ツアーバスとは、本来は旅行(ツアー)の形態で運行される貸切バス、観光バスを意味する単語である。しかし、近年の日本においては、旅行会社がバスを借り上げる形式で人の輸送を行う旅行商品として、主に都市の特定の場所と別の都市のそれを結ぶバスの名称として用いられてきた。
高速道路を経由して運行されることが多いため、高速ツアーバスとも呼ばれる事があった。この項目では「一般乗合旅客自動車運送事業」に基づき「路線バス」として、既定の停留所などに発着し、高速道路を用いて運行される都市間バスを「高速バス」もしくは「高速路線バス」と表記する。
通常「高速バス」という場合、JRバスグループの「ドリーム号」などを筆頭とする、主要な鉄道駅前やバスターミナルに発着する中距離~長距離バスをイメージするが、これらは街中を走る一般の路線バスと同じように許可に基づいて運行されるものであり「路線バス」の一種として扱われている。
対して、ツアーバスは「ツアー旅行(企画旅行)で用いられる貸切観光バスと同じ貸切許可」に基づいており、そもそもの立ち位置が異なっていた。
イメージとしては、飛行機の「定期便」と「チャーター便」の関係(立ち位置の相違)が近いと思われる。
高速路線バスの場合、運行主体はそのバスを所有する事業者である。対して、ツアーバスは運行主体が旅行会社であり、バスは実質的に請負の格好を取っていた。しかし、実態としては高速路線バスとほとんど一緒であるが、かかる法律が異なるために「定時運行の厳守」「発車扱い経由地における早発の禁止(降車扱いのみを行う停留所への早着は可)」など、路線バスに必須な要素が必ずしも必要となってはいなかった。
メリットの面でも説明するが、価格を前面に押し出す傾向が強かった。大手と比べても最大で半額以上になるお値段が前面に出た。また、コスト削減の為、ペーパーレスを進めており、紙媒体ではなくインターネットなどが多用される傾向があった。そのため、支払いもクレジット対応となっていた。また、現金決済にはコンビニ支払いなども使用できた。
車両面においても、導入コストの低減や「運賃」の低廉さを実現させるため、4列シートの観光車・ハイデッカー車となる傾向が強く、特に法改正直前には韓国の大宇製やヒュンダイ製のバスが導入されていた。韓国製を導入した場合、1台当たりの車両価格が装備や性能の似通った国産車と比べても、大体3分の2程度となるらしい。
また、これまでバスでの長距離移動を敬遠しがちであった女性のユーザーを取り込むためのマーケティングを強力に推し進め、広告戦略にも彼女たちがとっつきやすい動物のキャラクターを起用したり、ウェブサイトでのイメージ画像にモデルに女性を起用したりと、従来のイメージの払拭を図っていた(後者の面は、既存高速バス事業者が同じくウェブサイトや広告チラシなどで追随している)。
法改正直前にはハイグレードクラスの設定や、飛行機でよく見られるラウンジの設定をするなど、アッパークラスの充実を図るなど、付加価値の高さを拡充していた。また、利用層に合わせた設備や運賃の細かい設定は高速路線バス以上であり、結果的に利用者の選択肢を拡充することになった。
メリットは安価な点であった。それまでの既存の高速路線バスと比較し、運賃が最大で半額程度に抑えられるなど「お財布に優しい」所があった。また、事業者によっては飛行機のファーストクラス並みの設備があったりと、利用者の選択の幅が大きい点が挙げられた。
事業者側としては新規参入や不採算などで撤退するに当たり、関係箇所に色々と手続きをすることなく容易に参入・撤退が出来たため、それに伴う煩雑な業務をしないで済む事があげられる。また、貸切バス会社でも「遊んで」いるバスの稼働率を上げられ、なおかつ一定額とはいえ、定期的な収入源となっていた。
そして、高速バス全体の利用者に対しても複数の選択が可能な運賃体系やサービスとなり、それまでの比較的硬直していた既存高速路線バスの運賃・予約方法やサービス内容に一石を投じるきっかけにもなった。
直接バス会社が関与しないケースがあったので、主催元の旅行会社が用意したバス会社によってバスやサービスの質が大きく異なっていた。但し、主催元≒バス会社のようなケースにおいては割合に均一化された体制となっている。また、旅行商品なのでその関係の法律の適用がなされ、取り消しなどにかかる手数料が20%~100%など、高速バスに比べて割高となっていた。他にも「小児料金の無設定」や、ハイシーズンにおける価格差などが存在し、結果として旅行料金が高速路線バスの運賃と大差なかったり、それより割高になるケースも存在した。
基本的に駅前のバスターミナルが使用できず(既存の路線免許所持事業者にしか、なかなか「構内営業権」などが下りない)、バス停も設置できない(「道路占用」の不許可)ため、駅の近くの大型車両対応駐車スペースや路上においての乗降となるため、場所によっては中心駅からかなり歩かされる事や、集合場所への移動に際しては天候の影響を受けやすかった(これらは、路線免許保有事業者であっても比較的歴史が浅く、かつ独自の戦略を採った高速バス事業者においても、地盤とする地域以外に路線網を伸ばそうとした場合にあてはまる点があった)。また、予約客が0名でも、途中経由地から何らかの理由で無予約での乗車を希望する乗客(いわゆる「飛び込み」の客)がいる可能性が皆無とは限らないため、車両と乗務員を整えて定時に出発地を発車しなければらない「高速路線バス」と異なり「最少催行人数」を下回った場合は運行中止もありうる(「旅行条件の最少催行人数に満たなかった場合における旅行中止の可能」)。これと合わせて、あまりないかもしれないが旅行会社の債務が不履行となった場合(端的にいえば倒産、夜逃げなど)した場合には、即時運行が停止してしまう。
また、催行者≠バス会社の場合、バス事業者(バスの色、形)が単一ではない(イコールではない)ため、途中のSA・PAなどにおける「開放休憩」の際、自分の乗車してきたバスがわからなくなる事・わかりづらいことが往々に存在した。
傾向としては概ね、通常の観光バスで使われる車両が多かった。つまりはハイデッカー・4列シートであった。なお、所有者やクラスによっては3列シートを用意する場合もあるが、これは主に乗合事業者から放出された中古車を使用しているケースが多かった。そのため、メンテナンスが行き届かない場合、設備によっては故障したままと言うケースがある。蛇足ではあるが、JRバスグループでは基本的にトイレ付き車は使い潰して廃車という方針を取っている(移籍例はJRバスグループの別会社および、共同運行を行う同業他社などに向けて一部あった程度で、ごく限られている)。勘のいい読者は気づかれたかもしれないが、トイレを設置した場合は営業所・支店など、車庫施設(「地上」)に処理設備を設けることが必須となる。すなわち「ツアーバス上がり対策」である。
主催者≒バス会社の場合、新車を用意できる事が多く、既存の高速バスにない内装となっている事がある。また実例はあまりないが、高速バスを運行しながらツアーバスを使用する場合、通常は高速路線バスで使用されている車両をあてがう事もある。
そして、車両面でも大きな影響を与えた。これまでバスと言えば99%ふそう・日野・いすゞ・UDの4社を採用していたが、上述のとおり近年はこれらに加えてツアーバスでは韓国製を導入する動きも見られた。これはコスト面が重要になる中で、少しでも車両導入価格を抑える事が重要になっていたからである。ちなみに海外製のバスはこれまでネオプラン社製などが導入されていた。しかし、メンテナンス面において国内勢の壁を崩せないでいた。また、日本独自の法規制が存在し、なかなか導入に対して二の足を踏んでいた。
「ウィラーエクスプレス」などでは並行輸入と言う形ではあったが、日本において大宇バス製を大量に導入した。日本に近いという地の利を生かし、いくつかのディーラーで整備する体制を整えはしたが、あくまでも「形式認定を行わない試作車」を名目にしての輸入であったため、爆発的な広がりは見せなかった。
そして「ヒュンダイ・ユニバース」が上陸・導入された。元々ヒュンダイモータージャパンは、日本において乗用車の販売を行っていたが、ほぼそれと入れ替わる様な形で大型車輸入専業となった。ディーラーも比較的容易に鞍替えが出来た事がメンテナンス面での不安を払拭し、また日本の保安基準に基づく形式認定を取得した事で販売台数の縛りを受けない事が大きく、何より車両価格が国産車の同等クラスよりも安く済むと言う事で、ツアーバス事業者はこぞって導入した。さらに最近では、一部の高速路線バス事業者においても導入者が出ている。無論、こちらは正規輸入車となっている。ヒュンダイ・ユニバースは代理店もツアーバス会社内に設けたりと攻めの姿勢を構築、また輸入車ディーラーの「ヤナセ」がパーツを供給、その他いくつの会社においてメンテナンスやロードサービスの整備をしており、国内勢を脅かすまでになった。
ただし、2014年末現在、後述する元ツアーバス最大手「ウィラーエクスプレス」などが新車導入を既存の国内ディーラー車(日野・セレガなど)に回帰させる動きもあり、今後の情勢が注目される。
元々、ツアーバスの原型となったのは、夜行出発・現地早朝到着の「会員制山岳バス」「スキーバス」や「帰省バス」といった、季節限定のバスであった。特に後者は今ではあまり見られないが、お盆や年末頃になると路線バス車内や各ターミナルなどにおいて、各方面行きバス運行のチラシ配布・宣伝などをしていた。通常の高速バスとは異なった形となっており、基本的には観光バスと同じ4列シートである事が多かった。貸切事業が免許制の時代は大手各社がこぞって運行しており、細かい所は異なれど現在のツアーバスと似たような恰好であった。帰省バス自体は高速バスが各方面の定期路線を伸ばし、一般化し始めた90年代中頃から通常ダイヤの高速バスに「1号車・2号車…といった形での増便・増車」という形式を取り、次第に数が減っていった。
話を変え、貸切バス事業は2000年に規制緩和によって免許制から許可制へ変更となった。当時横行していた白バスの問題に対して、許可制とする事で緑ナンバーへの転換を推進、条件を満たせばOKとしてお墨付きと責任所在を明確化させた。しかし、あちこちから参入してきた為、一気に供給過多となり、ダンピング合戦の様相を見せてきた。バブル崩壊以降、団体旅行が減った事や個人旅行の増加による嗜好の変化、また航空各社の営業攻勢・運賃の弾力化などにより貸切バス自体の需要が減っていた事がそれに拍車をかけていた。この過程で伝統ある鉄道・バス会社(親会社)が、ことごとく(バス)子会社・孫会社を設立し移譲、事業分割、規模縮小(事業の「選択と集中」、関連の薄い事業の「切り離し」)、そして最終的にはバス事業からの撤退・売却などを決断する事業者も出るといった状況を呈した。
そういった中で登場したツアーバスは、こうした零細の貸切事業者にとっては定期的な収入源となっていた。そして旅行会社としても、ドル箱と言われるTDR・東京~名古屋・大阪間などに難なく参入して、手堅い収益を上げられた点も挙げられる。
観光バスの中には「インバウンド(国外からの旅行者向け)」向けの貸切バス会社がいくつか見られ、特に中国・台湾・香港などからの観光客を日本に迎える専門の事業者も多く存在している。発展著しいこれらの国の人々は「爆買いツアー」と言われるほどに消費が旺盛であり、当然ながら多くの人が来日したので非常に高い収益源となっていた。しかし、2011年3月11日の東日本大震災とその後の原発事故以降、一気に来日者が激減し、これらのバス会社も大ダメージを受けた。そんな中で遊休・余剰をかこっている車両を活用しようと、ツアーバスの請負を行うケースが一時期増加した。
それまで高速バスを担っていたのは、JRバスグループや大手電鉄会社グループ、およびそれらと協定を結んだ、地方の(ある程度歴史を持つ)バス事業者が運行する場合がほとんどで、参入や撤退が難しい代わりに、繁盛している路線では利益をほぼ独占(もしくは「プール制」。共同運行事業者との明朗な決済分配)でき、盤石な経営を維持できた。新規参入が厳しく制限されている環境下においては、運賃が飛行機や鉄道よりは安価であっても、割合に硬直した体系となっていた。
ツアーバスは路線バスでの参入ではなく、あくまで旅行会社の企画商品という名目を使って、その牙城に食い込んできた。参入や撤退に係る許認可も容易であるという部分を利用し、東京~大阪などのドル箱路線に参入してきた。そして価格を抑えたために一気に利用者が拡大、まさにツアーバス百花繚乱の時代となった。
無論、既存の高速バス会社においてもその影響は無視できず、例えばJRバスグループでは通常、昼行便に使用する高速バスを夜行便にそのまま利用した「青春ドリーム号」などといった廉価な商品や、逆に多少高価であっても車内設備や座席を豪華にした「プレミアムドリーム号」、長距離の低速移動であっても廉価を売りにした「昼特急(シリーズ)」などの新路線・新商品を次々と打ち出した。これにより、利用者側にとっては非常に多くの選択肢を得られる結果となった。
一見、少ないパイを奪い合うようにも思えるが、他の高速交通網と比較し格安であること、乗り継ぎが省略できるいった面や広告戦略のおかげで、それまでJR在来線の普通(快速系)列車や大手民鉄の通勤電車などといった、着席保証がない列車などを乗り継いだり組み合わせて移動していたとみられる学生層や女性客、そして「時間はある、降車地周辺に到着さえ出来ればそれでよい」といった考え方のシニア層など、新規顧客層の需要の掘り起こしに成功している。また、路線運行に先行してツアーバス形態で運行をして収益性を見極めるなど、その影響は大きいものとなった。
一方、元々運賃体系に改善が見られず、硬直的な運賃体系であった鉄道の夜行列車は需要が落ち込み、ブルートレインなどのこれらは次々と廃止、もしくは臨時化、はたまた「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」など、高級層が時間を鑑みず「道楽」で乗る列車へと別れていった。最たる例として、かつて東京駅に発着するブルートレインは10本近くあったが現存せず、同駅から毎晩運転される夜行列車は地理的事情で高速バス・航空機との競争で優位な場所を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」のみである。「大垣夜行」と呼ばれた夜行快速「ムーンライトながら」も、この列車のためだけの途中停車駅における防犯上の理由・要員繰りの問題などから、現在では「青春18きっぷ」通用期間中の特定日のみ運転される臨時列車となり、運転日も年々減少する一途である。また、鉄道事業者のみならず、競争に勝てなかったバス会社の撤退が相次ぎ、大手電鉄系のバス会社においても都市間高速バス事業から全面撤退した事業者も存在する。
また、本項と直接的な関連は薄いかもしれないが、航空各社も趣向を凝らした低価格プランを提案したり、全国各都市に様々な規模のビジネスホテルチェーンが出現し、付加サービス(朝食・ドリンクなど)や価格を競い合うと同時に、電話口を通さずオンラインで手軽に空室確認・予約などが可能になったため、あえて「夜間移動」という選択をする必然性が希薄になった点も看過できないであろう。
このように、ツアーバスの台頭は運輸業界、鉄道や既存のバス事業者の勢力図を良くも悪くも「革命的」に大きく変えるきっかけとなった。とりわけ鉄道は上述したとおり、旅客定期夜行列車の設定は数えるほどしか無くなるなど、その影響をもろに受けた格好となる。今後も深夜の移動需要をめぐり、ますます競争が激しくなるものと考えられる。
ツアーバスはその成り立ちや係る法律の違いから、色々な観点より問題点を指摘されていた。
まず「いびつなパワーバランス」であった。「催行者 ≒ バス会社」である場合はそれ程問題ではないかもしれないが、ここでは「催行者 ≠ バス会社」の場合を取り上げる。特に注目される点は、請け負うバス会社側の疲弊である。ツアーバスを請け負う貸切バスは規制緩和によって参入が容易となり、各地で新興のバス会社が誕生したが、あっという間に供給過剰となった。その結果ダンピング合戦の様相を見せ始めたが、バス会社はバスを遊ばせないためにも旅行代理店側からの採算ギリギリ、もしくはそれ以下での依頼でも受けざるを得ず、乗務員も安い給料で酷使される実態がある。
ツアーバスとは違った形ではあるが、2007年に「あずみ野観光バス(現:ダイヤモンドバス)」が居眠り運転で事故を起こし、添乗員が死亡する事故があったが、元請である「サン太陽トラベル」が下請けいじめに等しい要求をしていた事が問題となった。結局、サン太陽トラベルは信用を失い、倒産に追い込まれている(後述)。
また「NHKスペシャル」でこうした一方的なパワーバランスが大々的に取り上げられ、大きな波紋を呼んだ。番組内で請負側として登場した「とうりゅう観光バス」はその後倒産している。
パワーバランスと関係する点であるが、バス会社によってサービスや質に差が出ることは前述した。この「いびつなパワーバランス」ゆえに採算が取れず、車両の代替や乗務員の質の維持がままならないケースが多かった。言い換えれば、車両故障時の対応や乗務員の居眠り運転のリスク、地理や高速道路網に関するスキルなど、安全面における不安が非常に大きかった。
次に責任所在の面である。トラブルが起きた場合、その対応は高速バスの場合はバス会社が直接行うが、ツアーバスの場合は元請けが対応せねばらならなかった。しかし、対応がバス会社側に向く事がある。そして旅行会社側は事故を「与り知らぬと嘯く」事も出来る。もっとも、そのような逃げ得はほとんど通用しなかったようで、先述した2007年の事故の件で「販売元」の旅行会社は消費者や取引先からの信頼を失い、倒産している。
また、名称についても、本来「高速バス」という名称自体が乗合免許に基づいたバス会社の運行する路線バスとして、慣習的に用いられてきたが、近年はツアーバスが高速バスを「自称する」ケースが多かった。そのため「高速バス」と「ツアーバス」が「一緒くた」に扱われ、利用者やマスコミがツアーバスのチョンボを高速バスに当てはめてしまう事もあった。
そして、扱い的には合法である事である。「法律の抜け穴」ではあるが、ツアーバス自体が「旅行会社が観光バス会社と取引をする」という建前がある以上は突っ込んでいけないのが事実である。それ以前に、ツアーバス登場の背景自体が元々「乗合バス会社がツアーバスの原型ともなる形のバスを運行していた」という面もあり、一概に強く否定も出来なかったのである。
ツアーバスの「バス停でない場所での路上駐車」も大きな問題となっていた。道路運送車両法の下、また各地方の道路占用にかかる届出の例規などにおいてはツアーバスのバス停を設ける事が出来なかったのと、当然ながら主要駅の駅前広場や、鉄道・路線バス事業者・自治体などが管理・運営を行うバスターミナルは使用できないため、どうしても路上駐車とならざるを得ないが、その台数が凄まじかったため、駐車場スペースのない集合場所(例:新宿駅・横浜駅などの周辺)では一帯がバスだらけとなり、極端な時間帯では車線を一つふさいでしまっていたような例も見られた。このような地域では、旧・ツアーバス出身の一部事業者が独自のターミナルを設けてはいるが、やはりそれでも台数口が多いため、根本的な解決にはなっていない。
最後に、ツアーバスに利用者を奪われた結果「高速バスの利益で地元の路線バスを成り立たせていたバス会社が、ローカル路線を自力では維持できなくなった問題」もある。
上記に挙げた問題点より、バスファンの中ではツアーバス(出身の)事業者を(現在でも)忌避する傾向がある。
元々、バスを趣味の対象とすること自体が比較的歴史の浅い嗜みであり(→「バスファン」)、バス雑誌に掲載されるのも主に乗合路線バス事業者が中心となっているので、ツアーバスを中心に取り上げたものは多くない。そして、ツアーバス(出身事業者)の存在そのものを快く思わない節が強いため、バス雑誌に掲載されるケースは趣味誌に限ればあまり見られない。webでの扱いもその存在を問題視、もしくは嫌悪する記述もある。とはいえ「バスラマ」誌に(当時の)ツアーバス事業者を訪問する記事が掲載されたこともあるので、今後の動向が注目される。
一方で趣味誌以外での露出・掲載が多く、ことに旅行雑誌などでは特集が組まれることも少なくない。インターネットにおいてもマニア層以外の評価はおおむね似たような状況である。また、玩具展開もさかんであり、ここの市場には「キラキラ号」のプラモデルを掲載している。
会社の規模、また事業展開内容の関係か、保有するバスについての内覧会・展示会などが行われたり、何らかのイベントに参加という事例も、ほとんど耳目にしない。
問題点にも挙げた通り、ツアーバスは交通評論家、バスファンを中心に、しばしば論争のタネになる事があった。主に俎上に上がる問題はツアーバスは「ほぼ路線バスの形態をとっているにもかかわらず、路線免許を申請しておらず、秩序を乱す由々しき事態」と認識していた事や、2007年・2012年4月の事故の例から来る「下請けいじめの横行」などをあげている。特に、安全面にかかる問題は公共交通としてのバスの存在を根底から揺るがしかねない事である。では「ツアーバスの存在は否定されるべきであるか?」と問えば、必ずしもそうとは言い切れない部分もある。
ツアーバス登場の背景には、規制緩和における許認可体制の他にも、業界全体の風土が存在すると思われる。高速バスに限らず、路線バスを運行するにはかつては免許制が敷かれていたが、現行は緩和され許可制となっている。しかし実際は参入しようと表明したところ、タッグを組んで潰しにかかるような事態になるなど、新規参入が入り込む隙は非常に狭い。よしんば参入出来たとしても、上述した通りでターミナル駅前のバス乗り場、各都市のバスターミナルなどといった一等地に乗り入れできるような事はほとんどなかった。いくつかのツアーバス事業者が申請を出した事はあったが、圧力、その他「大人の事情」によりことごとく申請が却下されてきた場合がほとんどである(この他、特定の事例を記述することは控えるが、路線バス事業者同士でも隣接した事業者同士では合従連衡が凄惨であり、高速バスの経由地としてターミナル駅に乗り入れたくとも却下され、郊外の別の鉄道駅前に乗り入れて慎ましく客扱いをしたり、地方都市の同一駅前と東京の同一ターミナルを結ぶ類似路線が競合となり、既得権益なども絡めて地方自治体を盾にし、乗降場の細かい位置などで意趣返しのように泥仕合を繰り広げる例もある)。つまるところ、一種の既得権益であり、良くも悪くも古くからの事業者は安定を得ていたが、旅客サービスの面では「乗せてやっている」「人を土砂のごとく扱う」(簡略形:「土砂」)と言う喩えがあるように、必ずしも良好なものとは言い難かった。
ツアーバスの存在を語弊を恐れずに言えば、旧態依然とした業界に風穴を開けた存在とも言える。確かにやり方としてはクリームスキミング(「いいとこ取り」)の傾向がみられ、事業に失敗し地域輸送からは完全撤退した事業者が存在するなど、負の側面が大きくクローズアップされる事もあるが、他方で地方のバス会社がツアーバスをもって定期収入を得て新車導入や路線維持などをしている現状もあり、全否定をする事はそうした事業者の命脈を絶ってしまう事にもなりかねない。いかに公共交通の根幹を支えるバス会社と言えど第一に営利企業であり、儲けにならなれば路線や車両はおろか、会社の維持さえおぼつかない。
割合に高速路線バスとツアーバスの対立軸で語られる事が多いが、事の本質は業界の風土や公共交通のあり方にあると思われる。現状はいまだ過渡期と言える状況であり、今後この流れがバス業界に広がるかどうかが注目される。
2012年4月29日早朝、金沢市から東京ディズニーリゾートを目指していたツアーバスが、群馬県内の関越自動車道で7人の死亡者と40人近い負傷者を出す事故を起こした。これまでもバスの重大事故は発生していたが、旅客の死亡数は平成に入ってからは最悪のものとなってしまった。
事故の真相はまだ全面的に明らかになっていないが、居眠り運転の末に壁に衝突した事は判明している。元々、主催者側は自前のバス会社をもっていたが、ゴールデンウィークという事もあり備車(自社車両)では不足したために庸車(自社の車ではなく、第三者の会社の車。下請け)を立てていた。そこでどのような契約があったかはわからないが、金沢~TDRの距離の場合、当時の法律の定めるワンマンでの運転基準内ではあるがギリギリのラインであり、多くの会社ではツーマン(2名の交替)乗務となっている。今回はドライバー1人であり、そうでないと採算が成り立たないレベルのものであった事は想像に難くない。
単純に見れば、下請けいじめまがいの事が横行していたという事実がある。しかし、バス事業者側も本来は法律で禁止されているドライバーの日雇いをしていたり管理がずさんであったりと、双方に問題のある構図となっていた。規制緩和で多くの観光バス会社が誕生し、熾烈な競争状態となっていった。そしてツアーバスの誕生はそうした競争に拍車をかけていった。その結果としてこのような大惨事が起きたと論ずることは可能で、ツアーバスのあり方や、さらには過当競争下における観光バス会社の存在意義がこの事故によって辛くも再考のきっかけとなったと思われる。
なお、勘違いしてはいけないのは、全てのツアーバス事業者が安全性に対してまったくもってずさんであった訳ではなく、また、これまで・これからの高速路線バスでも事故は絶対に起こっていない・起こらないという保障も無いのである。
バス事業者の良い悪いを見分ける目利きは人によってまちまちであり、今から挙げる例は必ずしもそうとはいえない面があるので、さらっと聞き流していただいてもかまわない。法改正はなされたが、いわゆる「観光バス」においても同一である。
検索の結果でこういう内容が多く出てきた場合、慎重に検討される事をお勧めする。
ツアーバス側も業界団体を組織したりと、色々と変化をしつつある。今後も激しい競争の中でも淘汰や新規参入があると思われる。何より命を預かる交通機関として、ともすれば乗客の命が軽視されやすい、営利至上主義に陥りやすい構造を改めて、志の高いコンプライアンスを業界全体で共有される事が重要である。また、既存の高速バス会社とも垣根を越えた情報交換の機会も設ける事も必要であろう。
これまでツアーバスにかかる諸問題については、所管する国土交通省をはじめ、様々な形で議論されていたが、先年、通称「新高速バス」と言われる提案がされた。詳しくは国土交通省の当該ページをご覧いただきたい。乱暴にいえばツアーバスと高速バスを足して2で割ったようなものであるが、これにより一種のお墨付きが与えられることになった。また、これまでの主催元である旅行代理店は、乗合許可を得た上で自前の「バス会社」を設立しなければならなくなった。
確かに「後出しじゃんけん」の向きもあるかもしれないが、爆発的に増えた需要とパワーバランスの問題が解決されるかもしれない第一歩になるであろうと思われる。
既に経営体力・企業統治力を持ち合わせるいくつかの事業者は準備を終え「ウィラーエクスプレス」などでは路線免許を取得し、各経由地には自前でバス停を調達・建植し、名実ともに高速バスの運行に進出している。
そして、2013年7月末に新制度の高速乗合バスへ統合されることとなり、当月末の31日発、運行中に翌月初めとなる8月1日を跨ぐ便より「ツアーバス」は交通機関として事実上、消滅することとなった。
しかし、新制度高速バスに移行するツアーバス業者は全体の2割程度しかなく、撤退する業者は少なからず発生したようである。また、コスト負担の増加などを理由に、売れ残りの座席を叩き売りするような場合を除き、おおむね運賃は値上げ(事実上の適正価格へ回帰)されている模様である。また、キラキラ号の主催者であったロータリーエアーサービス・運行の旅バスが経営の悪化より倒産、事業の一切を同業他社である桜交通に譲渡、また旅の散策も一部路線を平成エンタープライズに譲渡するなど業界の再編が起こっている。
さて、ツアーバスを新制度高速バスに統合したから解決になったかと言うとそういう訳ではなく、相変わらずバスによる事故は起こっている(旧来からの高速バスも旧ツアーバスも双方とも事故を起こしている)。
また、ツアーバスの本来の形である「ツアー旅行(企画旅行)で用いられる貸切観光バス」に関してはその後もほったらかしになっており、旧ツアーバス並みの格安バスが未だに運行されている。後に2016年に軽井沢スキーバス転落事故が発生した。
※あくまで一部です。誤記・追加・改廃などあればよろしくお願いいたします。
※愛称・主催者および運行会社は、いずれも現況と異なる場合があります。
かつて「NHKスペシャル」でこの問題を取り上げた回があったが、現在では削除された模様。気になる人は「NHK ツアーバス」でググるべし。
掲示板
23 ななしのよっしん
2019/11/15(金) 12:01:24 ID: zRgZucQH8q
24 ななしのよっしん
2020/04/29(水) 11:35:35 ID: Q0fqq1WF+T
夜中の運転は誰だって眠くなる。なのに安値至上主義でこうなってしまった。全国民の意識改革が必要だが全く変わってないように思う。
関越道バス事故から8年 コロナで追悼かなわず 遺族ら「現場行きたい」
https://
25 ななしのよっしん
2023/04/08(土) 01:40:43 ID: I4MISXdleE
ツアーバス全盛期は異常なほど安いバスが走っていた。
もちろん事故を起こすバス会社は悪いが、安値に釣られて集まる利用者もいかがなものかと思う。
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/21(土) 21:00
最終更新:2024/12/21(土) 21:00
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