「なにしろ僕は世界でたった一人この職業に従っている人間なんだからね」
「世界唯一の民間諮問探偵さ。探偵事件の最高にして最後の受理者は僕なのさ」
『四つの署名』
シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)とは、架空の私立探偵である[1]。
英国の作家、アーサー・コナン・ドイルが発表した作品群・シャーロックホームズシリーズに登場する探偵。初出は1887年発表の『緋色の研究』。
世界でもっとも有名な探偵の一人であり、ホームズ自身の名が、推理小説における『名探偵』の代名詞としても使われる。
推理小説そのものはエドガー・アラン・ポーがその先鞭をつけたが、このホームズの登場とその人気によって、「探偵が難事件を解決する」という『探偵物』の様式が確立した。その結果、探偵物を含む推理小説が、大衆の読み物としての一ジャンルとして大きな人気を博す事となったのである。
内容は、ロンドンに居を構える探偵業を生業とするシャーロック・ホームズが、助手兼記録係の友人ワトソン(ワトスン)と共に様々な事件を解決に導くというもの。
シャーロック・ホームズシリーズの短編・長編は「ワトソンがホームズの事件解決までのあらましを記録し、筋道たてた物語にした上で公表している」という設定のもとで執筆されている。
ただし、短編『獅子のたてがみ』および『白面の兵士』はホームズ自身が珍しく筆をとった、という体裁で書かれている。
イギリス・ロンドン、ベイカー街221Bにあるアパートに間借りしている。
シリーズ最初の長編である『緋色の研究』でワトソンと出会ってからは、彼がちょくちょくアパートを訪ねている。
身長は183cm。痩せており、鷹を思わせる鋭い鼻と突き出て角ばった顎が特徴的と表現されている。
常人離れした推理力、観察力を持つ。推理の基礎となる知識も相当なものであり、過去の犯罪事件に精通している事はもちろん、タバコの灰の鑑別に関しての著作があったり、血液検出の為の試薬を自ら作り出したりしている。(しかしこの試薬を使ったという描写は作中では殆ど出てこない)
反面、犯罪と関係のない知識に関しては一般人以下の水準。たとえば地動説を知らなかったとしてワトソンに呆れられている。
もっともこれは単に無知だからというわけではなく、自分の仕事に関係の無い知識は進んで忘れるよう心がけているためである。
格闘技においてはかなりの腕前で、ワトソンによると「棒術、拳闘および剣術の達人」。
ワトソンと出会う前には、ボクシングの大会でアマチュアとして職業拳闘家と興業試合で渡り合ったことも。『最後の事件』においてモリアーティ教授と戦った時は「バリツ」なる日本の格闘技で生き延びる事ができた。
他にもヴァイオリン、変装、ピストルの射撃などといった特技を持っている。特に変装の名手であり、浮浪者に化けるとワトソンでさえホームズ本人と気づかないことがあるほど。
マイクロフト・ホームズという兄がいる。表向きは下級役人だが、実は政府の政策全般を調整する重要な仕事をしており、時折事件の依頼をしてきたり、シャーロックの手助けをしたりしている。
それ以外の親族関係については一切ワトソンにも語らず、不明。
鋭い観察力で証拠を見つけ出し、それを元に豊富な知識(過去の犯罪記録や科学的な知見など)を駆使して推理を行い、真相を導く。
調査の手駒として、ロンドンの浮浪児たちを幾らかの金銭で雇って組織化した「ベイカー街遊撃隊」(ベイカー・ストリート・イレギュラーズ)を使うこともある。
「仕事そのものが報酬」と公言し、引き受ける依頼に関しては報酬よりも、事件が興味深いものであるかどうかを重視する。
もっとも金に興味が無いわけではなく、たとえば『プライオリ学校』では「私は貧乏ですから」と、きちんと報酬をもらっている。彼が解決した事件の中には、欧米各国の重要人や王族がらみの事件も多く、収入に関してはあまり不自由していない様子。
事件の犯人については基本的には警察に引き渡すが、法律上違法でなかったり、情状酌量の余地がある場合などはホームズの独断で犯人を見逃す事も少なからずある。これについてホームズは『青い紅玉』でワトソンに対し「自分は警察の欠陥を補うために雇われているわけではないからね」と述べている。
全能のイメージがあるホームズであるが、犯人を取り逃がしたり、依頼人を殺されてしまったりするなど、時々失敗したりもする。諸事情でワトソンによって文章化されていない事件も数多いとされる。
常に奇妙な事件との遭遇に飢えており、一度事件にのめり込むと寝食を忘れて没頭し、事件以外のことを気にかけなくなる。
しかし、彼を満足させるような事件が無い期間が続くと、とたんに退屈を紛らわすため、モルヒネやコカインといった麻薬に手を出してしまう。中毒患者というわけではないものの、医師であるワトソンは健康面から度々これを問題視している。
しかし「生還」後はこうした薬物からは完全に足を洗い、以前のような無茶な行動も幾分控えるようになった。引退後は田舎で蜜蜂を飼い、健康的な余生を過ごしたという。
犯罪事件やそれに関係するいくつかの化学実験以外には興味がまったくなく、とくに女性との恋愛に関しては奥手を通り越して拒絶感すら抱いているため、生涯を独身のまま過ごした。
興味のあった女性といえば、『ボヘミアの醜聞』において見事ホームズを出し抜いた「あの女」ことアイリーン・アドラーくらいである。
多くの出版社から翻訳本が出されており、海外小説としての認知度・人気は高い。
古典的な名探偵といえば鹿撃ち帽にインバネスケープにパイプというイメージ[2]を植えつけた作品でもあり、助手的な立場の人間のことを「ワトソンくん」呼ばわりするパロディも随所に見られる。
小説をベースにした推理・アクションアニメ作品として、日伊合作の『名探偵ホームズ』がある。
登場人物は全て犬を擬人化したキャラクターであり、シャーロック・ホームズとワトソンがモリアーティ教授一味の悪事を防ぐべく奮闘するストーリー。子供にもわかり易い内容で、優れたアニメ作品であったため、ホームズといえばこちらの犬ホームズを想起する人も少なくない(現在はニコニコ動画で有料配信中)。
近年だと後述するBBC版「SHERLOCK」が知られる。
漫画ではJETの「倫敦魔魍街」が挙げられる。
シャーロック・ホームズ死後のロンドンを舞台とし、彼を尊敬する主人公がその名を使って相棒と共にへっぽこ探偵業を営む。
ホームズが狼男、ワトソンが吸血鬼、ハドソン夫人が幽霊と突拍子もない設定だが、掲載誌がホラーコミックだった為にスプラッターホラーとしての側面が強く、グロテスクな表現や展開がかなり多い。
一方で登場人物の造詣や設定は評価が高く、ストーリーにも原作リスペクトな部分があるため、ファンも多い。
テレビゲームでは、ファミリーコンピュータを代表するクソゲーに数えられる「シャーロックホームズ伯爵令嬢誘拐事件」が(一部では)有名。そのせいではないだろうが、国内ではゲーム化される機会に恵まれているとは言い難い。
なお海外ではその性質上様々なジャンルでゲーム化されており、Frogwaresからは『The Adventures of Sherlock Holmes』としてリリース。2002年以来8作を数えるヒット作となっている。
特に2016年の『The Devil's Daughter』は『シャーロック・ホームズ 悪魔の娘』と題し、初めて日本国内用ハード(PlayStation 4、Xbox One)で発売された。
ゆっくりによる翻案。
上からだいたい原作(ストランド誌発表当時の)発行順。
関連は新潮文庫で統一してあるが、その他の出版社からも様々な訳者、本サイズで出版されているため、自分に合ったのを読むのが吉。児童文庫版は文体および表現が低年齢向けにやさしくなっており、普段小説を読まないひとでも読みやすい。
イギリスの放送局グラナダTV(現ITV)で1984年から1994年まで放送されていたテレビドラマ。通称グラナダ版ホームズ。
原作に忠実に、鹿撃ち帽にインバネスという誤ったホームズのビジュアルは廃する、面白くない内容映像化に向かない内容をアレンジしあやふやだったオチを明確にする、ヴィクトリア朝のイギリスの風景や習俗を完全再現など、徹底的に描写を突き詰めている。ホームズ&ワトソンコンビを描く、サスペンスドラマの傑作。
ホームズ役のジェレミー・ブレットの外見や演技、身のこなしはまさに小説を読んだ誰もが思い描くシャーロック・ホームズその人であり、世界中で人気を集めた。
全ホームズ作品の映像化は彼にして欲しいとまで讃えられたが、ブレットにとって世界中のファンからの期待は精神的な重荷となり、他にも様々な健康上の問題を抱えたことから、シリーズ後半では体型が大きく変化してしまう。
残念ながら「恐怖の谷」「緋色の研究」そして「最後の挨拶」といった著名な未映像化作品を十数作残し、ブレットは死去。だが現在に至るまで映像化ホームズといえばグラナダ版と名高く、ブレットの演技はこれからも新たなシャーロキアンを魅了するだろう。
アラサー以上の世代には、ブレットによる雰囲気たっぷりの名演と露口茂によるストイックな名吹き替えでお馴染み。イギリスのテレビ番組はたとえシリーズ作品であっても本編の長さが毎回同じとは限らないことで知られる。そのためNHK放送版では放送枠に合わせるためにカットが入る回もあった。
2010年に発売された完全版DVDでは主要登場人物の声優が大御所・引退・逝去などのためか、カット部分の吹き替えは全て新規声優が行った。2021年からBSプレミアムにて完全版の放送が行われている。
汚らしく散らかったベイカー街の自宅、バリツ全開で肉体言語に訴えるホームズ、おなじみワトソンとの毒舌の掛け合いなど、既存の古き良きノスタルジックなホームズ世界のイメージを破壊しつつ現代的リアル路線で再構築した、ハイスピード推理探偵バトルアクションムービー。主演はロバート・ダウニー・Jr。吹替は藤原啓治が担当。
暴力的なのは監督がガイ・リッチーだから仕方が無いが、「妙に気取った冷静沈着な安楽椅子探偵」というイメージが近年固定していた映像化ホームズに、原作のお茶目で武闘派な要素を取り入れたとしてシャーロッキアンからの評価は決して低くない。
またホームズの能力を際立たせるために愚鈍な設定が多かった映像化ワトソンを、有能で女性にモテるというこれまた原作に沿った要素を入れている。
続編の『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』ではモリアーティ教授との対決が描かれている。
三作目の製作が決まっているが、ガイ・リッチーとロバート・ダウニー・Jrが忙しいお陰でなかなか進行していない。
BBC(英国放送協会)で2010年から断続的に放映されたテレビドラマ。全4シーズン。
日本では2011年にNHK BSプレミアム、2012年にAXNミステリーで放送。また2013年にNHK総合でも放送され、地上波初放送となった。
主演はベネディクト・カンバーバッチ。吹替は三上哲が担当。
英国ドラマでは定番のミニシリーズと呼ばれる放送形態を取っており、1シーズンが90分×3話という短い構成なのが特徴。
コンセプトは「21世紀のロンドンにおけるシャーロック・ホームズとワトソンの冒険」。
原作のホームズは19世紀後半から20世紀前半に活躍していたが、このドラマでは現代に翻案している。そのためこのドラマではホームズがスマートフォンをいじったり、自らホームページを開設するなどしている。
ストーリーに関してはドイルの原作を下敷きにしてはいるが、筋はほとんどオリジナルである。たとえば第1話「A Study in Pink」は、死因や事件現場のシチュエーションなどはドイルの「緋色の研究(A Study in Scarlet)」を踏襲しているが、殺害の動機や犯人は全く違っている。
また、ホームズの社会不適合者としての側面が強く描かれているのも特徴。
警察関係者からサイコパスと言われ、それに対してホームズ自身が自分を「高機能のソシオパスだ」などと返す場面があるなど、過去の作品とは似て非なるホームズ像が見られる。また「マインドパレス(精神の宮殿)」という記憶術を会得しており、膨大な知識を地図のように配置して記憶、必要な時に引き出して閲覧している。
対するワトソンはアフガン戦争に従軍した軍医という設定。物語開始時にはPTSDにより左手と右脚に不自由を生じ、杖をついていた。しかしホームズと共に行動をした事で症状は解消している。
成り行きでルームシェアしたはいいが生活能力ゼロのホームズに代わり、買い物や請求書支払いをしぶしぶ担当している。男二人で同居している関係上、周囲からゲイカップルと誤解されるのを嫌がって否定するが、かえって誤解を深める一幕もある。
登場人物は原作とほぼ共通しているが、何人かオリジナルキャラクターも登場する。
日本のNHKで放送されたテレビ人形劇。脚本は三谷幸喜、ホームズ役は山寺宏一が担当。
ロンドン郊外にある全寮制の学校を舞台とし、ホームズをはじめとした登場人物は生徒または教職員として設定されている。
基本的に原作に沿った内容ではあるが、学生寮で起きる事件であるため殺人以外に置き換えられている。
またホームズが少年なため原作に比べるとうっかりミスが多く、保健のアイリーン先生の色香に惑うことも。
三谷作品らしく声優の俳優率が高いのも特徴。
アメリカの放送局CBSで2012年から放送されたテレビドラマ。全7シーズン。日本ではWOWOWおよびスーパー!ドラマTV、テレビ東京で放送された。
主演はジョニー・リー・ミラー、吹き替えは三木眞一郎が担当。
タイトルの『Elementary』というのは、『シャーロック・ホームズ』が初めて舞台化された際に生まれた「初歩的なことだよ、ワトソンくん」(Elementary, my dear Watson.)という台詞から取られている。
『現代社会で犯罪捜査を行うシャーロック・ホームズ』という点はBBC版と共通している。
それと大きく異なるのは日本版副題にもあるように、舞台がロンドンではなくニューヨークであること。更にワトソンが女性であり、アジア系アメリカ人という設定である。
ホームズの設定および俳優は原作同様英国人。元々はスコットランド・ヤードで捜査協力をしていたが、父親によってアメリカにある薬物依存のリハビリ施設に入所。出所後に英国時代の知り合いが居たニューヨーク市警の顧問になるという経緯で、ニューヨークが舞台になる。
突拍子もない発想で捜査関係者を翻弄したり、頭の回らない他者を小馬鹿ににするなど、頭脳明晰で皮肉屋なところは原作譲り。数カ所身体に刺青があったり、女性関係(×恋愛関係)が多いところがオリジナル要素。
薬物依存者の社会復帰を支援する付添人としてホームズと出会うのがジョン……ではなくジョーン・ワトソン。従軍経験は無いが原作同様医師である。
自由気儘なホームズに手を焼き、慣れない犯罪現場に同行して戸惑うが、次第に事件捜査への興味と探偵としての才能が開花。付添人から探偵助手へとポジションを切り替えて彼と共に行動するようになる。
上記のようにBBC版との共通点があるため、番組放送前から賛否両論の飛び交う状態であった。
特にワトソンの女性化が様々な憶測を呼ぶこととなったのだが、実際本編では両者の関係は「信頼の置ける相棒」の範囲から外れることはない。
原作をモチーフにした登場人物やストーリーも散りばめられているが、単純に一話完結の推理・刑事ドラマとしても見ることが可能である。そういう海外ドラマに慣れた人には敷居が低めなのがポイント。
1985年のアメリカ映画。監督は『レインマン』でアカデミー賞を受賞したバリー・レヴィンソン。
上記のドラマや人形劇にさきがける形で、寄宿学校を部隊としたホームズとワトソンの出会いと冒険を描いている。
突拍子もない展開や設定もあって「ホームズの名前借りただけでは?」という意見もあるが、青春活劇・アドベンチャーものとしてはそれなりに成立している。
2021年6月から9月にかけてに宝塚大劇場と東京宝塚劇場で上演された宝塚歌劇団・宙組のミュージカル。ホームズ役は真風涼帆。
サブタイトルの『The game is afoot』とは原作の『修道院屋敷』に出てくる「獲物が出てきたぞ」(“The game is afoot.”)というホームズの台詞から取られている。
霧と蒸気に包まれた街ロンドン。そこでは切り裂きジャックのおぞましい犯行が世間を恐怖させており、警察も捜査に行き詰まっていた。そこに一筋の光明を齎す名探偵、シャーロック・ホームズ。彼が辿る推理の鎖の先には、因縁深い女性アイリーン・アドラーと秩序の破壊を目論むモリアーティ教授が絡み合っているのだった。
物心付いた時に初めて読んだ本はシャーロック・ホームズシリーズで自分のヒーローはホームズその人であると自負し、原作は勿論古今東西のパスティーシュも読み込み済み、10年前に舞台化を計画しホームズ役に相応しいトップスターが現れるまで脚本を温めていたという筋金入りのシャーロキアンである生田大和が脚本と演出を担当。その情熱たるや、「221Bを『にーにーいちびー』と言うと生田先生に「それは『トゥー・トゥエンティーワン・ビー』です」と必ず訂正される」とタカラジェンヌを困惑させたほど。更に監修としてシャーロック・ホームズ研究者として著名な北原尚彦氏を迎えている。
史実と原作を織り交ぜつつ、ホームズにかつて恋人がいたという宝塚らしい設定も追加されているが、ボヘミアの醜聞やぶな屋敷などかつての事件の関係者もカメオ出演的に登場するような内容である。また、白髪の老人のようにも銀髪の青年のようにも見えるという設定のモリアーティもまた新たな解釈と言える。
掲示板
222 ななしのよっしん
2024/05/15(水) 16:52:38 ID: aJKa6fq9gl
>>218
君の思う「現実的」な作品がなにかわからないとすすめられない
223 ななしのよっしん
2024/05/28(火) 21:05:04 ID: HQhM2czx+3
The Adventure of the Blue Carbuncle, 青いガーネット
実際はどのような宝石かは定かではないという非現実的な物に纏わる事件だが犯人に対するホームズとワトソンの対応が現実的
あくまで警官ではなく民間諮問探偵であることの魅力を示す作品
224 ななしのよっしん
2024/08/18(日) 19:54:09 ID: cEdnBF4W64
『黄色い顔』は珍しく特に死人も出ないしほっこりするオチだから好き
ホームズが純粋に推理間違えたのってこれだけかな?
急上昇ワード改
最終更新:2024/10/07(月) 14:00
最終更新:2024/10/07(月) 13:00
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