エリクト・サマヤとは、TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場する人物である。
CV:市ノ瀬加那(スレッタ・マーキュリー兼役)
概要
本編前日譚である『PROLOGUE』に登場。同話中で4歳の誕生日を迎えたばかりの幼女。通称「エリィ」。同話の主人公であり、ガンダムシリーズ最年少主人公……と言えなくもない。
兵器会社オックス・アース・コーポレーションのモビルスーツ開発ディレクター、ナディム・サマヤと、GUND研究組織ヴァナディース機関のテストパイロット、エルノラ・サマヤの娘。現在は両親と共にヴァナディース機関の本拠地フロント・フォールクヴァングで宇宙生活を送っている。フロントほぼ唯一の子供ということもあって機関スタッフからも可愛がられており、リーダーのカルド・ナボ博士とも親しい(エリィは博士のことを「ばぁば」と呼ぶ)。
まだまだ人格面は未形成だが、素直でよい子に育っている。その一方でパパとママに何度も「駄目」と言われているのに一人で格納庫に出入りしたり、ママの関心を自分から奪っている(ように見える)実験機ガンダム・ルブリスに本気で焼きもちを焼いたりと、結構やんちゃで気が強い。
安全のためか、いつも幼児用ノーマルスーツ(宇宙服)を着用しており、背中には後頭部を保護する大きなピンクのうさぎさんリュックサックを背負わされている。
そんな幸せの日々は唐突に崩れ去り、サマヤ家は激動の運命をたどることになる。
PROLOGUE
はやくおきてよ! パパもママも、みんなルブリスのことばかり
きょうはエリィのたんじょうびなのにぃ!!
自分の誕生日にもかかわらずママはルブリスにかかり切り。格納庫のルブリスに怒りをぶつけるエリクトをカルドばぁばは宥め、自分たちが目指すGUNDの理想を説き、ルブリスとエリィを触れ合わせる。
だがその直後、MS開発評議会傘下の特殊部隊・ドミニコスがフォールクヴァングを襲撃し、ヴァナディース機関員が次々と殺害されていく。ばぁばも去り、一人ルブリスのコクピットで待っていたエリィは、駆け付けたエルノラと共にルブリスで脱出を試みる。
――これまで一度も動かなかったルブリスLF-03が動きだす。エルノラの表情は凍り付いた。自分が何度試みても通らなかったレイヤーコールが、エリィの名前で通ってしまっているではないか……!
自身のGUNDをエリィのノーマルスーツに繋ぎ、ルブリスを動かすエルノラだが、立ちはだかる敵MSの機影をエリィが示すと、ルブリスはあっという間に敵を攻撃、全滅させてしまう。こうしてエリィはガンダムシリーズ最年少の敵機撃墜記録(3機)を獲得してしまったのである。何が起こっているかもわからず「ろうそくみたいできれいだね」と笑うエリィに、エルノラは力なく頷くほかなかった。
その後、GUNDフォーマットを無力化するベギルベウを前に窮地に陥るも、ルブリスLF-01を駆るナディムがその身を犠牲にしてLF-03を逃がし、窮地に一生を得る。何も知らないエリィは、死に瀕したナディムが呟くバースデーソングに合わせて無邪気に歌いながら、宇宙の闇の中へ消えていくのだった。
本編
ここから先は『水星の魔女』シーズン1を 鑑賞した後に閲覧することを強くお勧めします。 |
サマヤ母娘の行方
PROLOGUE→本編という放送順、キャラクターデザインの酷似、声優が共通。このため、本編放送開始直後は「エリクト・サマヤとスレッタ・マーキュリー、エルノラ・サマヤとプロスペラ・マーキュリーはそれぞれ同一人物」、つまり「水星に渡ったサマヤ母娘は追手から逃れるために偽名を名乗ることになった」というシンプルな連想をしていた視聴者がほとんどだった。
この場合、スレッタが17歳なので『PROLOGUE』は本編の13年前の出来事ということになる(そう、実はPROLOGUEが本編の何年前なのか、当初は明らかにされていなかったのである)。ところが、公式サイトで公開された幼少期のスレッタを描く短編小説『ゆりかごの星』において、「スレッタがエリクトではないように深読みできる」描写が挟まれていることが判明。また、本編においても14年以上の年月が経過しているのではと思わせる描写がちらほら差し込まれ、「エリクト=スレッタ」説が揺らぎ始める。
視聴者の間では「水星でエルノラが生んだエリクトの妹」「成長したエリクトが出産した娘」「エリクトのクローンorエリクトを模した人造人間」「そもそもエリクトと血の繋がりが無い、整形で顔を変えた他人」「実はコールドスリープしていたエリクト」等の仮説が唱えられていく。
- エリクト=スレッタとして考えると『ゆりかごの星』における描写に違和感が発生する。「スレッタの母の名前が明かされていない」「スレッタは6歳の時点で水星におり、エアリアルも建造済」「スレッタは4歳の時点でコクピット内でゲームをするようになり、それを認識しているエアリアルの描写がある」「エリクトとスレッタの、母親の呼び方が違う」点である。
- スレッタの母は「娘とたった二人でこの水星に逃げてきた」と説明されている。同作内ではスレッタのことは「スレッタ」と表記されるのに、この箇所だけ「娘」である。この「娘」とスレッタは別人ではないのか?
- エリクトが4歳の時点で逃亡を始めてから、少なくとも6歳になるまでに水星に逃げこんだことになる。逃亡手段が存在したのか? そこからエルノラが過去を隠しながら仕事に就くだけの根回しが出来たのか?
- 水星という辺境で、ろくな資産も立場もないであろうエルノラが、たった2年足らずでエアリアルを造れるのか? 「ルブリスの正体を隠すために偽装を加えたのがエアリアル」ならまだ納得できるが、本作の兵器は固有のパーメット識別信号を持ち、簡単に照合ができる。名前と外装を変更するだけでその辺りも誤魔化せるのだろうか?
- エリクトは両親を「パパ」「ママ」と呼んでいたが、スレッタは6歳の時点で「お母さん」と呼んでいる。
- 本編のデリング・レンブランやサリウス・ゼネリのキャラクターデザインが、13年という歳月にしてはいささか老けすぎているように見える。
- エアリアルを製造運営するシン・セー開発公社が、創業33年の比較的新しい会社(プロスペラが社長に就任したのは本編の3年前)と判明。
ルブリスとサマヤ母娘は逃亡生活の果てに水星のシン・セー開発公社に流れ着く(もしくは設立に関わる) → 成長したエリクト=プロスペラがエアリアルを開発する傍ら、マーキュリー姓の男性と結婚。娘スレッタが水星で誕生 → 『ゆりかごの星』へ?
あるいは、逃亡時点でエルノラ=プロスペラは第2子(スレッタ)を妊娠しており、逃げ込んだ先の水星で出産 → エリクトが夭折 → 『ゆりかごの星』へ?
ダブスタクソ親父だの、「俺と…結婚してくれ」だの、チュチュだの、「よう俺」だの、本編が毎回ぶっ飛び展開を繰り広げてライトなファンを湧かせる裏で、考察派のディープなファンはどうにかして一応の辻褄を合わせられないか、様々な推理を披露していた。キャッチーな展開と数々の謎は各ネットコミュニティを大いに盛り上げ、作品自体の人気を大きく押し上げることになったのであった。
空白の21年
そして、第6話・第7話にて『PROLOGUE』の惨劇(ヴァナディース事変)が本編の21年前の出来事と明言された。この新事実によって「エリクト=スレッタ説」が一気に怪しくなったばかりか、スレッタの年齢がそもそも偽装されたものでない限り「エリクトの娘説」も成り立たなくなってしまった。エリクトの妹説、記憶を刷り込まれたクローンor赤の他人説が有力候補に浮上する。
第8話ではヴァナディース機関のPRムービーを見たスレッタが、そこに映っているカルド博士を知らない(どこかで会った気がする、という匂わせすらない)描写が挿入された。最後に会ったのが4歳時とはいえ、「ばぁば」と慕っていた人物をきれいさっぱり忘れてしまうのは不自然すぎる。
スレッタはまず間違いなくエリクトと別人であろう。では、生きていれば25歳になっているはずのエリクトはどこに行ってしまったのか?
第11話で「プロスペラ=エルノラ」であることが確定するが、エリクトの行方についての情報開示はシーズンをまたぐことになった。 『ガンダムは命を奪う』という言及から、最悪の事態を想像する視聴者も多かった。
……あなたにはもう一人、娘さんがいましたよね。
エリクト・サマヤは今、何処にいるんですか!?
いるわよ。スレッタのすぐ傍に。
私のかわいい娘たちだもの
ここから先は、重大なネタバレ成分を多分に含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
私はルブリスを使って、エリィの命を繋ぐと決めたわ。エアリアルとしてね。
今のエリィはパーメット粒子と同じよ。エアリアルという体がなければ、
物理空間では崩壊してしまう。
ヴァナディース事変後、サマヤ母娘は水星へ逃げのびていた。だが、幼いエリクトの体は太陽系でも屈指の極地である水星の宇宙に耐えられず、次第に衰弱していった。エルノラはデータストームのネットワークを利用して、エリクトの生体コードをルブリスに転移させるという苦渋の決断をする。その後、ルブリスはガンダム・エアリアルへと改修された。
現在のエリクトは生存こそしているものの、データストームの中でのみ存在が許される非実体存在でしかない。データストーム内のエリクトは肉体が死亡したと推定される7~8歳の姿のままで、一人称は「僕」。死に瀕した(というか死んだ)逃亡生活で性格もひねくれてしまったのか、結構ずけずけとモノを言うイイ性格になっている。
エルノラは、エリクトの遺伝子を元に11人の「リプリチャイルド(クローンみたいなもの)を造り出した。そのうち「カヴンの子」と呼ばれる10人はエリクト同様に肉体を持たず、エリクトの拡張意識となるエアリアルのガンビットに新たに組み込まれ、唯一肉体を持つリプリチャイルドは、エアリアル(=エリクト)を動かすパイロットとして育成される。それこそがスレッタであった。
エリクトにとっては、スレッタは自分の妹ともいえる存在である。エリクト自身はスレッタを大切に重い、自分の人生を自由に生きてほしいと願っており、エルノラ=プロスペラがスレッタを「復讐の道具」として利用することには反対している。
ただし、エリクトは自らの分身ともいえる「カヴンの子」と共に「復讐は自分たちでやろう」とも思っているように、プロスペラの復讐計画そのものには賛成している。
また、エリクトは作中で語られた中では人類唯一の、データストームと完全に同調し、一切の肉体ダメージを負わない(GUND-ARMの呪いを受けない)存在である。プロスペラはエリクトに実戦を経験させ、より高いパーメットスコアを発揮させることを目的に、エアリアルとスレッタをアスティカシア高等専門学園に送りこんだ。その目論見通りにエリクトは成長し、他のパーメット機器をコントロールする力を獲得していく。
ちなみにエアリアルの正体がルブリスだと露見しなかったのは、当のヴァナディース事変を主導したデリング・レンブランがプロスペラを協力者として計画に引き込んだためであった。明言されていないが、ルブリスの改装を支援したのも恐らくデリングと思われる。
最終的にスコア8に到達し、スレッタ無しで自在に動けるようになったエリクト(エアリアル)は、スレッタの前に初めて姿を現す。そしてデータストームを通して自身と母の過去を見せつけ、これ以上自分たちの計画に巻き込まないよう、コクピットから放逐した。
――だから、君はこれ以上縋っちゃいけない。僕にも、お母さんにも。
広範囲にデータストーム・ネットワークを展開するクワイエット・ゼロに組み込まれたエリクトは、自分たちを攻撃してきた宇宙議会連合の艦隊を殲滅。そのままベネリットグループが保有する中核ユニットを強奪し、全地球圏を掌握しようとするが、性懲りもなくスレッタがガンダム・キャリバーンに乗って突撃してくる。
事実上、地球圏を支配する独裁者になろうとする母とエリクトを止めたいスレッタと、現実空間に再臨して母娘の宿願を果たしたいエリクト。2人は激しくぶつかり合うが、その最中に放たれた議会連合本部の惑星間レーザー砲撃を防ぎ、エアリアルは大破してしまう。
スレッタはクワイエット・ゼロの身代わりとして、自らデータストームの拡大役となることで母娘の宿願を叶えようとする。キャリバーンを介して応答が可能となったエリクトはその決意を尊重し、全てのGUND-ARMを触媒にして惑星間レーザーを使用不能にした。
スレッタによって極限まで拡大したデータストームの中で、エリクトとエルノラは再開を果たす。GUND-ARMが崩壊を始める最中、スレッタは最後の力を振り絞ってエリクト達のデータを手元の端末に移し替えた。
3年後。エリクトは、スレッタとその妻、ミオリネ・レンブランの思い出の品であるキーホルダーのホッツさんに入っていた。スーツケースに括りつけられた彼女はミオリネの「小姑」として、それなりに楽しい日々を過ごしているようだ。
こんな田舎の何処がいいのかよくわかんないなぁ~
アンタの存在の方がもっとわかんないんだけど
僕だってわかんないよ
……皮肉っぽい性格と図々しさが強化されたようではあるが。
関連動画
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関連リンク
関連項目
- 機動戦士ガンダム 水星の魔女
- ガンダムシリーズの登場人物一覧
- エルノラ・サマヤ(母)
- ベルメリア・ウィンストン(母親の同僚)
- スレッタ・マーキュリー(?)
- ガンダム・ルブリス
- ガンダム・エアリアル
- ろうそくみたいできれいだね
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