アイハイ(Aihai)とは、以下を指す。非常に稀だがアイヘア[1]やエイヘイ[2]、エイヘア[3]と訳されることもある。
通常「ワイファイ」と呼ばれているものについてはWi-fiを参照のこと。これをアイハイと読んでしまう人は思いのほか多いらしい。
「アィハイ」
地球から火星や金星への宇宙旅行が一般的になり、太陽系内惑星との交流や探検が始まった未来世界を舞台にしており、次に述べる3作+未完1作が該当する。
遅いものでもマリナー4号火星探査の30年近く前に発表されている。この時期に書かれたSF小説では、火星には何とか呼吸できる大気があり、老いた文明を持つ知的種族が運河とともに住んでいる。金星はジャングルと沼地に覆われた危険な世界だが知的生命がいないとも限らない…という設定が、まぁ相場だった。
スミスの金星探検もの『はかりがたい恐怖/The Immeasurable Horror』[4]や、ラヴクラフトがK・スターリングの金星ものを書き改めた『エリュクスの壁のなかで/In the Walls of Eryx』[5]も、概ねこの作法に沿っている。
以下の作品の主人公達はいずれも地球人で、なんのことはない、「現地人ガイドに案内された西洋人探検家が何千年も前の遺跡で怪物に遭遇」が「アイハイ族ガイドに案内された地球人が何万年も前の遺跡で怪物に遭遇」に変わっただけの話。
』(1932) (別バージョンの題名:『The Vaults of Abomi』)
』(1933) (別題:『Dweller in Martian Depths』)
』(1935)
』(断章のみ)E・M・ジョンストンとの合作 『The Planet Entity』(1931) (別題『Seedling of Mars』)が、このシリーズの一つと見なされることは通常はない。アイハイ族が出てこないし…
4は未訳。2は邦訳が少部数出版されたことがある[6]。ジャンルは1と2がホラーSF、3が侵略ものの変種。
3の中に出てきた存在(ヴルトゥーム)は、のちにクトゥルフ神話の邪神として設定が取り込まれたため、アイハイ族もクトゥルフ神話世界に一緒についてきた。
当時の火星人テンプレによくある、人類よりも古い歴史をもつ種族。流石にクトゥルフ神話世界の緒存在には古さでかなわないけど。指導者は皇帝を名乗っている[7]。
パルプ小説の原住民脇役としては理想的なキャラ付けをされており、ガイド達は怪物のいそうな遺跡には決して同行しないし、その理由も言わない。息も絶え絶えで遺跡から逃げ延びてきた主人公達の生き残りを、体験談を記録する前に死んでしまわないように地球人用病院のある街へ運んでくれる[8]。
彼らの平均身長は10フィートのタ=ヴォ=シャイより1ヤード[9]低い(つまり7フィート=約2.1m)。
骨張って関節の数が多く[10]、ひょろ長い[11]手足、痩せ型の体型、大きなふいごのような胸[12]、幅は狭いが大きく横にひしゃげて広がった鼻孔[13]、高く広がって張り出した耳[14]を持つ。腕と胸はスポンジにも例えられる[15]。小さな目は斜めについていたり[16]、落ちくぼんだ眼窩に沈み込んで頭蓋の奥の赤い輝きのように見えたりする[17]。蛙のようによく響く声で喋り[18]、アイハイ語に使われる喉声は地球人の発声器官に適さない[19]。
装身具の他は衣服を全く身につけない[20]。ガサガサの皮膚は寒さに強く、氷点下の夜でもバッサ布(bassa-cloth)を経帷子のように重ね着することで耐えることができる[21]。 食事の際には、クルパイ(kulpai)と呼ばれる半金属製陶器の大皿ひとつに飲み物と固形物を全てのせて出す[22]。また、火葬にした遺灰を一族ごとに一つの巨大な骨壺に入れる風習があり、これはヨーヒ族から受け継がれたものらしい[23]。
リン・カーター設定のクトゥルフ神話世界にヴルトゥーム配下以外のアイハイが存在するのかどうかはあいまい(駄洒落ではない)。ただし、イグナール=ヴァスの名前は出てくる。
イグナール=ヴァス/イグナル=ヴァス(Ignar-Vath)とイグナル=ルス(Ignar-Luth)はいずれも火星の商都イグナール (Ignarh)[24] の一部で、両地区はヤーハン大運河(the great Yahan Canal)によって区切られている。
「本物の」地下都市ラヴォルモス(Ravormos)はスミス設定ではイグナル=ルスの真下[25]、カーター設定ではイグナール=ヴァスの地下にある。
通常のアイハイ族は古代におけるヴルトゥーム配下との戦争を忘れ去っており、この旧支配者を伝説と民話の産物だと考えているので、彼らにとってのラヴォルモスもおとぎ話の地獄でしかない。
他の集落・都市名としては『The Dweller in the Gulf』で言及されるアフーム(Ahoom)がある[26]。
『クトゥルフ神話TRPG』での〈ヴルトゥームの火星の下僕〉という二つ名や分解銃などの超兵器、奉仕種族としての分類はこの一派に対するもの。アイハイ通常種をゲームに当てはめるなら独立種族になるはずである。
ヴルトゥームに受けた不老処置の副作用で、全員が9~10フィート(約2.75~3m)、中には11フィートにもなる巨軀と筋肉質な体を持つ。それに反して木乃伊のように年取っていそうな表情を浮かべているのが異様である。ある種の生物が高齢になるにつれ巨体になるさまに例えられていたが、アイハイ通常種が魚や爬虫類のように一生成長し続ける体質だという記述はない。
ヴルトゥームと共に千年周期の眠りにつくためには超技術で製造した「眠りの瓶」に詰められた特殊なガスを使用する。このガスは不老処置を受けていないものも眠らせてしまうが、起きる頃には塵になっていることだろう。
リン・カーター『陳列室の恐怖/The Horror in the Gallery』では、彼らは旧神によってヴルトゥームもろともラヴォルモスに幽閉されているという設定。
『魔道書ネクロノミコン外伝』収録の『リン・カーター版ネクロノミコン』では1カ所だけ、時が至れば「最年少の仔を除き、ヴルトゥームの種族のすべてが」ラヴォルモスから出現するという記述がある。これがアイハイ族のことなのか、ラムジー・キャンベルが『湖畔の住人』で設定したようにヴルトゥームが種族名なのか(あるいはそういうふうにアルハザードが考えているのか)は全く分からない。
『ヴルトゥーム』で、地球人をラヴォルモスに案内したヴルトゥーム信者アイハイ人の個人名。背丈は10フィート。奇妙な形に打ちのばして作った銀の針金状の首輪のようなものをつけており、かなりのお偉いさんらしい。『陳列室の恐怖』ではタ=ヴォ=シャイはヴルトゥーム派アイハイの指導者とされている。
『ヨー・ヴォムビスの地下墓地』の遺跡の建造者とされた、少なくとも4万年前に絶滅したとされる古代火星種族。アイハイ族に一掃されたとも、伝染病など未知の力によって滅んだともいうが、その真相は…
現生アイハイ族と身長、体型、特徴ある大胸は概ね同じ。耳と鼻孔はアイハイほどには大きくも広がってもいない。肌は暗褐色。指は4つの関節がある。胸部から第3の腕が生えており、これは現生アイハイ族にも痕跡器官として発現することがある[27]。
彼らの建築様式には他の火星古代遺跡とは明らかに違う特徴があり、(スミスSF世界の)火星考古学者ならはっきり区別できる。
『The Dweller in the Gulf』で登場。作中での呼称は白きものども(white people)、無眼の穴居人(eyeless troglodytes)など。
チャウル(Chaur)は水の涸れ果てた大河の川床地帯で、行って帰ってきたもののいない未踏地域。そこで見つけた洞窟の遙かな地下にはまだ水が残っており、そこで遭遇した種族である。
アイハイ族や火星原住民[28]に似ているが、体躯は平均5フィート(約1.5m)で菌類のように青白い肌を持つ。
黄色がかった赤色の血液と、ヨーヒ族と同じ4つの関節がある指を持つ。これはアイハイ系の全人種に共通のものだと思われる。
全員が盲目だが、眼窩の痕跡がかすかに残っている者と、眼窩が空洞になっている者が混在している。どうやら退化したのではなく、何者かに眼球を抉られたらしいのだが…? 地上種アイハイ族とは全く異なった言語を喋るが、基本的には異様に無口。また、死体は速やかかつ手際よく奈落の底に放り捨てられる。
加筆された部分[29]によると、こいつらはヨーヒ族の生き残りが 当局に逮捕されたが刑務所を脱出し 水が涸れた地上から脱出し地下に潜ったなれの果てで、この奈落の最下層にある地下湖に安置されている怪物神像を作ったのも彼らである。ナメクジや目の退化した魚、地下湖の虫を生で食べる獣並みの生活をしている。
この怪物像を撫でると麻薬のような昏睡に導かれる。そのうち何体かは眠っている間に怪物に食い散らかされる…というのが彼らの一生らしい。
以下はアイハイ族にかかわる設定のうち、他の大百科記事で言及されていないもの。
『The Dweller in the Gulf』に登場した火星の荷役獣。
細長い脚と首、角質板で覆われた体を持つ、ラマと蜥蜴の合成獣のような哺乳類で、ひどく醜いものの、砂漠で何ヶ月も水なしで活動できる特徴は、運河から遠く離れたところでは死の世界となっている[30]スミスの火星世界では重宝する。ただ、有害生物こそ死滅しているものの、鉄分を含んだ塵を吹き付けてくる竜巻、ズールス(zoorth)[31]や、決まって夜明け前に東から吹く砂漠の強風、ジャール(jaar)[32]など自然現象が過酷すぎるためにアイハイ人ガイドはぜひ雇っておきたい。
『ヨー・ヴォムビスの地下墓地』の初期案では肉食性の苔怪物の名前として使われていた[33]。
『ヨー・ヴォムビスの地下墓地』の主役モンスターで、封印された扉の奥に無数に蠢いている。直径12~14インチ(30~35cm)の円形で、黒い皺だらけのマット状生物。地上では尺取り虫のように体を伸縮させて這って移動する。妖怪衾の要領で天井から犠牲者に覆い被さり、裏側の吸盤で頭巾のように固着すると、速やかに獲物の肉体コントロールを乗っ取る。時間が経って膨らんだ「頭巾」に対して仲間がナイフで切りつけても、中から出てくるのは手遅れなほど食い荒らされた頭部だけ。
火星の日光を嫌っているが、一度でも頭部に傷をつけられた犠牲者は、たとえ地獄のような激痛に耐えて怪物を殺し屋外へ逃れても、地下墓地の奥に戻りたいという抗いがたい衝動に断続的に襲われる。いわゆる脳姦である。
子供向けの翻案『遺跡の秘密』[34]では、ヨー・ボンビスの遺跡はイグニという太陽系外星系惑星に存在することになっている。
ヒル怪物の湧き出した深淵に潜む、邪悪に満ちた[35]存在たち(複数形)。4万年も餌がなかったはずの怪物がうようよいるのはこいつらが飼っているかららしい。怪物により脳に傷を受けた者はその存在を感じるようになる。
火星サボテンから蒸留される麻薬で、アイハイ人は禁忌としている。自らの過去を再体験することができるというが…
この作品はシリーズ4作目になる予定だったが、断片しか現存しない。過去視ネタは『アフォーゴモンの鎖』や『ウボ=サスラ』で散々やったからもういいよ…という事情だったのかどうかは不明。
クトゥルフ神話TRPGだけの事情として、ソースブック『クトゥルフ・バイ・ガスライト』でH・G・ウェルズが『宇宙戦争』で出したタコ型火星人をゲーム内クリーチャー・種族として設定していることがあげられる。結果、
という、かなり無理のある設定になっているのだが、ゲームセッションに火星人を出そうと考えるキーパーがそんな細かいことを気にすることはないので誰も困らないのだった。
火星がこんなに賑やかではちょっとなぁ、という事情がもしもあるのなら、別の場所に種族まるごと移しておくのがお勧め。例えば火星のドリームランドやヒル怪物の項目で触れた惑星イグニなど。
原作のスミス版アイハイはヨーヒ族の描写から考えて2本腕だが、クトゥルフ神話TRPGのイラストではなぜか4本腕で描かれることがわりとある。
クトゥルフ神話TRPGにおける火星クリーチャーの諸設定については『マレウス・モンストロルム』p.14のハンセン・ポプラン卿の日誌がヒントになるだろう。
最新版『新クトゥルフ神話TRPG』(第7版)のモンスター事典『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム Vol.2 神格編
』(原著2020、邦訳2021)では、アイハイ族は「現在は絶滅したと信じられている」と設定変更された。第7版世界のヴルトゥームは火星地下でただ一体で眠っている(つまり他の旧支配者と同じ扱いになったわけだ)。キーパーの裁量で生き残りがいたことにしてもいい。
ローレンス・J・コーンフォードの『ウスノールの亡霊/The Haunting of Uthnor』(2001)[36]で使用例がある(アイヘア表記)。
クトゥルフ神話作品では、例えばベテルギウス→グリュ=ヴォという風に、天体が現代とは別の呼び名で呼ばれていたという設定がよく出てくる[37]。
他の惑星は
スミスの短編『スファノモエーへの旅』[38]では金星がスファノモエー (Sfanomoë)と呼ばれているが、この名詞がクトゥルフ神話に該当する作品で使われたことは一度もないようだ。
、2019年5月閲覧
が考案した火星人想像図
に倣っている。パウルの異星人達については異様に詳しく書かれた本
があるので興味があったらどうぞ
にはない。
に収録
』収録掲示板
3 ななしのよっしん
2021/04/26(月) 09:42:17 ID: f8VCDwjPY0
4 ななしのよっしん
2021/10/10(日) 08:12:46 ID: uA9qBF+Tsr
「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」を児童文学向けに翻案した「遺跡の秘密(ポプラ社文庫怪奇シリーズ“アトランティスの呪い”に収録)」を読んでるけど、子供にはキツい描写を省略している以外は本編をキチンとダイジェストで収めていてビックリ。
これ想定している児童が読んだら絶対トラウマになるわ。
5 単語記事巡礼中 ◆CBGbQXRNEo
2023/11/04(土) 01:49:46 ID: L+IdB1vj9D
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最終更新:2025/12/07(日) 02:00
最終更新:2025/12/07(日) 02:00
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