大洋丸探索プロジェクトとは、
株式会社ドワンゴ、一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会、国立研究開発法人情報通信研究機構が共同で、
2018年8月23日(木)より4日間にわたり、東シナ海に沈んでいるとされる客船
「大洋丸」を含む4隻(「りま丸」「富生丸」「錫蘭丸」)をニコニコ生放送の視聴者とともに探索するプロジェクトである。
また、この調査は遺族からの希望で調査することになったものである。
現在までに実施されたプロジェクトにおいて、唯一の戦没船である。
※そのため、御遺骨等が映る可能性があります。
上記点を踏まえた上での視聴をお願いいたします。
9/5のブログによると、まだかなりの不足分があるようで、深海工学の発展に興味のある方、浦先生の今後の活動をまだまだ見たい、見守りたいという方は、直接の応援、いかがでしょうか。
現在、放送と同時並行でクラウドファンディングを下記リンク先で行っています是非ご支援ください |
概要
2017年に同団体及び放送において「伊58呂50特定プロジェクト」を行った際、五島列島沖合に海没処分された24艦の潜水艦の特定に成功。
そのニュースを読んだ大洋丸御遺族の方から
「東シナ海に沈む『大洋丸』を発見できないものだろうか」という要望を受け調査をする運びとなった。
調査を行うのは東シナ海。
近くには戦艦大和や駆逐艦磯風などの沈没点がある。
探査地点は画像にある5箇所のポイント
(下甑島から大5まで約215km, 大和の沈没地点から約40km。)
探査にはROVという水中遠隔操作ロボットで撮影などを行う。
また、今回は初めての試みとして、ROV MARCAS-V を使用する。
大洋丸とは?
第一次世界大戦でドイツから賠償船として譲渡された大洋丸。
日本郵船に130万円で払い下げられた後、民間船として活躍しました。
1932年のロス五輪では日本選手団の本隊を現地へ送り、
船内のプールは、後に「前畑ガンバレ」で有名となる前畑秀子選手にも利用されました。
国際関係が悪化してきた太平洋戦争開戦直前の1941年11月には
大洋丸は邦人引き揚げのためハワイの真珠湾に入港。
その際、船の事務員と偽った海軍参謀を送り込み、
真珠湾のアメリカ艦隊を偵察するという軍事上の重大任務を果たしました。
なお大洋丸はハワイまで一般的な航路を利用せず、
北寄りの真珠湾奇襲部隊の予定航路をとりました。
これは真珠湾攻撃に備え、航路上の実際の気象や海況、
敵の哨戒状況などを調査するためでした。
(結果、奇襲部隊は大洋丸の航路を利用し真珠湾を攻撃)
開戦後には、占領した東南アジアの資源開発等のため、
商社マン・技術者などを乗せ、1942年5月5日広島・宇品港を出発しました。
そして、出発間もない1942年5月8日、アメリカの潜水艦によって
魚雷攻撃を受け東シナ海で沈没、817名が犠牲となりました。
今も、東シナ海に眠り続ける悲劇の客船 それが大洋丸である。
どうやって海から生中継? なぜコメントが船に届く?
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発した衛星通信機器を調査船に搭載し、
超高速インターネット衛星「きずな」
(WINDS: Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite)を用いて、調査海域である若狭湾の調査船と、NICT鹿島宇宙技術センターとの間で伝送速度10Mbpsの衛星通信回線を構築。
この衛星経由での高速回線を用いることで、水中ロボット映像のライブ配信が可能になるとともに、調査船に乗っている研究者が視聴者のコメントを閲覧・回答する等の双方向コミュニケーションも可能となる。
なお、ここで使用する衛星通信機器は、総務省委託研究「海洋資源調査のための次世代衛星通信技術に関する研究開発」において開発したもので、今回の高速衛星通信回線の構築は、当該研究開発の実証実験の一環として実施する。
※WINDSはNICT及びJAXAが開発し、平成20年2月23日に打ち上げられた
Ka帯による高速衛星通信システムの構築に関する技術実証を目的とした衛星
ROVって?
遠隔操作型の無人潜水機(水中ロボット)のこと。"Remotely Operated Vehicle" の略。
海底ケーブルを漁具や大型船のアンカーから守るため、ケーブルや中継器、ケーブル接続箱などを埋設します。また、敷設したケーブルやケーブル障害点の状況調査などを行います。さらに、ケーブルルート上の障害物除去や移動、修理するために、 ケーブルを船上へ回収する作業の補助も行います。
アンビリカルと呼ばれるケーブルで、動力源となる電力を船上から供給し、水中カメラやソナーなどの機材を活用、船上から遠隔操作を行っています。
また、今回のプロジェクトで使用される、
国際ケーブル・シップ株式会社所有の水中ロボットは
「MARCAS:マーカス」と呼ばれ
”Marine Robot for Cable work Assistance and Surveillance” を略したもの。
海底ケーブルの建設・保守や状況調査に利用される水中ロボットという意味。
(引用元及び今回使用されるROV MARCAS-Vの画像は下記リンク先参照)
国際ケーブル・シップ株式会社 水中ロボットROVについて
サイドスキャンソナーって?
船舶の後部から曳航することで、海底の起伏を図化するもの。
超音波のビームを飛ばし、海底からの反射の強弱を測定し色の濃淡を使って表現する。
更に詳しいことはこちらへ→[沿岸海洋調査株式会社サイドスキャンソナー]
各目的船の簡易詳細
大洋丸 | りま丸 | 富生丸 | 錫蘭丸 | 豊浦丸 | |
読み等 | たいようまる TAIYO MARU |
りままる LIMA MARU |
ふせいまる*1 FUSEI MARU |
せいろんまる SEYLON MARU |
とようらまる TOYOURA MARU |
総トン[T] | 14,457 | 6,989 | 2,256 | 4,717 | 2,510(wiki) |
全長[m] | 180.0 | 135.64 | 91.135 86.868 (↑垂線間長) |
117.04 (垂線間長) |
92 |
型幅[m] | 19.87 | 17.68 | 12.98 | 14.9 | 12.28 |
型深[m] | 10.57 | 10.36(登録深) | 6.1 (20ft) | 9.07 | 6.21 |
兵装 | 不明 | 不明 | 不明 | ||
船主 | 日本郵船 | 日本郵船 | 日本海汽船 | 日本郵船 | 日本郵船 |
船種 | ドイツ客船 | T型貨物船 (第三期生産) |
香港貨物船 (拿捕船) |
貨物船 | 貨物船 |
徴用先 | 陸軍 | 陸軍 | 陸軍 | 海軍 | |
造船所 | ブローム・ウント・フォス(ドイツ) | 三菱長崎造船所 | Dunlop,Bremner & Company (イギリス) |
三菱長崎造船所 | Napier&Miller Ltd, Old Kilpatrick (イギリス) |
進水日 | 1911/8/8 | 1920/3/25 | 1921/11/8 | 1903/12/19 | 1913/6/26 |
竣工日 | 1911/11/18 | 1920/4/25 | 1904/2/22 | ||
沈没日 | 1942/5/8 | 1944/2/8 | 1943/9/1 | 1944/2/27 | 1944/5/6 |
沈没原因 | 米潜水艦グレナディアー(SS-210)の魚雷による | スヌーク (SS-279) |
シーウルフ (SS-197) |
グレイバック (SS-208) |
スピアフィッシュ (SS-190) |
備考 | |||||
写真 | 有り Tweet*4 |
有り(PDF)*3 |
Tweet*4 (同型船) |
Tweet1*4 Tweet2*4 Tweet3*4 |
|
米軍作成の 日本商船 識別帳 |
名称のみ記載*5 | Tweet*4 web*5 |
Tweet*4 web*5 |
Tweet*4 web*5 |
|
参考資料 | |||||
大洋丸 | りま丸 | 富生丸 | 錫蘭丸 | 豊浦丸 |
*1 「ふっさまる/FUSSA MARU」の表記もありますが、資料が少なく、浦先生のTweetにより「ふせいまる」としています
*2 参考資料を一部引用
*3 Ref. 戦没した船と海員の資料館, モタ02船団, 2011/4, p.5
*4 浦先生のTweetから抜粋
*5 Ref. ONI-208-J, 1944, SAN FRANCISCO MARITIME NATIONAL PARK ASSOCIATION
時系列など
8月23日 08:40 門司田野浦港から出発
09:50 浦先生インタビュー「大5ポイントを目指す」
10:00 乗組員の紹介
13:00 避難訓練
15:00 プラモデル完成
18:50 夕日放送
20:20 大洋丸探索メンバーへのインタビュー・視聴者との質疑応答など
8月24日 14:43 艦内ツアー初回放送(※13時頃からスタッフが艦内探索し撮影したもの)
21:03 目的地(大5)に到着。(※現地映像では21時丁度と発言有)
21:15 海上へ献花
21:32 サイドスキャンソナー投下 スキャン画面が映り始める
21:53 エラーによりスキャン画面中継一時中断
21:56 スキャン画面中継復活
22:08 船舶と思わしき影を発見
22:14 1回目のスキャン終了
22:30 ソナーを回収
22:40頃 質疑応答コーナー サイドスキャンソナーの説明など
23:01 スキャン再投入開始
23:30 スキャン画面中継開始
23:43 サイドスキャン2度目の大5の計測を終了→ROV投入準備
8月25日 01:11 ROV投入
01:20 ROV海底に到着
01:45 船舶を発見 調査開始
03:23 大5が大洋丸とほぼ確定
03:29 休憩入と同時にほぼ確定の理由を解説
(船体横の穴の形や完備スクリュー~軍艦で言う艦橋前部距離、他パーツの距離から)
03:34 調査再開
04:50 大5が大洋丸と確定🌸
08:00 大4の調査(サイドスキャン)を開始
08:07 現地の回線トラブルのため[大5]探索映像の再放送開始
(現地では大4スキャンの様子を録画中)
08:14頃 回線を変更して現地映像に切り替え(少々低画質)
現地は1回目のスキャンが終わり再スキャンのため開始地点に向かう最中
08:57 2回目の[大4]サイドスキャン調査開始
09:13頃 サイドスキャンソナーを終了 引き上げ開始
09:59 ROVを投入
10:08 ROV海底へ到着
10:23 船舶のようなものを発見
12:48 大4が何か判明せず、次の地点へ移動するためROVを回収
12:57 大3ポイントに向けて移動を開始
15:30 大3ポイントに到着
15:33 献花
15:41 大3ポイントにサイドスキャンソナーを投下
※機材不具合により無音放送+船尾のみ放送
15:59 機材不具合が修復し、ソナー画面が見れるようになり音声も出るようになった
16:17 1回目のスキャンが終了し ソナーを回収し2回目のスキャンへ
16:47 2回目のスキャンのため、ソナーを投入 スキャン開始
16:50 エラー(?)のためスキャンを中止し引き上げ
17:11 スキャンソナー再投入
17:30 スキャン再開
17:38 スキャンで物体を発見(想像がつかない形状)
17:50 スキャンソナー回収
18:31 ROV投入
18:40 ROV着底
物体が見えるが、網が大量に引っかかっているため視認が困難
別角度を試みようとしたとき、後方の網がROVに絡まる
19:37 ROVに絡まった編み紐の切断に成功
19:52 ROV回収
21:00頃 ミーティング(予定※浦先生の発言)
大3の調査は諦める
↑ この間特に大きな進展はないようです。 ↓
8月26日 05:19頃 大2の地点へ向かう (※更新してる人の起床時刻です)
05:31 日の出放送🌄
06:07 収録した献花の模様を放送(06:00頃に献花?)
06:30 ROV調査開始予定 (※スキャナーは今回使用せず)
06:47 ROV投下
06:52 ROV着底
08:27 大2は漁船であると確定
08:39 ROV回収
大1へ移動
11:50 BSフジで呂500探索のミニドキュメンタリーが放送される
13:23頃 大1のポイントへ到着
13:27 献花
13:44 ROV投下
13:51 ROV着底
14:41 物体が見えるも網がひっかかった為ROV回収
15:40 サイドスキャン開始
16:41 2回目のサイドスキャン開始
16:53 CF100%達成
17:19 サイドスキャン引き上げ
18:33 ROV投下
18:40 ROV着底
20:00頃 網が多く見つけた船舶に近づけないためソナーで様々な角度を調査
近海で沈没したと言われている豊浦丸と合致する点があるかを念頭に
サイズなどを計測中
20:40頃 計測したサイズが図解される(以下に書き写したものを貼る)
21:50頃 計測したサイズが図解される2(以下に書き写したものを貼る)
21:55頃 大1の調査を終了する
23:00 メロン食べる
現地調査後
9月5日 10:00 大洋丸発見の結果報告 記者会見 場所:航空会館地下/西新橋 ニコ生
内容:経緯と概要, 大洋丸特定についての説明, 大4〜大1の説明, 質疑応答
10:50 会見終了
調査結果まとめ (2018/9/5 大洋丸発見記者会見終了時点)
探索ポイント | 調査日 (2018) | 船名 | 状況 | 説明 |
大5 | 8/24~25 | 大洋丸 | 特定済 | |
大4 | 8/25 | 解析中 | ||
大3 | 8/25 | 解析中 | ||
大2 | 8/26 | 漁船と特定 | ||
大1 | 8/26 | 解析中 | デリックがあることから輸送船と思われる。船名特定のためのサイズ等の測定が行われた。(時系列データに添付の図を参照) 「形から豊浦丸(日本郵船)」かどうか検討中。*2 |
よくある質問
- Q.骨とか映らない?
- 今回は映る可能性があります
この調査は御遺族の希望をうけて調査しています。 - Q.ウラタマ タマケン タカイケン
- 魔法の呪文
- 『ウラタマキ』『タマキケンサク』『タカイケン』という人物名より
- 詳しくはこちら[Youtube]
- Q.ROVの映像にあるHDAってなに?
- H→船の方位(北:0、東:90、南:180、西:270), Heading
- D→海上からの深度, Depth
- A→海底からの高さ, Altitude
- Q.ニコニコスタッフは?
- 伊58、呂500に続き松井さん(昭和生まれ)が同行しています
また、今回はもう一人23歳男性カメラマン(12月8日生まれ)も同行しています。 - Q.アスパラ?
- 浦先生の大好物アスパラガス(お菓子)のこと
ベーコンを蒔いて塩胡椒や醤油などで焼くと美味しいアスパラガスではありません - Q.アネロン?
- 松井さんが愛用している吐き気止めのこと。
子供は服用してはいけない。一日一錠。
- Q.今回は夜通し調査?
- 夜間のROV投入などは不明ですが
4日間通しで海の上から放送します
(探査ポイントまでが遠く、また今回は大きい船で色々揃っています) - Q.若さってなんだ?
- 振り向かないことさ!!!!!
- (参考:宇宙刑事ギャバンOP)
- Q.船外でギィギィする音は何?
- 霊のアレ・・・ではなく、水中ロボットROVを支えている
- 滑車が波で軋む音だそうです。
- Q.被雷と触雷ってどう違うの?
- 被雷―魚雷に当たる
- 触雷―機雷に当たる
- Q.網って?
- 底引き漁の網が船体などに海中で引っかかり投棄されたもの。または流されて引っかかったもの。
- 船体確認の視界を奪ったり探査ROVにとって大変キケンな存在。
- 25日・26日の探査時にROVに引っかかり一時引き上げができない事態となった。
- 探査継続が危ぶまれたが、カッターで切断したり回転運動をすることでROVの回収に成功した
- Q.「キオスク」って何?
- ROVを操縦するオペレータが常駐しているコントロール・ルームの事。
- トルコ語の「あずまや」が語源で簡易構造物の事を指す。
- ROVでの探索中、「キオースク ピックアップ ワン メータ!」 (オペレータ室、1mワイヤー巻いて!)
という風に無線が飛び交う。
また、同じ語源から来ている駅売店のKIOSKの読みはキヨスク/キオスク どちらも正解である。 - Q.ROV探索中に聞こえる「コピー」という掛け声は何?
- コピー(copy)とは無線用語で、受信する、理解するという意味。
「了解」という意味で使われている。 - 他に、「聞こえますか? (Do you copy?)」という使われ方もある。
- Q.大洋丸探索中に出てきた「ボラード」とは何?
- ボラード(bollard)とは船を繫ぎ止める係留用の糸巻き形状の突起物の事である。
- 「船員さんが足を乗せているアレ」で全てが解決した一幕もみられた。
- Q.船名の〜丸の丸って何ですか?
- ここで語り切れないほど、諸説あるようです。
- Q.今回の4隻以外の戦時徴用船の沈んだ場所は?
- 1) 戦没した船の位置 (戦没した船と海員の資料館)
- 2) また日本郵船所属の船に限りますが、リンク先の地図で沈没場所が分かるようです。
- 日本郵船歴史博物館 該当ページ
- Q.ファンネルとは?
- 船の煙突のことです。
- Q.デリックとは?
- クレーンの一種で、荷物の積み降ろしに使います。
過去関連企画
関連記事
- 真珠湾にスパイを送った『大洋丸』――南方開発の夢とともに
太平洋戦争で沈んだ悲劇の客船、その知られざる歴史(ニコニコニュースオリジナル) - 戦時中に撃沈された民間船 東シナ海で海底調査始まる(NHKニュース)
-
Search for civilian ships sunk in wartime begins(NHK WORLD)
(注:閲覧期間は1ヶ月程度)
- 太平洋戦争中に撃沈の客船「大洋丸」 海底で確認(NHKニュース)
関連項目
■調査を支援するには?
大洋丸探索プロジェクト・クラウドファンディングサイト
■協力(50音順)
株式会社ウィンディーネットワーク
国際ケーブル・シップ株式会社(KCS)
戦没した船と海員の資料館
株式会社東陽テクニカ
FrogFootWorld(模型協力)
■共同企画
株式会社ドワンゴ
一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
- 12
- 0pt