ウルトラマンガイアとは、1998年から1999年にかけてTBS系列で放映されたウルトラシリーズのTV作品名、およびその主人公であるヒーローの名前である。
概要
世界観を共有していた前2作『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』とは一切つながりのない、全く別の世界を舞台とする完全新作。また前2作は近未来の時代設定だったが、今作の時代設定は実際の放映時期と同じ1998年頃となっている。
作品の特徴
今作は全体的に過去作の色々なお約束を撤廃し、異色な設定や描写ががふんだんに盛り込まれた、ウルトラシリーズとしては大胆な新機軸の作品となっている。
本作に登場するヒーローは「地球出身のウルトラマン」という設定であり、劇中でもその力を表す言葉として終始「地球の光」という言葉が用いられている。
そのためシリーズお約束である変身のタイムリミットは存在せず、「カラータイマー」も存在しない(胸についたランプは純粋にエネルギーの消耗度合いを示すもので「ライフゲージ」と呼ばれる)。
ウルトラマンが宇宙から来た存在であることが示唆されていた前2作に比べ、「M78星雲」とのつながりがより明確に断ち切られている。
放送当時が「世紀末」だったためか、敵勢力もそれを象徴するような「根源的破滅招来体」という実態のよく分からないものに設定されている。
その正体は製作途中の脚本家や監督にもあえて明示されず、各話ごとに登場する敵は制作者それぞれの「破滅招来体」像で描かれたとのことで、宇宙怪獣、精神寄生体、魔神、悪魔、天使といった幅広い着想の印象深い敵を多数生み出すことになった。
その一方で、過去作が各話読み切りが基本(1つのストーリーが2話にまたがることなどはあった)だったのに対し、本作は全編の根底を流れる大きな本筋が用意されており、全編通して登場人物達の成長が描かれていくという、従来作にはない大長編的な要素も前面に押し出されている。
そうした中で登場した、全編通して向き合うシリーズ初のライバルウルトラマン「ウルトラマンアグル」の存在は本作最大の特徴と言える。
主人公にとって単純な「敵」とも「味方」とも言い切れない、共闘することも対立することもある新機軸のライバルウルトラマンは大人気を博し、「当初アグルは途中で退場する予定だったが、方針変更して復活させ最終回まで登場させることになった」とされている。
また子供が楽しめるような話の明快さを保ちつつも、従来作に比べかなり重厚なSF描写が行われているのも特徴である。超常現象やそれに対応する防衛組織の描き方は全編通して整合性、成人目線でのリアリティに相当配慮されている。
たとえば防衛チームのXIG(eXpanded Interceptive Gardians)は従来作のお約束だった「全員で何でもできる少数精鋭部隊」ではなく、「各専門分野に特化した複数のチームが集まった機関」という独特な設定になっている。航空戦力「ライトニング」「ファルコン」「クロウ」、地上戦力「ハーキュリーズ」、海中戦力「マーリン」、レスキュー部隊「シーガル」、と細かな分業体制がとられ、「航空部隊の敏腕キャプテンは銃撃戦になるとまるでダメ」といったある意味非常に現実的な描写も盛り込まれている。
また、総合的な防衛方針を管轄するさらなる上部組織G.U.A.R.D(Geocentric Universal Alliance against the Radical Destruction)も存在するなど、従来のシリーズであまり明示されなかったような部分もしっかり描かれ、見方によってはミリタリー色も濃密になっていると言える。
ライドマシンは六角柱の状態で待機できるようになっており、専用の輸送艦ピースキャリーで現場まで輸送し展開するなど、全編通して多くの特徴的な描写が盛り込まれ、SFファンにも好評を博した。
主な登場人物
- 高山我夢/ウルトラマンガイア(演:吉岡毅志)
- 主人公。詳しくは個別記事も参照。
- 1980年代に世界中で同時多発的に誕生した天才学者が結成した集団『アルケミー・スターズ』に所属し、量子物理学の研究を行っている青年。地球へ怪獣(コッヴ)が初めて襲来した際、地球から「ウルトラマンガイア」の力を授かり、それを機にXIGへアナライザー(異常現象や怪生物の分析担当)として入隊する。
XIGの活動拠点であるエリアルベースや戦闘機・XIGファイターに搭載されている反陽子浮揚メカニズム「リパルサーリフト」のような超技術を開発するなど、ウルトラシリーズ随一の頭脳派主人公。そのためか当初は体力面が今ひとつで、戦闘面では序盤は苦戦することが多かったが、トレーニングや独自の戦法(投げ技等)を編み出すなどして次第に強くなっていった。
ちなみに前2作のダイゴ(ティガ)やアスカ(ダイナ)と違い、戦闘機(XIGファイターEX)で出撃した際の被弾率は極めて少ななく、一度も撃墜されていない。これも我夢の開発したAI、PALによる操縦のなせる業。
下記の藤宮とは互いの意見の相違から2度にわたって激突することとなるが、最終的には人類と地球のために共闘することとなる。 - 藤宮博也/ウルトラマンアグル(演:高野八誠)
- 本作のもう一人の主人公でありライバル。詳細はウルトラマンアグルの項目を参照。
- 石室章雄(演:渡辺裕之)
- XIGの司令官であり、隊員からは「コマンダー(または石室コマンダー)」と呼ばれている。
基本的にはエリアルベースから司令官として隊員たちに指示を出しているが、意外と行動派な部分があったり熱血的な部分もあったりする。
部下・隊員からの信頼は厚い。我夢=ガイアということに早くから気付いていたようだが…? - 堤誠一郎(演:宇梶剛士)
- XIG実働部隊のチーフ。コマンダーの指示に基づき、現場レベルでの作戦指揮をとる。
優れた戦略家で、部下とは顔を合わせることを非常に大切にしており、彼も部下からの信頼は厚い。
ウルトラマンガイア
大地の光を宿した巨人。我夢が量子加速器での実験中に初めて遭遇し、その後の怪獣襲来時に光を授かったことで変身能力を得た。我夢自ら開発した変身アイテム「エスプレンダー」で光を解放し変身できる。
前述の通り、地球上における変身のタイムリミットは存在しない。ただし変身者の身体能力がそのまま反映されるらしく、序盤は打たれ弱い面も多かった。
「ガイア」の由来は、ギリシャ神話に登場する大地の女神ガイア、およびそれを基に地球を生命と見立てる「ガイア理論」に由来する。劇中では我夢自身が命名しており、どの由来として後者が語られている。
なお、ウルトラマンガイアの声も全て高山我夢役の吉岡毅志が演じている。
「着地と同時に土煙を上げる」という派手なエフェクトが頻用され、大地のウルトラマンらしさを印象付ける演出となっている(ダイナもときどきやってたけど)。
- ウルトラマンガイア(V1)
- 基本カラーは赤。
最強の光線技「フォトンエッジ」は従来のウルトラマンにない独特のモーションで、当時の視聴者に衝撃を与えた。 - ウルトラマンガイア V2
- 藤宮から託されたアグルの青い光の力でパワーアップしたガイア。V2はバージョン2(Version 2)の意味。
- 見た目は基本的にV1と同じだが、胸のプロテクター(ガイアブレスター)のラインが黒くなっているのが特徴。また変身の際には赤青2色の光が現れる。
- V1の技も強化されているうえ、アグルV1の技も全て使用可能。またガイアとアグルの光を最大限解放すると最強形態「スプリーム・ヴァージョンへ」と強化変身することができる。
- ウルトラマンガイア スプリーム・ヴァージョン (SV)
- ガイアV2がさらにパワーアップした姿。スプリームは「最高の」を意味する(SVはSUPREME VERSIONの略)。
- 身体カラーが赤・銀・黒・金・青と派手なだけでなく、V2までに比べかなりマッチョになっており、肉弾戦において圧倒的なパワーを誇る。(実質的な)初回戦闘では敵(ミーモス)をなんと9回も投げ、それ以外もほとんどの敵との戦闘で投げ技を披露しており、本編での合計投げ回数は40回以上。別名「投げの鬼」。
- 必殺技「フォトンストリーム」もまさに「必殺」で、本編でこのフォームは無敗である。チートといわれることもあるが、「奇跡的な力」「超能力」などでチート扱いされるような他のウルトラマンとは違ってほぼ純粋にパワーで敵を圧倒しており、シンプルに「強い」と表現するのが正しいのだろう。
- 活動可能時間については明確に設定されていないが、公式によると「消耗が激しく戦闘時間は短い」となっている。また初戦闘以降の戦闘時間は約1分程度になっている。
- 基本はV2からのフォームチェンジによるが、最終回のみ我夢から直接この形態に変身している。
主な必殺技
- フォトンエッジ
- 「頭部にエネルギーを溜めた後、額を突き出す」という異色のモーションで放たれ、鞭のようにしなり敵を包み込む光の刃。
ガイアV1では最強の技で、アグルの「フォトンクラッシャー」と同等の威力があるが、V2時にはさらに威力を増している。また中盤からは足がガクガク震えるモーションが入るようになり、より力を込めるような描写になっている。 - クァンタムストリーム
- 「腕をL字に組んで発射する」という、スペシウム光線の系譜を継ぐウルトラマンらしいモーションの光線技。ただしこれまた「右腕は縦に曲げ、左腕を水平にし左手首を右肘の中に収める」というやや独特のポーズになっている(まれにウルトラセブンのワイドショットと同じフォームで撃つ)。
ガイア第二の必殺技で、アグルの「リキデイター」と対をなすが、初使用時に敵(アパテー)を倒せないというウルトラ的なお約束破りをしていたり、敵の妨害や我夢自身のためらいにより発射を幾度となく中断していたりと、フィニッシュ技としてはパッとしない。ただし溜めポーズをしなくても撃てるなど機動性はある。
また回を重ねるごとに威力が増していくような描写があり、この技の威力の上がり方が我夢の成長を表しているとも言える。 - フォトンストリーム
- ガイアSVでのみ使用可能な、ガイア単独での最強技。
「両腕を回してエネルギーを溜めた後、体の前で合わせた掌の片方を下にずらす」という、フォトンエッジに劣らず独特なモーションで放たれる。本編でこれを喰らった敵は例外なく爆散しているという文字通りの「必殺技」で、これを放つためだけにSVになることも多かった。 - シャイニングブレード
- SV第二の必殺技。
両手から光のブーメランと飛ばす技で、使用回数は少ないが威力は高い。 - フォトンクラッシャー
- V2の技。本来アグルの技だが、光を受け継いだことによって使用できるようになった。
発射時のポーズがアグルとは若干違い、「簡易版」のような簡素なモーションになっている。 - また、宇宙空間ではこの技を使うことが多い(「フォトンエッジとフォトンストリームは地面に足がついていないと使えない」という設定があるという説も。同様の理由か不明だが、空中ではクァンタムストリーム・シャイニングブレードの使用率が高い)。
- リキデイター
- V2の技。こちらもアグルの技で、フォトンクラッシャー同様に光を受け継いだことで使用できるようになった。
初使用のミーモス戦ではアグル同様青い球体だったが、クインメザード戦では赤い球体になっている。 - アグルブレード
- V2の技。アグルの光を受け継ぎだことによって使用できるようになった技。
腕から青い光の剣を発生させる(ただし手元はアグルと異なり赤く光っている)。 - バーストストリーム/ストリーム・エクスブロージョン(ガイアSV・アグルV2の合体技)
- ガイアSVのフォトンストリームとアグルV2のアグルストリームを合体させ、威力を大幅に高める大技。
最終回のみ使用された。互いに必殺技のポーズが通常時とわずかに異なる。
なお、超コッヴ&超パズズ戦で使用されたのは「ダブルストリーム・クラッシャー」と呼ばれる同時発射の合体技である。
ウルトラマンアグル
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そして15年後・・・
2013年、「ウルトラマン列伝」にて15周年を記念し、新年に劇場版の4分割放送、そして5月にウルトラマンガイアを振り返る(紹介する)特集が2週連続で放送された。
劇場版の放送時は、我夢本人が当時を振り返るという形でウルトラマンゼロの代わりにナビゲーターを行い、パラレルワールドについての解説や、自身に起きた不思議な出来事を語った。
そして同年5月のガイア特集では、我夢に加えて藤宮もナビゲーターとして参加。劇場版放送では登場しないアグルの活躍、そして今に至る経緯を振り返りつつ視聴者に説明してくれた。
本放送の我夢と藤宮は「大決戦!超ウルトラ8兄弟」のような別世界の同一人物ではなく、「ウルトラマンガイア」本編の2人(公式ブログでは「イマ我夢・イマ藤宮」と呼ばれている)である。またガイア特集の最後には二人の変身シーンを新撮映像付きで観ることができる。特に藤宮(高野氏)の変身はOVを除けば実に15年ぶり。
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