ラー・カイラムとは、アニメ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」およびそれ以降の作品に登場する架空の艦艇または艦級。カイラム級とも。
地球連邦軍またはその外郭団体であるロンド・ベルの所属。ロンド・ベルやムバラク艦隊など多くの作品で艦隊旗艦を務めている。アムロ・レイ最後の母艦であり、艦長であるブライト・ノアの軍歴も本艦で過ごした期間がもっとも長いと思われる。
ネェル・アーガマと同じく機動戦艦と言う宇宙世紀独自の艦種が当てられている。ロンド・ベルの主任務は低強度紛争にあったため、機動性を有し柔軟な作戦運用に適していた本艦の実態にも合っていたと言えるだろう。
名称の由来については現在のところ不明。「ラー」は古代エジプトの太陽神を示すともフランス語の「La」と言う定冠詞(英語のtheに相当)の宇宙世紀時代の訛りだとする説もある。フランス語説の有力証拠として、姉妹艦にジャンヌ・ダルクと言うフランス由来の艦名があることが挙げられる(余談だが、富野監督はアニメ「ラ・セーヌの星」の後期監督)。「カイラム」は一切不明。一応、古来の軍艦の象徴である櫂(オール)とラム(衝角)ではないかとも思われる。ただ、富野監督はスキャット的な名称を好んで付ける傾向にあるので、明確な意味を与えられたモビルスーツや艦艇を除くと掘り下げても無意味かもしれない。
戦艦として艦種の系譜をたどると、一年戦争前に竣工していたマゼラン級に行き当たる。ただ、マゼラン級は強力な火力を誇る反面、運用を電子装備に頼り切っており、ミノフスキー粒子散布下でのモビルスーツを中心とした戦闘ではモノの役に立たなかった。とりあえずの応急措置として、対モビルスーツ戦用に対空火器を増設したマゼラン改級が誕生するがモビルスーツ搭載能力は巡洋艦であったサラミス級に譲り、次第に第一線級の軍艦とは見なされなくなっていく。
しかし、連邦は戦訓を無視するかのように、砲撃戦能力に特化した戦艦バーミンガムを0083年に竣工させる。この代償はデラーズ紛争における観艦式核攻撃と言う形で贖われ、バーミンガムはなすすべなく撃沈。連邦内における戦艦の占める地位は急速に低下した。
もっとも、これら一連のバーミンガムの逸話には誇張が存在し、単にモビルスーツ搭載能力と砲撃戦能力を有する艦船の役割分担を進めるドクトリンであり、これが放棄されただけであったとする説も存在する。実際、砲撃戦能力が軽視されることはなく、戦闘の実態としても艦隊戦は頻繁に発生しており、例えばかつてのジオン軍のドロスのようなモビルスーツ特化型の艦艇は求められなかった。
0085年より連邦はエゥーゴとティターンズの内戦に突入するが、0087年に竣工したエゥーゴの強襲巡洋艦アーガマでは早くも火力の不足が問題になり(ただし、これまでのモビルスーツ運用艦と比べればむしろ大火力)、次級のアイリッシュ級(ラーディッシュ)では大幅な火力UPが図られた。このため、同時期に竣工したティターンズのドゴス・ギア(バーミンガムのモビルスーツ搭載能力付与艦)と共に久々に戦艦の艦種が復活することとなる。特にアイリッシュ級は優れた能力とエゥーゴの勝利もあり量産が進められ、逆に巡洋艦のアーガマ級は2艘の建艦(アーガマ・ペガサスⅢ)にとどまった。
0088年、アーガマ級とアイリッシュ級での反省を生かし、更なる火力強化とモビルスーツ搭載能力の増大を目指した野心的なネェル・アーガマが竣工。機動戦艦と言う艦種が新たに付与され、第一次ネオ・ジオン抗争を単艦で勝利に導くと言う劇的な戦果を挙げる。これにより、連邦軍の建艦史は新たな局面に突入していった。こうした流れの中で生まれたのがラー・カイラムである。
設計・起工の時期については諸説あり、ティターンズ壊滅前と後(0088年2月)に分かれる。壊滅後とする説は本艦の設計にはエゥーゴ系の技術と、アレキサンドリア級重巡洋艦やドゴス・ギアのようなティターンズ系の艦艇の収斂進化が見られ、壊滅・併呑後でなくてはあり得ないとする。一方、壊滅前説はアレキサンドリア級はティターンズ設計ではなく(優先的に配備されただけ)、ドゴス・ギアももともとはバーミンガムにモビルスーツ搭載能力を付与しただけの艦艇であり、連邦軍としての設計なら特に両派の良いとこ取りを狙ったとしても不思議はないとする。
ただ、いずれにせよ、連邦軍の発注・設計であるため仮想敵がハマーンのネオ・ジオンであったことは間違いないとされる(連邦軍とエゥーゴとの間にはティターンズ対策はエゥーゴが当たると言う密約があったため)。第一次ネオ・ジオン抗争が短期間で終結したのちもシャアを中心にした宇宙の不満分子への脅威から、ロンド・ベルの創設と並行して建艦が進められていった。
全長は487メートルと言う巨艦であり、ネェル・アーガマ(380メートル)から見られた艦船の大型化に拍車をかけている。また、同時期に導入されたモビルスーツも大型化が進んでいるため、相互に影響しているのかもしれない。
主砲は連装メガ粒子砲が4基。これはハイパー・メガ粒子砲を装備していたネェル・アーガマよりは劣り、アイリッシュ級の9門とほぼ同等である。その代わり、高性能な対空火器を22基装備しており、相対的な防御力は向上している。珍しく対空機銃でモビルスーツを落とすシーンも存在することから、対空火器に重点を置いたことは評価されている(マゼラン改級の名残か。のちにネェル・アーガマ改修時も対空火器に重点が置かれていることから戦訓が見受けられる)。
艦首にはミサイルランチャーが6基装備。こちらも宇宙世紀の戦闘描写では珍しく活用されている。
エンジン取り付け位置はアレキサンドリアからの流れからか艦橋と平行して下部に設置されている。また、ドゴス・ギアと同様に艦橋を通常用と戦闘用に二種類に分けている。このため、艦橋およびその周辺は類似している。
主兵装であるカタパルトは両舷に一基ずつの計2基。こちらもネェル・アーガマの6基と比べて後退が見られるが、格納庫からカタパルトへのモビルスーツの動線には配慮がなされておりスムーズな発艦を可能にしたこと、ZZ系の分離・合体型モビルスーツの搭載は前提にされなかったことから、むしろネェル・アーガマがオーバースキルと判断されたようだ。後部には着艦専用のデッキがあり、離着陸の分業が進んでいる。
モビルスーツ搭載数は確認できる段階で4個小隊16機。(+ベースジャバー等の補助装備)0093年以降のモビルスーツ母艦の定数らしく0096年のネェル・アーガマも同数のモビルスーツが搭載されている。
艦としての特徴として艦下部に装着している巨大な放熱フィンがあり大型化したエンジンと相まってこれまでの戦艦と比べ極めて高い機動性を持っていることが推測される。同艦の縮小型と云えるクラップ級やネオ・ジオンの主力艦であるムサカ級にも同様に装着されている事から流行だったという可能性も否定できない(後年の改クラップ級のスペース・アークにやリーン・ホースには付いていない)
ミノフスキークラフトは当初、配備されていなかった。これは想定していなかったとも(宇宙艦隊のみの運用)、将来の小型化を見越してあえてつけなかったとも(0105年にはモビルスーツにも搭載が可能になっており、過渡期にあった)。0096年以降は標準装備となったことが確認できる。また、少なくとも0105年までには大気圏突入用にビームバリアが装備されている。
全体的な船型はそれまでの伝統的な連邦軍戦艦に類似しており、この点は連邦軍内でも好評であったと言う。
一番艦として0091年に就役。艦長はブライト・ノア。同時期にロンド・ベル旗艦であったネェル・アーガマがジオン軍残党との戦闘によりエンジン部分を大破しており、入れ替わるように艦隊旗艦に就任する。0092年までに小競り合いを続けつつ、黒幕とされるシャア・アズナブルの捜索に当たったが成功せず、同年12月にスウィート・ウォーターで先手を打たれる形で蜂起されてしまう。
0093年02月にはシャアによる事実上の宣戦布告が行われ、3月には5thルナと呼ばれた小惑星を地球連邦の首府があったラサに落下させる事件が起きる。この恫喝に屈した連邦上層部はシャアらネオ・ジオンの武装解除と引き換えにアクシズを譲渡する和平案を受託。しかし、これは偽装でありシャアはアクシズを占拠するとそのまま地球に落下させる作戦に打って出る。狙いは地球の寒冷化であり、地球を人が住めない環境にすることによりアースノイドを消滅させようと言うものだった。
事前に地球連邦の財務官僚だったカムラン・ブルームから情報とそれを阻止するための核弾頭を譲られていたブライトは行動を開始。ラー・カイラムによるミサイル攻撃でアクシズ破壊を目論むも、モビルスーツ隊の抵抗で失敗。ついで内部に侵入し破壊工作を行う。これは成功したかのように見えたが、爆発の勢いが強すぎ切り離された後部が地球の引力にひかれる事態を招いてしまう。
最終的にパイロットだったアムロ・レイがνガンダムに搭載されていたサイコ・フレームの力を使って落下を阻止(アクシズショックとも)。ブライトはラー・カイラムを接舷させアクシズを押し返す手助けをしようとしたが、これは果たせずアムロ・シャア両名は行方不明になったまま戦闘は終結する(第二次ネオ・ジオン抗争)。
0096年、ミノフスキークラフトを取り付けたのちテストのために地球へと降下。この過程でラプラス戦争に巻き込まれ、小説では損害も受けている。また、艦長であったブライト・ノアも健在で行方不明になったネェル・アーガマやバナージ・リンクスの支援に全力で当たっている。
0105年、マフティー動乱が発生。再び地球へと赴くも、実際に戦火を交えることはなくケネス隊により鎮圧される。しかし、このマフティーの正体はブライト・ノアの息子であるハサウェイ・ノアであり、ブライトは連邦の陰謀により息子殺しの汚名を(美談にされてはいたが)着せられてしまう。
以降はブライトの消息と同様に不明である。
0153年にジャンヌ・ダルクが確認されているように、連邦軍で長く(少なくとも約60年間)運用されている艦艇である。
掲示板
33 ななしのよっしん
2023/01/18(水) 16:31:24 ID: hCNwCtnpQA
英雄としては知名度高そうではあるけど上層部からの受けが悪そうだし
宇宙戦艦に名前は採用されないんじゃないかなぁ…?
34 ななしのよっしん
2023/01/31(火) 20:54:59 ID: c1UOHV/226
>>14
富野小説では「ラー・カイラムを含む戦艦」の艦級ではなくて
巡洋艦のクラップ級などを含めて「ラー・タイプ」と呼ばれている
ラーの名前がつくクラップ級が多い(変な言い方だが、脚本時点ではクラップはクラップ級のあの形状ではなかった可能性がある)
形状や設計は似ているといえば似ているので、艦級どころか戦艦だろうが巡洋艦だろうがあの形状とか世代艦を指していると思われる
というか実在艦準拠の、ネームシップの名前からの艦級は
ガンダムでは昔は単にファンフィクション(ミリタリーマニア)での呼び方で、Z頃からはちらほら書物にも出てくるけど、逆シャアの頃にはまだ全然徹底されてない
「ムサイ」「グワジン」「マゼラン」とかも等級じゃなく、ただの形状の通称みたいなもの
WBの正式名は「ペガサス級2番艦ホワイトベース」じゃなく「ホワイト・ベース・タイプの1番艦ペガサス」だとかね
35 ななしのよっしん
2023/12/03(日) 18:09:27 ID: fVG+gWTH7o
ラー・カイラムの「機動戦艦」って何なんだ? と思ってたけど、「速力のある戦艦」という意味での「巡洋戦艦」と、「母艦機能を有する戦艦」という「航空戦艦」の機能を併せ持つ艦種ってことかなと解釈した。
というか、スターウォーズのスターデストロイヤーも同様かな。
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最終更新:2024/04/19(金) 14:00
最終更新:2024/04/19(金) 14:00
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