チャイヨー(ไชโย)とは…
ここでは2を説明する。
概要
創立者ソムポート・センドゥアンチャーイは円谷英二に弟子入りし、特撮のいろはを日本において学び、帰国後にチャイヨー・プロダクションを設立した。円谷プロで得たノウハウを駆使して、映画・テレビ番組を制作してきた。
これが縁で「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」を合作で制作し、その他様々な作品を作っており、日本でも「ハイパーボッツ」がテレビ放送されるなどしたが、タイ大洪水の影響を受け、2011年に廃業。
1995年より「ウルトラマンタロウ」までのウルトラシリーズ6作品および「ジャンボーグA」の海外における権利を保有していると主張しており、2004年には日本においてその主張は通ったが、2008年2月にタイ国内においてはその権利を失っている。
2008年12月にはタイ以外での権利を日本のユーエム社(「ウルトラマンレオ」「モスラ2」などで操演、「シン・ゴジラ」などで特殊機械製作を務めた上松盛明社長の会社)に譲渡しているが、実はその前の1999年にタイ以外での権利をバンダイに売却していたことが2011年に判明している。
なお、後述するように、2020年(令和2年)以降、ユーエム社は中国および米国での権利を主張しておらず、旧チャイヨー・ユーエム社の海外における権利は事実上認められない状態となっているため、「円谷プロ側の全面勝訴」とされている。
代表作
映画
- ターティエン(1973年)
- ジャンボーグA&ジャイアント(1974年) - 円谷プロ共同製作作品
- ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団(1974年) - 円谷プロ共同製作作品
- ハヌマーンと5人の仮面ライダー(1975年) - 東映無許可製作作品
- Yod Manut Computer(1977年)
- Pandin Wippayoke (英題:Land of Grief)(1978年)
- カーキー(1980年)
- チョラケー(英題:クロコダイル)(1980年)
- Kraithong(1980年)
- Phra Rod Meree(1981年)
- クン・チャーン=クン・ペーン: Prab Chorakhe Tan Kwand(1982年)
- Phra Chao Suea Panthai-Norasing(1982年)
- Suek Kumphakan (英題:Noble War)(1984年)
- ハヌマーンと11人のウルトラマン(1984年) - 円谷プロ無許可製作作品?
- Kraithong II(1985年)
- エリマケトカゲ一人旅(原題:キンカー・カイヤシッ、英題:マジック・リザード)(1985年) - 円谷プロ共同製作作品?
テレビ作品
- Kraithong(1972年)
- アパイマニー王子物語(1973年)
- Yai Ka Ta
- Long Prai
- ハイパーボッツ(2001年)
- PROJECT ULTRAMAN(2006年放送予定であったが中止) - 円谷プロ無許可製作作品
ジャンボーグA&ジャイアント
「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」とほぼ同じ頃に制作された作品で、映画「ターティエン」に登場した石像(巨人・ヤック)とジャンボーグAが共演するが、どういうわけかワットアルンから宝物を盗み出したデモンゴーネと戦うのはワットアルンに飾ってある石造とワットポーに存在するヤック(鬼)である。
ハヌマーンに負けず劣らずインパクトはあるのだが、日本語版が存在しないこともあり、いかんせん「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の知名度が高く、なかなか情報が少ないのが現状である。
なお、チャイヨーは後に本作のフィルムを流用した「キンカー・カイヤシッ」(NHKで放送された際の邦題は「エリマキトカゲ一人旅」)を制作しているらしい。
ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団
知る人ぞ知るウルトラシリーズである。詳しくは「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」を参照いただきたい。
現地における名称は「หนุมาน พบ 7 ยอดมนุษย์(ハヌマーン ボップ チェッ ヨッマヌッ)Hanuman pob Jed Yodmanud」、翻訳すると「ハヌマーンと7人の超人(≒ウルトラマン)Hanuman vs. 7 Ultraman」であり、ウルトラ6兄弟なのに7となっているのはウルトラの母も数に入ってるからである。これはタイ語で「6」という数字が「転ぶ」と同じ発音で印象が悪いため。
この作品の大きな特徴はほぼ全編にわたって新撮りな事である。「ジャンボーグA&ジャイアント」や「ハヌマーンと5人の仮面ライダー」が半分近くを日本版の映画を流用しているのに対して、「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」はセットやメカや一部の映像などに流用はあるものの、大部分の撮影はタイ国内となっている。その為、明らかに日本の風景とは異なるエスニックな雰囲気があちらこちらに漂う作風になってる。
当然ながらウルトラ兄弟の人間体もでなければ、声もオリジナルとは異なる。また怪獣攻撃チームっぽいのはZATっぽい制服を着た2人組だけであるが、どうにもこうにも頼りがいが無く、特にこれと言った見せ場もない。
所謂「ウルトラリンチ」や(いかに自分自身を殺した犯人とはいえ)泥棒3人組をまるでなぶり殺すような残酷描写といった内容にウルトラシリーズを見なれた者にとっては強い違和感なり反感を覚えるかもしれないが、「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の記事にあるようにこの作品がタイ人に馴染むように作られていた事やその当時の世相を考慮に入れる必要があり、現代の感覚であれやこれや語る事はナンセンスであることに注意しなければならない。日本向けはOPではささきいさおが歌っているが、原語版では気の抜けたような歌となっている。その他、日本語吹き替え版には尺の都合などでカットされている部分も存在する。
チャイヨープロ・円谷プロの双方の持ちうるノウハウをいかんなく発揮した作品であり、クオリティは侮りがたしである。しかし、その後に続いた「ハヌマーンと5人の仮面ライダー」のクオリティは(ry
また、メビウス以前におけるウルトラマンタロウが客演で登場した貴重な作品でもある。日本においても映画放映の後にビデオ化され、1990年代における関係悪化以前はレンタルビデオショップなどで割合に見かける事が出来た。現在では後述する権利上の問題から、日本国内におけるDVD化はおろか公式の場における各種媒体での紹介も憚られる状態である。かつて行われていた、何でもありなカオスぶりに定評のある円谷プロの4月1日企画においてもその名前が出てこなかった所にその境遇がうかがい知れる。なお、タイ国内ではDVDやVCDが多く流通していた。
ハヌマーンと5人の仮面ライダー
「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の続編として制作された作品である。現地においては「หนุมานพบ 5 ไอ้มดแดง (ハヌマーン ボッ ハー アイモッデーン)Hanuman pob Har Aimoddaeng」、つまり「ハヌマーンと5人の赤アリ野郎(=仮面ライダー)Hanuman and the Five Riders」である。
「五人ライダーVSキングダーク」の前半部分+後半部分新撮りとなっているが、こちらは日本語版は存在しない。そのはずで後半部分の新撮りの所は東映から許可をとっていないガチモノの海賊作品である。東映との契約では「五人ライダーVSキングダーク」のみであり、後半部分については違約金を払う事で解決を見た。
「ハヌマーン」の当該項目も併せてみて頂きたいのだが、とにかくこの作品は突っ込み所満載…というか突っ込み所しかない。
衝撃の内容その1―超展開の嵐―
これを見る前に言っておくッ!
おれは今このVCDをほんのちょっぴりだが視聴した
い…いや…視聴したのだがまったく理解できなかった…
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『5人の仮面ライダーが数発程度の爆発で
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ あっけなく全滅してしまった…』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも突然の事でわけがわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 原爆だとかプルトンロケットだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなぶっそうなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっとみみっちいものの片鱗を味わったぜ…
仮面ライダー1号&2号はカメバズーカの原爆にも耐え抜き、ライダーマンはプルトンロケットを爆発させてもなおタヒチにて生き抜く強靭な肉体を誇っているにもかかわらず、そこらにあるような爆弾で死んでしまった。微笑みの国で非業の死をしてしまった彼らの無念を感じたのかどうかはわからないが、何らの脈絡もなくハヌマーンがゴリ押しで登場、見事に死人を生き返らせてしまう。
???<「わけがわからないよ」
この他にも
- 特撮パートから突然地獄の描写。獄卒が裸の女性に槍をグサグサ(裸と言ってもおっぱいとケツ丸出し)
- キングダークは本来、呪博士が操る巨大ロボットにもかかわらず、人間サイズになって色もシルバー。その最期では赤い鮮血を吐き出している。
- 仮面ライダーやハヌマーンの話であるが、最後の場面は地獄で閻魔大王によって執行された泥棒3人衆の打ち首獄門(べったり血糊つき)
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『仮面ライダーは子供番組とタカをくくっていたら、
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ エログロで余裕で18禁だった』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか(ry
なお、こうした描写は現地の基準や文化に合わせたものである事を注意されたい
※現地では事故で死んだ人の遺体を特に修正する事なく新聞や雑誌に掲載しています
衝撃の内容その2―残念すぎるクオリティ―
- そこらにある雑草から怪人を作りだせる製造機をヴィルッド博士(前回は発狂して行方知れずとされた博士)が造り出したのだが、どう見ても宴会用のお面をつけたパンツ一丁の男。鶏や牛などがあるが、鳴き声はどう見ても鶏。
- 鳥や牛などの頭のよくわからない怪人を高床式の家に放り投げる場面ではその部分が逆回しにしているので、何故か倒れる場面で1人だけ椅子に座っていたようになる。
- 下半身が裸なので派手にアクションすると演者がダメージ受けてしまうので終始メリハリの無い殺陣。
- オリジナルではトランポリンがあったのでそれを使った空中回転やライダーキックを使ってたのに対して、新撮りにはそんなものもなく、ライダーキックも非常に貧弱である。
- バイクの仕上げが低クオリティで特にサイクロン号は紙を切って貼ったようなデザインでヘッドライトも色を塗っただけで非常にちんちくりんになっている。
- 「OPの珍走→一般車から煽られる」もそうだが、ラスト付近において無謀にも巨大キングダークにライダーブレイクしようとビルに上る手前、後ろから通りがかりの青いタクシーが写り込む。
- キングダークらしき銀色仮面の背中のチャックのカバー部がパックリ。ライダーも造形こそしっかりと似せているが、いかんせん質感が低く、色合いも異なっている。特にライダーマンに至ってはエラい事になっていた。
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ|
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『ライダーマンが
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 仮面ノリダーになっていた』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか(ry
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ
この他、着付けも適当で、しまいには口元がアンダーシャツで隠れる始末。
40年も昔の作品とはいえ、「マッハ!!!!!」や「トム・ヤム・クン!」で後に世界中に衝撃を与えた前人未到のアクションを世に発するタイ映画とは思えない仕上がりではある。とはいえ、ミニチュア部分はさすがに本分なのか、結構クオリティが高く、おそらくバンコクであろう街並みは非常にいい出来となっている。しかし、ここは壊すのが憚られたのか、それとも倒れた際にスーツアクターの負傷を防ぐ為なのか、建物が破壊された場面は無い。
余談
ちなみにこの作品の主役は「ハヌマーン」「仮面ライダーブイサン」である。
制作当時は「仮面ライダーX」がまだタイで放映されていなかった事が関係しており、知名度的にもV3を中心に据える方がいいと思ったのかもしれない。実際、仮面ライダーXを差し置いて、OPでは彼がいの一番に来ており、劇中でも彼はライダー軍団のリーダー的な立ち位置となっている。但し、主題歌は仮面ライダーXのものが採用され、日本語の旋律そのままに現地の歌手が裏声も高らかにタイ語で歌っている。
仮面ライダーV3のタイ語名は「アイモッドキアウ ブイサン(ไอ้มดเขียว V3)」であり、「緑アリ野郎」の意味である。V3の体に緑色の部分が多い所から名付けられた。
また仮面ライダーは現在は英語の名称 (Masked Rider) をタイ文字に当てたもの (มาสค์ไรเดอร์) が主流となっているが、放映当初はバッタとは関係ない「アイモッドデーン (ไอ้มดแดง) =赤アリ野郎」と言う名前であった。仮面ライダー1号のアンテナ部分が蟻そっくりであったことから名付けられていた。今日、タイ国内では「アイモッドデーン」は仮面ライダー1号、もしくは藤岡弘、を差している。さらに最近では「仮面ライダー」を直接タイ文字に置き換えた「คาเมนไรเดอร์」が広がりつつある。
この名称もだいぶ世代で違っており、「マスクドライダー」は最近の若い人たちが使うのに対して、「アイモッデーン」は30代以降などリアルタイムで見ていた人間が使う事が多い。言うなれば平成ライダーと昭和ライダーの違いの様なものとも思える。例として「マッハ!!!!!!!!」のDVD特典についていたトニー・ジャーのインタビューがある。彼は30代後半であり、子供の頃に見ていた日本の番組の中で「ウルトラマン」と「仮面ライダー」をあげているが、タイ語で答えている彼はウルトラマンを「ウートレメーン」と言ってるのに対して、仮面ライダーを「アイモッデーン」と言っている。
ハヌマーンと11人のウルトラマン
「ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団」がタイで上映されたときのタイトルだが、何故か「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」と映像が組み合わされて再編集されている。
現地における名称は「หนุมาน พบ 11 ยอดมนุษย์(ハヌマーン ボップ シィップ・エッ ヨッマヌッ)Hanuman pob Sib-et Yodmanud」、翻訳すると「ハヌマーンと11人の超人(≒ウルトラマン)Hanuman vs. 11 Ultraman」となる。
アメリカ合衆国でも「SPACE WARRIORS 2000 (The Year of the Monkey Wrench)」というタイトルで、米国の俳優に変更された上で上映された。
本作は円谷プロには無許可で編集・上映されたもののようであるが、当時は円谷皐が存命であったため、大いな問題にはならなかったようである。なお、ウルトラマン訴訟では「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」と同一作品(単なる再編集版)扱いとなっている。
PROJECT ULTRAMAN
チャイヨーオリジナルのウルトラマン作品。ウルトラマンミレニアム、ダークウルトラマン、ウルトラマンエリートという3人のウルトラマンが登場し、エヴァを思わせるシナリオとなっている。
2001年に裁判所よりウルトラマン制作の権利が認められて独自のウルトラマンを発表、2006年6月にタイと中国において「PROJECT ULTRAMAN」のタイトルで放送予定だった。
しかし、2005年にタイと中国双方で円谷プロに訴えられて中止され、2007年にはタイの裁判所で敗訴したことから円谷プロの許可を得ずに新作制作の権利が認められなくなってしまい、最終的に2009年にはタイ・中国双方で円谷プロが全面勝訴したため両国での制作が不可能となり、お蔵入りとなってしまった。
予告編のような動画や、ライブステージの動画が出回っており、ニコニコ動画でも閲覧ができる。
ウルトラマン訴訟
前記の通り、円谷プロとは訴訟合戦を繰り返してきたが、この顛末や先にあげた「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の内容から、特撮ファンの中にはチャイヨーへ強烈な嫌悪感を持つ者がいる。
元々は3代目社長である円谷皐が死去した半年後の1995年(平成7年)末頃に、チャイヨー側が「ウルトラマンの権利は自分たちのものであるという契約書がある」と主張し始めたことに始まる。対象は『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ジャンボーグA』『ジャンボーグA&ジャイアント』『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』の9作品。
円谷皐社長がワンマンで放漫な経営であったことから、円谷プロ側も一旦はその主張を信じてしまったために、25年近くにわたって国内外で泥沼の裁判沙汰に至ってしまったのである。
チャイヨー側の主張では、「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の使用権の支払いに「ウルトラマンタロウまでの番組を海外で使用できる権利」で当時の円谷プロ社長と契約したことから始まる。この時点において、円谷プロは懐事情が良くない状態であった事、チャイヨーと円谷プロの関係はこの時点では非常に良好であった事が根拠として挙げられる。
その社長の死後、この権利の行使を主張したチャイヨー側に対して、円谷プロ側はそれまでの社長の行動から一旦はその主張を信じて権利を買い上げようとするものの、チャイヨーの対応がおかしいことからこれまでの出資の状況などを詳しく調査した結果、契約書が無効であるとして争いとなった。
この間にウルトラマンに携わった人物がチャイヨー側の擁護に回ったり、チャイヨーが独自のウルトラシリーズ「PROJECT ULTRAMAN」を制作したりと、権利関係を始めとして色々と拗れた。2004年には円谷英明が社長として就任した円谷プロ側、2010年10月にはチャイヨーから権利を受け継いだユーエム社側も和解を模索するが結果として至らず、度々マスコミに取り上げられたこの係争は結果的に紆余曲折の末、2020年(令和2年)には円谷プロの全面勝訴として解決した。
しかし、このごたごたが続いたせいでタイを始めとしたアジアで非常に高い人気を誇るウルトラマンというコンテンツを収益の土台にする事が出来なかった事は90年代後半から2010年代前半までの同社に深く、そして暗い影を落としていた。円谷プロ側はその間に幾度かの裁判には勝ったものの元々製作費が高コストである為、かねてよりそれが経営の足かせにもなっていた。そんな中での10年以上の裁判ともなれば、ダメージが小さいはずもなく、さらに放漫経営などでさらに拍車がかかっていた。
他にもこの頃、円谷プロ内でお家騒動が勃発していたのである。訴訟の項目でチャイヨー側の擁護に回った人物の一人に故・成田亨というデザイナーがいるがこうした会社の姿勢や状況に対して辟易していたようであり、袂を分けて以降は死ぬまで円谷プロの仕事を行わなかった。これがあってか、チャイヨー擁護に回っていた。
特撮ファンを中心にチャイヨーを毛嫌いする人が多いが、チャイヨー側の言い分を(元とはいえ)内部の人間がある程度理解していた事は注目すべき点であり、社内の事情が裁判とは関係なしにダメダメであったと言わざるを得ない。
その後の経緯はご存じの通り、一族の女性問題といったスキャンダルが発覚したり経営不振に陥った末に一族経営を離れて、親会社が転々とした後に現在はパチンコ関係の会社のフィールズ傘下となっている(フィールズ51%、バンダイ49%)。追い出された円谷一族はバラバラになったが、円谷英明元社長などはソムポート氏らと共に活動している。
一方のチャイヨー側はこの係争の費用ねん出などが理由で経営不振となり、制作していたウルトラマン博物館もこれらの理由から途中で建設がストップしてしまった。そこに止めを刺すように記憶に新しい2011年のタイ大洪水。大きな被害のあったアユタヤにスタジオがあったチャイヨーはこの洪水で甚大な被害を受け、再起不能となった。そしてついにチャイヨーは廃業してしまった。
なお、タイ国内での権利は2008年2月に無効であるという判決がでたが、それ以外の権利は2008年12月24日に日本のユーエム社に譲渡している(と、言いつつ1998年にこの権利をバンダイに売却していたのだが……)。そのためタイ以外での裁判はユーエム社が引き継ぎ、ソムポートや円谷英明と組んで円谷プロと戦っていた。
「ウルトラリンチみたいなトンデモ設定の会社なんぞつぶれて当然」とか「他人のふんどしで相撲を取ったものだから倒産して当然」という声もあるだろうが、この係争自体が単純な良い悪いではなく、あまりに利害関係が多く入りすぎて収拾つかなくなった結果でもある。
2020年には円谷プロ側が完全勝訴していることから分かるように、契約書の偽造を行って円谷プロを騙そうとしたとほぼ断定出来るチャイヨーが悪いのだが、付け込まれるような放漫経営を長らく続けてきた円谷プロに問題が無かったとも言えず、単純に「円谷=善、チャイヨー=悪」と出来ない部分もある。
日本での訴訟
日本での著作権に関する訴訟においては2004年4月の最高裁判決で、円谷プロが契約書の内容を1996年に認めてしまっていることと、契約書に押されている円谷エンタープライズの社判が本物であることを理由として、円谷プロの全面敗訴となった。なお、契約書に対し筆跡鑑定や原本証明などは行われていない。
その後、2006年にチャイヨー側が損害賠償請求を起こすが、チャイヨーが1998年にタイ以外での海外の独占利用権利の放棄を条件にバンダイから1億円を受け取っていたことが2011年に発覚。2012年4月にユーエム社側の最高裁上告が棄却され、円谷プロの逆転勝訴となった。
このため、日本においては「ウルトラQ」から「ウルトラマンタロウ」の6作品に関しては、日本国内での独占利用権利を円谷プロが、タイ国内での独占利用権利をユーエム社が、タイ以外での海外での権利をチャイヨーから譲渡されたバンダイが持つ(2011年判決ではこれはチャイヨーとバンダイとの間の係争を避けるための訴訟放棄であり、ユーエム社が2014年に発表した解釈では制作権、複製権、著作権、商標権及び上記の権利の第三者への譲渡の権利をユーエム社が持ち、配給権、広告権及び商業上の目的のためにする複製の権利をバンダイが持つ)ということで法的には決着している。もちろん、これは日本国内でしか通用しない。
タイでの訴訟
タイでの訴訟においては、2003年の最高裁判決では、「ウルトラQ」から「ウルトラマンタロウ」の6作品と「ジャンボーグA」の日本国外における使用権はチャイヨー側が持つという円谷プロ側の敗訴となっていた。
その後2007年4月にタイの知的財産、国際貿易裁判所が、チャイヨーの訴えるウルトラマンそのものに対する著作権を認めず、チャイヨーが使用できるのはあくまでも前述の6作品であるという判決を出した。そのため新作である「PROJECT ULTRAMAN」は無許可制作物となってしまい、作成は不可能になった。またチャイヨーは「ウルトラマンコスモス」などのDVDも無断で販売していたが、これらも当然著作権違反となった。
さらに2008年2月、タイの最高裁はそもそもの契約書のサインと作品名が誤っていることから偽造であると認定し、ソムポート氏がウルトラマンの共同制作者であるという主張(ソムポートは初代「ウルトラマン」製作の際に、仏像をモチーフとしたヒーローを円谷英二に提案したとして、自身がウルトラヒーローの制作者と主張していた)も認めず、円谷プロの全面勝訴となった。その後、2020年9月21日にタイの最高裁において、1998年から2008年までにチャイヨーが得てきたライセンス料に対する損害賠償請求の裁判の判決がでて、タイ国内における裁判は全て終結した。
このため、タイにおいては、2008年の時点で日本国内外問わず全ての権利を円谷プロが持ち、タイ国内における旧チャイヨーの権利および、日本・タイ国外における旧チャイヨーの権利(ユーエム社、バンダイの権利)は無効であるということで決着している。タイ国内においては、円谷プロ制作の7作品だけでなく、共同製作の「ジャンボーグA&ジャイアント」「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」の著作権も円谷プロが持つ事となった。このため、無許可の「PROJECT ULTRAMAN」だけでなく、当時は許諾を受けていた「ジャイアント」「ハヌマーン」を使った商売も円谷プロの許可なくしてはできなくなってしまっている。
中国での訴訟
中国においては、チャイヨーがキャラクター商品の生産・販売権などについて広東省の裁判所に提訴したが、2009年10月に円谷プロ側の勝訴となった。
その後、円谷プロ側はユーエム社に対しキャラクター商品の販売停止などを訴えて北京市の裁判所に提訴したが、日本での最高裁判決と同様、2013年9月に契約書に押されている円谷エンタープライズの社判が本物であることを理由として、円谷プロの敗訴となった。
このため、中国においては日本の裁判判決の結果とほぼ同じ権利状況となっている。
それを受けて、2017年7月には広州藍弧文化伝播有限公司から「鋼鐵飛龍之再見奧特曼」(翻訳:ドラゴンフォース さようならウルトラマン)の製作が発表され、ユーエム社から正規のライセンスを受けた作品だとして2017年10月に劇場公開した。この作品について円谷プロは2016年から把握していたため警告文などを送り反発、2017年9月に前述の2社を対象として公開中止を訴えるも上映されてしまったことから一旦取り下げ、2018年2月に配給会社なども含む6社を対象として上海市の裁判所に改めて提訴した。この裁判は2019年1月に始まったが、広州藍弧文化伝播は訴訟中であるにも関わらず、2018年11月21日に続編のネットアニメ「鋼鐵飛龍2 奧特曼力量」(翻訳:ドラゴンフォース2 パワー・オブ・ウルトラマン)』の配信と、2019年1月18日には続編のアニメ映画「鋼鐵飛龍之奧特曼崛起」(翻訳:ドラゴンフォース ライズ・オブ・ウルトラマン)を劇場公開した。
しかし、ユーエム社は2019年3月に自身が起こしていた「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」のキャラクター商品権に関する訴訟を判決直前に取り下げ、中国におけるライセンスの主張を事実上放棄した。そのため、広州藍弧文化伝播側が主張を通すことはもはや困難であり、今後は中国本土における円谷プロの商品展開を妨げることはできないと考えられていた。
2020年6月30日、上海市における裁判で「広州藍弧文化伝播(ブルーアーク)が受けたユーエム社のライセンスが仮に本物であったとしても、それは過去作のものであり、新作を作る権利はない」という判決が下され、円谷プロの勝訴となった。
韓国・台湾・フィリピンにおいて
チャイヨーから権利を受け継いだユーエム社は2011年より韓国・台湾・フィリピンでの展開を行おうとするが、前述したようにチャイヨーが1998年にタイ以外の海外の独占利用権利の放棄を条件にバンダイから1億円を受け取っていたことが発覚したことから頓挫した。
アメリカ合衆国での訴訟
2018年(平成30年)4月18日にカリフォルニア中央区地方裁判所において、チャイヨーが提示した契約書は偽造であり無効という円谷プロ側全面勝訴の判決が出た。この裁判では「ディスカバリー」という両社の当事者や資料、通信記録などを長時間かけて丹念に調査分析を行う方式をとったことで、多数の新事実や新証拠が発見され、判決に至ったものである。
当事者の一人であるソムポート氏は米国での事情聴取を拒否し、契約書の原本も提出しないという、米国での裁判ではあり得ない行動を取った。さらに、チャイヨー社内には1976年以降にも新しく円谷と契約を結んでいた書類まであったことが判明。また、裁判において、ユーエム社側は自分たちが新作を製作する権利はないと判断していることが明らかになった。
まだ地裁判決ではあるが、円谷プロ側はこの裁判をこれまでのウルトラマン訴訟の集大成とし、ユーエム社側がこれを覆すことのできる証拠を提出し上告することはほぼできないだろうとみており、今後はウルトラシリーズの海外展開を積極的に進めるとした。
なお、円谷プロを追い出された円谷一族の円谷英明元社長は2018年時点ではチャイヨー側に付いており、今後も5年は裁判が続く上に、アメリカだけの結果で全世界には通用しないので、円谷プロは海外展開などできないから和解するべきと批判している。
ちなみに、この判決が出る直前に公開された映画「レディ・プレイヤー1」の原作小説ではウルトラマンが登場しているが、映画ではRX-78-2ガンダムに差し替えられている。これは当時まだ権利問題が解決していなかったためである。
2018年5月7日、この判決を不服としてユーエム社は控訴するも、2019年(令和元年)12月5日の控訴審でも一審判決が全面的に認められ円谷側が勝訴。2020年(令和2年)3月4日の上告期限までにユーエム側が上告することはなかったため、ついに円谷プロダクションの全面勝訴で長年の訴訟は幕を閉じることとなった。なお判決において、ユーエム社には円谷プロへ賠償金400万ドル(約4億円)の支払いが命じられている。
そのため、ウルトラシリーズの海外展開に障害はなくなり、2019年11月23日にはマーベル・コミックスとのコラボレーションもはじまるなど、すでに新展開は広がっている。
ニコニコ動画では…
かくて権利的にも宙ぶらりんであった「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」は放置状態であり、今持って日本語吹き替え版が削除されていない状態となっている。チャイヨー制作の他の作品もいくつか閲覧できる状態にはある。
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関連項目
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