ポケモンショック(ポリゴンショック・ポケモンフラッシュetc...)とは、忘れる事の出来ない事件である。
アニメ演出におけるパカパカを発端にした光過敏性発作の問題が表に出る歴史的事例となった。
1997年12月16日にこの事件は起きた。この日の18時30分に放送されたテレビアニメ『ポケットモンスター(無印)』の第38話(当時)「でんのうせんしポリゴン」において、放送直後から多数の視聴者が体調不良を起こし、病院に搬送された事件である。
視聴後に体調を崩したのは概ね児童層で、頭痛や吐き気の他、重傷者に至っては気絶して完全に意識を失い、てんかん発作等を発症する症状が見られた。
当時『ポケモン』はテレビ東京系列の主要放送先6局である、北海道・東京・愛知・大阪・岡山・福岡の全国ネットで放送しており国内各県で被害者が相次いだ。最も多かったのは大阪と神奈川の76人で、次いで東京、埼玉でも70人以上が搬送された。また本来遅れネットで放送されていないはずの県でも、当時のアナログ放送で電波漏れしている地域や、隣県の放送をケーブルテレビで視聴できる地域(青森県、山梨県、山口県、四国地方など)でも少数の被害が確認された。
なお当該放送の関東地区における視聴率は16.5%、関西地区では10.4%であった。
当時コロコロコミックの部数を伸ばし、アニポケにおいてもゴールデンタイムのテレビ東京の視聴率1位を勝ち取るなど社会現象と化したポケモンの人気は目覚ましいものがあったが、それが仇となって多くの視聴者がまずい放送内容(後述)の影響を受けてしまったという事実が、皮肉にも多数の被害者を生んだ事実から裏付けられてしまう結果となった。
被害が全国各地の広い範囲で一斉に発生したことから、その日の晩から未明翌朝にかけて、すぐさま騒動がニュースとなった。
当該第38話(当時)の本編では、コンピュータ世界を表現する為に、「パカパカ」と呼ばれる技法をはじめとする、ストロボやフラッシングなどと呼ばれる激しい点滅エフェクトをおよそ25箇所に渡り1秒以上連続使用している。特に番組後半においては、ピカチュウの攻撃がワクチンソフトに直撃した際の爆発等で多用されていた。更に、赤と青がという反対色を交互に激しく点滅する背景を長時間表示したことも、問題に拍車をかけたとされている。
これにより、上記の通り視聴者(主に子供)が体調不良を訴えて病院へ搬送され、30の都道府県から651人が搬送され、内135人が入院したとされている(1999年発行の書籍『NHK年鑑'98』より)。原因は前述のパカパカ演出による光過敏性発作によって引き起こされたと考えられている。
この事件は翌朝以降マスコミにおいて大々的に報道され、その中には当初はTV番組としてだけではなく、ポケモンそのものへの的外れな批判などもあった(特に新聞の社説や週刊誌報道ではその傾向が顕著であり、某全国紙ではピカチュウが電撃を発する写真と共に「ピカチュウ 子供たちを襲う」という見出しが付けられたりもした)。
これは当時は今ほどインターネットが普及しておらず、テレビや新聞の他は口コミが主な情報伝達手段であったため、該当シーンを実際に見た子供たちの「ピカチュウの目が光ったら気分が悪くなった」「ポリゴンが画面から出てきた」等の、事実とは異なる部分のあるイメージの先行した噂話が広まった事も、その一因となっているとされている。
当該の事件後、テレビ東京は遅れネットでの放送分を中止すると発表し、日本民間放送連盟(民放連)の原因究明調査及び、社内の再発防止策がまとまるまでポケモン関連の放送を全面的に休止すると発表し、『ポケモン』の枠を当時開始して間もないテレビ東京の子供向けバラエティ『おはスタ』内で放送していたアニメ「学級王ヤマザキ」に差し替え、レンタル貸し出しや系列局における再放送の自粛などを要請した。これにより、一時期TSUTAYAをはじめとした全国展開するレンタル店は相次いで『ポケモン』の貸し出しを自主的に取りやめ、その後小学館とメディアファクトリーからもビデオレンタルの自粛を要請する事態になった。
しかし、後日他の番組(後述)においても同様の事例があった事が判明し、また事例こそ報告されていないものの、ニュース番組の映像でよくあるカメラのフラッシュの明滅でも同じ事が起こる可能性が指摘されることにより、当事件や『ポケモン』に対する批判は次第に収束した。
また新聞紙上等では過激な報道や社説が飛び交っていたものの、TVのワイドショー等においては(他局とはいえ同業のコンテンツだからという擁護も多少はあるだろうが)新聞等よりもやや冷静な報道が行われており、特にこの問題による番組中止が長期化することが決まった際には「これだけ人気のあるものを打ち切りにしてしまうと、かえって子供へ悪影響を与える」「親御さんは、視覚表現による悪影響というよりも、突然ポケモンを取り上げられたことに対する子供への心配の方が強い」と擁護するコメンテーターも少なからずおり、必ずしも番組の批判だけが盛り上がっている訳ではない。
そして翌1998年1月にNHKと民放連のガイドライン発表の見込みが出来たとして放送再開を発表。検証番組を放送した上で、火曜から木曜のゴールデンに時間を移して1998年4月16日に放送を再開している。
「でんのうせんしポリゴン」の次の週の作品は「ルージュラのクリスマス」であり、ちょうど季節ネタを取り込んだストーリーであった。しかしながらこの事件でアニメポケットモンスターの放送が中止となり、後々になって番外編として真夏に放送された。
ちなみにルージュラのデザインは海外で人種差別のタブーに触れる懸念があり、海外の映像ソフトではルージュラの登場回を欠番扱いにすることが多い。詳しくは当該項目を参照。
入院者が出る等の直接の被害が出ていた例は数にすればあまり多くは無いが、このポケモンショックの約9ヶ月前(1997年3月29日、第25回)に、NHKの『YAT安心!宇宙旅行』において同様の手法が使われており、これによって数名の児童が病院に運ばれていた事が、後になって判明した。
この件が発生した時点では(後のポケモンショックに比べて)被害規模が小さく、NHKでは原因究明に至る事が出来なかった。そのため大々的に表に出る事がなかった。「この時にしっかり原因究明できていればポケモンショックは防げていたのではないか」という指摘もある。
問題のシーンが含まれる過去の放送回の「ポケットモンスター(無印)」のセルビデオは、レンタルを含めポケモンショックの後に自主回収が行われ、修正版に差し替えられている。しかし全てを回収し切った訳ではないようで、一部のレンタルビデオ店には問題のシーンがそのままあるビデオが残っている場合もあったようだ。
無論『YAT安心!宇宙旅行』のみならず、以下の事例を含め本件以前に赤青の透過光演出を用いている作品は1980年代~1990年代前半の間において多数存在し、視聴する際に注意を要する。
また以下には高年齢向けのアニメ等も含まれるが、『ポケモン』は番組の内容から必然的に児童層が多かったのであって、少数ではあるが大人の重傷者も搬送されている。千葉県では40代の男性が5分ほど意識を失い搬送されたといい、年齢層に因果関係はないものと思われる為、大人でもこれらの症状を発症する事は十分に有りうるのである。
事件前には当たり前だったパカパカという演出は、事件後大幅に自粛されるようになった。事件以降に (ポケモンに限らず) 過去のアニメを再放送する場合、相当する演出シーンはアニメーションせずカットの静止画を一枚映すだけなどの対策が講じられた。
また電撃などの、複数色の繰り返しを伴わない単色光の強いフラッシングも規制の対象となり、現在では主にこの効果が使われるシーンの明度そのものを大幅に落とす手法が採られている。アニメを観ていていきなり画面が薄暗くなったら「ああフラッシュするんだな」という心構えができるというメリットはあるものの、演出としてはインパクトが削がれてやや物足りなさを感じるかもしれないが、こればかりはまあ仕方ないね。
アニメだけでなくテレビゲームの自主規制も行われるようになった。たとえばファイナルファンタジーVIの初作は「むげんとうぶ」で点滅の演出があったが、PS版では点滅のスピードが遅くなり、GBA版では点滅自体がなくなった。
本家ポケモンでも例外ではなく、近年ではバーチャルコンソール等で配信されている過去作のポケモンシリーズ(第一世代・第二世代等)においても、「10まんボルト」等、激しく点滅する効果についても修正処理が行われるようになった。
また演出ではないが、報道番組での会見等の映像で新聞記者の使うフラッシュが同じ効果を起こしうることがわかり、映像にフラッシュの明滅を抑える加工をして使用するようになっている。
果ては子供向け玩具等にも影響を与えたとされており、昭和から平成前期までのヒーローもの玩具にありがちだった「小刻みに点滅する光線銃」といった玩具も本事件以降見られなくなっていった。実際、昭和末期の特撮番組『仮面ライダーBLACK』の変身ベルトは、バンダイの「テレビパワー玩具」と釘打たれた、テレビ画面の変身シーンの点滅に連動してベルトが動作するといったギミックが売りであったし(現在のDVDでは減光処理がされている)、2010年代以降のヒーローもの玩具はサウンドギミックを重視しているものが多いが、これはST基準の厳格化といった事のほかにも、本事件の影響でライトギミックが依然として敬遠されているからと考察する人もいる。
上記の書籍は、当時のポケモンの放送再開直前に刊行された、本件を扱った書籍である。
当時のマスコミ各社の新聞記事が社説も含め洗いざらい掲載され、その中の見当違いな記者のコメントに対して、著者が痛烈に批判する注釈が付けられているほか、事件の経緯や当時の各所の状況、およびここに至るまでのゲームフリークやポケモンの歩みなどが記録されている。wikipediaや本記事の情報も概ねこの書籍に掲載されており、当時を知る資料としての価値はある。
なお書籍の後半では当時の親世代に著者の評論家・大月隆寛が切り込み、1997年当時の親世代が「テレビばかり見ているとバカになる」とメディアを制限されてきた子供時代を送った世代であるとし、その反動を受けた親が多い事から子供にテレビを見せる事に抵抗のない時代になってきた事もあながち無関係ではないのではないか、といった持論等が見られる。その他、アニメに反響する文化人や大人達(アニメファン)への批判等も含まれている。
《 警告 》上記動画において、ポケモンショック(光過敏症)の原理を体感できる。学術調査目的のため、参考リンクしておくが、光過敏症に陥る恐れがあり、非常に危険である。暇つぶしや肝試しなどという安易な気持ちからは絶対に見ないでほしい。やむを得ず視聴する場合には、体調が万全であることを確認した上で、①部屋を明るくして、②モニタから十分離れ、③眼の焦点をモニタ外におくように注意してください。
ちゅうい : うえの どうがを みるときは おとうさんか おかあさんと いっしょに みましょう。
掲示板
688 ななしのよっしん
2025/08/20(水) 13:50:31 ID: a7Dt7Vrqdp
出番に関しては設定を自然にシーンに出すためのシナリオがつくりにくいところじゃなかろうか
あとロトムとかぶる
689 ななしのよっしん
2025/09/22(月) 15:15:46 ID: 7uAQS14KQR
ポケモン以外の作品にも多用されてて自分は平気だったけど、平気じゃない人らのお気持ちが届くようになっていい話である
ただ、クレームとして身体的弱者を盾に取る卑怯なやり方に悪用されるのも否めない
690 ななしのよっしん
2025/12/16(火) 23:52:18 ID: XngwAMqA4I
今日はこの事件から28年
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/24(水) 14:00
最終更新:2025/12/24(水) 14:00
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