ヤマニンウルス(Yamanin Ours)とは、2020年生まれの日本の競走馬である。
斉藤崇史厩舎(栗東)所属の鹿毛の牡馬。馬名の由来は「冠名+クマ(仏語)」。
JRA平地競走の最大着差記録を持っている。
主な勝ち鞍
2024年:プロキオンステークス(GⅢ)
2025年:東海ステークス(GⅢ)
2020年5月21日、錦岡牧場にて父ジャスタウェイと母ヤマニンパピオネとの間に生まれる。
父ジャスタウェイはアニメ『銀魂』の脚本を担当していた脚本家の大和屋暁氏の所有馬であり、馬名も銀魂に登場するアイテムから命名されたいわゆる珍名馬。名前のインパクトもさることながら、2014年ドバイデューティーフリーでは2着に6と1/4馬身差をつけてレコードを2秒更新する圧勝劇を見せ、国際レーティングで日本初となる単独1位をとなった世界的名馬である。
母ヤマニンパピオネは中央の芝・ダートで4勝という成績で引退時のクラスは1600万下であった(降級制度があったため)。繁殖牝馬としては産駒に中央で勝ち上がれる馬を複数産んでいる。
三代母*ワンオブアクラインは米GIオークリーフS(現在はシャンデリアSに改称されGIIに降格)勝ち馬で、父は名種牡馬Danzigという良血馬。繁殖牝馬として日本の錦岡牧場に輸入され13頭を出産している。産駒から重賞馬こそ出なかったものの、うち12頭が中央で勝ち上がるという安定した繁殖成績を誇った。彼女の産駒すべてがヤマニン冠であるが、孫・曾孫の代もすべてヤマニン。まさにヤマニン軍団と錦岡牧場の礎を築いた名牝である。
母父は*スウェプトオーヴァーボード。アメリカで短距離とマイルのG1をともにレコードで勝った馬で、日本で種牡馬入りしレッドファルクスやオメガパフューム、母父としてもグローリーヴェイズなどを送り出した。
半弟に2025年の北九州記念を制したヤマニンアルリフラ、半姉にそのレースで4着に入ったヤマニンアンフィルがいる。
錦岡牧場は水色に赤の三本輪の勝負服と「ヤマニン」冠で知られる土井一族が経営しており、ヤマニンゼファーを輩出した牧場としても知られる。本牧場で生産された馬の多くが土井一族の所有馬となっており、本馬のオーナーも例に漏れず土井肇氏である。
誕生のときは細く手のかからない印象に残らない馬とされたが、9月には別馬と見紛うくらいに成長した。
ヤマニンウルスを管理することになった斉藤崇史調教師は2016年に開業し、2018年にノーヴァレンダの全日本2歳優駿で初のGⅠ級制覇。クロノジェネシス、ジェラルディーナの調教師としても知られており、2020年以降リーディング20位以内を維持している一流トレーナーである。また同厩舎にはJRA重賞最大馬体重勝利(594kg)の記録を誇るドンフランキーも在籍している。
デビュー戦は2022年8月20日の小倉6R、2歳新馬(ダート1700m)。鞍上はこの年デビューし、前評判通り勝ち星を積み上げていた新人今村聖奈を迎えた。ヤマニンウルスは単勝2.7倍の1番人気に支持されるが、本馬含め4頭が単勝オッズ10倍を切る混戦模様。また、枠入り中にテングクラブがゲート内で転倒するアクシデントで発走時刻は7分遅れた。
発走遅延もあったが、ヤマニンウルスは好スタートを決め2番手を追走。3コーナーに入ると進出を開始し、あっという間に先頭を抜かしそのままぐんぐんと加速。最終直線に入ってもスピードは落ちることなく後続との差はどんどん離れていくばかり。カメラの映像が客席まで引かないといけなくなるほど差をつけたヤマニンウルスは2着に4.3秒差(21馬身差)つける圧勝劇を見せた。これはJRA平地競走の最大着差記録を0.7秒更新するものであり、1:44.3という走破タイムも2歳ダート1700mのJRAレコードである。なお、通常このレースでは1着馬に6秒以上離されるとタイムオーバーとなり出走制限が課されることになっているが、レコードタイム成立によりこのルールは適用されなかった。出走した15頭中、11頭がこの救済措置の対象となったことからも本馬の並外れたスピードがわかるであろう。
鞍上の今村聖奈はこれがGI騎乗が解禁される31勝目であり、節目となる勝利をど派手に演出してみせた。
新馬戦の衝撃はレースから約2ヶ月後の11月に再び訪れた。ヤマニンウルスに4.3秒差つけられ2着となったゴライコウが門別の交流重賞、JBC2歳優駿(JpnⅢ)を優勝したのである。この勝利によってヤマニンウルスの評価はさらに高まることとなった。
ちなみにこの時の馬体重は536kgで、大きな馬ではあったものの特筆するほどの馬体重ではなかった。
陣営が2戦目に見据えたのは11月のカトレアステークス(OP)であったが、頓挫により白紙となった。その後は放牧に出され長期休養し、復帰は翌年春まで待つこととなる。
2戦目は4月23日の京都6R、3歳1勝クラス(ダート1800m)。鞍上には新たにレジェンド武豊を迎え、単勝オッズ1.2倍の圧倒的一番人気に支持された。しかしながら、一頓挫挟んで8ヶ月ぶりの実戦、前走から斤量6kg増(50kg→56kg)に加え、馬体重+24kg(560kg)と不安要素も残っていた。
レースでは前走同様2番手につけたが、早仕掛けすることなく4コーナーまでポジションをキープ。楽な手応えで4コーナーで先頭に立ち、直線でジョッキーが促すと後続をするすると突き放す。最後には軽く流す余裕を見せ2着に6馬身差つける快勝劇を見せつけた。久々のレース、体重と斤量の大幅増加という不安要素に加え、最後は流したにもかかわらず、勝ちタイムは前日の同条件で行われた4歳以上2勝クラスのタイムより1秒以上早かったのである。
レース後、武豊は「正直、調教に乗った時に大丈夫かなと思いました。まだ体がしっかりしていませんし、フォームも定まっていません。それでもこれだけやれるのですから大したものです。和製フライトラインになってもらいたいですね」
とコメント。数多の名馬に騎乗した武豊がわずか6戦で2着馬に合計71馬身差つけたアメリカの伝説的名馬になぞらえて期待感を示したのである。
武豊のコメントは同時にこの馬の体の不安定さ、定まらないフォームという弱点も明らかにした。2戦目がずれこんだのもそのためであると思われ、斉藤調教師も「様子を見ながらやっていきたいと思います」
と今後も慎重に調整を行うことを示唆している。
3戦目となったのは11月12日京都8Rの3歳以上2勝クラス(ダ1900m)。鞍上は引き続き武豊が内定していたが、10月29日に負傷したためC.ルメールが代打で騎乗した。ヤマニンウルスは2番人気以下を単勝オッズ2桁に抑え込む圧倒的一番人気(1.2倍)に支持され、馬体重は前走比+16kg(576kg)であった。
レースはやや出負け気味となったが、二の脚ですぐに2番手に浮上。残り300mで逃げたテーオーサンドニを捉えるとノーステッキで3馬身半差で圧勝。能力の違いをまたも見せつける形であった。
今まで同様冬眠長期休養に入るかと思われたが、年明け1月15日の雅ステークス(3勝クラス・京都ダ1800m)への出走が発表された、鞍上は留守を守ったルメールから乗り戻り武豊騎手。事前販売のオッズは1.1倍で推移するも、多くのダート馬が跳ね返される「壁」の階級である準オープン戦ということもあり最終的なオッズは単勝1.3倍へと落ち着いた。これに3勝クラスで3連続3着の2番人気の逃げ馬ミラクルティアラ4.4倍、3勝クラスで馬券内が2度ある3番人気バハルダール11.0倍が続いた。なお馬体重は前走からさらに増えて+6kg(582kg)であった。
レースでは2番人気のミラクルティアラが出遅れる中、まずまずのスタートから二の脚で2番手につけレースを運ぶ。1000m通過62.9という比較的ゆったりとしたペースでレースは進み、4コーナーに入るときには既に先頭。武豊騎手もほぼ追わず、それどころか電光掲示板をちらりと見る余裕さえ見せる。そのまま馬なりで突き放しにかかり、川田将雅騎手が全力で追うバハルダールが猛追を見せるも流して1馬身離してゴールイン。砂の大器、4戦4勝でのオープンクラス入りとなった。なおレース後、管理する斉藤崇調教師は過去最高馬体重も太くはないとし、さらなる体重増の見込みを示した。
次走は5月、平安ステークス(GⅢ・京都ダート1900m)で重賞初挑戦の予定だったが、帰厩早々に態勢が整わないとして回避(後に裂蹄を発症していたと明かされている)、プロキオンステークス(GⅢ・小倉ダート1700m)に先延ばしとなった。
こうした調整の遅れは勿論、重賞の好走歴のある対戦相手、とりわけ逃げ・先行で実績を上げた馬が多くハイペースが予想される中、ここまでのレース内容が全て緩い流れで2番手からの抜け出しであったため未経験の展開に対する不安、などといった要因から単勝の最終オッズは1.7倍と圧倒的1番人気ではあるものの比較的高めに落ち着いた。
レースは五分のスタートを切り道中はブルーサンがハナを切って飛ばす中バスラットレオンに次ぐ3番手で進め、終盤まで全くペースが緩まない中4コーナーで前2頭を捉え先頭に立ち、直線では2着スレイマン以下を寄せ付けず3馬身差で完封。終わってみればこれまで通り余裕の内容、無傷の5連勝であっさり初の重賞タイトルを獲得した。また、馬体重も+2kg(584kg)と過去最高を更新しており、JRA重賞勝利馬の最高体重記録としては昨年同レースを制した同厩舎の先輩ドンフランキーに次ぐ第2位にランクインした。
レース後、斎藤崇調教師は「まだ成長の余地はあります」「年末のGⅠに行きたい」とコメントし、主戦の武豊も「今まで乗った中で一番いい雰囲気」「もっと強くなる」と口を揃えてさらなる活躍を示唆した。なお、ヤマニンウルスはレース後に放牧に出されることになった。
「順調」に事が運ぶのであればチャンピオンズカップにてGⅠ初挑戦になる見込みだったが、ここで問題となってきたのが賞金である。チャンピオンズカップでのヤマニンウルスの出走馬決定賞金は7100万円[1]。例年であれば出走可能な賞金ではあるが、3歳ダート路線の整備などの様々な要因が絡み出走ボーダーはたちまちインフレ。賞金順での条件をクリアできずヤマニンウルスはスレイマン(9150万)・テーオードレフォン(8500万)に次ぐ補欠3番手となり、他の馬の回避を待つことに。
結局回避馬は2頭出た[2]ものの、ヤマニンウルスは補欠の枠を脱することが出来ず、第二候補として挙がっていた名古屋大賞典(JpnⅢ・名古屋2000m)に出走することになった。鞍上は武豊の予定。こちらも補欠登録だったが無事に繰り上がり出走が叶った。登録馬にはノットゥルノを初めとしフォーエバーヤングに迫ったミッキーファイト、北の王者ベルピットに高知の新生シンメデージーといった有力馬が集結。その中でヤマニンウルスは単勝1倍台の1番人気に支持された。ちなみに、馬体重は+7kg(591kg)とまたまた過去最高を更新している。
レースでは積極的に逃げるノットゥルノの後ろで控える形となり、ミッキーファイトやベルピットとともに前方集団を形成してレースで初めて揉まれることに。そのせいか、終盤の手応えが悪くなって抜け出せず、ミッキーファイトの6着に敗れた。これがヤマニンウルスの初めての敗北であり、デビューからの連勝は5でストップしたほか、賞金の加算にも失敗した。
陣営は年明け初戦にアルデバランステークス(OP)を目標に設定した。しかし、このレースも除外されてしまう。
3(4)歳以上のオープン競走では、「オープン馬のうち8節以内で前走3着内だった馬」、それに続いて「出走間隔が長いオープン馬」という順序で出走の権利が与えられる。ヤマニンウルスは前走が6着で最初の条件に当てはまらず、ヤマニンウルスよりも出走間隔が長かった(中8週以上)馬が多数出走表明をしていたため、除外となってしまったのである。ちなみに、これがリステッド競走だった場合、出走馬決定賞金順に出走が決まるため、出走できた可能性が高い。
そこで陣営は代わりに小倉大賞典を選択。かねてより試したかった芝レースを走らせることにした。ただし、主戦の武は同日にサウジアラビアで騎乗するため、藤懸貴志へと乗り替わりになった。
初芝、トップハンデ(58.5kg)、乗り替わりという懸念点がありながらも、一時は単勝1番人気まで推され、最終オッズは6.4倍の3番人気となった。なお、馬体重は+6kg(600kg)と大台を突破した。
レースではやや出負けするスタートだったものの、単独2番手につける先行策をとった。逃げるセルバーグは前半1000mを58秒5というハイペースで後続を揺さぶる。ヤマニンウルスは4角からスパートをかけて勝ちパターンに持ち込もうとするが、先頭との差は縮まらず、早めに仕掛けたこともあって直線半ばで失速し、11着に終わった。
陣営は次走にコーラルステークス(OP)を選択。鞍上は斎藤厩舎に所属する団野大成。これまで1800m前後を使っていたヤマニンウルスにとってはかなりの距離短縮であったが、メンバーの中では実力上位と評価されて単勝1番人気に支持された。
しかし、芝スタートで躓き、中団で馬群に揉まれる展開に。4コーナーでは内にも外にも馬がいて抜け出せず、直線半ばでようやくスパートをかけられたが、前が止まらず3着となった。
ファンの間では序盤の躓きと距離不足が敗因で、騎手は悪くないという意見が多い一方、斎藤師は「1400mがどうとかではなく、今日の乗り方では駄目ですね
」と団野の騎乗批判と思しきコメントを残した。
その後も鞍上を武豊に戻して翌月のアンタレスステークスに出走するが、7着に敗れ連敗を喫した。
そこから休養を挟み、7月の東海ステークスに出走。連敗続きの打開策としてブリンカーを装着したところ、調教での動き・反応共に改善されていった。
レースでもブリンカーを装着して出走。いつも通りの先行策からじわじわと位置を上げていき、早め3コーナーからスパート。直線に入ってすぐ先頭に立つと上がり3Fを2位タイの足で寄せ付けず2着に3馬身半差をつけゴール。1年ぶりの重賞制覇を果たした。
ゴールの瞬間ガッツポーズしていた武豊は「いいときのこの馬の感じが戻ってきていたので、自信を持って先頭に立ちました。ポジションはどうなるか分からなかったですが、もまれずに先行できればと思っていました。久々にこの馬らしい走りができましたし、この馬は走ると改めて思いました」とコメント。
| ジャスタウェイ 2009 鹿毛 |
ハーツクライ 2001 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| アイリッシュダンス | *トニービン | ||
| *ビユーパーダンス | |||
| シビル 1999 鹿毛 |
Wild Again | Icecapade | |
| Bushel-n-Peck | |||
| *シャロン | Mo Exception | ||
| Double Wiggle | |||
| ヤマニンパピオネ 2008 芦毛 FNo.[10-d] |
*スウェプトオーヴァーボード 1997 芦毛 |
*エンドスウィープ | *フォーティーナイナー |
| Broom Dance | |||
| Sheer Ice | Cutlass | ||
| Hey Dolly A. | |||
| ヤマニンメルティ 1996 黒鹿毛 |
*ジェイドロバリー | Mr. Prospector | |
| Number | |||
| *ワンオブアクライン | Danzig | ||
| Barely Even |
クロス:Mr. Prospector 4×5(9.38%)
ワンオブアクラインの半姉Sulemeifの産駒にビッグバイアモン・スティルインラブ兄妹の母*ブラダマンテとゴールドアクターの母父キョウワアリシバがいる。
にて「思った以上にやり過ぎたところがあり、その後、時間がかかりました」と間隔を開いて出走せざるを得なくなった理由は新馬戦にあると述べており、また武・ルメール両騎手へ乗り替わりの理由については「大事に乗ってくれると思いますから」
と話している。ちなみに今村騎手が斉藤崇史厩舎の馬に騎乗する機会は、ヤマニンウルスの新馬戦から間もない22年10月を最後に絶えている。▶もっと見る
掲示板
359 ななしのよっしん
2025/08/02(土) 08:25:30 ID: TWHV+elsjc
タイム良かったし少なくともスペックだけで言えばステージ上げたら全く勝負にならない馬、って感じでもなさそうなんだけど⋯雑に走らせても強い馬では決してないからなぁ
360 ななしのよっしん
2025/09/25(木) 15:41:59 ID: 7ULEWZRZB2
体質はだいぶマシになって来たが、それ以外も注文が多い馬ではあるからな
まともに走れば強い方なのは間違いないが
361 ななしのよっしん
2025/09/27(土) 12:49:31 ID: C/IWyt3MIV
強い方というか最強
万全ならフライトライン級というキャッチフレーズが冗談でなく過小評価に聞こえるレベル
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/16(火) 12:00
最終更新:2025/12/16(火) 12:00
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