「魔界転生」(まかいてんしょう)とは、山田風太郎の小説作品である。
1964年から大阪新聞に連載され、1967年に単行本化。
連載当時のタイトルは『おぼろ忍法帖』だったが、1978年に角川文庫に収録された際に『忍法魔界転生』と改題される。
さらに1981年の映画化に伴い、現在の『魔界転生』というタイトルに落ち着いた。
柳生十兵衛を主役とした「十兵衛三部作」の中編にあたる。
山田風太郎の代表作の一つであり、ファンの間では最高傑作の呼び声も高い。
その人気から、複数回のメディアミックスが行われている。詳細は後述。
前作『柳生忍法帖』で快刀乱麻の活躍をした十兵衛。
彼を苦しめる今作の敵は、いずれも名の知れた魔界から甦りし大剣豪たち。
天下の転覆を狙う怪人・森宗意軒が操る秘術『魔界転生』。それは日本と西洋の魔術の秘密と奥義を組み合わせて完成させた、恐るべき術であった。
並外れた剣の技量の持ち主が、死の間際において生に強い執着を持っている状態でのみ発動できる。死の直前に交わった女の肉体を素として、蛹から蝶が孵るように、全盛期の肉体と技を得た「転生衆」として甦らせるというものであった。
生前の知識こそ持っているものの、彼らの人格は全く別物になる。
剣聖と呼ばれるにふさわしかった高潔な人格者が、血縁者ばかりか無辜の民をも斬り捨て、捕らえた娘を楽しみの為に犯し殺す、悪鬼羅刹へと生まれ変わるのである。
彼ら転生衆は森宗意軒の意のままに動く手駒となり、八人目の転生衆として狙われる柳生十兵衛に向かってくるのであった。
それぞれの執着から、現世に復活した七人の魔人。
宮本武蔵、田宮坊太郎、柳生宗矩、柳生如雲斎、荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、天草四郎時貞。
はたして十兵衛は彼らを退けて、その裏にある森宗意軒の企みを防ぐことが出来るのか。
昨今の創作作品では珍しくない、過去の武芸者が甦り対戦を繰り広げる設定の作品。
特筆すべきはこれが50年近くも前に書かれたものだという点だろう。今読んでも古臭さを感じさせず、まさに夢の対決を描いた少年バトル漫画の原点とでもいうべき作品である。
後の創作作品に対しても、この作品が与えた影響は大きいと考えられる。
例えばTYPE-MOONのFateシリーズはこの作品がモチーフとなっている。
作中の描写に目を向けると、戦闘描写そのものは実のところあっさり決着がつくものが多い。長々と剣を打ち合ったりすること無く、剣豪同士の対決らしくほとんどは一合のもとに決まっている。
また十兵衛が自分のみの力で勝利を得る事が少なく、仲間の手助けを受けたり、何らかの策にはめたりして敵を倒していることがほとんど。
しかし単純な力勝負に頼らない戦闘描写こそ、能力バトルの元祖とも言われる山田風太郎らしさを表した見所であると言えよう。
大まかな力関係を表すと以下のようになる。
転生衆(強)≧十兵衛≧転生衆(並)>>>>>越えられない壁>>>>>根来組>>>>柳生十人衆>>>>>>>>>>>>一般兵士
ここでは1981年の映画に登場したオリジナルの魔界衆を紹介。
十兵衛に付き従う柳生の里の剣士たち。
柳生の中ではかなりの使い手たちではあるが、超人ぞろいの転生衆相手には雑魚同然の扱いであり、根来組とも大きな力の差が有る。
捨て身の活躍によって十兵衛を助けるも、一人また一人と倒れていく。
映画化以外にもオリジナルビデオ・アニメ・演劇・漫画・ゲーム化がそれぞれ行われている。
ここではその一部をご紹介。
1978年の映画『柳生一族の陰謀』などにより、柳生十兵衛を当たり役とした千葉真一はキャストとして確定していた。また天草四郎時貞役には当時絶大な人気を誇った沢田研二が確定しており、この二人ありきで作られた作品である。
尺の都合もあり、原作を大胆に改変・脚色した事で、新たな魅力を発揮した。海外でも『Samurai Reincanation』として絶賛され、伝奇ものを題材とした後世の作品にも大きな影響を与えている。
なお劇中では田宮坊太郎、荒木又右エ門、柳生如雲斎の出番はない。一方でオリジナルキャストとして細川ガラシャを登場させた事について、原作者の山田風太郎は「その発想はなかった」と絶賛している。
人ならざるものとしての魔界衆(転生衆)を描く為、役者は金色のコンタクトレンズを着用して撮影に臨んだ。更に一切まばたきをしない事で、その不気味さを増している。ちなみに「まばたきをしない」演技を思いついたのは、若山富三郎のアイデアだったとか。
クライマックスでは明暦の大火により、紅蓮の炎に包まれる江戸城天守閣が舞台。千葉真一演じる柳生十兵衛と、若山富三郎演じる柳生宗矩による一騎打ちが繰り広げられる。
これは日本の時代劇における屈指の名場面と言われ、今でも高く評価されている。
当時はCGがある訳でもなく、ガチで炎上するセットにおいて、頭から水を被った二人が殺陣を繰り広げた。水を吸って重くなった衣装のまま立ち回り、ワンカットに4時間を費やすという凄まじさであった。 ラスボスとして登場、首を刎ねられながらも呵々大笑する天草四郎時貞を演じた沢田研二も、この撮影において手を火傷。役者も撮影スタッフも極めて危険な状態にあったという。
コンセプチュアル・ デザインは寺田克也。
佐藤浩市が十兵衛を、窪塚洋介が天草を演じた。
映像技術の進歩により、81年版ではできなかった「女の体が割れた中から転生衆が復活する」シーンがCGにより描かれている。他にも原作にはない人物を転生させるなど、「81年版とは違うことをやろう」という意欲だけは見える。が、比べるとどうにも……
評価はお察しください。
1981年、2006年、2011年、2013年、2018年、2021年に舞台化されている。
1981年版は映画で十兵衛と霧丸を演じた千葉真一・真田広之を同役にキャスティング。
更に「天草は女性であった」と設定が変更され、志穂美悦子が天草を演じた。なおこの顔ぶれは後の映画『里見八犬伝』(1983年)でも揃い踏みする事になる。
2006年には十兵衛を中村橋之助(現・八代目中村芝翫)、天草を成宮寛貴が演じている。
比較的原作に沿った内容だが、天草が魔界衆総大将なのは変わらず。
2011年には、関智一が座長を務める劇団「ヘロヘロQカムパニー」の第25回公演として上演。
十兵衛を関智一、天草を浪川大輔、田宮坊太郎を置鮎龍太郎が演じるなど、キャストには有名声優陣が揃い踏み。ナレーションは永井一郎が務めるという、豪華な内容だった。
2018年版は日本テレビ開局65周年記念公演として上演。十兵衛を上川隆也、天草を溝端淳平、宗矩を松平健が演じた。2021年版はこれの再演となり、新たに小池徹平が天草を演じている。
コミカライズでは最も有名な作品。
石川が山田風太郎作品を漫画化したいと申し出て許可が下りたが、原作者サイドからは特に制約がなかった為、独自のアレンジを加えて魔改造した結果、全くの別物に仕上がった。だがそれがいい。
壮大に広げられた大風呂敷と、衝撃的なラストはファンの間でも語り草となっている。
作者は薩摩の肝練りの人と言えばわかる人もいるかも知れない。
コミカライズの中では最も原作に近く、それだけに地味な内容。そりゃ石川版に比べればどの作品も地味になっちゃうけど。
共に少女漫画雑誌で連載された異色作。原作のエログロ要素はほぼ皆無で、「夢の跡」では田宮坊太郎、「聖者の行進」では天草四郎が主役となり、悲恋と悲劇に加えてボーイズラブがほんのり漂う耽美な内容。話のタネに読むも一興か。
直近のコミカライズならこれ。
『バジリスク~甲賀忍法帖~』『山風短』など、山田風太郎作品をコミカライズしてきた氏による作品。エルフ耳の天草やツインテールの宗矩など、何だかんだ独自のケレン味がある。あとエロい。
詳細は個別記事参照。
現在、原作小説は角川文庫と講談社文庫で入手可能。
田島昭宇による角川文庫版の下巻の表紙絵は十兵衛の眼帯が逆になっている(十兵衛は右目が盲目)が、気にしてはいけない。
掲示板
280 ななしのよっしん
2023/03/08(水) 21:14:18 ID: d/qlV0RE4b
SIMPLE2000の十兵衛の不思議のダンジョンも大方クソゲー突っ込んでるかもしれないが気になる
281 ななしのよっしん
2024/01/20(土) 10:48:57 ID: Shv3j4eIMR
原作を素直に解釈するなら、魔界衆って輪廻転生して悪堕ちした剣聖というより、剣聖本体の技芸と経験値と人間として持っていて不思議はない未練や不満をインストールしたクローン人間なんだよな。
その意味ではSF時代劇でもあったと思うんだけど、その線でメディアミックスか、または翻案しようって人は出てこないかな。
282 ななしのよっしん
2024/12/27(金) 18:30:06 ID: 3PVnCBE/xQ
【『室町無頼』公開記念】魔界転生 [公式]
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最終更新:2025/03/23(日) 03:00
最終更新:2025/03/23(日) 03:00
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