イフリート(MS-08TX Efreet)とは、アニメ『機動戦士ガンダム』の複数の派生作品に登場するジオン公国軍の人型ロボット兵器 / 人型機動兵器、ジオン公国軍のモビルスーツ(MS:Mobile Suit)である。
その形式番号が示す通り、MS-07グフとMS-09ドムの間に開発されたモビルスーツ。設定自体はMSVの頃から存在していた。ただし、映像作品への出演機会には恵まれず、初出は1995年のスーパーファミコン用ゲーム『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』のゲームオリジナルMSであり、『機動戦士ガンダム』本編には登場しない。数多く存在する外伝作品の先駆けでもある。
ジオン地球攻撃軍が独自に設計し、ツィマット社が開発した珍しい経緯を持つ。イフリート同様に、前線部隊が出先で設計・開発した機体にライノサラスがある。開発時期については不明瞭な点が多い。ただ10月9日の時点で、ヘンリー大尉が受領したイフリートが実戦投入されている事から、地球降下作戦直後(3月頃?)には設計が始まっていた可能性がある。
優れた格闘性能とホバリング機能を持ち、その能力は差し詰めドムとグフを組み合わせた感じである。顔つきも丁度ドムとグフを足した具合となっている。地上専用だが機体性能は良好で、実際ヘンリー機はガンキャノン2機を秒殺する戦果を挙げている。近接戦闘能力に至ってはグフをも凌駕すると伝えられる。高性能ではあったが、ジオンの官僚が宇宙主義だった事と、生産性が低い事がネックとなり量産化は見送られた。一方、マ・クベ大佐が専用機を作らせて保有していたところを見るに、機体の評価は決して悪くなかったと思われる。
生産機数は試作機のみ8機とされ、その内4機がゲームや映像作品に登場している。その4機はいずれも別仕様の機体であり、多くは特殊部隊に配備され武装や機体性能も大きく異なるものとなっている。
MS-08系の機体としては、イフリートとは別に“YMS-08A 高機動型試作機”が存在する。しかし、こちらは陸戦型ザクⅡの後継機としてグフとその座を争って選に漏れた機体であり、直接的な繋がりはない。イフリート自体B-CLUB誌で地球侵攻部隊が独自に設計開発したと書かれていたり、双葉社の書籍ではツィマッド社製(ドムやヅダでおなじみ)であると書かれている。
『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』に登場。後の作品に登場するバリエーション機とは異なり、カスタマイズはほとんどされていない。この機体は、試作機を改修した四号機。兵装としてはショットガンと実体の専用ヒートサーベル(ゲームによってはヒートソード明記)を装備している。ジオン系MSには珍しく頭部にバルカン砲らしきものがあるが、ゲーム本編未使用で武装にもバルカン砲の説明は無い。
作中では、キシリア暗殺の嫌疑を掛けられて地上に左遷されたヘンリー・ブーン大尉の乗機として登場。犯罪者で構成されたウルフ・ガー隊を率いて中央アジア方面部隊に属した。オデッサ作戦に備えて移動する連邦軍を迎撃したが、敗北。逃避行の過程で本隊からはぐれたウルフ・ガー隊は、砂漠の中にある連邦軍の補給基地を発見。物資確保も兼ねて攻撃を仕掛ける事にした。物資の奪取には成功したものの、補給基地は僻地にある割には異様に防備が堅く、戦いを重ねていくうちに部下を次々に失っていく。そして敵基地の中には新型モビルスーツであるガンダム・ピクシーが鎮座していて、幾度と無くイフリートと干戈を交える。実は、ヘンリー大尉はピクシーの破壊を極秘裏に命じられており、本隊からはぐれたのも全て計算のうちだった……。
原作の『0079』では敵側での登場だったため、操作は不可能。しかしリメイク作品『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』では逆にウルフ・ガー隊視点となり、イフリートの操作が可能。その際に発煙弾を使って撤退する場面が描かれた。最終的にはピクシーに勝利したとも、敗北したとも言われている(0079はマルチエンディングであり、双方のエンディングが存在する。一方でサイドストーリーズでは敗北ルートで固定)。
『戦場の絆』では近距離戦型機体として登場。複数種類のショットガンによる範囲攻撃が特徴的。『Gジェネ』シリーズでも近距離戦用MSとして説明されているが、『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』において「汎用機ながら、近距離戦闘に適してる」と書かれており、ドムのジャイアント・バズが使用出来たり、なぜかグフのヒートサーベルを使っていたりと微妙に設定と異なる。
『ギレンの野望』ではプレイヤーがギレンなので、制式化する事も可能。地上でしか使えない欠点はあるものの、機体性能は良好。地上専用機だけあって地形適性は最高、燃費も良いという破格の性能を誇る。開発に必要なMSレベルは7と、比較的早期に投入できるのも魅力的。ジオン第一部では一線級の機体である。格闘値の高いパイロットを乗せて、指揮官用にするのがベストか。
立体物としてはバンダイの“GUNDAM FIX FIGULATION ZEONOGRAPHY”にてMS-07B3グフ・カスタムとのコンパチ仕様で発売された。こちらでは後述のイフリート改と同様、ヒートサーベルを2振り装備する仕様となっている。ちなみにグフ・カスタムのヒートソードとは、鍔など細部の形状が異なる。この機体の立体物ではこれのみで、ガンダムピクシー同様プラモ化(ガレキ除く)はされていない。
『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』に登場。
EXAMシステムを搭載したジオン系唯一のMS。頭部に同システムと冷却システムを搭載しているため、他バリエーション機と比較してそのサイズが肥大化している。
EXAMシステム起動時、即ち対ニュータイプ戦闘時において、高い機動性が要求されたため、スラスター推力やジェネレーター出力も強化されている。カラーリングはEXAM搭載機に共通する青だが、両肩を搭乗者のニムバス・シュターゼンの趣味により赤く塗装されている。
ベース機としてイフリートが選ばれたのは、EXAMシステムに追随できる機体が当時ジオン軍にはイフリートしかなかった為。しかし、 EXAMを開発したクルスト・モーゼスは、イフリート改の性能に不満を感じていた為、連邦へ亡命し、ブルーディスティニーを開発するに至っている(クルストにとっての敵はニュータイプであり、その為連邦・ジオンという枠組みに囚われなかった。また、EXAMはニュータイプを殲滅する為の手段として彼が開発した物である)。
他のMSのようにマシンガンやバズーカを携行することはなく、ヒートサーベルを二刀流で使用する。また、射撃武装は両脚部のミサイルポッドと両腕部のグレネードランチャーのみとなっている。
作中ではブルーディスティニー1号機との交戦の末、相討ちとなる。
『戦場の絆』では格闘型機体として登場。サブ射撃に格闘武器を選択することで通常の格闘と合わせて6連撃を繰り出すことができ、アーマー値減少によってEXAMが発動した状態ではアーマー値の低い敵機ならワンコンボで撃破できる爆発力を持つが、機体性能面は癖が強い。
長きにわたり立体物に恵まれないイフリートシリーズだったが、2016年4月についに本機プラモ化。それまで立体化の難しかった機体を積極的に立体化していく1/100のREシリーズでのキット化となった。
『機動戦士ガンダム戦記』(PS3版)に登場。ナハトはドイツ語で夜を意味する。レーダーに映らなくなるジャミング機能・ステルス性能を強化した機体であり、連邦軍のパイロットたちが恐怖した。カラーリングも夜間戦闘時の低視認性を重視した紫色(設定画では黒に近い)となっている。装甲形状も細部がイフリートとは異なる。
武装は忍者刀のようなコールドブレードと投擲用のコールドクナイ、腕部に装備された籠手状の三連装ガトリングガンとなっており、近接戦闘を重視した仕様となっている(ゲーム開発スタッフによると忍者という機体コンセプト)。ジェネレーターやスラスター出力なども強化されているが、あくまで地上戦用の機体である為、水中や宇宙での運用は不可能。
一年戦争当時にマ・クベ主導で開発されていた機体だが、戦争終結後に地球連邦軍に接収される。戦後、ジオン軍残党インビジブルナイツ隊長、エリク・ブランケ少佐により奪取され、ジムを圧倒する活躍を見せる。その後は同部隊により運用されることとなるが、インビジブルナイツが宇宙へ上がる際に基地へ放棄された。
最期はクリスト・デーア整備長が搭乗して連邦軍の大部隊へ特攻を試みるも、一機のジム・コマンドの妨害によって阻止され、共にアデン基地の自爆に巻き込まれて消滅する。件のジム・コマンドに搭乗していたのは、皮肉にもクリストの妹であるタチアナ・デーア(シェリー・アリスン)だった。
『戦場の絆』では、静止・歩行中は敵のレーダーに映らなくなる特性を持った格闘型機体として登場。後のアップデートで敵のロックオンを無効化するジャミングが武装として追加されるなどトリッキーな機体となっている。
『機動戦士ガンダムUC』(OVA版)に登場(小説版には登場しない)。イフリートとしては初めて映像化された機体。
全身に多数装備したヒート・ダート(クナイ)が外見上の最大の特徴となっており、他のイフリートに見られる肩部スパイク部分もヒート・ダートとなっている。射撃武装としてはショットガンとジャイアント・バズを装備。カラーはドムに近い紫色。
装甲の一部には従来の超硬スチール合金に加えてガンダリウム合金も用いられている。このことから、この仕様となったのはシャア・アズナブルが地球圏にガンダリウム合金のデータをもたらした、グリプス戦役期以降であることが窺える。
ジェネレーター出力やスラスター推力などの機体性能自体も大幅に強化されており、ジェネレーターもZガンダム(2020kw)や百式より高出力のもの(2202kw)が搭載されていたりする(無論、単純なカタログスペック上の差であり、パワーウェイトレシオでは劣っている)。
ベースが一年戦争当時の1072kwの機体であるという点を考慮すると、破格の魔改造がなされた高性能機である。
作中ではジオン軍残党により運用され、トリントン基地を襲撃している。優れたスペックを活かしてジムⅡセミ・ストライカーを格闘戦で圧倒、瞬間移動の如き高速機動でヒート・ダートを使い仕留めるシーンも見られた。
アニメ内ではカークスに撤退を促されたところで出番が終了しているが、外伝漫画『『袖付き』の機付長は詩詠う』にて生還が確認された。トリントン基地から脱出後、連邦・ジオン両軍のMSを回収した海賊達の一員となってカークス隊基地を襲撃。ベースジャバーに乗った状態であのバイアラン・カスタムと空中戦を行い、互角に戦っている。しかし搭乗者はカークス隊から依頼を受けた間者であった為、最終的に海賊の首領が搭乗したザクⅢを「野心に器が届いていない」と判断してビームサーベルで仕留めて撤退。カークス隊とは合流せずに何処かへ去っていった。
後に発売されたゲーム『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』において、ベースとなった機体は旧ジオン軍特別競合部隊「マルコシアス」隊長、ダグ・シュナイド大尉が搭乗したイフリートである事が明かされた。一年戦争当時はグフ・カスタムの3連装マシンガンや専用のヒート・ランスを装備していたが、連邦軍から脱走したフレッド・リーバーがダグ・シュナイドから本機を受け継いた為、『リーバー・ザ・リッパー』の異名を持つ彼の戦闘スタイルを活かすため、ヒート・ダートが装備された。(彼は以前、白兵戦特化MSであるガンダム・ピクシーに搭乗していた)。一度フレッドは本機を手放しているが、紆余曲折を経て戻ってきた本機に強い縁を感じ、『シュナイド』の名を与えたようだ。
以下ネタバレにつき白字↓
なお、フレッドは「これが俺の最後の戦いになる」などと壮絶な死亡フラグを立てながらトリントン基地へ赴いたが、前述の通り生還しており、戦いも最後にはならなかった。機体同様まるで忍者のような男であった。
▶もっと見る
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/24(水) 07:00
最終更新:2025/12/24(水) 06:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。