アプサラス(APSALUS)とは、「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」に登場するジオン公国のモビルアーマーである。Ⅰ~Ⅲのパイロットはアイナ・サハリン。Ⅲに限りギニアス・サハリンも同乗。
概要
一年戦争開戦直後、戦争の早期終結を目指すデギンはギレンとは別に様々な計画を策定した。ギレンに疎まれた者やデギンを慕う者たちが彼のもとに集い、意見やアイデアを戦わせた。そんな中で誕生した計画の一つがアプサラス計画である。提案したのはジオン公国軍の技術将校ギニアス・サハリン大佐。彼は、自軍拠点からブースターユニットを装着して打ち上げ、宇宙を通り地球連邦軍本部のジャブローを迎撃ミサイルが届かない成層圏から攻撃・殲滅する新型の要塞攻略用モビルアーマーを作るべきだと主張したのである。一見、無茶苦茶な夢物語だと一笑に付されたがギニアスは実際にそのモビルアーマーの設計図を作製し、提出した。条約でICBM(大陸間弾道ミサイル)等の使用を禁じられているためジャブローの対空能力は意外と低いという盲点も突いており、夢物語とは言わせないだけの説得力を有していた。技術的な課題は幾つか残されていたが、責任者のデギンはこの計画を裁可してギニアスに予算と人材を与えた。その後、人員を率いてザンジバル級機動巡洋艦ケルゲレンで地球に降下したギニアスは早速アプサラスの開発に取り掛かるのだった。
なおアプサラスの名前の由来は、インド神話の水の妖精アプサラスからと思われる。アプサラスはその美しさゆえ人間に狂気をもたらすと言われている。アプサラスという兵器に魅せられ、邪魔になる者は味方だろうと容赦なく殺害するギニアスの狂気と通じる部分がある。
アプサラスⅠ
第08MS小隊の4話に登場。茶碗をひっくり返したような形で、カメラ用にザクの頭部が備え付けられている。ミノフスキークラフトを搭載し、大気圏内でも航空機同様飛行することができる。この機体はミノフスキークラフトの実験機なため非武装で、ドップ2機に護衛されながら飛行試験を行った。非武装だがミノフスキークラフトの出力を急激に上げる事で周囲一帯に木々を吹き飛ばすほどの衝撃波を放て、この攻撃を待ち伏せを行った08小隊に使った。
10月20日、極東アジアの密林地帯で飛行試験を実施。連邦軍部隊を遠ざけるため、飛行ルートの外縁にザクを配置し、またアプサラスⅠの護衛としてドップ2機が追随した。ところが偶然にも08小隊と遭遇。ドップが攻撃を受けたため、護衛機を守るために戦闘に参加。先述の通りミノフスキークラフストの出力を上げ、木々ごとモビルスーツを吹き飛ばす。非武装ながらも善戦し、サンダース機を撃破寸前にまで追い込むもシロー機やカレン機の妨害が入り、マシンガンの一斉射を受けて多数被弾。加えてビームサーベルで斬り付けられて黒煙が出るほどの満身創痍になるも、撃墜されることなく離脱に成功している。
アプサラスの出現は、連邦軍の上層部に報告された。未知の新兵器に焦燥した連邦軍は、交戦経験のある08小隊に捜索を命令した。
アプサラスⅡ
第08MS小隊の6話に登場。形状はアプサラスⅠと大差ないが、メガ粒子砲が装備され非武装ではなくなった。ゲーム等に出演する時は、大体このアプサラスⅡからの登場となる。
11月3日、調査をしていた08小隊はアプサラスの射爆場を発見。待ち伏せを行う。そうとは知らずに6日後、アプサラスⅡはドップ2機を護衛に付けて現れた。間もなく、アプサラスを鹵獲しようとする08小隊と交戦状態に入る。08小隊の巧みな連携に苦戦するもメガ粒子砲で反撃、シロー機のビームライフルを破壊し、凄まじい火力を見せつけてミケルの心胆を寒からしめた。しかしその直後、シローの決死の突撃により機体に組みつかれ、至近距離からビームサーベルで刺された事により暴走。シローを乗せたままヒマラヤまで飛んで行ってしまう。16時間後、ヒマラヤの山中にてシローとアイナの両名を発見。連邦・ジオン双方の救助隊が派遣された。その際、機密保持のためにアプサラスⅡを自爆させている。機体を喪失するや否や、ギニアスはⅢの開発を始めた。
なお中破したアプサラスⅡを解析した連邦軍は得られたデータを基にシミュレーションを行った。アプサラスⅡによるジャブロー強襲が行われた場合、宇宙軌道上やジャブロー上空でアプサラスⅡを食い止める事は出来ずジャブローは壊滅するという結果が導き出された。
小説版では展開が異なる。完成したアプサラスⅡは、テストがてら連邦軍のコジマ基地を襲撃。戦闘の経緯は描写されていないが、単機で基地を壊滅させるという恐るべき戦果を叩き出している。コジマ大隊長以下、撤退が早かった部隊は脱出に成功したが、逃げ遅れた部隊はジオン軍に包囲されて投降している。
その後、壊滅した基地に帰投してきた第08MS小隊と交戦。ミノフスキークラフト発生装置には斥力場が発生しており、下方からのマシンガンを全く受け付けなかった。しかしシロー駆る陸戦型ガンダムの捨て身の攻撃により、損傷。機体に取り付かれてしまう。が、敵機のパイロットがシロー(アイナ)であると互いに知り、戦闘が一時中断する。とはいえアプサラスⅡの機体が中破してしまったため、大事を取って撤退。脚部に取り付いた陸戦型ガンダムは、脚部ごと切り離す事で振り落としている。
アプサラスⅡを喪失したギニアスは、すぐに後述のアプサラスⅢの開発に取り掛かった。この時点でオデッサが陥落しており、戦局は日に日に厳しくなっていった。
アプサラスⅢ
第08MS小隊の9話~11話に登場。同時にラスボス機体である。
アプサラスシリーズの完成型として開発され、これまでに得られたデータやノウハウが全てフィードバックされている。そのためかⅠ、Ⅱとは比べ物にならないほど肥大化し、形状も大きく変化。今まで一つだけだったミノフスキークラフト発生装置を二つ搭載し、巨体を浮かせられるだけの浮力を獲得。発生装置の稼動には膨大な電力量が必要だったが、当時少数しか配備されていない貴重なリックドムⅡ3機のジェネレーターを流用した事で、問題をクリアした。電力の安定供給を可能にした結果、メガ粒子砲も従来より大幅にパワーアップ。巨大な山を貫通できるだけの桁外れな出力を得た。仮にミノフスキークラフトの片方が不調になっても、残ったもう片方のミノフスキークラフトで飛ぶ(片肺飛行)事も可能に。砲撃の際には両側に脚を2本、補助用の脚を後ろに1本出して位置を固定する。ジェネレーターの恩恵は凄まじいものだったが、一方で弱点にもなっており、アイナに「ビームジェネレーターさえやれば(倒せる)」と評されている。
物語終盤から、開発が進められているアプサラスⅢの姿が登場する。技術陣が心血を注いで製作しており、小説版では技術者の睡眠時間が4時間を割っている。ギニアスもまた薬を打って、強引に開発に参加していた。アプサラスⅢの完成こそがジオンの勝利に繋がるとして、技術陣が一丸となっていたのだ。ついにアプサラスⅢが完成した時には、祝賀パーティーが催された。が、アプサラスを独占したいギニアスによってワインに毒が混ぜられ、技術者全員が死亡した。
一年戦争末期(一説によると12月1日)、ジオンのラサ基地を包囲した連邦軍を壊滅させるべくグフ・フライトタイプ2機の護衛を伴って発進。水で満たされた噴火口から姿を現した。小説版では、既に戦力を失っていたラサ基地最後の希望として要員たちに送り出された。出撃の際はジーク・ジオンの唱和まで起きている。しかし、全てのバグを取り除くだけの時間は無かったようで、戦闘の推移次第ではエラーを吐いて停止する危険性を孕んでいた。その際はギニアスが判断を下す事で強引に回避している。
作中では
連邦軍二個師団の攻囲を受け、ラサ基地の戦力は底を尽き掛けていた。彼らの唯一の希望は、宇宙へ脱出できるザンジバル級機動巡洋艦ケルゲレン(病院船)であった。ノリス大佐の鬼神の如き活躍により、長距離砲撃が可能な量産型ガンタンクは全滅できたものの、依然として制空権は連邦側にあった。
アイナ・サハリンはアプサラスⅢを使い、何としてでも病院船ケルゲレンを脱出させようと画策。脅しとして連邦軍に圧倒的な破壊力を見せつけた。そしてケルゲレンを脱出させるため連邦軍に一時休戦を申し入れる。最初は断られるも、アイナの身を呈した行動により連邦軍も休戦に応じた。後顧の憂いを無くしたアイナはケルゲレンを笑顔で見送ったが、その間にギニアスがアプサラスⅢを完全に支配下に置き、休戦を無視して連邦軍のモビルスーツ隊の大半を一瞬で火の海に変える。アプサラスⅢが放ったビームは、なんと陸戦型ジムや陸戦型ガンダムの盾を貫通しており、出力の高さと威力が窺える。少なくとも陸戦型ジム4機と陸戦型ガンダム1機を撃破、同じく陸戦型ガンダム1機の頭部を破壊。爆発の規模と照準の数から、20機以上が犠牲になったものと推測される。この行為の報復措置として連邦軍もジム・スナイパーでケルゲレンを撃墜してしまう(ただしギニアスの行動に関係なく、先手を打つつもりでジム・スナイパーに指示を出していたが、砲撃時には移動中でアプサラスを狙撃出来なかったため病院船への撃墜命令をだす)。
その後、アイナをコクピットから落としたギニアスだったが直後にジム・スナイパーの狙撃を受け、アプサラスⅢのミノフスキークラフト発生装置の片方を破壊され、間髪いれずに右肩部分も狙撃されてダメージを負った。狙撃された事で固定用の脚が折れてアプサラスⅢは地面に落ちた。この事に激怒したギニアスは修復作業を施し、再びアプサラスⅢを浮遊させる。ジム・スナイパーにメガ粒子砲を喰らわせて撃破した後、フルパワーを以って連邦軍の部隊を粉砕しようと試みたが、シローとアイナの乗ったEz8にコクピットを叩き潰されてギニアスは死亡する。が、死の直前にフルパワーで照射されたメガ粒子砲は山の中腹を貫通し、後方に控えていた司令部のビック・トレーを衝撃波で破壊する。まさに執念である。主を失ったアプサラスⅢはそのままラサ基地の火口に落下し、爆散した。
ちなみにアプサラスⅢのデザインは子宮をモチーフにしたもので、作中でアイナが「可哀想に…だから、こんな鉄の子宮が必要だったのね…」と呟いている。
アプサラス0
漫画「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 U.C.0079+α」に登場する実験機で大気圏突入のデータ収集用の機体。
アプサラスのザク頭が付いているところに高機動型ザクの上半身を取り付けたような形をしており、緊急時にはザクの部分が脱出装置として働き、データの喪失を防ぐ。パイロットはアイナ・サハリン。連邦軍のコバイユ小隊やシロー・アマダのボールと交戦し撃破される。その際、アイナはザクの部分で脱出している。
ゲームでの扱い
同じ第08MS小隊出身の陸戦型ガンダムや陸戦型ジムと比べるとアプサラスのゲーム出演回数は少ない(そもそも陸戦型ガンダムらの出演回数が異常)。それでもギレンの野望や戦士たちの軌跡にはしっかり出演していたり、ガンダムバトルクロニクルまではアプサラスⅡしか登場していなかったが次回作のバトルユニバースでは完成型のⅢも参戦。
三本脚で歩くという、原作ファンもビックリするような移動の仕方をする。あの脚は固定用じゃなかったのか?無論、原作同様に脚を折りたたんで飛行する事も可能。
その一方で、GジェネアドバンスではアプサラスⅢはグロムリンの進化前に過ぎない存在だったりする。また本作では宇宙・地上ともに活動可能。ジャブロー攻略戦では、ギニアスがアプサラスⅢに乗り込んで侵攻してくるという、ジャブロー殲滅の夢が叶うシナリオも用意されている。ところが……。
ジオン軍はザフト軍と組んでいる設定のためアプサラスⅢを量産して、人工AIに操縦させている。
ギレンの野望アクシズの脅威では超兵器ゼーゴックの登場でノリス、アイナ、ギニアスを犠牲にする必要があるアプサラス計画を行う価値が低下したりと踏み台も経験している。
アプサラスⅠ、Ⅱ、Ⅲの全機が登場。Ⅰは非武装で、偵察機として使用できなくもないがルッグンを生産した方が安上がりである。Ⅱでは武装が付いたが、登場時期が遅いせいでゼーゴックに役割を食われている。しかも性能が低いので撃ち合いにも負ける。Ⅲまで進化させても大して性能が変わらない上、アイナ、ギニアス、ノリスが戦死するという明らかに不釣合いなデメリットが付いてくる。しょぼい性能なので第二部以降はただの的と化す。仮にもラスボスなのに酷い扱いである。
一方、連邦軍側でプレイすると第08MS小隊を使ってアプサラス計画を阻止するかどうかの選択肢が出る。阻止を命じると計画を頓挫させられるが、シローが行方不明になる。放置すると、アプサラスⅢとノリス率いる部隊がジャブローを襲撃してくる。
「ガンダムトライエイジ」では通常のアプサラスIIの他、ビルドモビルスーツカラーリングコンテストの最優秀賞作品である赤いアプサラスIIが登場。非常に大胆なカラーアレンジであるが、創作イメージとして「鮮やかながら甲殻類をベースに生物的な気味悪さを含ませた」とコメントされているように、鮮やかな朱塗りが元カラー以上にメガ粒子砲口の恐怖を煽ってくれる。また、甲殻類を意識してか武器がメガ粒子砲にも関わらず水中の地形適性がかなり高いため、新たなジオン水泳部のメンバーとして活躍できる。
PS2専用ソフト「ガンダム戦記」では連邦・ジオン双方のミッションで登場。時系列的に連邦側が先となる。モビルスーツ部隊に護衛され、射爆場を飛行していたアプサラスⅡ。そこへマット・ヒーリィ中尉率いる連邦軍のMS小隊と遭遇し、交戦。護衛は全滅させられ、アプサラスⅡは墜落してしまう。アプサラスの護衛を命じられたジオンの外人部隊と連邦軍の回収部隊が同時に到着し、再びアプサラス周辺で戦闘が発生。パイロットのアイナは外人部隊を巻き込むまいと機体の自爆を提案するが、説得されて思いとどまる。外人部隊は敵の回収部隊を全滅させ、アプサラスは無事虎口を脱した。
小説版では
小説「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」にも登場。基本的な設定はアニメ版に準ずるが、ところどころ差異がある。
幼少期、ギニアスは爆破テロにより生身のまま宇宙線を浴びてしまう。宇宙線に冒されたギニアスの視覚は、本来では見る事が出来ない宇宙線を視認した。それはまるで「光の雨」で、ギニアスの心に深く焼きついた。それから年月が経ち、ジオンの技術士官となったギニアスは、光の雨の事をすっかり忘れていた。しかしテストキューブの中で見たメガ粒子砲の実験で光の雨を思い出す。小さなテストキューブの中ではなく、もっと大きな光の雨が見たい。この欲望からアプサラスの開発計画は始まった。ギニアスにとってアプサラスは、言わば光の雨の映写機である。
ギニアスの友人であるユーリ・ケラーネからは「オモチャ」呼ばわりされており、戦力として見られていなかった。むしろ戦況が悪化する中、意味も無く金を食い潰すアプサラスの事を疎く思っており、ギレン総帥にアプサラス計画の中止を申し出るほどだった。ギレンのサインが入った中止命令の書類をギニアスに突きつけたが、アプサラスの開発に固執するギニアスに射殺されてしまった。書類上は開発中止となっているため、形式番号は与えられていない。
先述の通りアプサラスは光の雨の映写機として設計された。ゆえにメガ粒子砲は拡散型を採用。発射口から広がる光の雨はギニアスを恍惚させた。「256発のメガ粒子砲を発射し、256の目標を同時に射抜ける」というトンデモ性能を獲得しており、アプサラスに対空兵装が無いのは接近されるまでに全て撃ち落とせるからである。しかしジャブロー攻撃の目的上、ヤノウィッツ技術少佐は拡散型はなく収束させるべきとギニアスに具申しているが、突然のごとく却下されている。「光は、広がらなければならん……。」
アプサラスⅡは初陣でコジマ基地を襲撃。圧倒的な火力で基地を壊滅させ、コジマ大隊長を敗走させた。
アプサラスⅢはラサ基地に迫った2個師団の連邦軍相手に単機で無双。雲に隠れ、狙撃しようとしたジム・スナイパーの小隊を全滅させる。また強力なメガ粒子砲で連邦軍の7個大隊を壊滅させ、アプサラスに迫った空軍の部隊をも全滅させるなどアニメ版とは異なる大戦果を挙げる。
しかしシロー捨て身の突撃により、アプサラスⅢの機体にEz-8が取り付く。パイロットのギニアスを射殺され、アプサラスⅢはシローとアイナのコントロール下に置かれる。ラサ基地から脱出するケルゲレンを連邦軍から守るため、シローは奇策を実施。アプサラスⅢを巨大な映写機に見立て、たまたま残っていた「キャプテン・ジョー」のディスクを使って雲に映像を流したのである。突然の映画会開幕に唖然とする連邦軍。その隙を突いてケルゲレンは包囲網を突破し、宇宙へと脱出。見事奇策は成功した。その後、2人は近くの町へ移動しようとしたが……。
完全な包囲下からまんまと脱出を許してしまった連邦軍は怒り狂い、その矛先をアプサラスⅢに向ける。雲の中から出ていたアプサラスⅢは四方八方から集中砲火を浴びる。こうなるとミノフスキークラフトの斥力場も用を成さず、火だるまと化して墜落した。
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