
I'LL KEEP COMING.
『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』とは、コジマプロダクション開発のビデオゲームである。
概要
To see a World in a grain of sand,
And a Heaven in a wild flower,
Hold Infinity in the palm of your hand,
And Eternity in an hour.
一粒の砂に世界を、
一輪の花に天国を見いだすには、
君のてのひらで無限を握り、
この一瞬のうちに永遠をつかめ。
──ウィリアム・ブレイク「無垢の予兆」
(『DEATH STRANDING』 E3 2016ティザートレーラーより)
「なわ」は「棒」とならんで、
もっとも古い人間の「道具」の一つだった。
「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、
「なわ」は、善い空間を引きよせるために、
人類が発明した最初の友達だった。
「なわ」と「棒」は、人間のいるところならば、どこにでもいた。
──安部公房「なわ」
2015年12月にコナミデジタルエンタテインメントを退社した小島秀夫が新たに設立したゲーム開発スタジオ「コジマプロダクション」による第1作。E3 2016 SIEプレスカンファレンスにて電撃的に発表された。
タイトルは直訳すると「死の座礁」となり、クジラやイルカ等の海棲哺乳類が陸地に座礁する現象「ストランディング(stranding)」から取られている。
また、英単語の「strand」には「(船などを)座礁させる」などの他に「なわ、より糸」という意味があり、小島監督は「なわ」的な思考が『DEATH STRANDING』のストーリーや世界観、ゲーム性において重要なテーマとなることを示唆している。
本作に影響を与えた作品として、小島は安部公房の短編小説「なわ」に言及。高校2年生の時に読書感想文を書いており、冒頭でも一文が引用されている。
ジャンルについては「主人公をインタラクティブに動かすという意味では広義のアクションゲーム」としながらも、「その先にあるのはまだ誰もやったことがない革新的なゲーム性である」としている。
また、自由度の高いオープンワールドを背景に置いたゲームシステムであることも発表されている。
ゲームエンジンはオランダのゲーム開発スタジオであるゲリラゲームズが開発していた「DECIMA」エンジンを採用、『DEATH STRANDING』が求める表現に合致するように最適化したものが使用される。「DECIMA」に関してはゲリラ―コジプロ間で技術的なコラボレーションが行われており、両スタジオのスタッフによって更なるブラッシュアップが行われている。この縁もあってかゲリラゲームズの『Horizon Zero Dawn』とは本作の発売前から相互コラボしている。
2019年12月1日に小説が上下巻で発売された。
2023年12月には、世界累計プレイヤー数が1600万人を突破したことを発表している。[1]
スタッフ・キャスト
企画/プロデュース/ゲームデザイン/脚本/監督を小島秀夫が担当する「A HIDEO KOJIMA GAME」最新作となる。
アートディレクションを『MGS1』以降メタルギアシリーズの美術全般を担当してきた新川洋司、
共同脚本としてメタルギアシリーズのノベライズを多数執筆した「野島一人」こと矢野健二、
タイトルデザインをハリウッドで活躍するタイトルデザイナーのカイル・クーパーがそれぞれ担当する。
キャストとして映画俳優のノーマン・リーダス、マッツ・ミケルセンの登場が発表され、話題を呼んだ。また、TGA 2016ティザートレーラーでは映画監督のギレルモ・デル・トロの姿も見られた。
ノーマン・リーダス、ギレルモ・デル・トロの二人はかつてコナミにおいて小島監督とともにサイレントヒル新作企画『SILENT HILLS』に参加していたメンバーであり、『SILENT HILLS』開発中止後も交流が続き、今回の出演につながった。なお、デル・トロは俳優として登場するのみであり、ゲームのクリエイティブ面には関わらないことを明言している。
ストーリー
Tomorrow Is In Your Hands
「デス・ストランディング」は世界を変えた。人類は分断され、孤立した。サム・ポーター・ブリッジズは、未来への希望を手に、世界を再び繋ぐために歩きはじめる。
(公式サイト)
世界は「デス・ストランディング」という現象により引き裂かれて崩壊。時雨(タイムフォール)が降る時、幽霊のような存在「BT」が出現し、人間の「呼吸」を補足して襲い掛かってくる。
プレイヤーは「伝説の配達人」サム・”ポーター”・ブリッジズとなり、繋がりが分断されたアメリカを再建し、未来を運ぶ「任務」につく事となる。
システム
プレイヤーはサムを操作し、依頼に応じて荷物を目的地に配送。断絶した都市を結ぶため、次世代通信インフラ「カイラル通信」を繋いでいくこととなる。
基本的に三人称視点で、サムは荷物や装備を背負って広大なフィールドを移動。道中では地形に加え、BTやミュールを始めとした様々な障害が立ち塞がる。
荷物には重さ・大きさ・注意があり、うまく背負わないとバランスを崩して転倒しやすくなる。転倒して放り出された荷物は破損が進み、時雨に打たれても劣化が進むため、出来るだけ多くの荷物を適切に背負う必要がある。「荷物の最適化」コマンドの使用で、一発調整が可能。
なお荷物運びに際してはトラックなどの乗り物や、フローターによる補助を使う事も出来る。
フィールドの高低差はオドラデクを使って確認でき、無理のない道のりを選びながら目的地へ進んでいく必要がある。地形によって進行が難しい場合は梯子やロープを設置して乗り越えられる。
ゲームが進むにつれて橋や発電機の設置、国道の整備が可能となり、カイラル通信を繋げることで他のプレイヤーが置いたオブジェクトを利用できるようになる。これらのオブジェクトに対しては「いいね!」を送る事が可能。
キャラクター
- サム・ポーター・ブリッジズ 演:ノーマン・リーダス/日本語吹替:津田健次郎
- 本作の主人公。「伝説の配達人」「能力者」「帰還者」。
ブリジットは養母、アメリは義姉にあたる。首から下げたドリームキャッチャーはアメリからのプレゼント。
アメリカ再建のため活動する組織『ブリッジス』から依頼を受け、人々を繋ぎながら東海岸から西海岸へ北米大陸を横断。同時に捕らわれたアメリの救出を依頼される。
能力者レベルは2。BTをはっきりと見ることは出来ず、うっすらと探知できる程度。「帰還者」である彼の老廃物や血液はBTに有効な武器となる。また接触恐怖症で、触られると炎症を発する。
各所に建造された休憩ポイントのプライベートルームではくつろぐサム……というよりノーマンと触れ合うことが出来る。
- BB(ブリッジ・ベイビー) 演:不明
- サムと共に北米大陸を横断する「死の世界と繋がった赤ん坊」にしてサムの「装備品」。BBと接続することで、サムは動きを止めている時だけBTを視認できる。識別コードは「BB-28」。
初登場時は死体処理班のイゴールの装備品だったが、BTを検知できず、結果として対消滅が発生。不良品として廃棄処分される予定だったが、焼却場で大量のBTに囲まれたサムの脱出に貢献。以後大切なパートナーとしてサムの旅に同道する。途中から「ルー」という名を与えられる。
- サマンサ・アメリカ・ストランド(アメリ) 演:リンゼイ・ワグナー/日本語吹替:井上喜久子
- 赤いドレスの女性。前大統領である母ブリジットの遺志を継ぎ、アメリカを再び一つに繋げるべく活動する、アメリカ都市連合(UCA)大統領。サムの義姉。
高レベルの能力者であり、BTをはっきりと視認できる。その能力を生かしてBTの救う座礁地帯を回避しながら、UCAへ加入する人々を探して北米大陸を横断。しかし西海岸の『エッジ・ノットシティ』でテロリスト集団の分離破壊主義者(ディメンス)に捕縛されてしまう。彼女を救い出すことがサムに託された依頼である。
肉体が「ビーチ」にあるため、10年以上加齢していない。
- ダイハードマン 演:トミー・アール・ジェンキンス/日本語吹替:大塚明夫
- ブリッジスの長官で、大統領の右腕。黒い仮面を被った黒人男性。
サムにアメリ救出、および北米大陸をもう一度つなぎ直すことの2つを依頼する。
- デッドマン 演:ギレルモ・デル・トロ(友情出演)/日本語吹替:石住昭彦
- ブリッジスのメンバー。監察医。ホログラムを通じ、サムにBBの扱い方をレクチャーする。またBBのメンテナンスも担当。ボディタッチをしてくる癖がある為、接触恐怖症のサムには避けられている。
多能性幹細胞の再生研究過程で誕生した、いわゆる試験管ベビー。形成不全により死者の臓器を7割移植している。その出自ゆえに魂(カー)を持たず、死んでも「ビーチ」に行くことはないと自嘲し、この名を名乗っている。
- ハートマン 演:ニコラス・ウィンディング・レフン(友情出演)/日本語吹替:大塚芳忠
- ブリッジスのメンバー。古生物学者で、BTの調査・研究を担当している。
21分ごとに心停止し、AEDで蘇生を繰り返すために1日に60回死ぬ。自宅には映画や本が多数揃えられているが、すべて21分以内で完結するものである。
かつて対消滅で家族を失い、自身も心停止状態となった。その際に「ビーチ」で家族の姿を発見するが、蘇生によって離れ離れになってしまった。それ以来、家族の捜索を所望している。
- ママー 演:マーガレット・クアリー/日本語吹替:坂本真綾
- ブリッジスのメンバー。メカニック担当。BTの子供(赤ん坊)を持つ女性。子供はママーとのみ繋がっているので危険はないらしい。能力者だがレベルは不明。
臨月の時に入院していた病院がテロで崩壊、長時間瓦礫の下敷きとなる。胎内で死んだ赤子がBT化し、その泣き声で発見・救助された。BTがいる場所からは動けない為、病院跡地に研究所を構えている。
- ヒッグス 演:トロイ・ベイカー/日本語吹替:三上哲
- 人を殺し対消滅を起こして街をクレーターに変える分離破壊主義者のメンバー。黄金髑髏仮面の男。
高レベルの能力者で、少なくともレベル7以上。BTを操り、時雨を人為的に引き起こし、更にフラジャイル同様にテレポートも出来る。デス・ストランディングの正体を掴んでいると公言している。
アメリを人質にしてアメリカ再建を妨害しているが、その真意は……?
- フラジャイル 演: レア・セドゥ/日本語吹替:水樹奈々
- 民間配送組織『フラジャイル・エクスプレス』のリーダー。
自分の「ビーチ」を経由し、遠隔地へのテレポートが出来る(雨の日は実行できない)。この能力を利用して他者を転送する事も可能で、本作におけるファストトラベルシステムを担っている。ただしこの能力は乱用できず、無理に連続使用すると重篤な副作用を発する。かつてヒッグスに利用されてテロに巻き込まれ、時雨にさらされたことで、頭部以外の全身は急速に老化している。
- クリフ 演:マッツ・ミケルセン/日本語吹き替え:山路和弘
- 謎多きヘビースモーカーの男性。BBに接続した際、垣間見える記憶に度々現れる。ティザーPVにて骸骨の兵士を率いている姿が確認されている。
後にサムの目の前に現れ、BBに強い執着を見せて襲いかかってくる。本名はクリフォード・アンガー。
その他三浦大知や伊藤潤二、コナン・オブライエンといった実在人物がカメオ出演している。
つまりあの人も……。
用語
ロケーション
組織
その他
- カイラリウム
ギリシャ語の「手」を語源とする物質。カイラル物質とも。BTから発生するタール状の黒い粘液で、触れると人間の心身に悪影響をもたらす。
時雨の降った後やBT撃破後に結晶化しており、この状態では無害。結晶は時雨の影響を受けない為、建造物などにコーティング剤として使用される。
- カイラル通信
カイラル結晶を利用した、瞬時の超大容量通信を可能とする次世代通信システム。原理についてはよく分からないまま動かしているのが現状。
カイラル通信が確立すれば物資の「複写」や大量の電力供給が可能となり、都市を繋ぐ道路整備や移動手段の配備が出来るようになる。
- 能力者(DOOMS)
サム、フラジャイル、ヒッグス、ハートマンなどが該当。BTの存在を感知でき、ビーチを介してテレポートやテレパシーを行うなど、特異な能力を持っている。
能力の度合いによってレベル分けされており、「絶滅夢」という悪夢を見る。
- 帰還者
サムが該当。たとえ死亡しても、「結び目」において自分の肉体を見つけて復活できる。ただしビーチで死亡した場合は復活できない。実はもう一人帰還者がいるが……
- クリプトビオシス
小さな芋虫のような生物。羽はないが、空中に浮遊する事ができる。食べると時雨に対する耐性がつく。
原義ではクマムシなど、環境に応じて活動停止する生物の「無代謝状態」を指す。で、味は?
- ネクローシス
死後48時間が経過した死体に発生する現象。黒い染みがあふれ出し、最終的にBT化してしまう。
死体焼却が唯一の対処法だが、焼却時にカイラリウムが出て悪影響を及ぼす為、焼却場に運ばなければならない。間に合わない時には座礁地帯に遺棄するのが次善策となる。
- 配達依存症
配達人が発症する精神疾患。
「崩壊した世界で自分こそが配達システムを支えている」という使命感と脳内物質(オキシトシン)の高揚感に取りつかれ、荷物を運ぶ他の配達人を襲撃しては荷物を奪い取ろうとする。
わかりやすく言うと「いいね!」中毒者。
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
脚注
- *「DEATH STRANDING」世界累計プレイヤー数1600万人突破。毎月テーマに沿ったフォトモード作品を募集するキャンペーンがスタート
2023.12.21 - *過労や精神的緊張などで起きる嘔吐症(アセトン血性嘔吐症)。小児に多い疾患。