この記事は、Undertale非公式/公式日本語訳の表現対応の一覧である。
『Undertale』関連記事でも幾度なく注意が呼びかけられているが、本記事には当然ゲームのネタバレ要素が多く含まれるため、未クリアの場合の閲覧は推奨しません!
前置き
まず本見出しで、有志による『Undertale』の非公式日本語化パッチの存在と、その影響及び本記事の目的等について解説をする。
長文となるため、表現対応の一覧に飛びたい場合は記事上部の見出し一覧、もしくはこのリンクから一気に飛ぶ事ができる。(PC版のみ)
翻訳とローカライズの違いについて
同一視される事の多い両単語だが、双方とも細かくニュアンスが異なるため、本記事の理解を助ける意味でも簡単に解説を挟む事とする。
- 翻訳
ある言語を他の国の言語にそのまま移し替える事を指し、翻訳後のニュアンスは翻訳者によって大きく異なる事がある。
例:「美味しい」→「delicious」「tasty」等 - ローカライズ
目標言語に適合するように対象にとっての適切な文書へ仕上げる。例えば「勧善懲悪」という言葉はそのままの意味の物が英語圏には存在しないため「Poetic justice」と言い換える等。
注意をしたいのは「地域化」なので言語に限らず、その国や地域、文化に合うように最適化する事も指す。例えば、ドラえもんは日本では「タヌキ」と称され怒る描写があるが、アメリカではタヌキに馴染みがないため「アザラシ」と称される描写に変更がされている。
以上の事から「翻訳」は「ローカライズ」の中の一種でもある。
非公式日本語化パッチについて、その誕生
公式サイトやSteamといったPCでのプラットフォームで登場してからPS4/PS Vita/Switchといったコンシューマー機種にも移植がされ、作品その物やファンのコミュニティも広がり続けるインディーゲーム『Undertale』。
英語圏の作品である本作は2015年9月15日より販売が開始され、公式日本語版はその2年後となる2017年8月16日に販売が開始された。
現在我々がプレイヤーとして手に取れる本作は、数々のタイトルのローカライズ作品をパブリッシングしている有限会社ハチノヨン(8-4, Ltd.)が原作者であるToby Fox氏と緻密なやり取りや指示を交わしながらローカライズをした物である。
(余談だがインタビューによるとリリースの3ヶ月後である2015年12月の時点で公式ローカライズ化のプロジェクトは持ち上がっていたらしい)
その為、公式のローカライズ版がリリースされるまでniconicoをはじめ日本のゲーマー間では話題になる事はなかった……という事実はなく、実際にはそれが出る二年間の間でも本作は日本においてジワジワと話題になっていた。
niconico上で確認できる最古のプレイ動画はリリースから1ヶ月後に投稿者が英語版に対し独自の翻訳や解説を挟んだ以下の動画であるとされ、これも本作の知名度向上に貢献したと言えるだろう。
その後もジワジワと英語版でのプレイ動画や実況プレイは増えていったが、原作が英語という事に変わりはなく日本人が本作をプレイするに当たって非常に高い壁があるのは変わらなかった。
しかしその後転機が。
半年後の2016年3月頃に作品ファンである複数の有志が共同で制作をした「Undertale日本語化パッチ」の"ほぼ完成版"が翻訳プロジェクトとして遂に配布される事になる。
それに伴い、英語がわからなくても本作をプレイするハードルは下がり、本作が話題になりやすい土壌はこの時にできたと言える。
パッチ配布の数日後には既にそれを適用した実況プレイ動画が登場し(1つ目)、同年5月には有名実況者による実況プレイ動画(2つ目)により、有志の翻訳した且つ翻訳の質も高いと評価される本作の知名度とプレイヤー数は飛躍的に向上したと言えるだろう。
(当然これはniconico上での話であって、niconico外にも大きな影響があった事は書くまでもない)
非公式日本語化パッチの配布終了
あらゆる面で本作に大きく貢献した「Undertale日本語化パッチ」だが、公式による解釈が反映されているとは言い難いため「非公式の翻訳」である事には変わらない。
その為、パッチのバージョンによっては原作者の意図しない解釈を日本のプレイヤーに与えかねないケースも存在した。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/moa810/status/708935778160619521
※『はーとふる彼氏』の作者である玻都もあ氏のツイート。『Undertale』の非公式翻訳/公式ローカライズへどちらにも携わり、作品に関するガイドラインを翻訳したりして、原作者であるToby Fox氏との交流が深い。
※この時点ではパッチは未完成の状態で、修正作業等もしっかり随時行われていた事は明記しておく。
原作者であるToby Fox氏は2016年11月4日の時点で公式のローカライズ版を2017年中にはリリースする旨を告知している。
(非公式の日本語化プロジェクトが立ち上がった時点でもToby氏が言及していたとされるツイートも存在するが、筆者ではソース元が見つからなかったため割愛する)
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/tobyfox/status/794311962935095297
それを受け翻訳プロジェクトに携わった有志の一人も「公式のローカライズ版がリリースされ次第、非公式の日本語化パッチは削除する」という旨を表明をしていた。(現在ツイート等は削除済み)
削除の意図は推し量るしかないが、公式の物が出る以上はToby Fox氏の解釈や意思が「ローカライズ化」という意味でも反映されているそちらへ誘導する必要があるという判断なのかもしれない。
そしてSteamでの公式による日本語対応アップデートが行われた2017年8月22日午前0時を持って、それまでにも愛され続けた非公式の日本語化パッチの配布は作品ファンに惜しまれながらも遂に終了した。(配布終了宣言のツイートも削除済み)
『Undertale』はテキスト量も膨大な上に英語圏のゲームであるため、独自のニュアンスを日本人向けに訳する作業を含め、非常に大掛かりで多くの有志による労力が非公式の日本語化パッチに注ぎ込まれた事は言うまでもない。(これは当然一から始めている公式の翻訳作業にも当てはまるだろう)
さらに翻訳の検証や修正等も行われ、クオリティもある程度保証されているため、日本における多くの作品ファンを非公式の日本語化パッチが生み出したのは紛れもない事実である。
影響
非公式の日本語化パッチの制作者の方々の本意により配布が終了し、遂に公式のローカライズ版がリリースされた。
しかし公式訳版では本作に関するあらゆる表現が「日本向け」にローカライズがされているため、それまで有志が独自に翻訳をした非公式の物に登場する表現と多くの相違が含まれていたのである。
それにより従来の非公式訳版の表現に慣れていた一部の作品ファンは公式訳版の表現に対して強い違和感を抱いたりといった事が頻発した。(「ここの翻訳は非公式訳の方が良かった」等)
中には非公式の日本語化パッチ制作者の方々も苦言を呈すような誹謗中傷すら発生していた事が確認されている。
逆に公式訳版のプレイヤーが非公式訳版に対して違和感を抱くといった事象も確認されている。
「いや、非公式訳のパッチは配布終了したのでそれは起き得ぬ事なのでは?」と思われるかもしれないが、これは公式訳版がリリースされる前に非公式訳版のプレイ動画や二次創作等が大量にネット上に上げられていたためである。
非公式訳版の配布が終了した今でも2017年8月16日以降のプレイヤーは非公式訳に触れる機会が少なくはないという事である。
(もちろん容易に非公式訳版のパッチが入手できなくなった今では公式訳版に準拠した物が増えつつあるためそこは安心しよう。)
本記事の目的
『Undertale』本編だけをプレイするならともかく、さらに広がる作品のコミュニティ上でプレイ動画や二次創作、考察等を楽しむ上で上述のギャップは大きな課題になる事があるかもしれないし、沈静してそうならなくなる事もあるかもしれない。
しかし作品ファンの中には「公式訳も好きだけど非公式訳の表現で二次創作をしたい!(その逆や併用も然り)」といった者も少なからず存在はするし、それを何かしらの考え方で支持をする者もいるだろう。
本記事はそのギャップを埋めるための助けになればと作成がされた物である。翻訳やローカライズにまつわる歴史や背景を閲覧者の理解のため上述へ記しはしたが、決して何かしらの対立を煽動する目的ではない事は注記する。ニコニコ大百科では、ほんわかレス推奨です!
(そもそも非公式訳の制作者の方々も対立や誹謗中傷については快く思っていない上に、先述した通り公式訳版は原作者であるToby Fox氏の意思を無視した物ではなく本人の指示の元にローカライズされた物である)
各翻訳の表現の違いをリスト化し、また記事にない必要な記載があればその都度追記や、掲示板等に報告がされる事を望む。
Undertale非公式/公式日本語訳の表現対応の一覧
ギャップの大きそうな主要な物等を列挙するが、必要であればその都度追記をして下さい。
「翻訳」だけではなく「ローカライズ」の相違点や解説もあると尚良しです。
作中に登場する固有名詞は、非公式訳版では英語版そのまま、公式訳版では読み方をそのままカタカナにした物が多いです。
(非公式訳版では「Sans」、公式訳版では「サンズ」といった具合)
その為、中には結果的に英語版の表現との相違になっている物も存在するため要注意。
(あくまで本記事で一覧化するのは「原語版」とではなく「非公式の日本語訳版」と「公式の日本語訳版」同士の比較となります。)
また、非公式訳版ではテキストに漢字が常用されるのに対し、公式訳版では漢字が基本的に使われる事はありません。
キャラクターの名称や同士での呼び方等
非公式 | 公式 | 注釈 |
---|---|---|
Papyrus | パピルス | 英語では「papyrus」という単語は 「pəpáiərəs(パパイラス)」と発音するのが一般的。 そのためアルファベット表記のせいで発音が明示されない非公式版の頃には、 「パピルスではなくパパイラスと読むべきなのでは?」 という意見も見られた。 公式訳版では「パピルス」と表記された。 |
Alphys | アルフィー | 原語では「アルフィーズ」という読み方だが、 日本では「アルフィス」と呼ばれる事の方が多かった。 公式訳版では「アルフィー」が正式となる。 |
俺 | オイラ | サンズ(Sans)の一人称。 とある場面では公式訳版でも「オレ」になる。 |
Sans | 兄ちゃん | Papyrus(パピルス)のサンズ(Sans)への呼び方。 ニコ動のコメントでもよく見かける「SAAAAAAAAAAANS!!!!」は 非公式訳版の名残である。 |
ダーリン | こねこちゃん | Mettaton(メタトン)の主人公への呼び方。 |
場所やアイテムといった物の名称
非公式 | 公式 | 注釈 |
---|---|---|
Snowdin | スノーフル | 原語では「スノーディン」という読み方で 「snowed in(雪に埋もれる)」を「スノーが降る」という 表現のローカライズをしている説が高い。 |
エボット山 | イビト山 | 「エボット山」は「Mount Ebott」からの直訳だが、 そもそもの「Ebott」は逆から読むと「Ttobe」。 つまり原作者の名前である「Toby(トビイ)」となり、 「トビイ」を同じように逆にすると「イビト」となる…という推測。 |
絆創膏 | ほうたい | 主人公の初期装備。原語では「Bandage」。 包帯にも絆創膏にも使う言葉だが、 非公式日本語版では絆創膏と解釈され、公式訳版では包帯とされた。 とある棺を調べた時のメッセージ "there's something like... ... mummy wrappings at the bottom of it." を踏まえると、包帯のほうがそれっぽい? |
海茶 | ビチャビちゃ | 戦闘中の移動スピードを上げるアイテム「Sea Tea」だが、 非公式訳版では直訳、公式訳版では「ビチャビ茶」 というダジャレ風にローカライズされている。 |
バイシックル | バビコ | 二又に分かれているアイスキャンデーのアイテム「Bisicle」だが、 非公式訳版では直訳、公式訳版では日本に実在する 二又アイスキャンデー「パピコ」に原語の「B」をかけたか、 あるいは「倍」とかけたかというローカライズだろうか。 |
セリフやメッセージ
非公式 | 公式 | 注釈 |
---|---|---|
我が子よ | (無し) | トリエル(Triel)の台詞で、 原語では「My Child」。 公式訳版ではこのフレーズは訳されず、 台詞中から省かれている。 ただし和解後には「さようなら わたしの だいじなこ…」という台詞がある。 |
ニェーッヘッヘ!! | ニャハハハハハハ!! | Papyrus(パピルス)の口癖。 |
地獄の業火に焼かれてもらうぜ | じごくで もえてしまえばいい | Gルート終盤におけるサンズ(Sans)の台詞。 原語は「Should be burning in hell.」で、 この前には 「on days like these, kids like you...」 との前振りもある。 これは「マザー2」のストロングしょちょうの台詞 「いまは ひじょうじ なのだ。 こどもは うちで ニンテンドーでも してればよい。」 (At times like this, kids like you should be playing Nintendo games.) のパロディではないかと推測されている。 公式訳版ではやや元ネタ寄りとしたものか。 |
してやったりだぜェーーーッ!!!/ ダンクシュートでくたばりやがれぇッ!!! |
あれ? しんだのか? おかしいな ハグしようと しただけなのにな | Gルート終盤におけるサンズ(Sans)戦中に彼を見逃した時のゲームオーバーメッセージ。 非公式訳版では原語の「geeettttttt dunked on!!!」を感情的に直訳した物を2つの表現で。 公式訳版では彼の普段のキャラっぽく皮肉のような言い回しでローカライズされている。 |
あなたは背中に罪が這い登る/押し掛かるのを感じた | おかした つみの かずかずが せすじを つたう/ おかした つみの かずかずが かたに のしかかる |
Gルート終盤におけるサンズ(Sans)戦中のメッセージ。 非公式訳の意図については>>24を参照。 |
何という悪夢だ! | あくむだ…! | 作品終盤のエリア「コア」のとある場所で 敵にエンカウントした時のメッセージ。 |
ンガアアア! | ぬああああ! | Undyne(アンダイン)の口癖。 原語版では「NGAHHH!!」。 |
ヒーローが現れた | ゆうしゃが あらわれた | Gルート中盤、ふじみのアンダイン登場時のメッセージ。 公式訳版において、RPGである本作ではJRPGを意識して 本来主人公側であるはずの「勇者」の役割をUndyne(アンダイン)に与える事で主人公と対比させる …というローカライズなのかもしれない。 (Gルートにおいて主人公はモンスター同然の立場である。) また例えば『ドラゴンクエスト』における「ゆうしゃ」は英訳される場合「Brave man」ではなく「Hero」とされる事も多い。 |
風が唸っている… | くろい かぜが ないている… | ふじみのアンダイン戦中のメッセージ。 非公式訳版は原語版における「The wind is howling…」の直訳。 公式訳版は『クロノ・トリガー』の魔王戦のパロディか? |
アフフフ… | フフフフフ… | Muffet(マフェット)の笑い方。 原語版では「Ahuhuhu~」と独特な笑い方になっており、非公式訳版はそれに準拠している。 |
本物のドラマ!! 本物のアクション!! 本物の血しぶき!! 私たちがお届けする新番組… 「アタック・オブ・ザ・キラーロボット!」 |
ストーリーも アクションも バイオレンスも すべてが “リアル“! しんばんぐみ…!「しんげきのキラーロボット」 をおたのしみください! |
Mettaton(メタトン)EX戦前の彼の台詞。 非公式訳版は直訳で、公式訳版は日本でも人気の漫画『進撃の巨人』を織り交ぜたローカライズか。 |
労働基準法は守らないとね。 休憩の時間だよ! |
きゅうけい はいりまーす うちは ブラックきぎょう じゃないからね! |
Mettaton(メタトン)EX戦中の彼の台詞。 「ブラック企業」も日本的な言い回しと言えるかもしれない。 |
○○○。 あなたは決意で満たされた。 |
○○○。 そうおもったら/xxxして ケツイが みなぎった。 |
セーブポイントで表示されるメッセージ。 |
あなたはテミ意でみたされた。 | ケッィ みなぎタ! | テミー村のセーブポイントで表示されるメッセージ。 原文は「You're filled with detemmienattion.」なので非公式訳は「決意(determination)」と「テミー(Temmie)」を複合させている。 公式訳では通常のセーブメッセージにフォーマットを合わせ、テミーの口調になっている。 |
その他
非公式 | 公式 | 注釈 |
---|---|---|
汎用フォント(横書き) | たぬき油性マジック(縦書き) | Papyrus(パピルス)の台詞のフォント。 それに加え彼の台詞だけは公式訳版で縦書きで表記される。 なお原語版ではフォントのPapyrusが使われている。 |
汎用フォント | ハッピールイカ | サンズ(Sans)の台詞のフォント。 公式訳版では場面によっては汎用フォントとなる。 なお原語版ではフォントのComic Sansが使われている。 |
主人公と対話する際に見られるような口調の通常の書き込み | 日本のネットスラング等を混ぜた書き込み | Alphys(アルフィー)のネット上での口調…というよりキャラ? 原語版では英語圏のネットスラング等が混ぜて使われている。 非公式訳版ではそれのニュアンスが伝わるような直訳の印象が強く、 公式訳版では日本のネット層に馴染みの深いネットスラング等に置換されたローカライズという印象。 (草を生やす等) |
SAVE | ふっかつ | Pルートラストにおけるとあるキャラクター達を救う コマンドの一つだが「SAVE」は作中の肝となる"セーブ(ゲームの機能)"と"救う"のダブルミーニングとなっている。 公式訳版では戦闘コマンドが全て日本語になっており、それに加え ローカライズの影響で主人公のモノローグの流れに変更があり、それに伴い「ふっかつ」になったのだと思われる。 |
関連リンク
- 「UNDERTALE」のローカライズ担当スタッフにインタビュー。日本語版はToby Fox氏と一緒に作り上げた夢のようなプロジェクトだった - 4Gamer.net
- 誰も傷つかなくていいRPG『UNDERTALE』が、この夏日本上陸! 開発者からのメッセージも到着!! | PlayStation.Blog
- Undertaleに登場するジョークの英日比較とその解説(Nルート編①) - ケムニマーク
関連コミュニティ
関連項目
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