉行きは大村線経由。双方とも喜々津駅〜浦上駅間は長与経由)で運行される。
歴史
1972年に建設すべき新幹線として告示され、1973年に整備新幹線に指定される(福岡市から筑紫平野まで鹿児島ルートと共用し、そこから佐賀市を経由して長崎市に至るとされた)。1985年時点の計画は博多駅〜新鳥栖駅間を鹿児島ルートと共用し、佐賀市・早岐駅を経由して、長崎駅に至るとされていた。これは原子力船「むつ」が1974年に試験航行中に放射線漏れを起こし、1978年に修理を佐世保市にある佐世保重工業が受け入れる代わりに新幹線を佐世保市内を通すように要望したためである。
しかし、国鉄民営化された後、運営する予定のJR九州が早岐経由では遠回りであり採算が取れないことから難色を示し、全く着工できない状況になった。結局着工に向けて1998年に嬉野温泉駅を経由する現在のルートに改められた[9]佐世保市を中心に反対の声が強かったが、ルートは決まり、佐世保市に対しては佐世保線を高速化させることや振り子式特急車両を導入することで合意した。
当初はスーパー特急方式とされたが、後に高速化のためにフリーゲージトレインを導入する方針に変更される。この時点で新鳥栖駅〜武雄温泉駅間が在来線(長崎本線・佐世保線)のままだったのは、佐賀県江北町とは肥前山口駅を新幹線停車駅にすることと引き換えに経営分離に合意したことや、佐賀県区間の地盤が弱くフル規格とすると難工事になる恐れがあったためであった。
しかし、肝心のフリーゲージトレインが試験で問題点が数多く露呈して武雄温泉駅〜長崎駅間の開業に間に合わない可能性が出てきた上に、JR西日本がフリーゲージトレインの山陽新幹線乗り入れに消極的なこともあって[10]、フリーゲージトレインの導入は先送りされる(最終的に2017年6月に取りやめ)。武雄温泉駅〜長崎駅間には通常のフル規格車両(後にN700Sに決定)が投入されることになり、博多駅〜武雄温泉駅間は在来線特急を運行して武雄温泉駅で乗り換えさせることになった(原則として対面乗り換え[11])。これに伴い、在来線区間で単線であった佐世保線・肥前山口駅〜武雄温泉駅間の複線化予定が、大町駅〜高橋駅間に縮小されることになる[12]。
最終的にフリーゲージトレイン導入が見送られたことから、新鳥栖駅〜武雄温泉駅間についてフル規格前提で再検討されることになったが、負担が増える上に博多駅までの時間短縮効果が少ない佐賀県側(知事は山口祥義)が反発。国としては2023年に着工する予定でフル規格整備を進めようとしたが、佐賀県が「(同区間においては)フリーゲージならばと合意した。フル規格新幹線を求めていないし求めたこともない。」と国がフル規格ありきで話を進めたこと対する反発もあって話が進まず、2020年7月がリミットとなる環境アセスメントを断念している。佐賀県側はフリーゲージトレインの再検討、ミニ新幹線・スーパー特急導入含めて「幅広い協議」をするよう要望し、現在は時間をかけて議論中である。
現在のところ、佐賀県はあくまでフリーゲージトレイン前提なのを崩してはいないものの、フル規格の場合に佐賀駅経由だけでなく、佐賀空港経由、長崎自動車道並行の計3ルートの整備計画の試算をする様に要望している。このうち佐賀空港経由ルートはJR九州初代社長が提案するなど昔から存在している構想であり、滑走路が少ない・時間制限がある福岡空港の代替として佐賀空港を利用しやすくできるほか、分岐駅を筑後船小屋駅にすることで佐賀県として建設距離を短くできるなどメリットがある(肥前山口駅(江北駅)に新幹線の駅を設置することも可能)。ただし、筑後船小屋駅自体は福岡県にあるため福岡県に新たな負担が生じるほか、予定ルート上は海抜0m地帯であるため難工事になることが予想される。一方、長崎自動車道並行ルートは新鳥栖駅分岐のままとできるほか、長崎道と並行させることで物流拠点を整備した時の利便性が良くなる。佐賀市北側に新駅が設置されれば佐賀県北部へのアクセスにも繋がる(ただし肥前山口駅(江北駅)に通すのは難しい)。
そもそも佐賀駅から九州新幹線がある新鳥栖駅までは普通列車で20分程度でいける上に、博多駅自体も距離が離れていないため、佐賀県側からすれば佐賀市中心部に新幹線を通すメリットが薄く(特急から新幹線に置き換えれば、値上げを嫌って普通列車に流れてもおかしくない距離である)、佐賀市中心部に新幹線を通す必要は無いと言う意思表示とも取れる。
近年はリレー区間となる佐世保線が水害に弱いと言う問題点が浮上しており(2019年と2021年に豪雨によって一時不通となった)、フル規格で作る必要があるとの声が一部では上がっている(在来線をそのまま使うにしても対策工事が必要であり、複線化の際に嵩上げはされた模様)。
また2021年には佐賀市長がフル反対派の秀島敏行から「協議を見守る」とした坂井英隆に交代したことや、2022年の参議院選挙に関連した調査ではフル賛成派が反対派を上回り(しかも野党支持層すら賛成派が多い)、暫定開業が近づくにつれて、佐賀県民の中でもフル規格での建設が肯定的になりつつある。
結局、2023年には佐賀県側が佐賀空港に近いルートであれば議論に応じるとしたことから、前述の佐賀駅併設ルートと佐賀空港ルートの中間・有明海沿岸道路沿いを通るルートが新たに検討されることになった。
このルートであれば佐賀市内に新設されるだろう駅は、佐賀市の市街地はそこまで遠くない上(佐賀県庁の位置からすると佐賀駅と距離はあまり変わらないものと思われる)、佐賀空港へのアクセスもバス乗り換えが必要なものの佐賀駅よりは距離が短くなることから、全線開業への解決策として与党側で検討されることになった。
九州新幹線との分岐駅については確定してないが、佐賀県の負担を軽減するために久留米駅分岐とする報道が見られる(ただし、負担が生じる福岡県知事は久留米分岐には消極的である)。
並行在来線問題
西九州新幹線の並行在来線区間は長崎本線の肥前山口駅(西九州新幹線開業と同時に江北駅に改称)~長崎駅間であるが、結論は当面の間は全区間をJR九州が引き続き運行することになっている。
当初、このうち肥前山口駅(江北駅)~諫早駅間については佐賀県・長崎県が設備を保有する上下分離方式とし、肥前山口駅(江北駅)~肥前鹿島駅間をJR九州が、肥前鹿島駅~諫早駅間を第3セクター会社が運行するとしていた。
しかし、この並行在来線分離計画に廃止を懸念した佐賀県鹿島市が合意しなかったため、西九州新幹線の工事がストップしていた。なお、鹿島市は「JR長崎本線存続期成会」を結成し、第3セクター化への反対や長崎本線の複線化を主張していたが、後者については時間短縮効果が無いことや、複線化に60年かかること、原則佐賀県・長崎県が工事費用を負担しなければならなくなることから、長崎県を中心に否定的であった。
その後、西九州新幹線をさっさと着工させたい佐賀県、長崎県はJR九州との協議で、肥前鹿島駅~諫早駅間についても鉄道施設は佐賀県と長崎県が管理し、開業後20年間はJR九州が運営する、いわゆる上下分離方式とすることで2007年に合意。これで経営分離ではなくなり、鹿島市が合意する必要も無くなったので、西九州新幹線の工事は再開されることになった。鹿島市はこの案に納得したことから、「JR長崎本線存続期成会」は2009年に解散した。
2008年に運営の負担は長崎県と佐賀県で2:1とすることで両県が合意、2016年にはFGTの開発の遅れからリレー方式での暫定開業が確定したことから、鉄道施設が両県に無償で譲渡されることになり、また開業後23年間は一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センターが保有し、JR九州が運営することとなった(24年目以降は別途協議される予定)。
ただし、第3セクターへの分離の条件として運行本数増加や新駅設置があったことから、一部ではこれらの条件が実施されないのではとの声もある。また、2019年になって、運営費用が当初の想定を上回ることから2:1の約束を長崎県が反故にしようとしたことに対し佐賀県が反発するなど、問題は現在も存在している。
なお、フル規格やミニ新幹線となった場合は新鳥栖駅~武雄温泉駅間も並行在来線となるが、佐賀県がそもそもその計画を認めていない(FGT、スーパー特急、リレー方式なら在来線が維持されるので議論の必要すらない)ため、現在まで特に議論されていない。なお、与党プロジェクトチームの見解としてはフル規格で開業した場合もこの区間はJR九州が引き継ぐべきだとしている(あくまで佐賀県はフル規格前提ではないため並行在来線問題は当分議論とはならない)。
関連動画
関連項目
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脚注
- *開業日については台風を出来るだけ避けたい思惑や鉄道開業150周年となることから10月開業案も存在していたが、秋の行楽シーズンに間に合わせたいことや10月からデスティネーションキャンペーンが開始されることもあって、前倒しされることになった。台風は9月18日・19日に九州に襲来したが、西九州地域の被害は特に無かったため、予定通り開業を迎えている(ただし一般向け試乗会は中止となった)。
- *嬉野温泉駅〜長崎駅間の上りホームの案内板では「新鳥栖・博多方面」と記載されており、始めから1本の列車扱いする前提である。「佐賀」が記載されていないのは、おそらく新鳥栖〜武雄温泉間のルートが確定してないため。
- *「かもめ」については誤乗防止の観点から武雄温泉駅到着時には列車側面の行き先が「武雄温泉」と表示が切り替えられる(開業初日は切り替え漏れが多発していたが)。ちなみにかもめ64号の行き先である「門司港」は表示できないらしく、「博多」を表示・案内して誤魔化している。
- *初日に設定ミスで嬉野温泉駅・新大村駅通過でもかもめと表示されていたのはここだけの秘密。
- *非常時等の設備として起終点となる武雄温泉駅・長崎駅に予備用ホームが存在する。
- *新大村駅〜諫早駅間で並行する大村線(地方交通線)とは計算キロが変わることになるため、同区間では新幹線利用と在来線利用では運賃が異なることになる。
- *フリーゲージトレインを予定していた時期は、乗り換え不要であることから、ミニ新幹線で用いられている幹在特(在来線特急料金を3割引し、10円未満を切り捨てて新幹線特急料金に合算)で試算されていた。
- *なお、西九州新幹線の駅の電光掲示板による停車駅案内表示では吉野ヶ里公園駅、バルーンさが駅に停車する設定に対応している。
- *この際にいくつかルート比較検討が行われており、他に三河内駅に新幹線駅を設置するルートや、早岐駅〜諫早駅間のみスーパー特急用の新線を建設するルートも存在した。
- *JR西日本が乗り入れに消極的な理由としては、現在山陽新幹線では100系はおろか300系も引退していて285km/h時代になっており、300km/h運転の列車も多くなるがフリーゲージトレインでは現状だと速度が270km/h程度と遅い事や、車体が重く線路の保守費が多く掛かる事、更には軌道変換に時間が掛かっている事などがある。
- *武雄温泉駅では在来線特急が発着する10番線と新幹線が発着する11番線が改札を通らずに対面乗り換えできる(かつての九州新幹線・新八代駅と同じ)。なお、対面乗り換えできない12番線も整備されているが、これは予備ホームとなり通常は使われない模様。ただし、緊急時に対面乗り換え出来ない場合も想定されている。
- *高橋駅〜武雄温泉駅間は正確には狭軌の単線と標準軌の複線の並列となる予定だったようである。フリーゲージトレインの導入が無くなったことにより、武雄温泉駅以東の整備方式が未定になってしまったため取りやめとなった模様。肥前山口駅(江北駅)〜大町駅間は費用対効果の面から取りやめたようであるが、一部では複線化対応の準備工事はされている。
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