扶桑皇国とは (フソウコウコクとは) [単語記事]

扶桑皇国（ふそうこうこく、Empire of Fuso）とは、「ワールドウィッチーズ」シリーズに登場する国家である。

アニメ『ストライクウィッチーズ』『ブレイブウィッチーズ』において、物語のはじまりとなる地。

概要

大日本帝国をモデルとする、ユーラシア大陸東端の海洋国家。国旗は「白地に赤い日食」、国章は桜花紋。国籍マーク（軍用機ラウンデル）は「白地に太陽と月」。現実世界においては「扶桑」は中国から見て東の海中にある世界樹のようなもので、毎朝太陽を作り出すと言う伝説がある。そこから転じて「日出づる国」日本の雅称とされている。

山地の多い諸島国家で、土地ごとの文化・風俗的な違いが大きく、豊富な自然を崇拝する八百万信仰が発達したほか、米と海洋資源を中心とした食文化でも知られる。小型精密産業に長ける凝り性な民族性にして独自の呪術体系を持つウィッチ大国であり、科学と魔法の両面に優れ、海洋貿易国家としての進取の精神に基づく国際性と島国の閉鎖性かもたらした固有の文化の二面を併せ持つ、独特な大国といえよう。

政治的には立憲君主制だが、諸侯からなる議会の権力が大きく、やや連邦制の傾向もある。直接の描写はないが「皇国」の文字から考えても、天皇を国家元首に戴いた国のようである（『ストライクウィッチーズ零』において「御前会議」「帝の代理」などの表現があり、『スオムスいらん子中隊ReBOOT!』には「詠宮龍子内親王」が登場する）。

地理

北東アジアに島弧状に伸びる国土を持ち、四方を海に囲まれている。南北に長い国土のため、北方は寒冷、中央部は温暖湿潤と、地域による気候の差異が大きいことが特徴。欧州より全体的に寒冷ではあるが、初夏には梅雨とよばれる雨期があり、夏季には高温多湿である。主要都市としては東京のほか、京都、安土などが挙げられる。その他の要港として、横須賀、佐世保などが存在する。

列島のほか、南洋島（パシフィス島）という島を南方に領有している。日本列島よりも面積が広く、動植物も豊富ながらほぼ無人というまことに好都合な島で、17世紀以来、海洋国家扶桑の海洋進出の策源地として入植・開発が進められ、新京と称する都市を持つ。

いっぽう、海外領土としては浦塩などを中心にシベリア沿岸を勢力圏に組み込んでいる模樣。歴史上では北リベリオン大陸西海岸一帯を植民地化していた（のちの瑞穂国。南北戦争後、統一国家としてリベリオン合衆国が成立）。なお「スオムスいらん子中隊」等初期の作品では、中国大陸方面は海没し巨大な湾と化していたが、アニメ以降は「荒漠地帯」とのみ扱われている。

歴史

16世紀頃には末期まで長く戦乱が続いていたが、1582年の本能寺の変を経た織田信長が1588年に統一政権を樹立。折から欧州との接触が拡大するなか、海外進出が積極的に進められた。中でもネーデルラントが傭兵に扶桑武士団を用いたことで、同時期に東アジアへと進出したブリタニア連邦との衝突の経験で造船・航海等の技術が向上する余慶にあずかり、太平洋への武士団の進出が促進されることとなる。

なかでも太平洋上の南洋島の確保と北リベリオン大陸への植民（1620年に瑞穂国を建国）が大きく、両者ともに多くの有力大名・武士団が入植して太平洋の航路を固めた。インド方面では1676年、1683年と2回のブリタニア扶桑戦争が生じたが、両国ともに正面戦争に益なしと認め、むしろ海上貿易国家の連携と経済圏の統合による利益が重視されたことで1699年に扶武同盟（扶桑、ブリタニア同盟）が成立。以来両国は密接な同盟関係を築き、七大洋をまたぐ貿易大国へと雄飛する原動力となった。

やがて欧州で魔力革命（1765年）が起きると、扶桑でもすぐに魔法力と科学の融合が試みられるようになり、魔法科学分野と素材加工技術に一日の長を持つ一大経済大国へと発展していった。1867年には政治制度を議会制へと移行し、近代国家として現在に至っている。

軍事力

海洋国家であることから陸海両軍でも海軍に重点を置いており、特に航空戦力を多数有している。空軍は独立軍種としては存在せず、陸海軍がそれぞれに航空部隊を有している。ブリタニア連邦、リベリオン合衆国、帝政カールスラントなど欧米列強との技術交流もさかん。

海軍は航空母艦に注力しており、36,500t級の赤城型（＜赤城＞、＜天城＞。ほか2隻を中途でカールスラントに売却）、25,000t級の蒼龍型（＜蒼龍＞、＜飛龍＞、＜翔鶴＞、＜瑞鶴＞）、最新鋭の大鳳型と、三世代の大型空母を運用する空母大国である（ほかに小型空母として＜鳳翔＞、龍驤型2隻、千歳型2隻、犬吠型など）。戦艦も紀伊型戦艦（＜紀伊＞、＜尾張＞、＜駿河＞、＜近江＞）、最新鋭の大和型戦艦など優秀強力な艦艇を多数有し、それはもう浪漫溢れる海軍史を辿っているようである。

艦艇全般において、長大な航続距離と高い索敵能力が特徴とされる。欧州の戦地までの支援輸送に長距離の海上護衛を要するため、護衛の任につく小型空母のほか高雄型のような各種の巡洋艦や鵜来型などの海防艦、＜明石＞、＜三原＞といった明石型工作艦、さらには補給と奇襲を主任務とする巨大な強襲潜水ウィッチ母艦である伊四〇〇型潜水艦といった艦艇まで取り揃えている。

航空兵器の面では、なにより現行のストライカーユニットを確立した「宮藤理論」を生み出した国として名高い。生産についても、総合兵器コングロマリットたる宮菱重工業、世界有数規模の航空兵器メーカー長島飛行脚、水上機に強い山西航空機、カールスラントと連携した液冷式で知られる川滝航空機工業など、錚々たる民間メーカーが揃っている。

ネウロイ大戦での活躍

近代に入ってから1904年の扶桑近海での「怪異」発生、映画『扶桑海の閃光』で陸軍ウィッチ隊が一躍脚光を浴びた1937年の扶桑海事変と、本土周辺での「怪異」相手の戦役は幾度か生じてはいるものの、第二次ネウロイ大戦にあっては基本的にリベリオン合衆国とならぶ後方国家である。ただし、大陸方面より大型ネウロイの散発的な襲撃はあるようで、まったくの銃後というわけではない。

ネウロイとの戦いの主戦場である欧州諸国に対しては当初から積極的に派兵・支援を行っているほか、北アフリカ戦線、中東ペルシア、ウラル戦線など、全世界的に部隊を派遣している。補給面での貢献も大きく、カールスラントのストライカーユニット、メッサーシャルフ Bf109の魔導エンジンのように扶桑でのライセンス生産品が開発元国の機材に供給された事例もある。艦艇についても、大量建造された鵜来型海防艦のなかでブリタニア海軍へと供与された艦も存在した。

実戦においては、大戦序盤にバルト海沿岸の軍港リバウに拠点を置き、東欧内陸の前線まで長駆進出した海軍ウィッチ部隊リバウ航空隊の活躍が著名で、映画『リバウの翼』（扶桑映画製作、松多宗四郎監督・円山英一特技監督）で知られる。1942年のマルタ島救援作戦には第八艦隊を送った。1945年のフレイア―作戦には空母2隻を中心とする“グリゴーリ空母部隊”を編成・派遣、同年の“オペレーション・マルス”では作戦の中核として“援号作戦”を展開、戦艦＜大和＞、空母＜天城＞などの主力艦を投入している。