セイウンハーデスとは、2019年生まれの競走馬である。黒鹿毛の牡馬。屈腱炎を乗り越えて重賞2勝を果たした実力馬…なのだがGIの舞台で2度の逃げを打ちレコードを演出したほうが印象深いかもしれない馬。
主な勝鞍:
2023年:七夕賞(GIII)
2025年:エプソムカップ(GIII)
概要
血統・デビュー前
父シルバーステート、母ハイノリッジ、母父マンハッタンカフェ。
父はディープインパクト産駒で、現役時代の主戦騎手であった福永祐一(現・調教師)が「エンジンならコントレイル以上」と評した未完の大器。種牡馬としても初年度受胎で80万円というお手頃な条件から重賞勝利桜花賞2着のウォーターナビレラを輩出して一躍人気種牡馬になった。本馬はそのウォーターナビレラと同じ初年度産駒である。
母は船橋で2勝。2025年11月時点で8頭の仔を産んでいるがうちデビュー済7頭のうち5頭は中央で、残る2頭も地方で勝ち上がるという高い安定感を有している。牝系では近年の活躍馬にレイパパレなどがいるトサモアー系に属しているが、つまりは更に遡ればシラオキ系などと同じフロリースカツプにも行き着くこととなり日本の古い牝系を繋いでいる馬である。
母父は近年母父としての存在感を増している2009年のリーディングサイアー。
2019年4月8日に日本ダービー馬カツラノハイセイコやJBCスプリント馬ブルドッグボスなどを生産した老舗・鮫川啓一牧場にて誕生。
セイウンの冠名でわかるように半姉のセイウンノウヒメも所有した西山茂行氏の所有となり、ギリシャ神話の冥府神ハデスを足して「セイウンハーデス」と命名される。
所属は栗東・橋口慎介厩舎[1]。
デビュー~春クラシック
そんな本馬は2021年10月31日に京都でデビュー。鞍上は鉄人・幸英明騎手が迎えられた。そしてレースは1番人気に応えて快勝。しかしその後の1勝クラス2戦を5着、2着と落とし、皐月賞への収得賞金は詰めず。日本ダービーに目標を切り替えての重賞初挑戦毎日杯(GIII)も4着。この結果を受けた次走は日本ダービー最終便プリンシパルステークス(L)。ここでの1番人気は新興馬主である藤田晋氏の馬ドーブネ、本馬は6番人気であった。本馬はドーブネを見る形でレースを進めると、最終直線で外に持ち出し前を躱して先頭へ。そのままドーブネやキングズパレスを1馬身振り切って日本ダービーの最終切符を手に入れた。
勇躍臨んだ日本ダービーだったが単勝万馬券の16倍人気、そしてレースでは1枠2番を活かして内ラチ沿いを先行したものの残り300mで力尽きて11着。
ここまでは競走実績的にはただの脇役でセイウン・ニシノのオーナーの今の活躍馬、くらいの認識でしかなかった本馬。しかしその名は秋に一気に知れ渡ることになるのである。
秋クラシック
秋初戦のセントライト記念は2番手を進んだものの4角でアスクビクターモアとガイアフォースに躱され、最終直線ではローシャムパークにも差されて4着。優先出走権は取れなかったがプリンシパルステークスの賞金で臨んだ菊花賞。スタートを決めると幸騎手は一気に押してハナを奪い、そのまま後続を3馬身離しての逃げに突入。前半1000mのタイム、58秒7!前年に大逃げを打ったタイトルホルダーが60秒フラット、幻惑逃げの代名詞であるセイウンスカイが59秒6なのでそれ以上の暴走と言っていいハイペースであった。しかし大して離されずについてくるアスクビクターモア以下先行勢。2000mは2分1秒4と前年よりペースを落とせず。そして残り3ハロン、ロングスパートで並びかけてきたのはアスクビクターモア。力尽きた本馬は抗えず、そのまま後続に次々交わされてブービー17着。そして本馬の走りによって、3歳馬による世代戦ながらナリタトップロードが20年以上有していた阪神3000mのレコードタイムを更新する3分2秒4という驚異的な時計が叩き出されたのであった。
この結果を幸騎手は「真面目に走り過ぎていた。能力は高いけど難しいところがある」[1]
と振り返った。その後は休養に入った。
4歳
半年休んで始動戦は自己条件の3勝クラス・競馬法100周年記念(阪神・芝2000m)。ここでは番手からの王道競馬で1着、オープン昇格を果たす。
そして新潟大賞典(GIII)に出走。鞍上は幸騎手がNHKマイルカップにタマモブラックタイで挑んでいたので前日にJRA600勝を達成した津村明秀騎手と新コンビ。不良馬場の中2番人気に推されると、津村騎手と共に逃げを打つ。1000mは1分1秒6、不良馬場では平均的と言えるペース。長い最終直線に入ると不良馬場に脚を取られた後続は下がっていき、完全な逃げ込み体制に入る。…ただ1頭、内からしぶとく追走してきたカラテを除いて。最後は1馬身差をつけられての2着。それでも3着は8馬身ちぎり捨て、実力を見せつけたのであった。
勢いを駆った次走は鞍上は幸騎手に戻っての七夕賞(GIII)。そしてレースでは好位追走から最終直線で力強く抜け出し悲願の重賞制覇。馬主の西山茂行氏は(障害含めると2022年中山大障害、平地に限っても2018年東スポ杯2歳Sの)ニシノデイジー以来、調教師は(地方JpnIなどはあるが)JRA重賞は初、牧場は2008年新潟大賞典のオースミグラスワン以来15年ぶりの重賞制覇となった。
その後は秋GIに向けて新潟記念より始動…の予定が好事魔多し、屈腱炎を発症。損傷率は2割を超えており現役引退してもおかしくないほどの重症だったが陣営は現役続行を選択。長い療養に入った。
5歳~6歳春
復帰戦は5歳の年末、チャレンジカップ(GIII)。9番人気ながら先行して5着と掲示板に残り、復帰戦としては上々の結果を収める。6歳初戦の京都記念(GII)は1ハロン延長したせいか8着に終わり、陣営は距離を短縮してエプソムカップ(GIII)に狙いを定めた。
レースはいつものように好発進したものの控えて中団へ。そして最終直線、幸騎手が追い出すと一気に先行馬を交わして残り1ハロンで先頭へ。後方からはドゥラドーレスが突っ込んできたが、1と4分の3馬身差をつけて復活の重賞2勝目。しかもそのタイムは1分43秒9。3年前の毎日王冠でサリオスが出したコースレコードをコンマ2秒縮めて見せたのであった。
6歳秋
秋はGI直行を選択し、まずは天皇賞(秋)。鞍上は幸騎手…の予定が8月の落馬で追った負傷が回復しきらず菅原明良騎手へと乗り替わり。そしてレースはまずまずの出だったが外枠だったこともあり先手を奪えず、レースが究極の上がり勝負になったこともあり7着まで。
次走はジャパンカップ。鞍上は幸騎手が満を持して復帰…のはずが前週にまた落馬負傷。急遽新潟大賞典で乗った経験のある津村騎手を手配する事態に。レース本番、いきなりアドマイヤテラが落馬し場内が騒然とする中好発進した本馬。津村騎手はそのまま逃げを打ち、2番手のホウオウビスケッツが控えたのでそのまま大逃げへ。その最初の1000mのタイム、57秒6!2年前のパンサラッサと同タイム、いくらなんでも早すぎである。3コーナーあたりから差が詰まりだし、直線ではカラ馬のアドマイヤテラが馬場の真ん中で頑張っていたこともあって残り2ハロンまで粘ったがアドマイヤテラクロワデュノールに躱されるとあとは沈んでいく一方、12着に沈んだ。しかしこの激走の結果叩き出されたアドマイヤテラカランダガンとマスカレードボールのタイム、なんと2分20秒3!あのアーモンドアイのタイムを上回ってしまったのである。
2度のレコード決着を演出し自身もまたレコードで駆け抜けた本馬。果たして本馬がGIでレコードを叩き出す機会はあるのか、注目である。
血統表
| シルバーステート 2013 青鹿毛 |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| *ウインドインハーヘア | Alzao | ||
| Burghclere | |||
| *シルヴァースカヤ 2001 黒鹿毛 |
Silver Hawk | Roberto | |
| Gris Vitesse | |||
| Boubskaia | Niniski | ||
| Frenetique | |||
| ハイノリッジ 2011 鹿毛 FNo.3-l |
マンハッタンカフェ 1998 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| *サトルチェンジ | Law Society | ||
| Santa Luciana | |||
| ゴールドグレース 2002 鹿毛 |
*エリシオ | Fairy King | |
| Helice | |||
| グレースウーマン | マルゼンスキー | ||
| ランズブロント |
クロス:*サンデーサイレンス 3×3(25.00%)、Hail to Reason 5×5×5(9.38%)、Nijinsky 5×5(6.25%)
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関連項目
脚注
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