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ワールドプレミアとは、2016年生まれの日本の競走馬である。黒鹿毛の牡馬。
安平町・ノーザンファーム生産、栗東・友道康夫厩舎所属。
馬主は大塚亮一(他にクロコスミア等を所有)。
名前は「世界規模での上映会を目指して」(JRA競走馬情報より)。
なお同名の2006年生まれのワールドプレミア「世界規模での映画の初回上映会」もいた。こちらはこちらで父アグネスタキオン、母ポインテッドパスで、半兄にネオユニヴァースがいる良血だったが、通算5戦1勝で引退している。
通算成績12戦4勝[4-1-4-3]
主な勝ち鞍
2019年:菊花賞(GI)
2021年:天皇賞(春)(GI)
父ディープインパクト、母*マンデラ、母父Acatenangoという血統。
父は競馬ファンに知らぬ者はいない2005年の無敗の牡馬三冠馬であり、種牡馬入り後は毎年当然のようにGⅠ馬・クラシックホースを輩出する上にアベレージも非常に高いことでリーディングサイアーを独走する大種牡馬。詳しくは個別記事へ。
母はドイツ生まれで現役時代3勝しておりドイツオークス3着馬。母父のアカテナンゴはドイツの大レースを総なめにし、種牡馬としてもジャパンカップ馬Lando他多数の活躍馬を出したドイツの優駿。
母の母の……とたどっていくと6代母まで「M」から始まる名前のドイツ牝系である。
全兄に皐月賞2着馬でマイラーズCを制したワールドエース、叔父にMonsun産駒で欧州マイル路線で活躍したManduroがいる。まず良血と言って差し支えない。
2016年の当歳(0歳)セレクトセールに出されると税別2億4000万円(当歳2番目の高値)で大塚亮一オーナーに落札される。この大塚オーナー、元騎手の夢を持ちながら競馬学校に落ち、その後馬主となった人物であり90年オグリキャップの有馬記念を見て競馬と武豊のファンになったとの事。後に本馬の主戦として武豊を据えられたのはオーナー冥利であろう。……と、この頃は暖かく見られていたのだが。
全兄のワールドエースは大塚氏ではなくサンデーレーシングがオーナーであったにも関わらず名前の「ワールド」が共通しているが、これはワールドエースに名前を付けたのが出資者の1人であった大塚氏であるため。
栗東の友道康夫厩舎へ入厩し、2018年10月21日に京都芝1800mの新馬戦でデビュー戦を迎える。鞍上には父の主戦でもあった武豊。1番人気となりレースでは出負けするものの中団につけ、直線で力強く抜け出してデビュー勝ちを果たす。なおこの新馬戦では後の弥生賞馬メイショウテンゲン(2着)や重賞連対馬エスポワール(3着)、タガノディアマンテ(4着)がいた。
2戦目の京都2歳S(GⅢ)は出負けの上大外を回されて伸びきれず離された3着に敗れたものの、続く自己条件のつばき賞では中団から進めて直線叩き合う内の馬を尻目に軽快な足で抜け出して勝利。更にリステッド競走の若葉Sに挑むが、若駒Sを勝ってきたヴェロックスに突き放され2着。
次走に青葉賞を予定していたがソエ(過負荷がかかった事による未成熟の骨の炎症、端的に言えば成長痛)が出たためレースを回避し、最終的に春シーズンの全休が発表された。
秋シーズンの復帰戦に神戸新聞杯を選択。ここでは皐月賞馬サートゥルナーリアやクラシックで善戦したヴェロックスに次いで3番人気に推された。レースでは押し出されたように逃げるシフルマンが非常に緩いペースで逃げ極めて落ち着いた展開となる。直線では一気に追い込んだものの前を捉えられず3着に敗れたが、大目標である菊花賞の優先出走権を確保した。レース後に武豊は「馬体や走りは良くなったけど気性の成長が窺えない」と辛口ながらも「ラストはいい脚だった」とその能力を評価した。
続く初のGⅠにしてクラシック最終戦菊花賞。皐月賞馬もダービー馬もセントライト記念勝ち馬もいない状況で本馬は3番人気に支持される。1番人気は春から好走が続くヴェロックス、続く2番人気はルメールに乗り替わったニシノデイジー。
パドックでも首を振って若干イレ込む仕草を見せるなど相変わらず気性の幼い面を見せたが発馬は上手く決まり、インに入って先団を見る位置につける。先頭カウディーリョが逃げて序盤1000m通過が62秒4とここだけ見ればスローに見えるが、その後12秒台ペースが続いて中弛みすること無く淡々と進み最後は消耗戦、スタミナ勝負の展開が見えてきていた。鞍上武豊は終盤坂の下りから後続が殺到する中でも仕掛けを遅らせて淀の坂をゆっくりと下り、4コーナー出口から馬群が横に大きく広がる中ぽっかりと空いた内目のスペースへワールドプレミアを導き一気に抜け出していく。「京都外回りは直線に入るとインが空く」、淀を庭とする菊男・武豊が知らないはずがないこのセオリーを活かした進路取りによってワールドプレミアは先頭に立ってなお脚を伸ばし、追いすがるヴェロックスを従え外から伸びるサトノルークスもクビ差抑えて勝利。初の重賞・GIタイトルを獲得、クラシックホースの仲間入りを果たした。
この勝利により武豊は昭和・平成・令和の3元号でGIを制覇[1]、史上最多の菊花賞5勝[2]、最年長菊花賞勝利を達成。また7月に急逝したかつての相棒にしてワールドプレミアの父:ディープインパクトに捧ぐ勝利となった。
秋3戦目に有馬記念を選択。この有馬記念ではGI馬11頭が集結し一番の目玉とされていたのが香港遠征を熱発で取りやめた後、有馬記念に参戦を表明したアーモンドアイであった。単勝1.5倍の完全に一本かぶりの人気であり続いて豪州遠征帰りのリスグラシュー、サートゥルナーリアが続き、本馬ワールドプレミアは4番人気(単勝13.4倍)に支持された。
レース本番、スタートで若干立ち後れたワールドプレミアは最後方につけて脚を溜めるだけ溜める決め打ち作戦に出る。ハナを奪って逃げるアエロリットが前半1000mを58秒5で飛ばした上にその後もペースを緩める事無く進み、先行勢はそのアエロリットを4コーナー前から捕まえにかかったため前は総崩れの展開。ワールドプレミアは最後方から大外へ持ち出して直線に入り、一気に脚を伸ばして10頭以上をごぼう抜きするも先に抜け出したサートゥルナーリア、またその遙か先のリスグラシューには届かずに敗れた。しかしそれでも3着を確保する好走を見せたことから、いつも辛口な武豊も「来年が楽しみ」と期待を寄せ陣営も初の関東輸送クリアと好内容を前に来年の青写真を描いていた。
明け4歳となり天皇賞(春)への出走が想定されていたが、疲労が抜けきれないという事で結局春シーズンは全休することとなった。
秋も深くなった頃ようやくジャパンカップで復帰。ここでは日本馬史上最多芝GI8勝を上げたアーモンドアイに、1個下の無敗三冠馬コントレイル、同じく無敗の牝馬三冠馬デアリングタクトの三つ巴決戦の様相を呈し本馬は11ヶ月ぶりという事もあり15頭立て7番人気となった。レースではスタートから少し下げて中団の10番手を追走。直線に入って脚を伸ばしたが上位5頭の争いには加わる事は出来ず0.8秒差の6着となった。
続いて有馬記念へ出走。本馬をはじめGI馬8頭を含むフルゲート16頭立ての中5番人気となった。レースでは内目の好位を追走し、残り4ハロンからペースが上がった中で追い出しを待ってから馬群へ入り脚を伸ばしたもののカレンブーケドールと同着の5着となった。
明けて5歳。陣営の大目標はもちろん前年出走がかなわなかった春天制覇である。
しかしこの春、ワールドプレミアの周囲は馬と全く関係ないことで騒がしくなる。
2月初旬、騎手・調教師・厩務員ら中央競馬関係者160人以上が本来は受給するべきではない新型コロナウイルス対策持続化給付金を不適切に受け取っていたというスキャンダルが発覚。彼らに不正受給の手口を指南・斡旋していたいわば主犯格が税理士を本業とするワールドプレミアの馬主・大塚オーナーだったのである。
……厳密にいうと彼らは受給条件『自体』は満たしていたため不正受給ではない。が、新型コロナウイルスの影響を殆ど受けていない中央競馬関係者が受給するのは制度の趣旨に明らかに反している。また、大塚オーナーも成功報酬として給付金の一部を受け取っており、善意の行動であったとは到底言い難い。
大塚オーナーは馬主団体の各役職辞任、受給斡旋により得た報酬の返還などを行ったものの明確な違法行為を行っていなかったためJRAからは特に何の処分も下されず、そのせいもあって批判が加熱。当然馬には何の罪もないのだが馬主には稀代のヒールのイメージがついてしまった。
更におり悪く春初戦・日経賞前週の3月20日に主戦騎手・武豊が骨折により長期休養。日経賞はもちろん春天に間に合うかどうかも危うい状態となってしまった。迎えた日経賞は石橋脩を鞍上に迎え2番人気に推されたが最後の伸びを欠き、ウインマリリン、カレンブーケドールの牝馬2頭にちぎられ3着。流れが悪い……。
迎えた本番・天皇賞(春)。この年は前年の菊花賞を最後に改装工事の始まった京都競馬場ではなく阪神競馬場での開催となった[3]。武の復帰が間に合うかどうかが不透明だったため、鞍上には初タッグとなる福永祐一を迎えた(ちなみに武は前日の土曜日にギリギリで復帰し、春天では条件馬のディバインフォースに騎乗)。
オッズは前哨戦の阪神大賞典を圧勝したディープボンド3.6倍、前年菊花賞2着のアリストテレス3.8倍の4歳馬2頭にやや離され、5.2倍の3番人気。一見まあまあの人気に見えるがこの年の春天は前年三冠馬・コントレイルが早々に回避したのをはじめ全体的にメンバーが小粒で、GI優勝経験があるのはワールドプレミアと2016年を最後に勝ちがない8歳のダービー馬・マカヒキおじいちゃんだけ。1年半未勝利とはいえ唯一の3000m超GⅠ馬という実績的には抜けた存在にもかかわらずこのオッズというのはやはり外野の騒動が少なからず影響していた面はあるだろう。
果たして、レースは道中を中団で組み立てながら最終直線では段違いの末脚を見せて逃げるカレンブーケドール、ウインマリリンらをまとめて捉え、最後まで食い下がったディープボンドも振り切って快勝。「菊花賞馬の意地だ! これが菊花賞馬だ! ワールドプレミア、これが菊花賞馬のプライドだ!」という関テレ岡安アナの実況通りにGI馬の底力、そして人間様の悪事など馬には何の関係もないことを天下に示して見せた。
繰り返すが、競走馬に悪役なんていないのである。かつて理由は違えど同じように春天でヒールとなじられた、同じ青鹿毛のステイヤーを持ち出すまでもなく。
夏は春天のダメージを回復させるためにノーザンファームでの休養に充てる。友道調教師は「天皇賞のあとはガタッときたけど今は迫力が出てすごい体になっています」と語り、秋に向けての英気を養っていたようだ。
復帰初戦となる天皇賞(秋)はコントレイル、グランアレグリアの他に3歳馬エフフォーリアが参戦。当然福永はコントレイル騎乗だが、33年連続で秋天に出走していた武豊がこの日は阪神での騎乗となったため鞍上は岩田康誠に。結果はエフフォーリア以下前述の3頭が上位を独占し、ワールドプレミアは11着と大敗した。
選出された香港ヴァーズの招待を辞退し次走はジャパンカップに出走する予定であったがレース2週間前に体調不良のため回避が決定、そのまま11月25日に現役引退が発表された。
優駿スタリオンステーションで種牡馬入りして2022年から種付けを開始。
ディープインパクトが数多くの活躍馬を輩出する大種牡馬であったために日本にはディープインパクト産駒の種牡馬が多いこと、そういったライバルと比較して本馬の実績が長距離にしかないこと、後継として最も期待されるコントレイルと引退時期が被ってしまったことなどが逆風となって種付け数は初年度に53頭とあまり多くはない。
産駒は2025年にデビューを迎えており、11月9日の2歳新馬(京都芝2000m)でロブチェンが勝利して産駒のJRA初勝利を上げた。
| ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Wishing Well | Understanding | ||
| Mountain Flower | |||
| *ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
| Lady Rebecca | |||
| Burghclere | Busted | ||
| Highclere | |||
| *マンデラ Mandela 2000 栗毛 FNo.3-d |
Acatenango 1982 栗毛 |
Surumu | Literat |
| Surama | |||
| Aggravate | Aggressor | ||
| Ravan Locks | |||
| Mandellicht 1994 黒鹿毛 |
Be My Guest | Northern Dancer | |
| What a Treat | |||
| Mandelauge | Elektrant | ||
| Mandriale |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)
半弟に重賞2勝でダービー・ジャパンカップ3着のヴェルトライゼンデが、半姉*ヴァレリカの孫に2025年ジャパンダートクラシック勝ち馬のナルカミがいる。
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最終更新:2025/12/06(土) 01:00
最終更新:2025/12/06(土) 01:00
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